鎌田慧のレビュー一覧

  • いじめ社会の子どもたち

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    1997年5月に神戸で起きた少年殺人事件を緒に、マスコミの対応や学校の対応、いじめ問題から今後の教育へと論が進められていく。
    1998年10月発行で、冒頭の事件が起きた一年前後の期間に、著者が学校と教育について書いた文章を集めたもの、という体裁の文庫版。週刊誌に連載されていた記事もあり、当時の社会情勢を反映した、臨場感のある鎌田節が読める。

     学校や、ひいては会社など大人社会にも蔓延するいじめや過労、それらが引き起こす自殺についての例を挙げながら、著者は一貫して「弱いものが生き延びられないような社会で良いのか?」と問い続ける。

     信じがたいような少年犯罪や、死んでしまうことでしか自分の気持

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    2012年06月25日
  • 新装増補版 自動車絶望工場

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    自動車工場を取り巻く環境は、依然厳しいものなのだろうか。
    某自動車メーカーの工場が近くにあるが、絶えず作業員の募集を行っている。それだけ離職者が多いのだろう。作業が過酷なのかもしれない。
    事実、私の知人も勤めてすぐ辞めた。また、私も一時期、期間工を考えたことがある。仕事がないときに。他人事では無いと感じる。

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    2012年05月13日
  • 六ヶ所村の記録 核燃料サイクル基地の素顔

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    ざっと流し読んだだけだが、
    とにかく恐ろしく寒く、貧しい土地であったことがわかる。
    戦後、満州から戻った開拓者が今度はこの土地を必死に
    切り拓いてきた。

    しかし下北半島は三沢に米軍基地、むつには原子力船の母港と
    貧しいが故にさまざまな施設を押しつけられてきた。

    そして六ヶ所村には核燃料サイクル基地が...。

    弱者にすべてを押しつける構図に、自分も都市生活者として
    利益を享受する側に属している。
    そんなことを望んではいないのに...。

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    2012年04月24日
  • 新装増補版 自動車絶望工場

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    今から約40年前、自ら自動車工場の期間工として半年間働いた著者のルポルタージュ。
    当時の日記を基にしているので、当時の苛酷な労働環境や周りの労働者の思いなどが生々しく描写されている。
    初版は1973年だが、今読んでも色褪せてない。てか、今読むべき本なんだと思う。 

    まだ自分が生まれる前、こういう人たちの懸命の働きで日本が発展を遂げてきたと考えると心が痛くなる。 
    著者はあとがきで「今の時代のほうが大変」と書いているが、本当にそうだろうか。
    現代に生きている自分たちも、もっともっと努力できるんじゃないだろうか。
    いろいろ考えさせられる一冊でした。 

    にしても、出てくる自動車会社の徹底的な合理

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    2011年11月11日
  • 原発暴走列島

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    ずっと原発反対を訴えてきた著者が、今回の福島原発だけでなく、過去の原発事故をもとりあげて、原発がいかに危険なものなのか、また、電力会社の隠蔽体質、自分達の利益のためなら、人の命は簡単に切り捨てるそんな体質が何十年もずっと変わっていないことがよく分かります。
    今回の原発事故が起こるべくして起こったのです。電力会社は犯罪企業です。でも、ほとんど誰も罪に問われない。罪に問われたとしても、軽い量刑で片付く。だから、全然彼らにはこたえない。

    「利益さえあがれば、世界中を核汚染させてもいいとする企業姿勢は、いずれ世界から見放されることになる。」

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    2011年11月05日
  • 新装増補版 自動車絶望工場

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    昭和40年代、著者が実際に半年間季節工として勤務した、某自動車工場のルポタージュ。初版は1973年とのこと。新たに【新装増補版】として出たばかり。
    世界一の企業を底辺で支えていたのは、過酷な現場で部品の一部として日々消耗されていく数多くの労働者たちだったのですね。日記調の文章が、当時のなんとも切実な状況を詳細に伝えています。

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    2011年10月01日
  • 六ヶ所村の記録 核燃料サイクル基地の素顔

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    六ヶ所村再処理工場のアクティブ稼働をめぐる人々の姿を描いたドキュメンタリー映画「六ヶ所村ラプソディー」の前史ともいえる鎌田慧さんによるルポルタージュ。人間の暗部をこれでもかというようにえぐっている。後半は驚くべき事実のオンパレードである。

