楊海英のレビュー一覧
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ネタバレ著者は中国の内モンゴル自治区出身で静岡大学の文化人類学者。
本書執筆の意図の中心には、直近の民族問題である習近平中国の2020年の内モンゴル自治区に対するモンゴル語教育禁止命令に対する元宗主国たる日本への中国の内モンゴル人同化政策阻止運動への期待にある。しかし、その根底となる知識、広く周辺の知識として、中央部ユーラシアを基礎に据えた民族地政学の提唱と言語問題を含む国際的民族問題、共産党中国、漢人の金丹道やスターリンのソ連のモンゴル人、ウイグル人、カザフ人、チベット人に対する多くのジェノサイドなどが述べられ、最後に国際的民族問題に対して日本がとるべき行動が述べられる。
実は中華人民共和国と内モンゴルの近代から現代の問題を知るつもりで購入したが、読み進むに従い、実際には南北(内外)モンゴル、テュルク系の中央ユーラシアを広く理解してこそ内モンゴルの問題を理解することになるということがわかる。
言語教育の禁止、同化政策は、現在のウクライナ戦争の原因の一つと言われる。ウクライナ東部やクリミアではロシア語を公用語から外そうとしたことがロシア系住民・移民の不満を産んだと言われる。今ではロシアが占領したウクライナではウクライナ語教育は禁止され、ロシア語教科書のみが使われている。最悪の効果を生み出す同化政策である。戦前までの日本でも、沖縄では学校で島言葉を話すと方言札と言う罰を受けた。アイヌが差別を受けることを恐れて、また、仕事を得る必要から家族の中でさえアイヌ語を禁じて子供には話させないことが横行し、今ではアイヌ語のネイティブ話者はほぼいなくなった。言語は民族にとって決して譲れないアイデンティティであり、それ故に同化政策は集団虐殺と共にある民族を抹殺するための最高で最悪な手段なのだ。
著者は、モンゴル人の共通認識では、中国とは漢民族の国を指し、モンゴル人の国ではないと言う。モンゴル人は中国人の中のモンゴル族、チンギス・ハーンはヨーロッパまで遠征した唯一の中国人(モンゴル人チンギス・ハーンは実はカスピ海の西には行っていない)、内モンゴルは元々中国の一部、などの北京政府の主張、モンゴル人に対する同化政策に強く反発する。そしてウイグル人やチベット人も同様の同化政策のジェノサイドの犠牲となっている。
現在の中国では内モンゴルのモンゴル人を、元来中華民族の中の一民族のモンゴル族として扱い、一方漢民族は民族と呼ばないことに、中国の同化政策を指摘する。中国政府の政策により、中国のモンゴル人はモンゴル族と名乗ることを強制され、国籍が中華人民共和国であってもモンゴル人は中国人と呼ばれることを嫌うと言う。内モンゴル人の著者は、北京の大学で自分をモンゴル人と名乗ったところ、モンゴル族と名乗るよう厳しく指導されたとのこと。
遊牧民は大きくは満洲から黒海周辺までの中央ユーラシア全体にわたって活躍していた。
現在でもモンゴル人の居住はモンゴル国や内モンゴル自治区にとどまらず、新疆ウイグル自治区、モンゴルに接するロシアのトゥバ、ロシア内極寒シベリアのバイカル湖周辺のブリヤート共和国、ロシア内カスピ海沿岸(遠い!)のカルムイク共和国の主な住民がチベット仏教を信仰するモンゴル系の人と知って驚いた。
テュルク系の人々はイスラム教徒が多く新疆ウイグル自治区、旧ソ連の中央アジアの独立国カザフスタン、キルギスタン、ウズベキスタンなどに住むが、古くモンゴルから出たチンギス・ハンの末裔を今も自認し、モンゴル人とは同じ遊牧民として古くから隔てなく交流し、互いに一定の同胞意識を持った人たちだと知った。
本書にはチンギス・ハーンに関する記述が多く、モンゴル人にとってチンギスは単なる英雄などではなく、日本人の天皇に比することができると言う。そして、満洲人の建国した清朝も、実はチンギス・ハーンの威光を利用してモンゴルを配下に置き、そして漢民族の中国に進出していったことを初めて知った。
