あらすじ
そこに人間の悪意をすべて陳列したいんです――ナンバーワンキャバ嬢・初美の膨大な知識と強烈なペシミズムに魅かれた浪人生の徳山は、やがて外部との関係を絶ってゆく。圧倒的デビュー作!
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浪人生の徳山がキャバクラ嬢の初美に出会い恋人になり洗脳されていく。
「死にましょうよ、心中しましょう。それがわたし達の取れる唯一の脱出策です。ね?心中しましょうよ。」
ニヒリズムについて考えさせられる。
また、魔女狩りについての会話があるが、このシーンがインパクトありすぎ。
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「了解です、問題ないです。愛してます」
「いやいやそういうことです、そういうこと。でもまあ、生きるってそういうことなんでしょうね、悪い意味で。・・・・生きるって、長生きするって、そうして塵が積もってゆくこと。そんで私は塵を金の粉と無理やり思い込むのは嫌やし、塵は塵やって言っときたい。人生経験なんて塵でしかない」
ドッヒャーですよ、なんですか?これはぁ!?すごいの読んだな。切れ切れ。切れっ切れっ。人生経験、塵ですよ。
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ずっと面白かった。
「ネガティブな言説に依存する者たちに寄り添い、その言説の欲望に沿って自滅まで導くことで、ヘイト的な言葉が成り立つ土壌を失わせるという、捨て身のアイロニーを特徴とする。」
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“実態のない女”と”自分を見失った男”。
きっと、徳山は初美に惹かれていったのではない、嵌まって、沼っていったのだ。初美の発する鋭利な言葉たち一つ一つが彼女の夢であり、拠り所。徳山からすればそれは薬。
結局みんな洗脳してされて。してる側もそれにかかって。そんな訳ないと思いたいがそうも思えず、。
人生に対するヘイト、社会に対するヘイト。それらを抹消するには社会ごと変えるしかない。が、そんなことは不可能。だからこその自死。打開策としての自死。漠然と自殺はダメだと叫ぶよりよっぽど説得力がある。
感想がこんなに言語化出来ない作品は久しぶりだが、この後味の悪さがこの作品の面白さだろう。
再読だが、しばらくは読まないでも記憶に残っているだろうインパクトはあった。
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「能ある鷹は爪を隠す」ナンバーワンキャバ嬢の
初美は外見だけでなく、内面も圧倒的な読書で
磨いている。当然会話力も全方位的だ。
初美は群れることが嫌いだ。孤高の哲学者である。
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悪意に対して悪意で返すのは、徳山は後悔していたけど少し爽快だった。逆に自分に向けられた善意に対して悪意で返しているところは読んでて心が痛かった。例えその善意が気持ちよくなるためだけの偽善だと思えたとしても、本人にはその意識はなくて本当に純粋な善意で心配してくれてる(と思う多分)のに、それに対する返事は本当に読むのが辛かった。救いがないんじゃなくて救われようとしてない。初美に会う前の徳山なら建前でも「ありがとう」と返していたと思う。完全に染まってしまっている。自分に初美を投影してシニカルなことしか言わなくなった頃から、入学金のこととか関係なく破滅しか待っていなかったと思う。初美の価値観は魅力的な部分もあるし、間違ってはいないと思うけど、どう転んでも終わってしまいそうな気がする、、、
ただ、後の人生に絶望しかない中で、眠るように苦しまずに死ねることは羨ましい。
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自分は徳山は初美に寄っていったのでは無く、嵌っていた型から出るまでの物語だと思った。
自分はこれが鬱々とした物語には感じられない。更には他人事とは思えず徳山には親近感や羨ましさすら覚えた。
凄く良い作品だった。10年以上も前の作品にこのタイミングで出会えて良かった。きっと昔の自分ではこんな感情にはなれなかったから。