    六ヶ所村は青森県の下北半島の東側に位置する。ここは隣接する三沢市などの人たちからも「鳥も通わぬ村」「青森の満州」などと言われているという。そんな六ヶ所村がいかにして核施設が集中することになったのかを描いていく。

    原発は「トイレのないマンション」との比喩をされている。これは見かけは立派だが、最後の処分ができない、との皮肉である。原発には使い終わった後に放射

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    2011年04月30日
  • 空港 25時間

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    パイロットから税関の人まで、空港で働くいろいろな人々のインタビューを集めた1冊。飛行機が安全に快適に飛ぶために、これだけ多くの人が関り、それぞれの職種でベストを尽くしているということが分かり、とても興味深かったです。作者の主観的文章が一切入らず、それぞれの人のインタビュー内容のみで構成されています。このあたりもなかなか好感が持てました。お仕事柄、国内海外ヒコーキで飛び回ってるような方などは、ゼヒ読むべし。

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    2011年09月25日
  • 空港 25時間

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    快適に飛行機の乗れるのはこれだけ多くの職種の人達あってのことなのかと,考えさせられました。仕事をこなすだけでも大変だろうに,その上,お客のことを思って働こうとしている姿には頭が下がります。
    飛行機に乗るときは,感謝の気持ちを忘れないようしないといけないな。

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    2010年02月13日
  • 神戸新聞の100日

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    震災で壊滅的な打撃を受け、新聞の発行もままならない状況に陥りながら、京都新聞社の協力なども受け、なんとその日の夜には夕刊を刷りあげることに成功し、その後も苦しい状況下にあって新聞社としての再興をめざしながら、同時に被災地のさまざまな物ごとを現場に根を張って取材しつづけた、神戸新聞社の苦闘の日々の記録。

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    2009年10月04日
  • 原発暴走列島

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    原発暴走列島 単行本(ソフトカバー) – 2011/4/27

    エネルギー政策までは踏み込んでない
    2011年11月27日記述

    自動車絶望工場などの著作がある鎌田慧さんの本。

    今回の震災を受けての原発事故についても述べているけれどもこの本の多くはかつて著者が発表したものを再編集した本。

    反原発の立場からの取材が中心。
    当たり前だが電力会社、それを進めた自民党政権、への批判は厳しい。
    マスコミについても広告費関連のためかベタ記事で済ませてきた過去が分かる。

    物足りない点は基本的にこれまでについて語っており、これから(未来)どうするべきかが脱原発のみでエネルギー政策をどうするかまで踏み込ん

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    2021年12月19日
  • 新装増補版 自動車絶望工場

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    ルポの名著といわれているもの。書名は知っていたけど、こんな昔の本だったのかという印象。そして、だいぶ昔な感じかなと思いながら読んでみると、驚くほどそんな感じがしなかった。もちろん、いまのトヨタの工場がどうなってるか知らないし、ここに書かれているよりは労働環境はよくなっているだろうけど、でも何というか……まさに絶望を誘うような状況があるだろう。そのことは書中の「補章の補章・キカンコーとハケン」でも示唆されているし、ハケンというものができてより大変になっていることが示唆されている。
    読みつつ思ったのは「勤勉」ということの価値。1970年代ですら勤勉は不器用クソ真面目の言い換えのようなとらえ方があっ

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    2021年05月14日
  • 石をうがつ

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    私たちはあきらめてはいけない。
    私たちには、私たちの子供、私たちの孫、私たちの子孫、そして世界の未来に安全に暮らせる日本を、そして地球を手渡していく責任がある。
    福島第一原発事故のあと、原発再稼働が強引に行われ、そしてまだ次々と再稼働、新設工事再開が狙われている。
    福島第一原発4号炉は、停止中に地震によって壊れた。
    いま、一時的に原発が止まっているからといっても、安心してはいけない。
    5号炉、6号炉の廃炉ですら、大規模災害後3年半も経ってようやく渋々と始めようとするくらい、原発関係者は恐らく狂っている。昔の漫画のように、彼らの瞳はきっと

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    2013年09月22日
  • 橋の上の「殺意」 <畠山鈴香はどう裁かれたか>

