あらすじ
この凶暴な世界に私たち二人きりね――。自意識ばかり肥大した男と、自己卑下に取り憑かれた女の、世界で一番いびつで無残な愛。男を破滅に導く「運命の女」を描く、著者待望の第二作!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
すごくいい!一言で言うと、こりゃガチガチにこじらせてんなー、だが、言葉のチョイスが繊細でクールにまとまってる。オトナになればいい人間になれるわけでもないのよな、めんどくさいね(笑)でもめっちゃ好きだ!他の作品も読む!
Posted by ブクログ
圧倒的な高い評価を得て文藝賞を受賞した心中小説「死にたくなったら電話して」を読んで、打ちのめされました。
と同時に、「デビュー作でこんな傑作を書き上げて大丈夫なのか?」と余計な心配もしました。
それはどうやら杞憂だったようです。
本作は、自尊心の強い男「僕」と、自己卑下の強い女「映子」の恋愛物語(何という組み合わせ!)。
もちろん、甘ったるい恋愛なんかでは断じてありません。
いびつで歪み、醜悪ですらあります。
しかし、筆力があるからでしょう、これもまた恋愛のひとつの形なのだと、読者に納得させる力強さを持っています。
心のひだをなぞるだけでなく、時に捲り返したり、あろうことか引きちぎったりしてみせます。
その手管がまた見事というか入念というか執拗というか、まったくもって新人離れしています。
自意識過剰な男を描かせたら、今の文壇で李龍徳の右に出る者はいないのではないでしょうか。
随分と称賛しているように思われるかもしれませんが、作品自体ははっきり言って救いのない話です。
「最下層」の人間の呻きが通奏低音のように終始、作中に響いており、読む人によっては気分を悪くするかもしれません。
ただ、安易に救済を図ろうとする小説が多い中で、李龍徳の小説は異質で、それ故に価値があります。
李龍徳はあるインタビューで、「世間や人生に、生きにくさを感じてきた」としたうえで、こう語っていました。
「自分の経験に照らせば、死にたいようなつらい夜に、希望のある明るい話なんか読みたくない。暗い気持ちに寄り添うほうが届くはず」
共感します。
又吉直樹も同じようなことを「夜を乗り越える」(小学館よしもと新書)で述べていました。
救いのなさが、この小説の救いになっている、そんな稀有な小説ではないでしょうか。
個人的な白眉は、126ページ目です。
「映子」がある行為に及んでいるのを「僕」が発見した時の「映子」の言葉。
「お母さんが今日死んだ」
私は、この言葉に凍りつきました。
それから、「人間は何と愚かしく愛おしいのだろう」としみじみ思いました。
李龍徳は、固有の地位を占める作家になると思います。
ちょっと目が離せないなぁ。
Posted by ブクログ
タイトルが頭から離れなくなり読みました。どうしようもない男と女の、夢も希望もない恋愛。それなのになぜか読後しっかり残るものがある。きれいでもなくハッピーでもない展開だからこそ良かった。
Posted by ブクログ
デビュー作『死にたくなったら電話して』で衝撃受けて、ずっと追い続けたいと決めたのに、追いきれなくてごめんなさい。
報われるとは何か。そう来たかと唸らせられる。
最新作も読まないと!
