浅野裕一のレビュー一覧
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ネタバレ読み始めたときはフォン=クラウゼビッツの『戦争論』ほどの衝撃はなく、「こんなものか」と思っていたが、読み進めていくうちに「紀元前5世紀頃の成立といわれる書物とは思えない内容だ」と思うようになった。
「兵は詭道なり」、「兵は拙速を聞くも、未だ巧久を睹ざるなり」、「彼を知り己を知らば、百戦して殆うからず」など、
今までにいろいろなところで耳にしたことがある言葉が多数出てくるのだが、その大元である『孫子』の全文や解説を読むと、自分の理解はとても表面的で浅はかで、本物ははるかに深淵で広い意味もあったこともわかった。
第1章の最初から「説教くさいな」と思ったのだが、よく読むと「君主が馬鹿だと戦に勝て -
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現代でも経営者らに読み継がれる古典中の古典。確かに深みのある言葉が多く、本質的な意味で「使える」思想に出会えるだろう。
本書から受け取った教訓は、例えば、
★戦う前が大事…「彼を知り己を知らば、百戦して殆(あやう)からず」(p54、謀攻篇)、「勝兵は先(ま)ず勝ちて而(しか)る後に戦い、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む」(p62、形篇)。
★結果がすべて…「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」(p41、謀攻篇)、「上兵は謀(ぼう)を伐(う)つ」(p44、謀攻篇)、「小敵の堅(けん)なるは、大敵の擒(とりこ)なり」(p48、謀攻篇)。
★成功体験を反復してはいけない…「故に其の戦い -
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[ 内容 ]
孔子という男のみじめな人生が、すべての始まりだった。
「貧にして且つ賤」の一介の匹夫が抱いた、天子にならんとする妄執――そして挫折と怨恨。
それは「受命なき聖人」の神話へと肥大し、ルサンチマンの宗教=儒教が生まれた。
儒教2500年の歴史をまやかしに満ちた復習劇として読み解き、特異な宗教の正体を完膚なきまでに暴く、衝撃の儒教論。
[ 目次 ]
序
第一章 孔子という男
1 妄想の上昇志向
2 野望と挫折
第二章 受命なき聖人
1 孔子の聖人化
2 『中庸』の孔子聖人説
3 孟子の偽装工作
第三章 まやかしの孔子王朝
1 儒教の暗い情熱
2 虚構の『春秋経』
3 『孝経』と孔子王 -
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同著者の「図解雑学 諸子百家」もお読みの方は想像が付くかと思われるが、「孔子なんぞや」から始まる儒教に対する徹底した辛口批評本。
「論語」の記述から孔子の実像に迫る試みから始まり、後に「王になり損ねた孔子」の怨念と、その後学の徒たちの虚構に満ちた活動を切り下げる内容となっている。
論語の章はともかく、後の儒家の運動がそこまで孔子の願望に忠実にリンクしているのかという部分では首を傾げたくはなるが、最後まで勢いがあるので一気に読めて面白い。
ただし、前書きで著者本人が「一般向けに分かりやすく書けているかは自信がない」というように、儒教に対しある程度の知識は持っていないと話についていけないと思われる -
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徳治主義を旗印とする儒教において、聖人とされながらもほとんど現実の政治にたずさわることのできなかった孔子という存在は、その教えに対する大きな矛盾でした。本書は、こうした問題ををかかえ込んだ儒教が、その後の中国思想史においてますますその矛盾を大きくせざるをえなかった経緯をたどっています。
孔子は士官を求めながらも、その願いはなかなか叶えられることはありませんでした。本書ではまず、『論語』などに記された孔子の事績を、彼のかかえている「ルサンチマン」を示すものとして読み解く試みがなされています。
しかし、儒教と「ルサンチマン」の結びつきは、孔子の生涯とともに終わることはありませんでした。徳治主義