第二弾を希望します。
この本を読めば天幕のジャードゥーガルをより楽しめます。天幕のジャードゥーガルファンにもおすすめできるノンフィクションです。第十章高麗の虹は、廃帝綺譚(宇月原晴明著)を読めばさらに面白く感じます。廃帝綺譚は4つの独立した短編が収録されている小説ですが、元の第十一代皇帝である順帝を主役にした北帰茫茫という短編もあるからです。この書籍の売り上げが好調ならばぜひとも第二弾を出版して欲しいです。
その時は、モンゴル帝国草原のダイナミズムと女たちでは取り上げなかったチンギス・ハーンの5人目の皇后岐国公主(金の第七代皇帝衛紹王の娘)・ひいては彼女の実家の金朝の皇帝たち、蒙金戦争で活躍したモンゴル・金朝双方の名将たちを取り上げてください。岐国公主に関する記録・伝説は少ないでしょうが、岐国公主の実家はチンギス・ハーンの人生に大きな影響を及ぼしました。また岐国公主の一族は蒙金戦争の名将完顔陳和尚を輩出しています。
日本では私の知る限り蒙金戦争について詳しく語られた歴史ノンフィクションはドーソンのモンゴル帝国史という19世紀に出版された古典しかありません。しかもこの古典は難く私には理解できない記述が多数あり、今では否定された学説なども採用されているようです。蒙金戦争は当時世界最強の軍団だったモンゴル軽騎兵が動員されました。それに対して金朝は忠孝軍という重装騎兵に最新の火器を持たせた多民族からなる精鋭部隊を編成して抵抗したそうです。
日本のモンゴル帝国関連書籍の空白部分を産める歴史ノンフィクションを講談社現代新書から出版して欲しいです。
金朝はモンゴル系の契丹族が建国した遼を滅ぼして成立した王朝ですが、遼の皇族耶律大石は西遼を建国。西遼は金を滅ぼして東帰するのを国是としており、モンゴル高原は金と西遼の代理戦争の地と化し、チンギス・ハーンは金朝派の武将として西遼派の諸部族と戦っていたことが近年証明されつつあるそうです。
岐国公主の実家や蒙金戦争について詳しく説明したノンフィクションの出版はチンギス・ハーンの生涯と勃興期のモンゴル帝国の解像度を上げる事にもなりますし、天幕のジャードゥーガル以外のモンゴル歴史漫画・小説の参考文献にもなり、新たなモンゴル歴史漫画や小説の誕生を促進させるでしょう。蒙金戦争で活躍したムカリや耶律禿花についても詳しく知りたいです。