Posted by ブクログ
『何も感じないのが心の強さだとすれば、かつての僕のほうがずっと強い人間だったと言える。』
「報われない人間は永遠に報われないのよ。それだけのこと」
「私はこの人生を、あんまりにも無駄遣いしてきた。それでそれはこれからも。でも、私のせいじゃない、私のこの天分のせい、運命のせい、でも、それにしてもひどい。時間の浪費、人生の浪費、きっと私はこの罪名で地獄に落ちる」
「それこそ天分。ギフト。で、不動のもの。努力次第で上がったり、落ち度があって下がったりするものじゃない。絶対に。ー あんな、いかにも現代を象徴する困難に、べったり巻き込まれてる時代の寵児たちが、どうして私より祝福されてないはずある?」
「こんなことばっかり言ってたら近藤君に嫌われるだけ、というのもちゃんとわかってるんだけど、理性は全然役に立ってくれない。私自身がいちばん私を不幸にする」
「洋子さんが、本当に映子さんが言うほど悪い母親だったかどうか、そんなことを結局は、知りません。はっきり言えば、どうだっていい。だって僕はもう映子さんの味方をしようって決めたんですから。勝手な悪役像に当て嵌められて洋子さんも不本意でしょう。でも洋子さんのその言い分は誰か別の、洋子さんの味方になってくれる人に話してください。僕は映子さんの味方です。妄想だろうとなんだろうと、その傷の癒えてくれることが第一です」
「でも、私はお母さんを全然愛してない。これはすごい発見よ。私は、母親であるあなたを、ちっとも愛してなかった! これってすごいことじゃない? 憎しみの裏側には必ず『愛されたかった』願望があるもんだと私も誤解してたけど、そんなものもなかった。それでまた、この憎しみも、最近は消えかかってるからね。いやほんと。復讐心も何も、もう、弱火でちろちろ燻ってるだけだから」
「そう、私はお母さんのことをずっと理解不能な怪物だと思ってた。でもね、いや、怪物だったのはむしろ私のほうだったのよ。ねえ、わかる?」
「私は、お母さんに対してなんの感情もない。ざまあみろ、っていう気持ちが今、そんなに強くあるわけじゃないし、死んでしまえババア、ともそんな明確には思わない。もうあなたが死んだって、経済的なことは別として精神的には、たいした開放感を得られることもないと思う。 ー ねえ、すごくない? それなりに苦労はあったろうに、その長年の子育ての結末がこれって」
『過去の傷の舐め合いをいつまでもしているわけにもいかず、どちらかが先に「帰りたい」と言うか、それを言わずにより長く我慢したほうに「何? つまらないの?」と相手を責める権利が認められる、そんな無益なゲームに消耗するばかりだった。』
『自分を負担に思わないでほしいとは、付き合いはじめのころから映子が強迫神経症的に繰り返し言っていたことだが、同じ愛情表現でも二年経ってくると脅しのように感じられるから、この場合、浅ましいのは僕の耳のほうだろうか。』
「ああ、ほんとに、私が考えもなく男を包丁で刺せる女だったらどれだけ楽か。でもね、私って結局、崩壊しきらない女なの。それが残念。理性的なままで現実のほうだけが崩れるのをただ見てるしかない」
「大丈夫。私は私のギフトを、きっちり正確に把握して、受け入れて抱きしめてるから。この取り分で、私はやってゆくのよ。それしかない。」
「私は、同情の言葉こそ欲しかった。同情だけが私にふさわしい宝石なのよ。同情の言葉をかけられるとね、なんかね、鼻の奥がむずむずして泣けてきちゃうじゃない? あれが好き。子供んときみたいで、いちいち難しいこと考えなくてよくて、あの感覚が好き」
『そしてそっと言葉でなく伝えるのだ。 ー 今の僕は必ずあなたより孤独で惨めで不幸です。安心してください。あなたより下位に、必ず僕はいます。』
Posted by ブクログ
卑屈で惨めな諸見映子と、プライドが高く傲慢で根暗な近藤君。
徹底的に報われない側の人間である二人の、疑似恋愛から始まる永遠に報われない物語。
とにかく滑稽で悲愴感あふれる一冊です。だがそこが良い!
ネガティヴ発言垂れ流し、まず何もかも否定の言葉から入ってしまう映子。
世界をくだらないと断罪して見下し、現実から目を逸らし続ける近藤君。
カースト最下層カップルが繰り広げる低次元の言い合いや諍いが秀逸だった。
とにかく悲惨で暗すぎる上に、私も報われない人間だから他人事じゃないのに、どこかおかしくて愉快な気持ちで読み切ってしまいました。
ラストの映子と近藤君のベッドの中でのシーンは切なくて愛おしくて、ささやかな救いを感じたのに、それをぶち壊して台無しに追い討ちをかける後日談がなお素晴らしい。
李龍徳さん、本作でまだ2冊目の新人作家なんですね。
後回しになってしまったけどデビュー作にも期待が高まる。 はやく読みたい。
今後がとても気になる作家さんです。
Posted by ブクログ
映子の狂気じみた側面は、自分の奥底にあるものを揺さぶってきます。見たくないけど、確実に知ってる。
読むのは非常にしんどいです、、、笑。
強く生きるってどういうことなんだろうと、個人的には考えさせられました。