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苦しい。初美はいい女で、おもしろい人だと途中までは思っていたのに…悪魔じゃん。何が正しいか分からなくなる。言葉の説得力すごくて「その考えは良くない」が合ってるか分からなくなる。何なん怖すぎ。
Posted by ブクログ
自分の中にある"カウンター悪意"の潜在性を思い知らされて怖かったし情けなかった。
でも自分と2人が明確に違うところもあってギリギリ入り込まずにいられたと思う。
ニヒリズムの骨頂みたいな感じ。
やっぱ自分ニヒリズム嫌いなのかも。
Posted by ブクログ
評価がひどく難しかったが、他にはない感覚がある、という点で、この本の評価を5とした。
突きつけられるのは、誰かの不幸の上に成り立つ幸せがあるという事実。人より優位になることで感じる喜び。
優位に立たなければ、支配される側にまわってしまう。支配する側か、される側か、、、。
作中、欲望がすべて枯れるのが理想、と心中願望のある女がいう。
仏教の考え方に近いのかも知れない。
煩悩を捨てることによって悟りを開くことができるという考え。
けれども、欲望が無くなったら、無、しか残らない。無、しか残らないから、死、へと向かう。
仏教では、無の先に、無我の境地、があるのだろうけど、それこそ、凡人にはたどり着けない場所な気がする。
いやはや、一般人は、突き詰めたらいけない世界だ、、、。
Posted by ブクログ
ここ最近読んだ中で1番刺さった作品。まずタイトルから滲み出す仄暗さに惹かれ、それを凌駕するストーリーに圧倒された。読むのにもの凄いエネルギーを使い、読後も少し放心状態になるくらいインパクトのある作品だった。終始暗いのだが、人間の残忍さやどうしようもないサガをあらゆる角度から描いててハッとさせられる。
ラストのなんとも言えない終わり方もこの作品らしくてよかった。
Posted by ブクログ
竹槍を読みたいと思い、先にデビュー作を読むべきか、と思い手に取ってみた。
初美、ミミというキャバクラの女の子。早速マウント取る男、、よくわからないけど人も育ち(金持ちとか良家という意味ではなく)も良さそうな徳山。 1人だけキャバ嬢の中で他の子と違うセンス良くて賢くて、、、よくあるキャラクターか、と、期待せず読んでいくも、なんか面白い方向に進んでいく。
ほかのバイト先の仲間、年配の女性、社員含めた、あるあるな、強がる敗者みたいなしようもない人らの中で、徳山くんは、よい意味の育ちの良さがあり、初美と徳山くんはルッキズムの恩恵も受けている。二人で電車乗ってるところとか、なかなか、独特の嫌な感じを爽やかに書いていて、とにかくセンスが新しいというかユニークというか。
日本社会では見えないように包んで包んでそとからわからんように他人をボコボコに傷つけることが横行しておりそれをなぞり認知しその気持ち悪さを確認するように歴史上、歴史的から現代現在いや今日今おこなわれている残虐、虐殺、非道をひもとき、過去の遺物としてではなく開陳しゆえに徳山くんは時代が近づくほど嫌な気分になる。やがて今、今の現状に気づき、、、小気味良く詐欺師やマウントバカ男や勘違い女をバスターしながら、理想の境地に向かっていく、滑らかな感じ。
262ページあたりが衝撃であった、なるほどと膝を打つ感じ。
心穏やかに、そして小気味よい、いいぞ!って心の中で拍手しながらラストに向かっていく、希望とか、やる気とか、世の中でマウントとるか自己弁護、現実逃避するためのくだらん感情を粉砕し原点にもどる、みたいな、よい表現わからないけどそんな感想。
Posted by ブクログ
主人公の性格が共感できるところが多かっただけにのめり込むように読んでた
自分の前に初美のような女性が現れたらと思うと恐ろしくもあるけど、悪くないなとも感じた
終盤の初美と片岡さんの文章の温度差に笑った
最後はハッピーエンド?幸せは人それぞれ違うからね
俺も嫌な奴に嫌ってガツンと言ってやりてえーー
自分が今まで触れてこなかったから考えもしなかったけど、この作品読んで関西弁素敵だなって思った
Posted by ブクログ
初美は普通の家庭に生まれたことがコンプレックスと言った。
貧乏と裕福、片親など、将来バネになるような、目的意識を強めてくれるような、要素があまり無かった。
だから、初美の心は基本的に空っぽで、そこに世界中の歴史を元に、人間の醜さ、卑しさ、愚かな姿が入っていった。