さらに知ったのは、モンゴル人が漢民族を支配下に治めたことはあっても、モンゴル人が漢民族の支配下に入ったのは近年のわずか数十年前から過ぎないこと。つまり、不完全に北モンゴルだけで独立した社会主義国のモンゴル人民共和国と満洲人の清朝の下に残された内モンゴルの時期後、内モンゴルの2/3に日本の傀儡政権のモンゴル自治邦ができ、さらに第2次世界大戦後ヤルタ密談が発効し、この時点で歴史上初めてモンゴルは政治的に完全に南北(内外)モンゴルに分断する。そして衰弱していた満洲人の清朝が滅んだ後、漢民族中国は混乱期に入り、中国共産党が中華民国を台湾に駆逐して初めて漢民族は内モンゴルを支配することになる。そもそも、万里の長城を境として漢民族とモンゴル人は基本的に何千年も棲み分けられてきた。言い換えると、漢民族とモンゴル人は全く共通なものを持たないお互いに異民族ということ。つまり、元来中国の一部などではなく、現在の共産党中国がモンゴルを略奪支配している状態なのだ。
満州族による清朝に先立つ漢民族の明王朝はどうかと調べると、多少の越境紛争はあっても万里長城のきたに位置する内モンゴルを含めてモンゴル人を支配するには至っていなかった。
インド最後の王朝ムガールがイスラム化したモンゴル人だったというのにも驚き。調べると、ムガールとはモンゴルのペルシャ語。創始者バーブルは今のウズベキスタン出身で母がチンギス・ハンに繋がる。
また、日本が太平洋戦争時、7年ほど内モンゴルの2/3に当たる地域に傀儡国家を作って支配下に置いたことがあり(満州国とモンゴル自治邦)、この時に内モンゴル人とモンゴル人民共和国の両方のモンゴル人にとって、統一モンゴル人国家設立への期待を抱いたのだという。この時の日本人は満州の搾取・開発に忙しかったためかモンゴルを幸いにも高度の自治を与えて放置していたらしい。このため、モンゴル人は日本人を「(日中戦争での)侵略者」としては見ていないと言う。反日キャンペーンを延々と続けている北京政府とはえらい違いだ。日本人には、「元宗主国として」内モンゴル自治区のモンゴル人を支配搾取する中国を糾弾することを、著者は望んでいる。さらに著者は日本人の「自己の植民地(モンゴル自治政府)に対する忘却」を指摘するが、全くその通りだと思う。内モンゴルに関する情報はほとんど知られていないのではないかと思う。私はこのような過去や現在のモンゴル人と日本の関係も全く知らなかった。
著者は、「字も読めない中国人農民や自分の名前すら書けない共産党幹部が、複数言語を話し、日本やソ連の大学を卒業し」、「中国より先にモンゴル語のコンピューターソフトも開発」できたモンゴル人を「立ち遅れた野蛮人」として差別した、と言い放つ。もちろん全ての中国人ではないから言い過ぎの面はある。しかし、これはあくまでも危険でブラックなジョークに違いない。真に受けるのは止そう。
カザフスタンではソ連時代に強制されたキリル文字表記が2025年までにローマ字に置き換えられようとしていると知り、これも驚いた。
中央アジアのソ連諸国では、多くの国が長期政権で「遊牧民社会特有の独裁」政治を行っているのだが、筆者は古くからの「大ハーン」政治を継承して中国やロシアとうまく付き合っていく「ある程度の独裁者」を多くの(全てではない)国民が受け入れているとみなしている。これも私の思う典型的民主主義観に反していて、ちょっとした驚きです。
本著では、モンゴル人民共和国独立の経緯については、ほとんど記述がないのが残念で、なぜこの人民共和国独立時に南(内)モンゴルを含めることができなかったのか、とても気になっている。
著者は日本で広く知られている(らしい)「スーホの白い馬」という絵本を批判している。いくつかの点から、中国人が「階級闘争論」に沿って書いたプロパガンダ著作を元にしているために、モンゴル人にとって違和感だらけのものになったと指摘する。著者が指摘する「中国の北のほう、モンゴル」という文については、「中国内の」内モンゴル自治区を指すのは明らかと述べているが、日本語のあいまいさにより「中国の領土よりも北方に位置する、モンゴル」とも取れる(個人的にはこっちかな)。とはいえ、中国共産党の思惑に沿って書かれた物語がベースとなっていることには確か。
ただ、この「スーホの白い馬」部分は別の著作にして(結論のみ提示して)、その分モンゴル人民共和国の独立の経緯、南(内)モンゴルが含まれなかった理由などにページを使って欲しかった。
筆者の日本に対する苦言は一聴に値する。
