李龍徳のレビュー一覧
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“実態のない女”と”自分を見失った男”。
きっと、徳山は初美に惹かれていったのではない、嵌まって、沼っていったのだ。初美の発する鋭利な言葉たち一つ一つが彼女の夢であり、拠り所。徳山からすればそれは薬。
結局みんな洗脳してされて。してる側もそれにかかって。そんな訳ないと思いたいがそうも思えず、。
人生に対するヘイト、社会に対するヘイト。それらを抹消するには社会ごと変えるしかない。が、そんなことは不可能。だからこその自死。打開策としての自死。漠然と自殺はダメだと叫ぶよりよっぽど説得力がある。
感想がこんなに言語化出来ない作品は久しぶりだが、この後味の悪さがこの作品の面白さだろう。
再読だが、しばら -
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ネタバレ悪意に対して悪意で返すのは、徳山は後悔していたけど少し爽快だった。逆に自分に向けられた善意に対して悪意で返しているところは読んでて心が痛かった。例えその善意が気持ちよくなるためだけの偽善だと思えたとしても、本人にはその意識はなくて本当に純粋な善意で心配してくれてる(と思う多分)のに、それに対する返事は本当に読むのが辛かった。救いがないんじゃなくて救われようとしてない。初美に会う前の徳山なら建前でも「ありがとう」と返していたと思う。完全に染まってしまっている。自分に初美を投影してシニカルなことしか言わなくなった頃から、入学金のこととか関係なく破滅しか待っていなかったと思う。初美の価値観は魅力的な
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ネタバレ2020年に単行本として出版された小説。今、数週間前に書かれたもの?と錯覚するような冒頭。
愚劣極まりない結果で終わった2024年東京都知事選、クルド人ターゲットの差別攻撃にネトウヨのみならず野党も関与して酷い有様の日本、関東、東京。都知事は変わらず、関東大震災における朝鮮人虐殺にかかる式典へのメッセージをあえて送らない知事が再選され多くの抗議や疑問の声があがるもより多くの無関心や同意にかき消される、すでにディストピアなこの社会。
ユートピアを求めるほどの天真爛漫さはない、もちろんそんなつもりはないが、あまりにささやかすぎる韓国への帰国事業。日本が在日コリアンを追い払うために積極的に支援した -
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ネタバレ評価がひどく難しかったが、他にはない感覚がある、という点で、この本の評価を5とした。
突きつけられるのは、誰かの不幸の上に成り立つ幸せがあるという事実。人より優位になることで感じる喜び。
優位に立たなければ、支配される側にまわってしまう。支配する側か、される側か、、、。
作中、欲望がすべて枯れるのが理想、と心中願望のある女がいう。
仏教の考え方に近いのかも知れない。
煩悩を捨てることによって悟りを開くことができるという考え。
けれども、欲望が無くなったら、無、しか残らない。無、しか残らないから、死、へと向かう。
仏教では、無の先に、無我の境地、があるのだろうけど、それこそ、凡人にはた -
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ネタバレ竹槍を読みたいと思い、先にデビュー作を読むべきか、と思い手に取ってみた。
初美、ミミというキャバクラの女の子。早速マウント取る男、、よくわからないけど人も育ち(金持ちとか良家という意味ではなく)も良さそうな徳山。 1人だけキャバ嬢の中で他の子と違うセンス良くて賢くて、、、よくあるキャラクターか、と、期待せず読んでいくも、なんか面白い方向に進んでいく。
ほかのバイト先の仲間、年配の女性、社員含めた、あるあるな、強がる敗者みたいなしようもない人らの中で、徳山くんは、よい意味の育ちの良さがあり、初美と徳山くんはルッキズムの恩恵も受けている。二人で電車乗ってるところとか、なかなか、独特の嫌な感じを爽や -
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ネタバレ初美は普通の家庭に生まれたことがコンプレックスと言った。
貧乏と裕福、片親など、将来バネになるような、目的意識を強めてくれるような、要素があまり無かった。
だから、初美の心は基本的に空っぽで、そこに世界中の歴史を元に、人間の醜さ、卑しさ、愚かな姿が入っていった。
何百年経っても人間の本質は変わらないということを理解した初美は、全てを諦め、絶望しているんだと思う。
さらには、社会に出ても、キャバクラという、酒、男女、金という人間の欲が溢れ出る環境、醜さ、愚かさもてんこ盛りの場所に身を置いてしまった。そのために、知識だけでなく、経験からも人間に絶望したんだと思う。
そんな初美からすると、徳山にも諦 -
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ー 他の国がもっとひどいからって、だからって日本の現状を見逃していいわけない。日本の現状だって、飼い馴らされて気づいてないかもしれないけど、いや、かなりのディストピアだから。何も明確なジェノサイドや強制収容所の再来だけがディストピアじゃない。ディストピアは今だ。要するに、やっぱり人類は歴史から学んだんだな。この、じわじわとした、言い訳と詭弁ばっかりの、誰も責任を取らなくていいような、 毒ガスではなくただ憎悪を募らせて空気を悪くし、マイノリティを窒息させるこの締め出し方こそ、奴らの学んだ新しいクレンジング方法だ。俺たちは騙されない。そこの知恵比べに負けはしないさ。 ー
これはすごい作品。エネル