あらすじ
一神教は人間の「罪」の意識から生まれた! 複数の神を信じていたユダヤ人が、一神教に変わった理由、ユダヤ教から派生したキリスト教が世界宗教に広がった理由を探りながら、人間と神との関係を問い直す。(講談社現代新書)
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加藤隆先生らしい書
全体をざっくり読んでもユダヤ教やキリスト教を再確認、再発見できる良書です。聖書に関する入門書というよりは聖書やキリスト教などに触れた人が新たな捉え方をするのにも有用ということです。信奉している神を持つ人にとっては『絶対的でないものを絶対的だ』とすることに対して反感を持つかもしれません。でも何らかの宗教を持った人が自分の立ち位置を再認識するのには効果的な本だと思います。
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[1から]大部の日本人にとってはなかなかピンと来ない一神教の考え方。その中でもユダヤ教とキリスト教に焦点を当てながら、一神教がどのように生まれてきたのか、そしてその一神教という考え方そのものがどのように変容してきたのかを考察する作品です。著者は、ストラスブール大学で博士課程を修められている教授、加藤隆。
歴史的な流れに沿いながら、一神教の考え方の変遷を丁寧に追っているため、読みながら「あ、なるほど」と思わせてくれることがしばしば。その字面的にもどこか「確固とした」ものを思い浮かべていたのですが、一神教それ故に神との関係・在り方が多様に考えられるところが非常に興味深かったです。「神学は難解では......」と思われている方にもオススメできるわかりやすさも高ポイント。
ユダヤ教やキリスト教に関する基礎的な知識を本書で身につけることができるのも良い点かと。冒頭、そして本のタイトルと内容そのものに少し齟齬があるようにも感じましたが、大枠で「一神教とは何ぞや?」ということを知りたい人には十二分に有意義な一冊だと思います。
〜キリスト教は、イエスが告知した「神の支配」の現実が事実である可能性に賭けている流れである。これに対して、ユダヤ教は契約という唯一の関係によってヤーヴェとの繋がりを確保しながら、キリスト教の賭けが成功にいたるかどうかを見守っている流れである。〜
(語弊があるかもしれませんが)神学は本当に頭の体操になります☆5つ
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
ユダヤ教とキリスト教の神は違うのか?
歴史から人と神の関係を新しく問い直す。
[ 目次 ]
第1章 キリスト教の問題
第2章 一神教の誕生
第3章 神殿と律法の意義
第4章 神殿主義と律法主義
第5章 洗礼者ヨハネとイエス
第6章 イエスの神格化と教会の成立
第7章 キリスト教と近代
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
実はタイトルに若干問題があるのだが、「一神教」というものの副題にあるように扱っているのはユダヤ教とキリスト教である。
そこを含んでしまえば、ストラスブール大で神学博士をとったという著者の記述は入門者向けに分かりやすく好ましいものである。
聖書に触れる際の参考になる一冊。
Posted by ブクログ
一神教における神と人の関係性について。キリスト教はユダヤ教からの分派から生じた世界宗教ではあるけど、決して旧来のユダヤ教から正しい位置にあるわけではない。キリスト教は、イエスが告知した「神の支配」の現実が事実である可能性に賭けている(ユダヤ教はそれを傍観している状態)。イエスが伝えてきた神の支配が「全てのもの」に関わるという性質が、イエスの死後に出来たエルサレム初期共同体によって「一部の」人びとの生活スタイルに改変されることで、「教会」の成立へと向かった。この聖俗を切り分ける「人による人の支配」こそが、世俗の支配者による「支配の仕事」を大幅に減らし、ヘレニズム時代以降の西洋社会を安定させるに至った。
教会のいう「神の支配」とは、「教会の支配」というべきか、「分け隔てしない」ところの神が自分を受け入れない者について「分け隔て」してしまっているのだ。
Posted by ブクログ
民族宗教だったユダヤ教からどのようにして世界宗教であるキリスト教が生まれたのか。その過程は想像以上にある意味で打算的で、差別的ですらあり、絶対的な「神」がそこに存在してとは到底思えない、恐ろしく人間的なものだった。
この本の論理が全てではないとは思うけれど、冷静かつ客観的に捉えられた、ユダヤ教とキリスト教の関係は興味深い。
そしていまは「科学」が宗教的人のあり方を担っている部分がある