何百年経っても人間の本質は変わらないということを理解した初美は、全てを諦め、絶望しているんだと思う。
さらには、社会に出ても、キャバクラという、酒、男女、金という人間の欲が溢れ出る環境、醜さ、愚かさもてんこ盛りの場所に身を置いてしまった。そのために、知識だけでなく、経験からも人間に絶望したんだと思う。
そんな初美からすると、徳山にも諦めと絶望が滲み出ていたんだと思う。
マルチ商法の勧誘があった時、初美がなぜあれだけ好奇心旺盛に乗っかり、行きたがったのか、謎だった。
今にして思えば、マルチ商法がどんな内容で実態がどうであるかは、知識として知っていたと思う。しかし、気になったのは、マルチ商法自体ではなく、そんなことをしている醜く、愚かな人間たちの方だと思う。より自分を絶望させてくれる何かが欲しかったのかもしれない、そして、そんな人間たちが何をどう考えて生きているのかに単純な興味が湧いていたのではと思う。
最初はマルチ商法の人間たちも、自分たちを大きく見せることに必死で、何重にも綺麗事という名の装甲を付けた言葉を放っていた。しかし、初美の真っ直ぐすぎる脅迫にも近い追求によって、次第にその装甲は剥がれていき、最終的に剥き出しの本音を引き出した。その結果、予想通り、くだらない理由や目的が出てきた、そこには人間の欲だけが並んだ。
クルーザーを貸切って、有名人と酒を飲みながら、セックスをしたり、欲の塊のような理由に初美は内心満足だったと思う。さらなる、人間への絶望を与えてくれたのだから。
他にも、バイト先の女性の先輩に対しても、徳山のメールを介して、初美は似たようなことをした。こちらに関しては、一方的なぶん殴りだったとは思うが。
この先輩は欲が溢れていたというタイプでは無い。むしろ、人間というものに期待や希望を持ちすぎており、初美とは真逆と言ってもいい存在だったのかもしれない。
当初、徳山はこの先輩を良く思っていたが、初美と出会い、ある種この悪女によって、真逆の道、希望に寄った心を、抗うすべもないほどに魅力的な初美によって、絶望側へ引っ張りこまれてしまった。
人は大抵、人の言動からその裏を読み、悲観的になる方が多いが、この先輩は事実として悲観的であるにもかかわらず、それに気づかず最大限希望的に人間を捉えていた。
これは、この女が人間を自分の見たいようにしか見ていないためである。人は確かに、誰しもが相手を自分の中の理想と比べて、見たいようにしか見ないが、この女はそれがあまりに強すぎる、世渡りが下手というか、現実が見えていないというか、善良すぎるんだと思う。だからこそ、初美から見れば、イライラしただろうし、気持ち悪いと感じたんだと思う。
その気持ちを全て徳山のメールを介して、最大級の言葉で、最大級の皮肉を込めて、ぶつけたくなったんだろうと思う。
初美は人間に絶望し、人間の欲というものが本当に嫌いだった、だからこそ、自分から欲というものをできる限り削ぎ落としていった、性欲、食欲、自己顕示欲など、全てを削いでいき、最終的には死にたくなった。ねぇ、死にましょうよ。という印象的な言葉へと繋がっていったんだと思う。
Posted by ブクログ
"そこに人間の悪意を陳列したいんですよ"
初美がすごく魅力的で、でも危うくて、案の定その魅力と危うさにズブズブになっていく。尖った知性にも色気がある。ブラックホールのような女だと思った。
でも初美が何か間違っているのかと言われれば、お節介以外に言えることがない。
初美は悪女なのかというとそれも違うと思う、まっすぐ、私が思いもよらない方向を向いていて、どんなに声を尽くしても振り向かない。そんな人が自分にだけ好意を向けてくれていたら。破滅に向かうのも無理はないなと思った。
私はこういう純文学が好きなんだ!と思って読んでいた、けど結末に向かうにつれじわじわと全ての嫌な予感のピースが嵌っていくように静かに2人きりの世界へ沈んでいく姿をどうしても自分のものさしでしか測れずにもどかしい。2人にとってはこれは破滅ではない、のかなあ。
世界は取るに足らないことばかり。人間なんていつだって人を軽んじうる醜悪な存在。それには同意できるところはあるけど、ここまで突きぬけてしまうきっかけは一体なんだったんだろう。
Posted by ブクログ
「死にたくなったら電話して」
その他にないタイトルに惹かれて読み始めた。
とても魅力的でかつ人並みとは言えない価値観をもつ初美とそれに感化されていく主人公・徳山の物語。