一つは「戦争絶対悪論」。これは「正義対非正義の戦争論」によって導かれるが、正義・非正義は絶対的価値観にはなれずに崩壊しており(特にイデオロギーによる価値観)無意味と言う。しかし、戦争を肯定しては、戦争の如何なる諸悪さえも裁くことができなってしまうはず。更なる議論が必要だと思う。
もう一つは「現実離れした非武装論」。度重なる中国からのジェノサイドを受けてきたモンゴル人から見れば、天真爛漫となる。しかし、今では自衛隊の明記を伴う憲法改正論、沖縄県での自衛隊の軍備増強など、ウクライナ戦争や香港民主化運動弾圧の衝撃以後、日本でも実質的にはいくつもの武装化が進んでいる。中国やロシアに対抗するつもりではあるが、とても十分とは言えない。全く嫌な気分になるが、それは正論なのだろうか。
(たとえ防衛でも)戦争では不当な犠牲が生まれ、終わっても戦勝国の不当な密約が生まれ、報復の連鎖が起き、結局は問題が解決しないと確信している。
中華人民共和国のモンゴル人に対する過去のジェノサイドやモンゴル語教育禁止は悲惨だが、本書に加えて、「重要証人:ウイグルの強制収容所を逃れて/サイラグル・サウトバイ」を読むと、新疆ウイグル自治区のウイグル人やカザフ人ムスリムに対するジェノサイド(殺人・拉致・強制収容所監禁・拷問・強制避妊・生体臓器収奪・強制労働・ウイグル語教育禁止、漢人の移植と土地収奪、草原の破壊と河川・泉・飲料水の汚染)が今現在も起こっているとわかる。現代に甦る奴隷依存の植民地政策である。さらに、ウイグルの強制収容所(再教育収容所)内の写真を含む虐待の証拠となる大量のデータのリークと、それに続くトップの左遷は記憶に新しい。一帯一路が公表されたことで、本書に詳述されている内モンゴルで過去に起きたのと怖いくらいの一致で、漢民族が押し寄せて無断で土地を奪い遊牧民に壊滅的打撃をあげていることもわかる。世界の非難を浴びながらも、内政干渉とだけ言って済ませ続ける習近平政権の非道に、世界中の良心が関与できずにいるのは、本当に残念。新疆ウイグル自治区で進行中のジェノサイドが、モンゴル語教育禁止に続いて内モンゴル自治区で、あるいは同様にチベット自治区で始まるのではないかと怖くなる。
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南モンゴル出身の楊海英教授、ハルビン出身で芥川賞作家の楊逸、櫻井よしこの中国の覇権主義に関する鼎談。
モンゴル、チベット、ウィグルでの残虐なジェノサイド、オーストラリアでのサイレントインヴェジョン(中国人富豪の政治家、大学への多額な資金提供による親中国派拡大策)
中国政府は大学関係者を、自由で解放的な学問研究と戦う戦争従軍者と認識しているとの指摘もある。
日本でも2500人の中国人留学生が在籍する早大では中国政府にそぐわない発言をした教授を反動教授と弾劾した例も語られる。読み進む内に中国の地球規模での侵略はコロナ同様に既に各国の肺に浸潤しているのではと不安に襲われる。 -
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墓標なき草原、依頼様会議英志の中国論は各刮目すべきものがあるある。本書も中国の歴史を毛沢東から習近平まで独裁こそが中国の歴史である、上から下まで庶民に至るまで長い歴史の中で実に空いている中国人の考え方がよく理解できる。モンゴル人の立場から漢民族の中華帝国に対する考え方、
中国の独裁体制は信用スコアビジネスと非常に親和性がある、共産党独裁をますます強化させる側面を持っている。
大神の父、毛沢東思想によって教育された子供たち、
中国の最大の弱点は、言論の自由、学術の自由が保障されていないこと。中国の研究者は自分たちは北京原人の子孫であり、人類の起源は中国だと主張し続けている。中国ルーツ以外の -
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「未完の中国文化大革命 習近平がめざす「未完の共産革命」と日本(仮) (PHP新書)」という本を読んだ、
以下、感想メモである。
・「ゴミ資料」、公文書、プロパガンダ資料から、文革の実態を説明した本。
・秦の始皇帝や明の朱元璋などのように、新しい統一王朝ができたときに、旧勢力や戦乱期の功臣たちを虐殺してきた歴史が中国にはあるが、
