李龍徳のレビュー一覧

  • 愛すること、理解すること、愛されること

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    「悲劇のヒロインぶったり、そういうのって、ほんと恥ずかしいことなんだから」
    「ヒロインって俺は男や」
    「女々しい、って男にしか使わない形容詞なのよ」

    「口を滑らせ続け、お互いの皮をむき、その中身が空洞であることを定期的に確認する。んでまたお互いが時間をかけて、空しい皮をまとう。暴いては装い、装っては暴く。その繰り返しが俺たち夫婦のあり方ちゃうんか?」

    「こんだけの苦労をお互いして、惨めな思いも共有して、それが愛情に基づく行為じゃなかったんやとしたら、これはいったいなんやねんな」

    「だからこそ、そこも似たもの夫婦ってやつかなあ。人格も才能も、生殖能力まで空っぽ。そこんとこに、俺だけのせいや

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    2019年01月08日
  • 愛すること、理解すること、愛されること

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    ネタバレ

    李龍徳氏の作品は、敢えて人間関係を瓦解させるような言葉が飛び交う。著者の作品は、これまで単行本として三冊発行されているが、意識的に相手を打ちのめす、呪詛ともいえる暴言が必ず吐かれる。

    著者の作品の肝は、その会話劇にあることが多いのだが、当たり障りもない自然で穏当な場面から、あることがきっかけに、徐々に不穏な空気が漂ってくる。人は情報をさらけ出しながら生きている生き物なので、それが外見にすでに立ち現れたり、自分の口からつい漏らしてしまったりする。会話が白熱していくと、次第に男女らは険悪なムードになっていく。もうそこから、嫌な予感というものがひしひしと感じさせられて、まさにその瞬間、相手を傷つけ

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    2018年12月28日
  • 愛すること、理解すること、愛されること

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    ネタバレ

    意表を突かれました。

    タイトルに惹かれ読みましたが、思いもよらない
    物語・・・心中小説と書かれていますが、
    ストーリーというより、人物を追うような小説。

    登場人物がリアルで、本当に存在しているのだと
    思ってしまうし、実際そんな人間を、人間の様を
    描いている小説なのだと思う。

    いいとか、悪いとかでもなく
    面白いとか共感でもなく
    なんとも言えないバランスを保ちながら
    進む登場人物の人生。

    小説をもっと読みたくさせる作家さんだと思いました。

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    2018年11月11日
  • 報われない人間は永遠に報われない

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    結構サラッと読んでしまったけどとっても良かった
    前回はデビュー作読んだけど
    これもとっても好きな感じ

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    2025年09月27日
  • 死にたくなったら電話して

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    "そこに人間の悪意を陳列したいんですよ"

    初美がすごく魅力的で、でも危うくて、案の定その魅力と危うさにズブズブになっていく。尖った知性にも色気がある。ブラックホールのような女だと思った。

    でも初美が何か間違っているのかと言われれば、お節介以外に言えることがない。
    初美は悪女なのかというとそれも違うと思う、まっすぐ、私が思いもよらない方向を向いていて、どんなに声を尽くしても振り向かない。そんな人が自分にだけ好意を向けてくれていたら。破滅に向かうのも無理はないなと思った。


    私はこういう純文学が好きなんだ!と思って読んでいた、けど結末に向かうにつれじわじわと全ての嫌な予感

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    2025年09月11日
  • 死にたくなったら電話して

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    ネタバレ

    「死にたくなったら電話して」
    その他にないタイトルに惹かれて読み始めた。
    とても魅力的でかつ人並みとは言えない価値観をもつ初美とそれに感化されていく主人公・徳山の物語。
    最初から明るい流れではなかったが、後半になるにつれどんどんと2人で暗闇へと突き進んでいく世界観に読む手が止まらなかった。
    私も間違いなく徳山の立場だったら同じ破滅的な道を歩む自信がある。

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    2025年08月17日
  • 死にたくなったら電話して

