【感想・ネタバレ】消費税10%後の日本経済のレビュー

あらすじ

2019年10月1日から消費税率が10%に引き上げられた。
最近の経済情勢から、世界的に今、景気は「踊り場」にあり、しかも将来、景気がさらに悪化するリスクが世界中至るところにある。わざわざこのタイミングで消費税率の引き上げを行う意味はどれほどあるのかという根強い批判が識者だけではなく、多くの国民から寄せられた。これまでの増税不可避論は、「財政破綻」の危機がいつ到来してもおかしくないと言われる日本の財政状況を危ぶみ、できるだけ早いタイミングでの財政再建を訴えるものであった。しかし、今回の消費税率引き上げは主に「社会保障の充実を目的としたもの」という建前になっている。

このような状況の中で、われわれが真剣に考えるべきことは、これから本格化するであろう「増税時代」をどう生き抜くかであるが、重要なのは「自分の頭で考える」ということになってくる。そこで本書では、読者自身が来たるべき増税時代の中をどのように生きていけばいいのかを「自分の頭で考える」ため、公表されている経済データを用いて、

(1)現在の日本経済の現状を客観的に記述する。
(2)特に、前回(2014年4月から)の消費税率引き上げに際して、家計、および家計に関連する産業の業況がどのように変わったのかを検証し、その背景にどのような経済原理が隠されているのかを考える。

これらの作業を通じて、安倍政権での2回目の消費税率引き上げで、日本経済にどのような変化が起きるかを展望、解説する一冊となっている。プロの着眼点を通して、公開された経済指標や統計資料から、いかにこれからの経済動向を予測し、ストーリーを想起できるかを正しく理解できるのが本書の魅力である。

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Posted by ブクログ

金融政策と財政政策の2つの次元で考えて、経済がどのような影響を受けるかについて言及した本となっています。
最近は消費税に関してMMT含めて極論に偏りすぎている意見を見かけますが、公平な立場で経済状況の分析を行っている本としていいなと思いました。

落ち着いた形で書かれていますし、豊富なデータをグラフで示して、詳細な分析から結論を導き出すという手法は好感。
今後どう日本経済を回すかと考える上で、極論に振り回されずに冷静になってやれることを整理するのにいい本だと考えます。

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2020年01月28日

Posted by ブクログ

グラフや用語など難しいところはあるが、現在のそしてこれからの日本を知ることが出来る、読み応えのある一冊だ。

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2019年12月29日

Posted by ブクログ

日本経済の現状分析を目的としており主張に華やかさはない。
セルサイドのエコノミスト・レポートを読んでいるような感じだが、実際著者はエコノミストです。
それにしては長いかなーと思いつつ、経済学のアカデミックの世界での潮流なども知れるお得な一冊。

2019年8~9月あたりの足下での分析なので、金融庁の2000万円問題など、数ヶ月経っただけの現在(2019年11月)でも、誰も話題にもしておらず古くなっているものもあるが、そういったものも含めて、季刊のエコノミスト・レポートのように読みこなせば良さそう。

昔、ソロスファンドの下請けをしていた、とか、『国家は破綻する』の検証結果への疑義は、マサチューセッツ大学(≠MIT)という二流の大学の院生によるものだったから、真面目に取り合ってもらえなかったんじゃないか、とか、あまり表だっては出てこなさそうな話が面白かった。

消費税の「延期」というだけでは、将来の増税への事前の対処から家計は財布の紐を締めがちで、かえって消費意欲を減退させたかも、という指摘はなるほどと思う。
だからこそ、次の増税を行うならその条件をはっきりと言明し、コミットするべき、という主張はそのとおりなのですが、任期の終わりが見えている安倍さんにそこまでは求められないか、とも感じる。
それにしても、段階的に消費税率を上げることを法律に明記までしてしまった三党合意なんてものは、つくづく罪だったのですね。
そういったあたりも含めての民主党政権への不満は、各所の行間からも十分に感じられ、著者の真面目な人柄が伺える。

税制には国家の思想が反映されるもので、それを踏まえれば世界的な法人減税レースにも勝ちつつ、多少の格差は是として直間比率を是正する、という方針のもとでの消費増税は有り得べき姿との著者の見解に同意したい。
個人的にはもう少し資産課税は強くても良いかな、とは思いますが。
というより、抜け道をもう少し塞げないものか。
相続税を減らすためにアパートを建てましょう、で、質の低い住宅が需給バランスも無視して建ちまくり、儲かるのはレオパレスだけ、みたいなの誰も幸せにしてないような。
それで苦しむのは地主だけだから別に問題なく、それによって地主の富が移転するなら、という見方もありますが、そんな経路を経ないでも世の中が潤う仕組みは他に考えられるでしょう、と。
もし考えられなくても、寄付税制を充実させるだけでも違うんじゃなかろうか、とか。

それから、20代・30代の消費活動が住宅ローンを抱えているか否かで消費活動がまるっきり違うというデータが本書でも示されているが、住宅投資がGDPに一番効くからそこを刺激する、という施策自体に問題が出てきているような気がする。
そもそも、正規社員に新築戸建てを購入させるための住宅ローン減税とか、地方政府が率先して債券を発行し、鬼城を建設してGDP嵩上げを図っている某国と、主体が違うだけであまり構造は変わらないような気が。

とまあ、いろいろと考える材料をくれる良書。

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2019年11月18日

Posted by ブクログ

グラフを読む能力のない私には、なかなか難しい本でした。しかし、7割くらいは理解できたかな。

追伸
日銀審議委員になられるようで、反緊縮改革がどうかどうかすすみますように。

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2020年01月29日

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