楊海英のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
北方謙三チンギス紀も残り3巻となり、より深く物語を理解するために、ここらでひとつモンゴル史についておさらいしておこうと思い立ったわけです
モンゴル史については、近年再研究が進み、新たな発見や学説などが登場していることはなんとなく聞いていたので、なるべく最近のものをと思い、本書を手に取りました
偶然にもなかなか良い選書だったみたい
というのは北方謙三『チンギス紀』のまさに対極に位置するような一冊だったからなんよね
『チンギス紀』…日本人(外の人)が書いた歴史を元にしたフィクションで男性を中心に描かれている
本書…モンゴル人(内の人)が書いた歴史を研究した新書(学術書に近い)で女性を中心に歴史を紐解いている
いやー、ほんとびっくりよ
北方謙三『チンギス紀』はほんと女性は添え物の扱いなんだけど、実際にはこの遊牧民の国家ではむしろ女性たちは政治の中心にいたようなんよね
もちろん『チンギス紀』でも強い女性がたくさん描かれていたんだけど、史実のほうはもっとエグい
いわゆる権謀術数の世界を生きる女たちよ
自分があるいは、自分の夫や子どもが権力を握るために、多数派工作はもちろん暗殺だってしちゃう
モンゴル帝国って女たちの帝国でもあったんよ
うん『チンギス紀』の裏側を感じつつ、残り3巻突っ走るぜ! -
Posted by ブクログ
空前絶後の大版図はどう生まれた?カギを握っていたのは実は女たちだった…。
モンゴルといえば、昔読んだ井上靖の『蒼き狼』を思い出す。この小説ではテムジンが全蒙古を統一するまでの他民族との激しい闘争、掠奪したあくなき征服欲が描かれている。
しかしながら、そのイメージは、近年のモンゴル帝国に関する研究により、大きく変貌した。特に、遊牧民によりユーラシア大陸が統一され、情報の伝達と交易が飛躍的に拡大、それによってはじめてユーラシア最東端の中国人がヨーロッパ文明の存在を知り、西洋もまた東方文明と接触でき、ユーラシアは初めてひとつになり、相互に連動しあうかたちで前へと進む「世界史」が誕生したとみる考え方に代わりつつある。
また、遊牧民の世界は定住農耕とは異なる別の論理に基づく社会システムであって、そこに優劣はありえない。中でも、女性の役割が極めて大きかったことが注目されている。この本は、チンギスハーンの征服とその子孫たちによる勢力拡大、世界帝国の形成がどのようになされていったか、武力だけに頼らない婚姻政策の実態、激しい権力闘争が描かれており、自分のモンゴル帝国の理解がこれで大きく変換した本であった。
それにしてもモンゴルという大帝国にどうしてこれほどの魅力を感じるのか不思議でならない。
この本の著者、楊海英氏はモンゴル生まれ。モンゴルの世界を表すのにその空気を感じるなど日本人学者とは一風違ったところがあるせいなのか。 -
Posted by ブクログ
中国への遠慮なのか、過去の自国の過ちからなのか、あまり日本のニュースでは取り上げられない中国による周辺民族弾圧を伝える内容である。ネット動画や信頼性の解らないようなニュースサイトから流れてくる程度の情報では、特に新疆ウイグル自治区に対する弾圧が世界中から避難を浴びていると言うのはよく知られている。記憶に新しいところでは、平和の祭典オリンピック前後では民族弾圧に対する世界各国からの避難が、開会式参加辞退などに繋がるため国内ニュースでも取り上げられていた。
中国の周辺民族問題としては、1944年にイリ、タルバガタイ、アルタイていう北部新疆の三地区で独立運動(三区革命)で、ウイグル人、カザフ人、モンゴル人が独立運動を起こしている。1949年に東トルキスタン共和国として一旦は建国されたものの、地理的にソ連・中国の二大国に挟まれその思惑に翻弄される。現在の形はソ連(スターリン)に見放されて、中国編入された新疆ウイグル自治区となっているが、東トルキスタン人は自分たちの国を取り戻そうとしてる。それに対して中国は漢民族への服従や漢民族以外の人権侵害的な行為を継続している。
