加藤隆のレビュー一覧
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『新約聖書』と、それにもとづく信仰のありかたが、どのようにしてつくられてきたのかということを、大胆に図式化してわかりやすく解説している本です。
本書の中心となっているのは、四福音書が誕生した歴史的な背景と、初期キリスト教団の信仰のありかたの変遷を関係づけながら、それぞれの特色を説明しています。著者は、マルコ福音書とルカ福音書は「精霊主義」、マタイ福音書は「新掟主義」、ヨハネ福音書は「イエス中心主義」といったように、端的な表現でそのちがいをまとめており、四福音書の鮮明なイメージを示すことで、初学者にとって『新約聖書』を近づきやすいものにしている入門書といえるように思います。また、『新約聖書』の -
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ネタバレ一神教における神と人の関係性について。キリスト教はユダヤ教からの分派から生じた世界宗教ではあるけど、決して旧来のユダヤ教から正しい位置にあるわけではない。キリスト教は、イエスが告知した「神の支配」の現実が事実である可能性に賭けている(ユダヤ教はそれを傍観している状態)。イエスが伝えてきた神の支配が「全てのもの」に関わるという性質が、イエスの死後に出来たエルサレム初期共同体によって「一部の」人びとの生活スタイルに改変されることで、「教会」の成立へと向かった。この聖俗を切り分ける「人による人の支配」こそが、世俗の支配者による「支配の仕事」を大幅に減らし、ヘレニズム時代以降の西洋社会を安定させるに至
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軽い読み物のようで結構批判的に踏み込んでいて読みごたえがあった。聖書批評学の基本がコンテクストから分析していくことなので、護教的な姿勢で読み始めるとやられるかもしれない。かなりの部分納得する内容ではあったが、創造神話やエデンの園、カインとアベル、ノアの箱舟の物語などを、ソロモン王政の賛美と批判のメタファーとしている部分は、考えさせられるところではあったが、それがカノンになるということを考えるとちょっと不自然な気はする。時代的に追いきれないところがあるので沈黙するしかないが。
何にしてもよい読書体験になった。しかし個人的に触れなれた聖書に対しての本書であっても100分でっていうのはちょっと難し -
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例えば、何かを信仰していて、にもかかわらず辛い思いをしたとしよう。
「一生懸命祈ってたのにこんなことになるなんて、祈りになんか意味無いんじゃないの?神様」
これは誰もが考えると思う。だけど、その時エラい人たちはこうきり返した。
「その信仰はちょっとズレてて、さらに、たまにサボったりもしてたでしょ?だから神様は何もしてくれなかったんだよ。ウン、そういうことにしよう。」
これは神様のコメントではなく、宗教的にエラい人のコメント。
つまりみんなは神様の存在を揺らぐことの無い大前提として、その他のつじつまを必死でその大前提に合わせようとしている。この感覚は信仰心が乏しい自分(おそらく -
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何とも面白そうなタイトルで、去年衝動買いしてしまったこの本。そもそも「たとえ」「たとえ話(パラボレー)」とは何か、新約聖書の系譜などの話から始まって、「サマリア人」、「放蕩息子」、「宴会への招待」、「種まき」の4つのたとえ話の解釈について述べられる。素人なので、どうも納得できないところや、こじつけじゃないかと思ってしまう箇所が多々あって、やっぱり俺って文学とは合ってないのか、とも思ってしまったが、思ってもみなかった「たとえ話」の解釈が示されていて、それだけでもとても興味深い。差別主義の話がなんとも閉鎖的だなーと思ってしまうがそうでもないらしい。この本は、多少なりとも聖書を読んだことのある人に向