1999年に書いたテクニカルノートの冒頭に「一般に回帰法を用いたデータ処理においては、データ空間の中に潜在する関係を見い出すデータモデリングに着目した部分と、データから推定されたモデルの評価/最適化に着目した部分があり、各々に技術的な要素がある。ここではまずデータモデリングの部分について技術的要素を整理し、その後、モデルの評価/最適化に係わる技術的要素について言及する」と記してある。拙い論考ではあるが、ここでデータ解析の実務者としての自分が考えていたことは、物理学的なデータ間の関係性と統計学的な関係性とは分けて考えておかなければならない、ということであったと顧みる。如何にそれらしい関係性をデータ群から見出しても物理学的な関係性に落とし込めなければ意味はないとの戒めが当時の自分にもあったのだ。だからこそ、非線形の回帰法を利用しつつ如何に物理的な裏付けのある関係性を見い出すかということを懸命に模索していた時にこんなメモを残したのだ。その「物理的な関係」を広義に言い直してみれば「因果律」ということになる。それは、原著のタイトル「The Book of Why」の答えとしてデータを前にした者が求めたいものである。しかし、アインシュタインは一般相対性理論を展開する中で全ての事象は相対的な関係でしか著せないと言った。事象Aに事象Bが先行しているように見える世界もあれば、その逆に見える世界も同時に存在し得る。だとすればAがBの結果であるという単純な因果律など存在しないのかという極端な話にもなるが、ヒトは自分の生きている世界観の中で因果律を求めたがる生き物だ(だからこそ都市伝説や陰謀論に引き付けられる人々も多いのだろう)。ラプラス的世界観は現代物理学では否定されているにも拘らず、人は因果律を求めその応用として未来を予想しようとする。閑話休題。