消化不良なのは、ユダヤ教の神である「ヤーヴェ」がキリスト教にどのように取り込まれていったのかが触れられはしたものの語り切られていないところ。
Posted by ブクログ
実はタイトルに若干問題があるのだが、「一神教」というものの副題にあるように扱っているのはユダヤ教とキリスト教である。
そこを含んでしまえば、ストラスブール大で神学博士をとったという著者の記述は入門者向けに分かりやすく好ましいものである。 聖書に触れる際の参考になる一冊。
Posted by ブクログ
著者は神学者だから、という言い方が適切かどうかわからないが、宗教の前提となる部分は文字通り前提として捉えていて、あえて踏みこまない。
ところで論理とは、もともとはロゴスであって、ロゴスとは神の言葉であり、世界を構成する論理とイエス・キリストの言葉そのもの。だから論理とは「神との論争の理」なのだよね。しかるに内容は極めて論理的といえるのだ。
もし細かいところに興味が湧けば、神学者ではなく橋爪大三郎のような社会学者による宗教解説本を読めばいいということです。
この本からは宗教史とりわけキリスト教会史について学ぶところが多かった。63点。
Posted by ブクログ
ユダヤ教がどうやって一神教になっていったのか。歴史的な危機意識を神学的展開で乗り越えようとする試み。その行き着く先にイエスの動く神。そして救う神がいる。しかし神が部分的にしか介入しない現実において、教会の指導者たち人による人の支配が行われている。緻密な論理展開が面白かった。
Posted by ブクログ
ユダヤ教からキリスト教への展開を分かりやすく解説した本。歴史的な経緯をたどりつつも、そうした流れの根底にある、人間と神との関係についての「理路」を解明することに著者の主眼が置かれている。
元来、ユダヤ教のヤーウェ信仰には、ご利益宗教的な側面があった。神に対する人びとの信仰は、神が自分たちの役に立つかどうかということに依拠していたのである。だが、アッシリアによるイスラエル王国の滅亡、さらにユダ王国に起こったバビロン捕囚は、ユダヤ教の神学的思想に「罪」の概念をもたらすことになった。すなわち、神に対する民の義務がきちんと果たされていないために、ユダヤ民族の苦難が生じたと考えられたのだった。こうして、ユダヤ教のご利益宗教的な側面が清算され、苦難にあってもヤーウェへの信仰を維持し続ける一神教的な態度が生まれた。
これ以降ユダヤ人には、神の前で義を果たすことが課されることになった。ところがこのとき、もしも人間の知恵によって何が正しいかを決定できるのだとすれば、そのような人間の掟を神に押しつけていることになる。この問題を克服するために、ユダヤ教徒が編み出したのが、神と民とのつながりを確保するために繰り返し神殿での儀式をおこなうというサドカイ派の方法と、律法の解釈を積み重ねてゆくことで正当化の営みを無限に続けてゆくファリサイ派の方法だった。
だが、体制派である彼らとはべつに、世俗を離れてあくまでも正しい生活に到達しようとしたエッセネ派も存在した。エッセネ派とともに体制派を批判しつつ、「神の支配」が現実に告知されていると人びとに伝えたのが、イエスだった。だが、この二つの立場を両立させることはできない。「神の支配」によって現実が包み込まれていることを認める立場からは、日々の行動についての具体的指針を引き出すことはできない。その後のキリスト教は、この問題を回避することを重視して、キリストの神格化と初期共同体を指導者とする教会の設立という方向に進んでゆくことになった。
Posted by ブクログ
例えば、何かを信仰していて、にもかかわらず辛い思いをしたとしよう。
「一生懸命祈ってたのにこんなことになるなんて、祈りになんか意味無いんじゃないの?神様」
これは誰もが考えると思う。だけど、その時エラい人たちはこうきり返した。
「その信仰はちょっとズレてて、さらに、たまにサボったりもしてたでしょ?だから神様は何もしてくれなかったんだよ。ウン、そういうことにしよう。」
これは神様のコメントではなく、宗教的にエラい人のコメント。
つまりみんなは神様の存在を揺らぐことの無い大前提として、その他のつじつまを必死でその大前提に合わせようとしている。この感覚は信仰心が乏しい自分(おそらく多くの日本人も)には理解できない。信仰が精神に癒着している。
信仰心には全く関心はないけど、キリストのこととかユダヤのこととか色々わかって面白い。そして、当たり前のことだけど神様って人間が勝手に作り出したモノだから、誰かのさじ加減1つで何とでもなるんだけど、その神様の存在についてとってもロジカルに解釈しているところが面白い。現実を見ようとしない人みたい。
取り合えず、イエスは神じゃない。そして、一般ピープルは宗教を心で感じるけど、エラい人は宗教を頭で考えている。