文革はその範囲が政治家・エリート層だけでなく、全国民に及んだ点が、これまでの歴史と違う点だろう。
・国民国家ではなく、人民国家を作ろうとしたから、虐殺の対象が全国民に及んだのだと思う。人民は国民よりも狭い概念で、中国国籍を持つだけでなく、中共に従順な人間を人民としている。だから、中共以外の道徳の基準(血族や宗教、学問など)を中国人から排除しようとした。
・本書では、たくさんの資料が取り上げられている。
文革のプロパガンダ資料はどこか滑稽な印象を受ける。露骨な表現、隠すつもりもない暴力性、すけすけな意図、おどけたマンガ調の絵など、児戯的な印象を受ける。その裏で、おびただしい人間が殺されているのと、ひどくギャップがあって、そこが、文革を不気味な怪物のような事象に見せている。 -
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アメリカとの太平洋戦争が始まる前、日本は大陸を目指し中国と激しく対立していた。明治維新以降、軍備を拡大させてきた日本は柳条湖事件をきっかけに満州事変へと発展させ、最終的に中国東北部を軍事支配した。これにより清朝の廃帝愛新覚羅溥儀を執政に迎え、1934年(昭和9年/康徳元年)には溥儀を皇帝とした満洲国を日本の傀儡国家として成立させている。大陸に出ると言う事は共産圏のソ連とも陸続きの国境を接する事になる。更には南には共産党と国民党が手を結んだ中国とに囲まれ、極度の緊張状態が続く。その様な時代背景の中で、それら3つの勢力に囲まれたモンゴルは、かつてチンギスハンが世界最大の帝国を築いた過去からは考えられない程、弱小国家として各国のパワーバランスの中に揺れ動いていた。その様なモンゴル人の民族自決の意識を利用しようと、日本はモンゴル人を軍事教育するための機関として、興安軍官学校を設立する。本書はそこで学び、太平洋戦争における日本敗戦後も、モンゴルの独立に向けて戦い続けた志士たちの姿を捉えた内容となっている。
主な中心人物としてジョンジョールジャブを取り上げるが、彼はモンゴル民族の独立のため、満蒙独立運動にて戦死したバボージャブの次男であり、兄は東洋のマタハリ川島芳子と婚姻関係を結んだカンジュールジャブである(その後離婚)。彼らの周囲では川島浪速をはじめとした日本の国粋主義者や軍人たちが五族共和を掲げながら、アジアに理想国家を作ろうと暗躍する。モンゴル人の純粋な民族自決の志を利用しようとした日本に、ジョンジョールジャブをはじめとする、興安軍官学校出身のモンゴルの勇士達の人生は大きく振り回されていく。その様な状況に於いても、祖国の発展と独立の為に生きるモンゴル青年達の強さを本書では垣間見ることが出来る。
最終的にはジョンジョールジャブは日本敗戦と同時に、シニヘイ事件により日本に反旗を翻し、攻撃•殺害した事から、日本側から見た歴史では良い印象の人物として映らない。だが元々彼らを利用しようとしたのは日本であり、その後北からはソ連、南からは中国とに挟まれ、更に混乱した状況を生き延びねばならなかった。既にソ連側についたモンゴル人民共和国と、モンゴル自体が二分された状況にあるなか、彼は中国国民党と手を組むなど、反共派と共産圏(ソ連及び中国共産党)との戦いを開始する。文化大革命後まで何とか生き延びたものの、最後は自死するなど、人生の全てをモンゴルに捧げ、日本、ソ連、中国に振り回されながらも強く生き延びた人生は波乱に富んだものであった。弱小民族、国家は常に強者に蹂躙されてきた歴史が示す様に、未だモンゴルは中国の内モンゴル自治区、ロシア連邦のブリヤート共和国、そしてモンゴル国と、実質的に民族分断された状態と言える。だが、かつてユーラシア大陸からヨーロッパまでをも支配せんとしたチンギスハンの血を受け継ぐ彼らの強さは、近年日本の相撲界を牽引するまでに至った横綱達の姿に見ることが出来る。鋭い眼差し、勝利まで諦めない心など彼らの強さを今なお感じることができる。
あまり馴染みのないモンゴルという国であるが、かつての日本が敗戦後に占領された際には、アメリカで日本語を学んだ青年達が日本で活躍し、復興を手助けした。興安軍官学校で日本語を学んだモンゴル人達も例外ではない。敗戦時にソ連からの猛攻に苦しむ日本人に救いの手を差し伸べ、何人もの日本人が無事に日本へ帰国できた。歴史に翻弄されながらも強く生き、日本と関わってきた多くの志士達の活躍を知ることのできる一冊である。 -