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    アルバイト先の人に勧められて読んだ一冊。
    あらすじも読まず、タイトルだけを見て「ハッピーエンド系の小説かな」と軽い気持ちで読み始めたけれど、まさかの鬱系小説で衝撃を受けた。
    主人公・徳山が抱える悩みは、誰もが少なからず持っているような普遍的なものやと思う。
    その悩みに寄り添い、包み込むように接する初美の包容力は、時に優しさを超えて相手を縛るものになる。
    徳山はその優しさから抜け出せず、いつしか破滅の道を進んでいってる。
    初美は「現代版悪女」と言われることもあるけど、まさにその通りやと感じた。
    これまで映画や小説で描かれてきた典型的な悪女とは一線を画してて、その存在感は本当に衝撃的やった。
    とに

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    2025年05月10日
  • 死にたくなったら電話して

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    何も考えずただ読んだだけだと、三浪中の主人公が、ナンバーワンキャバ嬢と出会い、徐々に彼女の思考に洗脳されていき破滅していく物語で、どのへんが文藝賞受賞作なのかと思ってしまいましたが。

    最後の解説を読んで納得。

    自分は上澄みの上澄みしか読み取れていなかったんだなと反省しました。

    『七十八億人の人類を完全に滅ぼす方法はあるのか→自死すること』は私にはない発想だったので、新しい発見でした。

    解説があってよかったー

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    2024年11月29日
  • 死にたくなったら電話して

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    ネタバレ


    初美とおなじく、キャバ嬢をしていました。夜の世界に疲れて一旦あがっている今、以前気になって買っていたこの本を本棚から発見し、なんとなく読んでみました。

    まず、夜の世界は基本的に社会の闇で溢れています。というか世界の闇が全て集まる場所が夜の世界といっても本気で過言ではありません。夜の世界で学べることと失うことを天秤にかけると圧倒的に失うことの重量が重いです。(キャバクラは特に)

    そんな中で生きてきた19歳の初美が、社会には闇しかない、生きていく価値はないと感じるのは自然なことのようにも思いました。

    だってまだ19歳なのだから。

    大学も中退して、社会をまともに見ぬままに夜の世界に飛び込ん

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    2024年11月10日
  • 死にたくなったら電話して

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    ネタバレ

    評価しずらい。ただ、引き込まれる作品だった。

    無条件に他人を信じ、他人の言うことを疑わずに受け止め、行動する。
    相手の言動を想像して、それを自分の考えとして発する。相手に依存する。
    が、相手は掴みどころがなく(そこが魅力的である)、何を考えているのかわからない。何を求めているのか、何をしたいのかわからない。
    そんな相手に人生の希望を求めてしまった。
    あとはもう静かに沈んでゆくだけ、

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    2024年08月10日
  • 死にたくなったら電話して

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    4月1冊目
    春爛漫暖かくなって気持ちも前向きに
    なれそうな季節になってきたというのに
    まあでもこれくらい浮かれた春うららな日に読んだ方がいいのかも。

    究極!!
    なんで人は陰の方にひっぱられやすいんだろう。
    陰の方がしんどいのに何故か居心地がいいのはなんでやろう。
    少しでも病んでる時にこの本を読むと初美に引っ張られてしまうので注意が必要。
    けど主人公は幸せやったんじゃないかなあ。
    とも思ったりする。

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    2024年04月04日
  • 死にたくなったら電話して

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    ネタバレ

    こんなタイトルを選んでいる時分で文句言えないんだが2冊連続でなかなかネガティブに振り切った作品読んでしまって心が疲弊

    とはいえ、最初こそ独特の言い回しに読みづらさを感じるも読めば読むほど引き込まれて、この文体こそがミミの持つものなんじゃないかと思わされた

    藤倉にお金のありかを聞くことはできない、と徳山が独りごちてたのを最初は「意外とそういう義理堅いところもあるもんなんだな」と思っていたが、きっと確認してしまったらミミがそうであることが自ずとわかるわけで、それが怖かっただけなんだろうな
    予備校の先輩にキレたのも、(先輩自身がとんでもないというのもあるけど)自分の拠り所としている存在を汚そうと

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    2024年03月16日
  • 死にたくなったら電話して

