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一九三〇年代に満洲の地で、日本陸軍が関与し、モンゴル人へ軍事教育を施す目的で作られた興安軍官学校。日本の野心と中国からの独立を目論むモンゴルの戦略が交錯する中から生まれた場所だ。本書は軍事力により民族自決をめざすモンゴル人ジョンジョールジャブや徳王らの活動、軍官学校生らが直面したノモンハン戦争から敗戦にいたる満蒙の動向などを描く。帝国日本に支援され、モンゴル草原を疾駆した人びとの物語。
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Posted by ブクログ
ノモンハン事件のことを知りたくて関係書を探していた中で読んだ本。 民族自決、独立国家の形成を目指した、モンゴルを取り巻く状況、日本、中国、ソ連、といった大国間で翻弄された歴史。
アメリカとの太平洋戦争が始まる前、日本は大陸を目指し中国と激しく対立していた。明治維新以降、軍備を拡大させてきた日本は柳条湖事件をきっかけに満州事変へと発展させ、最終的に中国東北部を軍事支配した。これにより清朝の廃帝愛新覚羅溥儀を執政に迎え、1934年(昭和9年/康徳元年)には溥儀を皇帝とした満洲国...続きを読むを日本の傀儡国家として成立させている。大陸に出ると言う事は共産圏のソ連とも陸続きの国境を接する事になる。更には南には共産党と国民党が手を結んだ中国とに囲まれ、極度の緊張状態が続く。その様な時代背景の中で、それら3つの勢力に囲まれたモンゴルは、かつてチンギスハンが世界最大の帝国を築いた過去からは考えられない程、弱小国家として各国のパワーバランスの中に揺れ動いていた。その様なモンゴル人の民族自決の意識を利用しようと、日本はモンゴル人を軍事教育するための機関として、興安軍官学校を設立する。本書はそこで学び、太平洋戦争における日本敗戦後も、モンゴルの独立に向けて戦い続けた志士たちの姿を捉えた内容となっている。 主な中心人物としてジョンジョールジャブを取り上げるが、彼はモンゴル民族の独立のため、満蒙独立運動にて戦死したバボージャブの次男であり、兄は東洋のマタハリ川島芳子と婚姻関係を結んだカンジュールジャブである(その後離婚)。彼らの周囲では川島浪速をはじめとした日本の国粋主義者や軍人たちが五族共和を掲げながら、アジアに理想国家を作ろうと暗躍する。モンゴル人の純粋な民族自決の志を利用しようとした日本に、ジョンジョールジャブをはじめとする、興安軍官学校出身のモンゴルの勇士達の人生は大きく振り回されていく。その様な状況に於いても、祖国の発展と独立の為に生きるモンゴル青年達の強さを本書では垣間見ることが出来る。 最終的にはジョンジョールジャブは日本敗戦と同時に、シニヘイ事件により日本に反旗を翻し、攻撃•殺害した事から、日本側から見た歴史では良い印象の人物として映らない。だが元々彼らを利用しようとしたのは日本であり、その後北からはソ連、南からは中国とに挟まれ、更に混乱した状況を生き延びねばならなかった。既にソ連側についたモンゴル人民共和国と、モンゴル自体が二分された状況にあるなか、彼は中国国民党と手を組むなど、反共派と共産圏(ソ連及び中国共産党)との戦いを開始する。文化大革命後まで何とか生き延びたものの、最後は自死するなど、人生の全てをモンゴルに捧げ、日本、ソ連、中国に振り回されながらも強く生き延びた人生は波乱に富んだものであった。弱小民族、国家は常に強者に蹂躙されてきた歴史が示す様に、未だモンゴルは中国の内モンゴル自治区、ロシア連邦のブリヤート共和国、そしてモンゴル国と、実質的に民族分断された状態と言える。だが、かつてユーラシア大陸からヨーロッパまでをも支配せんとしたチンギスハンの血を受け継ぐ彼らの強さは、近年日本の相撲界を牽引するまでに至った横綱達の姿に見ることが出来る。鋭い眼差し、勝利まで諦めない心など彼らの強さを今なお感じることができる。 あまり馴染みのないモンゴルという国であるが、かつての日本が敗戦後に占領された際には、アメリカで日本語を学んだ青年達が日本で活躍し、復興を手助けした。興安軍官学校で日本語を学んだモンゴル人達も例外ではない。敗戦時にソ連からの猛攻に苦しむ日本人に救いの手を差し伸べ、何人もの日本人が無事に日本へ帰国できた。歴史に翻弄されながらも強く生き、日本と関わってきた多くの志士達の活躍を知ることのできる一冊である。
ノモンハン事件を日本の目でしか見なかった。さらにモンゴルがソ連と共同して戦ったぐらいしか知らなかった。 中国によるモンゴル人へのジェノサイトとモンゴルへの侵略が行われていたことは初めて知った。
日中戦争前後におけるモンゴル民族を取り巻く状況。私も含めて知らない日本人も多いのではないだろうか。 著者もモンゴル出身者であってモンゴルの民族自決に対する強い思いが随所に感じられる。満州国に組み込まれたモンゴル人、戦争後の運命等列強に左右されるモンゴル民族の悲哀を感じる。 今でこそ相撲等でなじみ...続きを読むがあるモンゴルだが、本書記載の民族としての背景を知ることが出来る貴重な一冊と思う。
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日本陸軍とモンゴル 興安軍官学校の知られざる戦い
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楊海英
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