Posted by ブクログ
中国現代史の概説書。分量も少なく、内容も簡潔で読みやすい。
尖閣諸島、台湾・香港、新疆ウイグル自治区など、現代中国が引き起こす問題の根源を中国共産党の独裁に見出し、現代史を辿る試みは面白かった。全く中国史の知識を持ち合わせずに読み進めたが、大躍進政策や文化大革命等の解説が分かりやすく、見識を広める良い機会になった。
中華民国の祖である孫文が強い漢民族中心主義であったことを考えると、現在の中国共産党の苛烈な少数民族への弾圧はその系譜に連なるものであると理解出来た。
一元的でゆとりのない中国政治に抗うために、リベラルデモクラシーの復権が欠かせないと痛感した。 -
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モンゴル帝国の版図は空前絶後の広がりを見せた。その原動力は騎馬軍団の強さだけでなく遊牧民特有の柔軟な世界観にあった。
遊牧民独特の世界観とは定住民とは異なる価値観や社会構造を持つ移動を前提とした柔軟な思考や生き方を指します。具体的には、
流動的な領土観
実力主義と柔軟な統治
女性の高い地位
多神教的な宗教観と寛容さ
交易ネットワークと情報の重視
こうした遊牧民の世界観は、モンゴル帝国の急速な拡大と柔軟な統治の背景にあり、定住文明とは異なるダイナミズムを生み出していた。
カギを握った一つとして実は女たちである。遊牧社会では男たちが戦場に赴く間、女性が家族や経済を支え政治的な調整役を担った。チンギス・ハンの死後も有力な后妃や母后が後継者争いを裁き帝国の安定に寄与した。
拡大した領土は統治の難しさを伴う。やがて内部の対立が激化し帝国は分裂の道をたどった。遊牧的な機動力が生んだ繁栄は同時に定住社会との摩擦を生み衰退を早めた。
モンゴル帝国の栄枯盛衰をひもとけば戦場だけでなく幕の裏で動いた女性たちの存在が浮かび上がる。歴史を動かしたのは剣を握る者だけではなかった。
やはり騎馬民族ということか躍動感を感じた。
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購入済み
第二弾を希望します。
この本を読めば天幕のジャードゥーガルをより楽しめます。天幕のジャードゥーガルファンにもおすすめできるノンフィクションです。第十章高麗の虹は、廃帝綺譚(宇月原晴明著)を読めばさらに面白く感じます。廃帝綺譚は4つの独立した短編が収録されている小説ですが、元の第十一代皇帝である順帝を主役にした北帰茫茫という短編もあるからです。この書籍の売り上げが好調ならばぜひとも第二弾を出版して欲しいです。
その時は、モンゴル帝国草原のダイナミズムと女たちでは取り上げなかったチンギス・ハーンの5人目の皇后岐国公主(金の第七代皇帝衛紹王の娘)・ひいては彼女の実家の金朝の皇帝たち、蒙金戦争で活躍したモンゴル・金朝双方の名将たちを取り上げてください。岐国公主に関する記録・伝説は少ないでしょうが、岐国公主の実家はチンギス・ハーンの人生に大きな影響を及ぼしました。また岐国公主の一族は蒙金戦争の名将完顔陳和尚を輩出しています。
日本では私の知る限り蒙金戦争について詳しく語られた歴史ノンフィクションはドーソンのモンゴル帝国史という19世紀に出版された古典しかありません。しかもこの古典は難く私には理解できない記述が多数あり、今では否定された学説なども採用されているようです。蒙金戦争は当時世界最強の軍団だったモンゴル軽騎兵が動員されました。それに対して金朝は忠孝軍という重装騎兵に最新の火器を持たせた多民族からなる精鋭部隊を編成して抵抗したそうです。
日本のモンゴル帝国関連書籍の空白部分を産める歴史ノンフィクションを講談社現代新書から出版して欲しいです。
金朝はモンゴル系の契丹族が建国した遼を滅ぼして成立した王朝ですが、遼の皇族耶律大石は西遼を建国。西遼は金を滅ぼして東帰するのを国是としており、モンゴル高原は金と西遼の代理戦争の地と化し、チンギス・ハーンは金朝派の武将として西遼派の諸部族と戦っていたことが近年証明されつつあるそうです。