最初から明るい流れではなかったが、後半になるにつれどんどんと2人で暗闇へと突き進んでいく世界観に読む手が止まらなかった。
私も間違いなく徳山の立場だったら同じ破滅的な道を歩む自信がある。
Posted by ブクログ
アルバイト先の人に勧められて読んだ一冊。
あらすじも読まず、タイトルだけを見て「ハッピーエンド系の小説かな」と軽い気持ちで読み始めたけれど、まさかの鬱系小説で衝撃を受けた。
主人公・徳山が抱える悩みは、誰もが少なからず持っているような普遍的なものやと思う。
その悩みに寄り添い、包み込むように接する初美の包容力は、時に優しさを超えて相手を縛るものになる。
徳山はその優しさから抜け出せず、いつしか破滅の道を進んでいってる。
初美は「現代版悪女」と言われることもあるけど、まさにその通りやと感じた。
これまで映画や小説で描かれてきた典型的な悪女とは一線を画してて、その存在感は本当に衝撃的やった。
とにかく、この小説は“えぐい”。
読み終えたあともしばらく余韻が残るような、そんな一冊やった。
星4をつけたのは、この作品を超える一冊にいつか出会えると信じてるからこそ!ぜひ多くの人に読んでほしい!
Posted by ブクログ
何も考えずただ読んだだけだと、三浪中の主人公が、ナンバーワンキャバ嬢と出会い、徐々に彼女の思考に洗脳されていき破滅していく物語で、どのへんが文藝賞受賞作なのかと思ってしまいましたが。
最後の解説を読んで納得。
自分は上澄みの上澄みしか読み取れていなかったんだなと反省しました。
『七十八億人の人類を完全に滅ぼす方法はあるのか→自死すること』は私にはない発想だったので、新しい発見でした。
解説があってよかったー
Posted by ブクログ
初美とおなじく、キャバ嬢をしていました。夜の世界に疲れて一旦あがっている今、以前気になって買っていたこの本を本棚から発見し、なんとなく読んでみました。
まず、夜の世界は基本的に社会の闇で溢れています。というか世界の闇が全て集まる場所が夜の世界といっても本気で過言ではありません。夜の世界で学べることと失うことを天秤にかけると圧倒的に失うことの重量が重いです。(キャバクラは特に)
そんな中で生きてきた19歳の初美が、社会には闇しかない、生きていく価値はないと感じるのは自然なことのようにも思いました。
だってまだ19歳なのだから。
大学も中退して、社会をまともに見ぬままに夜の世界に飛び込んでしまったのだから。
初美にとって夜の世界は、サーカスの動物の檻のようなものだったと思います。逃げたいけど逃げても行く場所がない、居れば評価してくれる、ある種の居場所。
そんな初美にとっての徳山との出会いは、初美にとっても「救い」に感じたと思います。
「似ている」と感じるのって、話さずとも分かる時が確かにある。そしてそういう直感って、意外と当たってると思います。
なんだかこの人になら、と思える稀有な存在の徳山。だからこそ初美は偏った知識を思う存分に語り、誰にでも言えるわけではない価値観まで、徳山に知ってほしかった。わかってくれるわけじゃなくても、知ってほしかった、自分の内に秘めた黒いものをぶつけたかった。
無性愛者で恋愛感情がなくても、徳山に対する愛情のような執着に嘘は無くて、この人を側に置けるなら身体を差し出すことなんて容易い、と思ったのだろうと。
初美は我が強くて、だけど自分がまだ確立されていなかった。
本当は誰かに支えられないと生きていけなかった。生まれたての子鹿(Lv.100)みたいな。
こんな強くて弱い初美に、徳山はただただ翻弄されたことだと思います。
初美がAと言えば次第にAに寄り、突如Bと言い出せば確かに、とBに寄るような。
徳山自身に考えが全く無いタイプではなかったようなのでイエスマンですらなく、徳山自身の考え方の根本から初美に侵されていく感じ。
(イエスマンは考えが0なので何をかけても結局は0ですが、徳山の場合は100の初美が掛け合わせると100にも200にも1000にもなる。)
初美はそんな徳山を見て、自分に侵されていく徳山を1番近くで感じていて、満たされた。
満たされたことによって欲求がさらに削られていって、最終的に1番強かった死への欲求が浮き彫りになった。
それにさえ自ら着いてくる徳山。“結婚”なんてワード出されたら、さそがし重い。両親に在日の件を話していたのが本当か嘘かはわかりませんが、どっちにしろ徳山と結婚、考えられるか?
