あなたを探し求める人々はみな あなたを試みます
そしてあなたを見出した人々は あなたを結びつけるのです
形象や姿態に
私はしかし あなたを理解しようと思います
大地があなたを理解するように
私が成熟するようにつれて
あなたの国も
熟します
私はあなたから あなたを証する
どんな虚栄も望みません
私は知っています 時が
あなたとは違った名前を
持っていることを
私のために奇蹟をなさらないで下さい
世代から世代へと
ますます明らかなものとなる
あなたの法則を正しいとなさって下さい
あなたは未来です 永遠の平野のうえの
偉大な曙光です
あなたは時の夜が明ける時の鶏鳴
あなたは露 朝の弥撒 そして乙女
見知らぬ男だ 母だ 死だ
あなたは返信する姿です
いつもひとり運命のなかから聳え立ち
原始林のように 歓呼されることもなく
嘆かれもせず また ものに記されることもありません
あなたは事物の深い精髄です
自分の本質の最後の言葉を語らず
異なった人にはいつも異なった姿を現れます
舟には岸と 陸には船と
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昼間 あなたはささやいて
多くの人々の周りを流れてゆく噂です
時刻の鐘が鳴ったあとの
おもむろにまたその圏を閉じてゆく静けさです
昼がだんだん弱まって
夕べに向かって傾くとき
神よ あなたはだんだん大きくなられ
あなたの国があらゆる屋根から煙のように立ち上ります
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おお 主よ 各人に固有の死を与え給え
彼がそこで愛と意義と苦しみを持った
あの生のなかからうまれでる死を
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しばしばまた葉のない木の枝を透かして
もうまったく春になった朝が
除くように彼の頭のなかには
あらゆる詩の輝きが ほとんど致命的に
われわれにあたるのを阻むものはなにもない
なぜなら 彼の眼差しにはまだ陰影がなく
こめかみはまだ月桂冠には冷たすぎ
その繭から薔薇の花ぞのが丈高く生い茂って
解き放たれた花びらが 一枚一枚
彼のふるえている口のうえに舞い落ちるのは
やっと後のことであろうから
彼の口はまだ静かで いちども使われたことがなく きらめきながら
ただ その微笑とともになにかを飲み込んでいる
まるで彼の中へ歌が流し込まれた科のように
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私がお前を知ってから さらに芳しく
ああ なんと私の体がすべての血管から花咲く事だろう
ごらん 私は一層すらりとして 一層真直な姿勢を歩いてゆく
それだのにお前はただ待っているのだーいったいお前は誰だろう?
ああ 私は感じている どんなに私が自分から遠ざかってゆくか
どんなにもとの自分を 一葉一葉 失ってゆくかを
ただお前の微笑だけが まるで星空のように輝いている
お前のうえに それからまた私のうえに
私の幼な時を通じて まだ名もなく
水のように輝いているすべてのものを
私はお前の名で呼んで 祭壇に捧げよう
お前の髪の毛がその灯明であり
お前の乳房がその軽い花輪であるあの祭壇に
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こんなにも失われたものについて
あの永かった幼い日の午後について 何かを語るために
しばしば思いに耽るのは楽しいことだろう
それは二度もあのように現れては来なかった―なぜだろう
いまでも私たちはそれを思い出す―おそらく雨の降る日に
けれども私たちはもうそれが何であるかを知ってはいないのだ
二度と生活が 邂逅や 再会や 前進で
あの頃のようにみたされていたことはなかった
あの頃 わたしたちの出来事は まるで
ひとつの事物や動物のそれのようだった
あの頃 私たちは 人間の世界と同じく 彼らの世界を生きて
縁まで形姿にみちあふれていたのだった
そしてひとりの牧人のように孤独になり
偉大な遠方をいいぱいに担いながら
まるで遠くからまねばれたり 触れられたりしているようだった
そしておもむろに一本の長い 新しい糸のように
イメージのつながりの中へ織り込まれていた
その中にいつまでもいることに いまでは私たちが戸惑いしているあのつながりの中へ
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見えるでしょう この眼はひそかに
運河とつながっているので その中で
海が満干につれて 盛り上がったり 沈んだりしています
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大海の太古からの息吹き
夜の海風
お前は誰に向って吹いてくるのでもない
このような夜ふけに目覚めている者は
どんなにしてもお前に
堪えていなければならないのだ
太海の太古からの息吹
それはただ古い巌のために
吹いてくるかと思われる
はるか遠くからただひろがりだけで
吹き付けながら
おお 崖の上で 月光を浴びながら
ゆれ動く一本の無花果の樹が
なんとお前を感じていることだろう
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このデューラーの絵のような樹々の下に。そしてこれらの樹々は
かずかずの勤労の日々の重みを
みちあふれた果実のうちに担って
仕えながら 忍耐強く 試そうとしているのだ
もしも自らすすんで 永い生涯の間
ただ一つのことを欲しながら 成長し 沈黙しているならば
どのようにして
比類なく尊い収穫を
なおもささげ なおもさしだすことができるだろうかと
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なぜ ひとりのひとが出かけて 見知らぬ事物を
担わなければならないのだろう? ちょうどおそらく運搬人が
自分とは縁のないものでだんだんみたされてゆく買物籠を
店から店へと運び それを担いで あとか随いてゆくように。
そして「旦那 なんのための宴会です?」と聞くことができないように。
なぜひとりのひとが牧人のように佇まなければならないのだろう?