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    日本ではとかく勧善懲悪が基本的に支持されるので、殺人者=死刑で裁かれるべき、というのが常に趨勢になる。
    そのため死刑廃止論は抹殺されがち。もちろん自分の子供が殺されたら加害者を絶対死刑に頬むりたいって思うだろう。その気持ちはもちろんよく分かる。
    だけど裁判とか刑法というのは、そういう被害者感情だけに流されては本来いけないはず。とはいえこの著者もそうだけど、そういうこと言うと叩かれてしまう。
    刑法39条の心神喪失者や心神耗弱者に対する免刑・減刑規定により、日本の殺人事件の裁判は、複数の精神鑑定結果報告の解釈が重要視されるようになってしまい、事件の本質がどんどん見えなくなってしまう傾向にあるようだ

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    2013年09月16日
  • 橋の上の「殺意」 <畠山鈴香はどう裁かれたか>

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    2006年の秋田児童連続殺人事件で逮捕された畠山受刑者の実像に迫ったルポルタージュ。

    帯に『魔女の裁判』という言葉が記載されているが、著者は世論の畠山受刑者に抱くイメージと真逆のイメージへと読者を誘っている。

    焦点は畠山受刑者の『殺意』と犯行当時の『精神状態』であるようだが、短期間に無抵抗の幼き子供二人を死に至らしめた事実は消しようもなく、死刑という求刑は妥当と思われる。しかし、著者は一貫して畠山受刑者を擁護するかのようであり、違和感を覚えた。この事件が冤罪であり、疑わしい人物がいるのならば、畠山受刑者の擁護にも納得するのだが…

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    2013年09月09日
  • 教育工場の子どもたち

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    1983年の著。戦前の日本の状況について書いたものかと思った。もちろん、筆者の年齢を考えればそんなはずはないことはすぐに分かるのだが、、、それぐらい、時代錯誤で封建的、軍隊もかくや、というほどの規律に縛られた異常な状態が記されている。教師から生徒への横暴はもとより、教育委員会から学校、すなわち校長に対する締め付けや、それが助長する閉鎖的な隠蔽体質など、自分が学校に通う年齢だったこの時代に、こんな現実がまかり通っていたなんて、衝撃である。嘘だと信じたいが、私は、生まれ育った地域や周囲の環境のおかげでたまたま、これらのことに触れずに生きてこられただけ、幸運だっただけ、いうことなのだろう。
    あるいは

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    2013年02月15日
  • 「東大経済卒」の十八年

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    1970年4月に東大経済学部を卒業した人たちの現在(1988年)までを追った話。だいぶ昔に取材されたものなので、その後の合併やら吸収やらで今はない企業名などもちらほら。世の無常を感じる。

    昔の経済卒なので、エリート街道まっしぐらな人しかいないのかと思いきや、意外に途中で方向転換した人もいた。東大闘争というのは彼らに少なからず影響を及ぼしているようだったが、その話と現在の話の関連がイマイチピンとこなかった。元々雑誌連載の記事だったので、コンパクトにまとめられているのだろうが…また、会社員への取材であれば、企業広報課を通さねばならないことも多かったらしい。そのせいもあるのだろうか。

    自営業や新

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    2012年09月03日
  • 空港 25時間

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    誇り高き職能集団。彼ら彼女らがいるからこそ、空の旅は快適になる。仕事のプロフェッショナルが大勢いるのに、なんで日本航空はあんなことになっちゃったのかなぁ。残念。

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    2012年01月04日
  • 神戸新聞の100日

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    阪神大震災により本社崩壊の危機にあいながらも、その日のうちに新聞を発行した神戸新聞を巡る実話。命の危機に晒されながらも、京都新聞等を初めとする数々の組織や人々と協力し、新聞を発行し続ける。その執念とも言うべき努力に震える。

    そして記者の目を通して見えてくる震災対応の問題点は、先日起きた東日本大震災にも通じる点があり、考えさせられる。

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    2011年03月28日
  • いじめ社会の子どもたち

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    p290
    もうひとつは、よく一般的にいわれる「みんなと仲良くしなさい」という考え方です。これはお母さん、お父さんがよくいったりしますが、これも間違っていると思うのです。みんなと仲良くなんて絶対に出来ません。大人だってけっしてみんなと仲良くしているわけじゃありません。

    こう言っちゃう著者に感銘を受けた。

    いじめとか、少年犯罪とか、
    本当に大人の汚い社会の犠牲はいつも子ども。
    大人がそのことにもっともっと意識を向けて、
    クリーンな社会にできないものかな。

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    2010年08月21日