かといって徳山がどうしておけば結婚できたのに、という答えはありませんが。
初美が壊れたのは、徳山が満たしてしまったから。あんたのせいよ。
Posted by ブクログ
評価しずらい。ただ、引き込まれる作品だった。
無条件に他人を信じ、他人の言うことを疑わずに受け止め、行動する。
相手の言動を想像して、それを自分の考えとして発する。相手に依存する。
が、相手は掴みどころがなく(そこが魅力的である)、何を考えているのかわからない。何を求めているのか、何をしたいのかわからない。
そんな相手に人生の希望を求めてしまった。
あとはもう静かに沈んでゆくだけ、
Posted by ブクログ
4月1冊目
春爛漫暖かくなって気持ちも前向きに
なれそうな季節になってきたというのに
まあでもこれくらい浮かれた春うららな日に読んだ方がいいのかも。
究極!!
なんで人は陰の方にひっぱられやすいんだろう。
陰の方がしんどいのに何故か居心地がいいのはなんでやろう。
少しでも病んでる時にこの本を読むと初美に引っ張られてしまうので注意が必要。
けど主人公は幸せやったんじゃないかなあ。
とも思ったりする。
Posted by ブクログ
こんなタイトルを選んでいる時分で文句言えないんだが2冊連続でなかなかネガティブに振り切った作品読んでしまって心が疲弊
とはいえ、最初こそ独特の言い回しに読みづらさを感じるも読めば読むほど引き込まれて、この文体こそがミミの持つものなんじゃないかと思わされた
藤倉にお金のありかを聞くことはできない、と徳山が独りごちてたのを最初は「意外とそういう義理堅いところもあるもんなんだな」と思っていたが、きっと確認してしまったらミミがそうであることが自ずとわかるわけで、それが怖かっただけなんだろうな
予備校の先輩にキレたのも、(先輩自身がとんでもないというのもあるけど)自分の拠り所としている存在を汚そうとしてきたからで、どこまでいってもミミだった
これまで徳山は自分のことで怒るっていうのができなかったんだろうと思う
周りはミミのことを悪女と評するので、なにかミミに裏があるのかと思ったけど、朝キャバに調査にいってもなお彼女には徳山が知っているまたは想像の範疇にあるような気質しか結局なくて、それはつまり、徳山の周囲もまた徳山を蔑んでいたということだ
だから!は「もう一度キャバクラに行けば彼女のことがわかる」と親切心で伝えるし(=徳山が彼女について理解しきれていないだろうという憶測がある)、日浦は気持ち申し訳なさそうにするし(事実徳山を軽んじていたがそれを本人から指摘されて自覚した)、斎藤は店長にキレる彼に尊敬を向けるが、積極的に遊ぼうとはしない(キレたという側面はすごいがその他に魅力を感じてない)
なによりグロテスクなのが躁の先輩で、なにかと徳山を気にかけてはいるものの、ああいう長文の本人からしたら励ましを送れること自体舐めてるのだ、彼を目覚めさせてあげないと、導いてあげないと、が透けてみえる、仕事でぼろぼろの自分にとってのあのポンコツはそれこそ拠り所だったのかもしれない
そんな徳山にきちんと敬語で丁重に接してくれる人間が現れたらそりゃ砂漠のオアシスなわけで、ああいう結末になってしまったのは蔑ろにし続けた周囲のせいか、プライドを崩せなかった徳山自身か
結婚なんて「2人で生きていきます」という宣言であってミミの求めるものとは対極なのにそれに気づかないのが徳山だなあと思った
在日と親を理由に断ったのは徳山のそのどうしようもなさを指摘したくなかったのか、不条理に苦しめたかったのか、よくわかんなかった
