【感想・ネタバレ】新装増補版 自動車絶望工場のレビュー

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Posted by ブクログ

30年以上前に出版されたルポルタージュの増補版。トヨタ自動車に期間工として実際に働いた記録と、外側からトヨタを分析した部分とから構成されている。後半はともかく、前半は実際に身を置いたものでないと書けないであろう貴重な記録として読める。多かれ少なかれ工場というのはこういうものなのかもしれないが、とても自分にはつとまらないな…と思ってしまう。帯にある、「働く喜びって何だろう。」という言葉がそのまま読後の感想として湧き上がる、そんな一冊。おすすめ。

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2012年01月02日

Posted by ブクログ

期間工の過酷な労働環境が実際に半年潜入した著者により、忠実に描かれています。この本が書かれた昭和から平成、令和に移り、環境は良くなるどころか期間工のさらに下の階層として違法労働させられる外国人留学生、派遣などの不正規雇用が現れさらに事態は悪化。上層部と現場が完全に分断され、上層部ばかりが儲けている。技術を得て転職の踏み台に出来ればいいですが、単純作業にはそれもない。ロボットの代用として安く使われる…などなど、放置されている問題が山積みであることを改めて認識しました。

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2019年08月29日

Posted by ブクログ

まずは、あの鎌田さんが、こうやってルポを書いているのか、と驚いた。
実際に「キカンコー」として、ベルトコンベアの部品のヒトツと化して働く。
そこには、人格とか尊厳とか意欲とかを一切排除した世界。

私も例外にもれず、労働し、その対価として、給料をもらって、そのお金で生活している。
「正職員」こといわれる人たちは、毎年約束された昇給や賞与が与えられるが、1年契約の私は、10年以上昇給は無い。
不満が多いのは事実だが、仕事そのものにやりがいを感じているし、必要とされているのがわかるから、辞めようとは思わない。
多分、このまま、切られるまで(願わくばイコール「定年」まで)働くと思う。

「自分より大変な人が居る」
そんな感想を持った自分が恥ずかしい。

この初版が出た1973年から40年経った。
そして、現代、「キカンコー」の下に「ハケン」といわれる層が存在する。
トヨタの莫大な収益は、彼らの労働力によって、成り立っている。
貧富の差は拡大する。
日本という国はどこに向かうのだろう。

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2012年07月08日

Posted by ブクログ

【本の内容】
働く喜びって、何だろう。

自動車工場で働きはじめた34歳のぼくを待っていたのは、人間性を奪うほど苛酷で絶望的な仕事だった。

考える暇もなく眠る毎日、悲鳴をあげる身体、辞めていく同僚たち。

読みやすい日記形式で「働くこと」の意味を問うルポルタージュの歴史的名作に、最新の情勢を加筆。

[ 目次 ]
第1章 季節工8818639番―一九七二年九月
第2章 新記録を可能にしているもの―一九七二年一〇月
第3章 “脱落者”たち―一九七二年一一月
第4章 増産・労災・不満―一九七二年一二月
第5章 ついに昼夜二交替―一九七三年一月
第6章 期間満了!―一九七三年二月
第7章 もう一度豊田へ―一九七三年四~五月
補章 トヨタ式合理化の歴史
補章の補章 キカンコーとハケン

[ POP ]
1970年代前半に、著者がトヨタ自動車の工場で季節工として働いた体験をつづったルポ。

花形産業の発展が、過酷な効率追求に支えられていた実態を明らかにした。

同僚がこぼす愚痴や、トイレの落書き、好調な経営状況を伝える社内報――淡々とした日記の形の文章が、迫力を加える。

工場で一人一人の作業は、細分化、単純化されていた。

<機械と同じ正確な動作を、八時間継続しなければならない。

機械は疲れないが、人間は疲れる>。

増産が労働者を追い立てる。

<人間がコンベアを使っているのではなく、コンベアが人間を機械の代わりに駆使しているのだ>。

刊行後も経済環境が大きく変動する中、本書は途切れず版を重ねた。

格差社会論の高まりや、元派遣社員による秋葉原無差別殺傷事件を受け、2008年6月は版元への注文が前月までの8倍近くに増え、「今も昔も変わらないワーキングプアの実態」の帯が巻かれた。