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    負のエネルギーの強さに圧倒されました。
    死のほうへひっぱる強さ、孤独へ押しやる強さ、そしてそれって楽なんですきっと。
    初美が何を考えているのかいまいちわからないんですけど、わたしは実験してるのかなって、徳山って動物園の動物とかとおなじなのかなって思いました。徳山からしたら大好きな初美と死に向かっていって、思考力も弱まっていってて、それって羨ましいなって思っちゃいました。(たぶんこの本の影響受けてるわたし)
    生きていてもクソなことばっかりで歴史ってグロくて人間って気持ち悪いってことを改めて文字で読めて良かったです。
    わたしはこの本好きでした、自殺願望はないけど一緒に死ねる人がいるっていいなと思い

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    2024年01月28日
  • 死にたくなったら電話して

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    ネタバレ

    想像していた話と全然違った。
    形岡からのメールと、初美の返信が印象的だった。明るい気持ちになりかけたところで、どん底に突き落とすような落差があった。
    初美の言うことは正論で、厳しすぎるくらいの現実を突きつけてくる。それが流暢に関西弁でスラスラと出てくるから、つい快さをおぼえてしまう。断定しているのも良い。でもその主張の行く先は死しかないのだ。
    たとえ醜い世界の中でも生きることを選択するかどうか。死ぬことは簡単なことと言い切る初美の説明に、思わず涙が出てきた。もしこんな安寧が死の先にあるとしたら、生きるのがつらい人は行ってしまうだろうと思った。
    手を引く力の強い初美と、その手を取っしまう徳山。初

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    2024年01月26日
  • 死にたくなったら電話して

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    すっきりしない結末ではあったが、徳山がどっぷり初美に影響され、入り込んでいく描写が見事だった。
    そして、意味不明なことをしている/言っているようにも思えながら、全く共感できないわけではない。人間ってそんなもんだよなと思わされるところが秀逸だった。

    この2人はどんな結末を迎えるのか、いつかふとSNSで見つけたときに、「そうなんだ」程度に読み流すのだろうか。

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    2023年12月30日
  • 石を黙らせて

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    高校生の時に集団レイプの加害者になった男が、突然に罪の意識に目覚める話。
    結婚する直前に目覚めて、自分の罪を告白することで婚約者や家族が傷つく様を見ると「そんな今更告白せんでも…」とか思う(現実のニュースを見て、とかだったらそんな感想出てこないと思うけど、小説だと思ってしまう)
    具体的な行いの内容は書かれているものの、あまり生々しくない。読みやすくはあるが、読んでいて、いまいち語り手である主人公が「レイプした人」という実感を持てない。
    シリアス過ぎない場面も結構あり、元同僚の女や、主犯だった政治家の男、その男が紹介したお坊さん…といった面々とのやりとりはなかなか面白い。
    詰めの甘いところはある

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    2022年08月06日
  • 報われない人間は永遠に報われない

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    タイトルがめちゃくちゃ良い。本当にとことん報われない話だった。そういう話が好きだから刺さった。
    現実ってこうだよねって思った。

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    2022年07月22日
  • 石を黙らせて

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    加害から10年以上を経て、全てを捨てて、被害者への謝罪をしようとする性犯罪加害者の男が主人公の小説。
    特に性犯罪については、どうしても自己満足のきらいは拭えないので、真の謝罪というのは本当に困難であると感じた。最初から性犯罪なんて絶対やったら駄目ということを再認識した。
    性犯罪や謝罪の在り方について見つめなおすことができる有意義な小説だと思ったが、突然謝罪に目覚める主人公をはじめ、性犯罪を主導した溝口(現在は県議会議員)など、総じて登場人物のキャラクターにはリアリティがあまり感じられなかった。

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    2022年06月09日
  • あなたが私を竹槍で突き殺す前に

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    ネタバレ

    最後の10P分が余分かなと思ったが、個人の思惑を超えて社会は流動的に動くということを言いたかったのかな。差別問題はされる側とする側が表裏一体で、ほんの少しの揺らぎで攻守が変わってしまうのか。

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    2022年03月31日
  • 石を黙らせて

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    結局「完璧に生きていく」なんか当然出来ないし、過去の負債に向き合うとしてもそこからエゴは抜けないんだなって感じました。

    言える過去言えない過去それぞれあるだろうけど、結局過去も積み重ねて生きていくしかないと諦めざるを得ないとすら思います。

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    2022年02月17日