Posted by ブクログ
負のエネルギーの強さに圧倒されました。
死のほうへひっぱる強さ、孤独へ押しやる強さ、そしてそれって楽なんですきっと。
初美が何を考えているのかいまいちわからないんですけど、わたしは実験してるのかなって、徳山って動物園の動物とかとおなじなのかなって思いました。徳山からしたら大好きな初美と死に向かっていって、思考力も弱まっていってて、それって羨ましいなって思っちゃいました。(たぶんこの本の影響受けてるわたし)
生きていてもクソなことばっかりで歴史ってグロくて人間って気持ち悪いってことを改めて文字で読めて良かったです。
わたしはこの本好きでした、自殺願望はないけど一緒に死ねる人がいるっていいなと思いました。
Posted by ブクログ
想像していた話と全然違った。
形岡からのメールと、初美の返信が印象的だった。明るい気持ちになりかけたところで、どん底に突き落とすような落差があった。
初美の言うことは正論で、厳しすぎるくらいの現実を突きつけてくる。それが流暢に関西弁でスラスラと出てくるから、つい快さをおぼえてしまう。断定しているのも良い。でもその主張の行く先は死しかないのだ。
たとえ醜い世界の中でも生きることを選択するかどうか。死ぬことは簡単なことと言い切る初美の説明に、思わず涙が出てきた。もしこんな安寧が死の先にあるとしたら、生きるのがつらい人は行ってしまうだろうと思った。
手を引く力の強い初美と、その手を取っしまう徳山。初美だけが悪いのではなくて、徳山にもその素質があったのだと思う。ラストはただただ光合成して生きている植物みたいな二人が頭に浮かぶ。
Posted by ブクログ
すっきりしない結末ではあったが、徳山がどっぷり初美に影響され、入り込んでいく描写が見事だった。
そして、意味不明なことをしている/言っているようにも思えながら、全く共感できないわけではない。人間ってそんなもんだよなと思わされるところが秀逸だった。
この2人はどんな結末を迎えるのか、いつかふとSNSで見つけたときに、「そうなんだ」程度に読み流すのだろうか。
Posted by ブクログ
私が暗くて悍ましくて、性的描写を伴う作品にあまり触れてないので、耐性なくて星3ですが、耐性があれば、4か5だったと思います!
この初美の存在に徳山が引っ張られていく様が気になりすぎて、夢中になって読みました。
性的描写はちょっと気持ち悪かったけど、初美の考えや雰囲気に私でさえも飲み込まれそうになるのだから恐ろしい、、けど気持ちよくもあるのです。
時間がないので感想はここまで
Posted by ブクログ
これは、映画でいうところのアカデミー賞とかそう言うのを受賞しそうな作品。
何とも言葉では言い表し辛いところがあるけれど、この世界観に入り込めるものだった。
多分きっと嫌悪の様なものを感じる人もいるかもしれなけれど、何だか少し分かってしまう自分もいる。
死というものを改めて感じさせられる。最後に初美が語る死ぬという事の話は、ある意味でものすごく救われるかもしれない。
きっとさこんな風に、拗らせるという言葉で表せていいものじゃ無いけれど、そんな感情とか思想とかを言ってしまえる様なのって、現実世界になかなかなくて、だからこそこうした本の中で描かれていてありがたいなとも思う。
Posted by ブクログ
エピソードにツギハギ感があって、ところどころ無理矢理な感じがしたけど、負の方向に引っ張られていく不気味さと、徳山と初美の人物像が新鮮で嫌いじゃない物語。
関西弁が気持ち良かった。
こういうとこ結構大事かもって思った。