今秋には、最新の実態を加筆した新装版が出る。

文庫版あとがきで著者が望んだ<この記録そのものが否定される時代>は、遠のくばかりだ。

[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年10月25日

Posted by ブクログ

 デトロイトに行く用があったのと、最近のブラック企業報道を目にして、ブラック企業告発のたぶん最初の本になる本書を手に取った。過酷すぎるベルトコンベア労働の実態。疎外された労働。
でも、たぶん工場労働は本質的に疎外された労働、だと思う。従って労働組合が大問題だということがわかる。当時も今も、告発された過酷な状況を作り出しているのは労働組合の責任が大きい。資本とはそういうものだ、ということ。

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2013年11月19日

Posted by ブクログ

本書には筆者の鎌田慧氏の潜入取材からくる圧倒的な説得力がある。
私の家の車はトヨタなのだが、身近な車が過酷な労働環境の下、想像力や自主性を奪われた本工や見習工、期間工に作られていて、そんな車に乗って思い出を作ったりなどしているのかと、ゾッとした。(2013年現在は40年前と労働環境、労働条件は変わってると思うけど)
当時、20代だった彼らは今でもトヨタで働いているのか?働いているならある程度の役職に付いているのか?彼らが当時をどう思い今何を感じているのか気になった。
改善してほしい点
文字が小さいから読んでてすぐ疲れる。大きくしてほしい。

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2013年07月07日

Posted by ブクログ

自動車工場を取り巻く環境は、依然厳しいものなのだろうか。
某自動車メーカーの工場が近くにあるが、絶えず作業員の募集を行っている。それだけ離職者が多いのだろう。作業が過酷なのかもしれない。
事実、私の知人も勤めてすぐ辞めた。また、私も一時期、期間工を考えたことがある。仕事がないときに。他人事では無いと感じる。

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2012年05月13日

Posted by ブクログ

今から約40年前、自ら自動車工場の期間工として半年間働いた著者のルポルタージュ。
当時の日記を基にしているので、当時の苛酷な労働環境や周りの労働者の思いなどが生々しく描写されている。
初版は1973年だが、今読んでも色褪せてない。てか、今読むべき本なんだと思う。 

まだ自分が生まれる前、こういう人たちの懸命の働きで日本が発展を遂げてきたと考えると心が痛くなる。 
著者はあとがきで「今の時代のほうが大変」と書いているが、本当にそうだろうか。
現代に生きている自分たちも、もっともっと努力できるんじゃないだろうか。
いろいろ考えさせられる一冊でした。 

にしても、出てくる自動車会社の徹底的な合理化の考え方はハンパない。
そりゃ世界一にもなるわ。

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2011年11月11日

Posted by ブクログ

昭和40年代、著者が実際に半年間季節工として勤務した、某自動車工場のルポタージュ。初版は1973年とのこと。新たに【新装増補版】として出たばかり。
世界一の企業を底辺で支えていたのは、過酷な現場で部品の一部として日々消耗されていく数多くの労働者たちだったのですね。日記調の文章が、当時のなんとも切実な状況を詳細に伝えています。

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2011年10月01日

Posted by ブクログ

ルポの名著といわれているもの。書名は知っていたけど、こんな昔の本だったのかという印象。そして、だいぶ昔な感じかなと思いながら読んでみると、驚くほどそんな感じがしなかった。もちろん、いまのトヨタの工場がどうなってるか知らないし、ここに書かれているよりは労働環境はよくなっているだろうけど、でも何というか……まさに絶望を誘うような状況があるだろう。そのことは書中の「補章の補章・キカンコーとハケン」でも示唆されているし、ハケンというものができてより大変になっていることが示唆されている。
読みつつ思ったのは「勤勉」ということの価値。1970年代ですら勤勉は不器用クソ真面目の言い換えのようなとらえ方があっただろうけど、それでも勤勉な人が多くいたし、そのことが社会を発展させていたことだろう。対して21世紀のいま、勤勉であることは使用者・被使用者を問わず価値でなないのではないだろうか。それがなおさら仕事をつらいものにさせているのではないか。

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2021年05月14日

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