岐国公主の実家や蒙金戦争について詳しく説明したノンフィクションの出版はチンギス・ハーンの生涯と勃興期のモンゴル帝国の解像度を上げる事にもなりますし、天幕のジャードゥーガル以外のモンゴル歴史漫画・小説の参考文献にもなり、新たなモンゴル歴史漫画や小説の誕生を促進させるでしょう。蒙金戦争で活躍したムカリや耶律禿花についても詳しく知りたいです。 -
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第一章冒頭の櫻井氏の「中国は世界で最も罪深い"悪逆国家"のひとつ。二十一世紀のいま、どこから見ても許されざる異民族の弾圧や虐殺を続けている。チベット人にもモンゴル人にもおぞましい弾圧を加えてきた。いま、とりわけ国際社会の避難が集中しているのがウィグル人への弾圧だ」との発言で始まる本書は「悪逆国家」たる中国の姿とそれに立ち向かうべき心構えを伝えている。
本書に記された他民族に対する民族浄化、虐待の実態はまさにおぞましい。
櫻井氏ら著者たちは、それが共産党支配の故ではなく、漢民族の特性によるものだと説く。
漢民族は優越感が強く、排他的、差別的で支配欲も強い。執着のあまり、事実とは関係ない壮大な虚構だとしても、中華民族、歴史はこうあるべきという姿を主張する。
習近平が誇る北京語はピジン語という満州族が人工的に作った共通語であり、マンダリン(「満大人」)という英語名はその証、
黄河文明を含む四大文明、古来中国は先進的大国、アヘン戦争以来の失われた百年等の主張に根拠はない、
協調、友好、団結、自治などの耳触りのよい言葉の真の意味は漢民族への服従、
などは目から鱗の指摘。
昨今の稚拙な戦狼外交で馬脚を露わしつつあるが、まだ政財界の中国贔屓や大学や企業への中国人の浸透、不動産の購入、中国製パネルを敷き詰めた太陽光発電所の増設など、我が国への「サイレントインベージョン」は進む。
寝ぼけ頭の日本人を覚醒させるには恰好の良書。 -
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ネタバレ<目次>
はじめに
第1章ウイグル民族ジェノサイドの惨状
第2章ウイグル強制収容所の実態と日本への期待
第3章古い中国の新しい疆域政策
ウイグルへの圧力が強くなったのは2016-2017からだと
いう。2914-2018まで上海に住んでいたが、そのころは
まったくその気配はなかった。新疆人には、泥棒が多い
という噂はあったものの、新疆料理のレストランは
満員で、ステージで歌ったり踊ったりのイベントも
行っていた。
これまで、中国の王朝の辺境の統治は、民族はそのまま
で、ゆるやかに統制をしていたものと理解している。
なぜ、急にここまでに事を進めなければならないのか。
共産党は何を恐れているのか。
ウイグル、モンゴル、朝鮮、チベットと中中原の周りは
ぐるっと他民族にかこまれて、そので守ってもらって
いるはずなのに。その辺境をも漢民族に変えて
しまいたいのか? -
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最近のニュースでウイグル・チベットの人権問題の報道を見て、詳しく知りたいと思い読みました。
上記の二地域だけでなく、内モンゴル自治区のモンゴル人も大変な思いをしていることを知りました。
「大東亜戦争で中国に侵略して、満洲・内モンゴルを占領したことをひたすら中国に謝ることは中国から独立するために、日本軍と共闘した満洲・モンゴル人を侮辱することだ。」という趣旨の文がありました。
まさにそのとおりだと思います。たしかに、先の大戦で日本軍が中国人を傷つけたことは謝罪するべきだと思いますが、日本が、中国と戦ったことによって彼らを助けることになったことは誇ってもいいと思いますし、盲目的に自虐史観を抱くことはやめるべきだと思います。
二一世紀になってもジェノサイドがある国は明らかに異常だと言わざるを得ません。中国という国・国民すべてを否定することは違うと思いますが、間違っていることはちゃんと指摘しないといけないし、いつまでも相手の善意を期待するようなお花畑の考えは捨てるべきだと思いました。彼らと同じ轍を踏まないために。