そのように過剰な影響にさらされ
出来事にみちみちたこの空間とかかわりあい
風景のなかの一本の樹にもたれかかって
もはや行動をせずに その運命を待たなければならないのだろう?
しかし彼のあまりにも大きく見開かれた眼差しには
家畜の群れの静かで 穏やかな姿は映っていず
そこには ただ世界が映っているだけなのだ 彼が仰視する度毎に
そして俯く度毎に世界が。喜んでほかの人たちの
所有となるものが 彼の血のなかへ
まるで音楽のように素気なく 盲目に入り込み 変容しながら立ち去ってゆく
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すると光は落ち着いて 死が
一層純粋に自分の道を見出すだろう
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誰にできようか 私たちをひそかに濁らせている
この調剤をあなたに注ぎ込むことが。
あなたはあらゆる偉大さの光輝をもち
わたし達は区々たる小事になれている
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私がここにいるとき あなたが私を感じてるのでないのならば
叫ぶ私の声もあなたの耳に大きくなりかけはしないのだ
ああ 耀けよ 星たちの傍らに
私をもっとはっきりさせるがいい なぜなら私は消えてゆく
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【嘆き】
誰に向ってお前は嘆こうとするのか 心よ? ますます見すてられて
お前の道は 不可解な人々の間をぬって もがきながら
進んでゆく だがしかし それもおそらくはむなしいのだ
なぜなら お前の路は 方向を
未来への方向を保っているからだ
失われた未来への
以前 お前は嘆いたのだろうか?あれはいったい何だったろう?あれは
歓喜の木から落ちた一粒の実 まだ熟れていない実であった
けれども いま 歓喜の木は折れる
私のゆるやかに伸びていた歓喜の木が 嵐の中で
いま折れる
私の眼に見えない風景の中の
一番美しい樹が 私を目に見えない
天使たちに分からせていたあの一本の木が
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もう一度 心の頂きにさらされて
闘っている者のところへ
谷間の香りが訪れた そして彼は吸った
最後の気息を ちょうど夜が風を吸うように
彼は立って その香りを吸い 吸って もう一度
ひざまづいた
意志ばかりの彼の世界のうえには
青空の息をころした谷間が
たぎり堕ちていた 星たちは人間の手が運んで来る
富を摘みはしない
彼らは黙って横切ってゆくのだ まるで風のたよりのなかを行くように
一つの泣いている面ざしを
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音楽 彫像の吐息よ おそらくは
絵のもつしじま もろもろの言葉のおわるところで
始まる言葉よ 私たちの
消えてゆく心の方向のうえに垂直に立っている時間よ
お前は誰に向って動く感情なのか? ああ お前は感情の
何に移り変わる変化であろうか?-耳に聞こえる風景に。
音楽 見知らぬものよ 私たちはみだした
心の空間 私たちの最も内からのものでありながら
私たちを乗り越えて あふれでるものよー
神聖な別離よ
いま 私たちの内部が私たちを取り巻いている
見事な遠景のように 空気の
裏側のように 清らかに
巨大に
もはや私たちが住むこともできず
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神は水だ あなたはただ浄らかな
皿のかたちをつくって 両手をさしだしておいでなさい
そしてあなたがその上にひざまづくと -神は溢れ こぼれ
あなたのどんな把握をさえ超えたものとなるだろう
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いま窓のあたりに
吹き込んだ一陣の風は
ただ自然が盲目に起上り
そして身を伏せたものだろうか
それともひそかにひとりの死者が
このような姿態と共に
無感覚な大地から 感じ易い
家の中に忍んできたのだろうか
多くの場合 それはただ夜に眠っている男が
寝返りをうつ そのそよぎのようなものにすぎない
だが突然 それはあの世からの言葉にみたされて
訝る私をあわてさす
ああ どうして私はいつまでも不器用に
このような言葉の意味が捉えられないのだろう
それは死の中で暗然としたひとりの少年が
近くから私に泣きかけたのだろうか
そして(ああ 私はそれを拒むのだ)
この世に残したものを私に指し示そうとするのだろうか
あの風と共に吹き寄せたのは嘆きだった
あれはたぶん彼がそこに立って 叫んでいたのだろう
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奇妙な言葉ではないか 『時』をまぎらわすとは!
『時』を逃がさぬ これこそが問題であろうのに。
なぜなら 誰か不安におののかぬ者があろうか?何処に?
万象の中のどこに最後の存在があるかと
山々は上空に星を鏤めて眠っているー
だが あの山々のなかでも『時』はきらめいているのだ