田野大輔のレビュー一覧
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「ナチスは良いこともした」とは私も何度か聞いたことがあるが、これが専門家の視点から確かな資料で斬られていくのは痛快の一言。
本書が私に明らかにしたナチスの実態を例えるなら、殺人鬼が捨て猫を拾っていても「善人」とは認めにくいうえ、猫のこともたいして大切にしなかった、という感覚だ。
子供の出生増加に対して、本書P80などの「実際にはナチ政府からの給付金や福祉制度は増加させておらず、イデオロギーに基づいた名誉をぶら下げただけでは子供は増えなかった」「女性に対しては家父長制的圧力、親となろうとする人々へは民族イデオロギー的圧力がマイナスに働いたのではないか」という指摘は現代の先進国の少子化対策に対する -
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あるニュースに、ドイツという国への興味を抱くことがありました
それは、国民背番号制に、DNAの親子関係を絡めて制度設計をしようと調査を始めたら、
ドイツの父子間の親子関係は、四人に一人は他人であった、というニュースでした
アメリカの占領は過酷なものですから、そのことと結びつけて考えてみたのですが、
四人に一人となると、小中高の学生から、すべての中学生が該当するぐらいの高確率です
ちょっと占領だけが原因とは思えないから、デマではないのかと何度も読んだのですが、離婚率の高さを述べる時の嘆きを帯びていて、少なくともエスプリは利いていなかったのです
そういうモヤモヤを感じていたのですが、本書を通じ -
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ナチズム研究の専門家が、巷で言われる「ナチスは良いこともした」論について検証する。 一般によく言われるナチスの先進的な政策である、経済政策、労働福祉政策、家族支援政策、環境保護政策、健康政策について、いずれもナチスが特段優れた政策を実施したわけではない。ワイマール体制下の政策が実を結んだものが多い。また、「民族共同体」の訴えに基づいて行われた諸々の政策だが、裏を返せば「民族同胞」として包摂されなかった人(ユダヤ人、共産主義者、障害者、同性愛者等)を排除することを目的としていた。
「ナチスは良いこともした」論を唱えることは、ナチズムが実際にどんな体制であったかを無視した暴論である。 -
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本書の感想からやや離れる。
筆者のSNSのプチ炎上をリアルタイムで見ていた。「本筋の研究者によく物を言えるな」と驚いた覚えがある。筆者を批判しているツイートで目立ったものは共通して『上から「学者にわからせてやる」口調(当然敬語ではない)』『アカデミックなものに対する敵意』、俺は論破などされないというスタンスからはいる一連のツイートは胸に来るものがある。というのも、本書のような、その指示の専門家が書いた素人にもわかるよう記した本でも、彼らは納得しないだろうと思ったからだ。
各章のナチスの政策と、それが『良いこと』だったか、の是非は私のような素人にもわかりやすく大変勉強になった。中でも自分が一番心 -
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作家の菅野完氏はよく彼のYoutube番組で日本の右派は他人の生殖に口を出すことしかしていない(少し上品な表現にした)と語っているが、本書の前半ではナチスドイツの研究者である田野大輔氏によりナチスドイツのナチ党による他人の生殖について口を出すことについて語られている。本書を読むことでドイツと日本、戦前・大戦中と戦後80年近いという違いがあるものの、国家主義者がどんな考え方や意図を持ってどのように他人の生殖、性生活に口を挟むのかが良くわかると思うし、大戦時のナチスが言っていることと、現代の我が国の日本会議を始めとする宗教右派が言っている事は非常に似通っている事がわかると思う。共通するのは極めて頑
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本書ではナチスの行為に対する感情的で誤った解釈をぶった切るのはもちろん、一部の若者がなぜ 「ナチスは良いこともした!」という発想に至るのか、その原因を掘り下げる視点が鋭くて読み応えがある。そうした若者たちの主張は、「学校を通じて押し付けられる綺麗事の支配への反発」だと著者は言う。これを聞いて私は、若者に適切な知識の発散の場がないからなのではと思った。もし「ナチスは良いこともしたのか?」という議題で学校の授業でディベートを行えば、多角的な視点で物事を見る力が少しはつくのではないだろうか。自分の考えを検証し、他人と意見を交換する機会に恵まれていないから、手軽くSNSで専門家に噛みついて発散してしま