具体的には、よく知られているのは、中国が設置している収容所への強制収監である。そこではイスラムの名前を子供につけるのも禁止であるが、漢字名を名乗らなければならない。またチベット語やウイグル文字などの使用も禁止し、自分たちの言葉を喋る事が許されない。優秀な学生は海外留学など努力に応じて教育を受ける機会はあるものの、中国の政治や体制に少しでも批判的な発言、立場を取れば、あっという間に政治犯扱いされて勾留されてしまう。そうなるとその後の出入国もままならなくなる。要するに黙っておけよ、といったところなのだろう。中国はこうした漢民族ではない人々を減点方式で管理しており、パスポート作るとマイナス10点といった「目立つ」要素は全て減点されてデータ化されている。中国は何かにつけて、この人民を点数化する事、監視による完全な追跡を行う事が得意であるから、大きな驚きは感じないが、非常に息苦しい社会の中でも更に息苦しさを強要している。当然移動の制限 も厳しく(監禁してるくらいだから)、車はGPSをつけないとガソリンを入れることもできず、宿泊するにも、その事実を報告する必要があるため、小さいホテルなどは宿泊拒否する様な状況だそうだ。チベットやモンゴル人は当局通報義務があり、大手ホテルでないと対応が難しいようである。驚いたことに病院を自由に使えないため、たらい回しにされた挙句に死亡してしまうなど、生死も中国に握られているようだ。これらは見た目だけでなく、名前などからも判断される様なので、迂闊にそれっぽい名前をつけてしまうと、中国では生活に支障をきたしてしまう。
こうした事は長い人類史の中では繰り返されてきた事ではあるが、21世紀になっても「民族浄化」を進めているのは驚きだ。歴史を消し去ったり、無かったことにする歴史修正主義も徹底しており、正に地球上から消し去る事を目的に進められている。過去を消し、未来に向かっては女性に対する強制的な避妊措置などは、国連が定義するジェノサイドの要件そのものだ。
確かにナチスドイツやかつて侵略を行った日本でもそうした行為は行われてきたが、それら過ちを繰り返さぬ様に国連があるのでは無かっただろうか。過去を反省し繰り返さぬ様に各国が連携して防ぐ、これができないなら確かに国連の存在意義は影を潜める。そう考えると、中国の経済に依存し、同国をここまで発言力の強い国にしてきたのは世界各国であるから、ある意味自業自得だ。
だがもし今新疆ウイグル自治区で起こっているこれらが真実なのであれば、やはり世界は結束してアクションを起こすべきだ。人は誰しも安全に平和に暮らす権利を持っている。見過ごしてはいけない。 -
Posted by ブクログ
2020年夏、中国政府は内モンゴル自治区の教育からモンゴル語を排除し、中国語を母語として押しつけることを決定した。香港やウイグルでの弾圧が注目を集めるなか、内モンゴルでの民族政策の実態とは? 主に元朝以降のモンゴルと中央アジアの歴史、内モンゴルで起こった民族紛争などから読み解く。
内モンゴル出身の著者は、一貫して中国(漢人)がモンゴル人を抑圧してきたという立場のため冷静に読む必要がある。(植民地だったモンゴルの宗主国として、日本は積極的にこの問題に取り組むべきだとする主張には疑問を覚える。)
しかし、なじみの薄いモンゴルや中央アジアの歴史や内モンゴルでの民族政策を知るにことができるのは有意義。チベットやウイグルと同じように、内モンゴルでも漢人の入植・開発が進み、言語や文化が抑圧されているのは記憶しておく必要がある。
自国優位の中華思想は、遊牧民との戦いに負け続けてきたコンプレックスの裏返しだとするのは興味深い。