あらすじ
『新約聖書』は、キリスト教の流れの中で最も重要視されてきた書物である。しかし、この中に収められた文書を読むと、相互に対立するようなことが書かれている。この事態を理解するには、新約聖書がどのようにまとめられたのか、それぞれの文書はどのような立場から書かれたのかを考える必要がある。また、新約聖書の核にあるイエスの意義と、そのイエスが前提としていたユダヤ教の流れについて知っておくことも必要だ。歴史的状況を丁寧におさえながら読む、「新約聖書入門」。
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『歴史の中の「新約聖書」』(加藤隆、2010年、ちくま新書)
キリスト教の聖典である『新約聖書』。この『新約聖書』はどのようにして成立したのかを、キリスト教の成立の過程、すなわちイエスの時代と使徒の伝道の時代とともに分析する。
非常にわかりやすい。
(2010年10月12日 大学院生)
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基本的に聖書とは、キリスト教における様々な立場の集約、である、からこそ統一的に理解することは一足飛びには難しい、という感じか。
4つの文書によって様々な立場があるが、成立時期とその背景に着目することが重要ということがわかった。
①聖書があって、キリスト教ができているのではない。イエス以来のキリスト教の流れがいろいろとあって、その展開の中で、新約聖書が成立して、重要な書物になり、大きな権威をもつようになった
②聖書のキリスト教独自の部分である「新約聖書」は、すべてがギリシア語で書かれていて、これは事実上、ローマ帝国側の高い文化の領域が重視された形のものになっている
この2点が重要と筆者は述べている。
これを踏まえて、「キリスト教では、ローマ帝国の大きな支配の構造、一般化して言うならば、西洋文化的な大きな支配の社会構造、を採用しようとする流れが生じて、その流れが大きな成功をおさめた。その流れの中で、重要な機能を果たすものとして、新約聖書が成立して、安定したものになった」としている。
やっぱりローマ帝国という政治的な背景は、キリスト教の成立に大きな影響を与えており、「聖書」という権威の象徴が重要視されていたことがわかる
Posted by ブクログ
『新約聖書』と、それにもとづく信仰のありかたが、どのようにしてつくられてきたのかということを、大胆に図式化してわかりやすく解説している本です。
本書の中心となっているのは、四福音書が誕生した歴史的な背景と、初期キリスト教団の信仰のありかたの変遷を関係づけながら、それぞれの特色を説明しています。著者は、マルコ福音書とルカ福音書は「精霊主義」、マタイ福音書は「新掟主義」、ヨハネ福音書は「イエス中心主義」といったように、端的な表現でそのちがいをまとめており、四福音書の鮮明なイメージを示すことで、初学者にとって『新約聖書』を近づきやすいものにしている入門書といえるように思います。また、『新約聖書』の権威が確立されるにいたるまでの二世紀の歴史についても、グノーシス主義との関係などを通して解説がなされています。
なお、「歴史の中の『新約聖書』」というタイトルですが、それぞれの信仰のかたちが生まれてきた経緯を、こまかい歴史的事実を追いかけて解説しているというより、シンプルな理念型を提示することで、その理由を読者が内的に把握できるような説明がなされています。歴史的アプローチにもとづくキリスト教史の入門書を期待した読者は、思っていたのとちがう内容だと感じてしまうかもしれません。