あらすじ
名も知らない女性の人生を、尊厳を傷つけた。
過去の強姦を告白し、婚約者と家族から断絶された男は、
謝罪のために事件を公表し、被害者探しを思い立つ。
せめて罰を受けさせてくれ
罪とはなにか。その罪に許しはあるのか。
『死にたくなったら電話して』の著者が突きつける、このうえなく深い問い。
「謝るというのはある種傲慢な行為であって、自分の本来の気持ちばかりがどうしても滲み出てくる。
それを含めて書いているのが巧みだと思った」
高山羽根子
「性被害については、どうしても被害を受けた女性側が語る立場に置かれることが多い。男性側がポロッと発語することで露わになってしまうもの、発語した瞬間に生じる社会との摩擦といったものがちゃんと書かれている点を最大限に評価したい」
倉本さおり
「この作品には、出来事を終わらせないことの倫理観はあった」
矢野利裕
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
過去を償うために自分の犯した罪を告白するお話です。誰かを傷つけてしまった人へ。
誰かの幸せを願うことさえ許されないのだよ、謝罪は自分を慰める行為でしかない。
Posted by ブクログ
高校生の時に集団レイプの加害者になった男が、突然に罪の意識に目覚める話。
結婚する直前に目覚めて、自分の罪を告白することで婚約者や家族が傷つく様を見ると「そんな今更告白せんでも…」とか思う(現実のニュースを見て、とかだったらそんな感想出てこないと思うけど、小説だと思ってしまう)
具体的な行いの内容は書かれているものの、あまり生々しくない。読みやすくはあるが、読んでいて、いまいち語り手である主人公が「レイプした人」という実感を持てない。
シリアス過ぎない場面も結構あり、元同僚の女や、主犯だった政治家の男、その男が紹介したお坊さん…といった面々とのやりとりはなかなか面白い。
詰めの甘いところはあるものの、読めてよかった。
Posted by ブクログ
加害から10年以上を経て、全てを捨てて、被害者への謝罪をしようとする性犯罪加害者の男が主人公の小説。
特に性犯罪については、どうしても自己満足のきらいは拭えないので、真の謝罪というのは本当に困難であると感じた。最初から性犯罪なんて絶対やったら駄目ということを再認識した。
性犯罪や謝罪の在り方について見つめなおすことができる有意義な小説だと思ったが、突然謝罪に目覚める主人公をはじめ、性犯罪を主導した溝口(現在は県議会議員)など、総じて登場人物のキャラクターにはリアリティがあまり感じられなかった。
Posted by ブクログ
結局「完璧に生きていく」なんか当然出来ないし、過去の負債に向き合うとしてもそこからエゴは抜けないんだなって感じました。
言える過去言えない過去それぞれあるだろうけど、結局過去も積み重ねて生きていくしかないと諦めざるを得ないとすら思います。
Posted by ブクログ
スラスラと読めたけど、ずっとモヤモヤが心の中に残っている。
(性犯罪に限らずだけど)加害者・被害者のどちらにもなり得る可能性が自分にもあるので、他人事ではないなという思いがずっとあった。
主人公の反省の気持ちは、良いとは思うけれど、それを公にするとこに対してはそれが最適なのかは分からなかった。被害者の意思はどう考慮するのか、など考えることが多い話だった。
モヤモヤとした余韻が残るけど、この人生の中で読んでおいてよかったなと思った。
Posted by ブクログ
過去におかした強姦を婚約者や家族に告白し、ブログ等で社会に公表し、被害者を探し出し謝罪しようと考える私。
難しいテーマで、何が正しいのかわからない。
しかし、過去の罪を時効が成立するような時期になって告白するなんてズルい。
世間的には非難されても実刑は受けないのだから。
また、こんなことして被害者の女性は報われるのだろうか?
余計に苦しむだけだと思う。
忘れることは無いにしても自分は少なくとも罪を受けない安全なところから告白されても何の償いにもならない。
独りよがりな考え方でしかない。
自分が落ちぶれることで自己満足しているだけ。
被害者にも周りの人にも何も良いことはない。辛く遣り場のない感情を生むだけのような気がする。
世間に公表しなくても自分の罪にしっかり向き合い、苦しめばいいのだ。
他の人を巻き込むな、と言いたい。
こんなことしても被害者は決して喜ばない。
Posted by ブクログ
17才の時成り行きでレイプした主人公。結婚前に突然罪の意識に囚われ何もかも暴露して断罪を乞おうとする。
降って湧いたような突然の後悔、主人公の押し潰されそうな心に救いはあるのだろうか?そして彼にとっての贖罪が果たしてされた彼女にとって救いとなるのだろうか?考えてしまった。
Posted by ブクログ
芥川賞的な小説。高校生のときに自分が起こした強姦を婚約者に告白し(当然破綻)、親兄弟にも告白し、会社を辞め、誰だか分からない被害者を突きとめて贖罪をしようと本名でブログを書こうとしつつ、当時の共犯者たちと連絡を取ろうとしていく主人公。たまたま出会った元婚約者と同僚の女性とのやり取りなども通じて変わっていく主人公。伊坂幸太郎の作品い出てきそうなくせのある登場人物たちの会話を中心に進んで行くのだが、伊坂幸太郎作品のようにエンターテインメントではなく、特別なオチもない。
誰にでもあるだろう忘れたい過去に自分の過ちとどう付き合って生きていくのか、忘れたいのに思い出させる作品でした。「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」by シャー・アズナブル。
Posted by ブクログ
過去に性犯罪を起こした男性が、何年も経って被害者の女性に償いをしようと行動を起こす。被害者ではなく加害者の立場からのお話。しかし、被害者の女性を探して謝罪しようとする行為は、自己満足で、もしかしたら女性からすると過去の辛い出来事を掘り返され迷惑なことかもしれない。
「あらかじめ許されることを期待してする謝罪になんの意味があるのでしょうか?」(p153)という台詞がありますが、加害者は謝罪を通して単に楽になりたかったのでは?このような話は初めてで、誰にも共感できなかった。それが狙いなのかな?
Posted by ブクログ
大好きな李龍徳さんの新刊。かつて強姦した被害女性に懺悔したい男の話ということだが、扱いが難しそうなテーマをこのページ数の少なさでどう書き上げるんだろうと読みながらドキドキした。だからラストにかけて流れはちょっと意表を突くというか、想像の斜め上をゆくものだったのだけれど、それでも一気にガッと読んで呆然とするような読書になった。元同僚の芳賀に連れ回されるシーンは、言葉による苛烈な打擲が冴え渡っていて痛快。
自分の犯した罪とは言え、急に思い立って過去のことをほじくりまわすのは都合のいい自己憐憫と自己満足に過ぎないから、やめとけとしか私も言えない。「あらかじめ許されることを期待してする謝罪になんの意味があるのでしょうか?」という被害女性の、言われたわけではない言葉にこめられる、一生ものの痛み。禅に興味が湧いた。