黒川博行のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
冒頭───
やっと帰り着いた。ガスストーブのスイッチを入れ、次いでポットのコンセントを差し込む。コートをベッドの上に放り、縒れたネクタイを外しにかかった時、電話が鳴った。壁の時計を見ると、もう午前一時半、非常識だ。すぐに出るのも業腹で、しばらくようすをみることにした。
汗じみたワイシャツのボタンを外しながらバスルームへ行き、水道の栓をひねった。ワイシャツと靴下を洗濯機に放り込み、つまり私の夜毎の儀式を終えて部屋に戻れば、まだ電話は鳴っている。
大阪府警捜査一課の黒マメコンビの第二弾。
第二回サントリーミステリー大賞佳作賞受賞作。
黒川氏はこの作品で、第一回に続いて佳作賞を受賞した。
氏にとっては、おそらく二番目の作品なのだろうが、相変わらず二人の上方漫才風の会話にテンポがあって心地よい。
現金を輸送していた銀行員二人が、阪神高速道路の上で何者かに拳銃で殺害、強奪されるという事件から物語は始まる。
その後、容疑者と疑わしき人物の自殺などが相次ぎ、捜査は困難を極めるが、愛すべきマメちゃんのポワロ並みの名推理が冴えわたり、事件の真相と犯人の正体に一歩一歩近づいていくという展開。
ただし、事件の謎の解明と動機や理由などについては、第一作のほうが面白かった気がする。
今回の事件解明にたどり着くまでの動機やアリバイ、話の進め方には強引さと粗が見え、作品の完成度としては、やや物足りない。
舟券を100万も買ったら目立つんじゃないのか?
それでも、まずまず面白いエンタメミステリーだったので、これからも黒川作品を読み続けるぞと誓う私なのであった。 -
Posted by ブクログ
とある自殺未遂事件(他殺の可能性あり)に遭遇した京都の美大に通う2人の女子大生が。警察を出し抜こうと独自にデコボコ捜査をする、というミステリー。
1985年に出版された小説ということで、以前読んだ「キャッツアイころがった」よりも前に書かれたものみたい。京都、美術大学、女子大生2人が探偵役、と、共通点の多い物語。解説を読んだら「キャッツアイ〜の原型とも言える…」という記述も。
設定は似ているけれども、ミステリーとしては全然別もの。
時刻表トリックあり、ミスリードあり、密室トリックあり、と、トリックも盛りだくさん。活躍する2人の女子大生のキャラクタも面白いし、刑事たちのキャラもしっかり作り込まれていて面白い。
1つマイナスポイントがあるとすれば、題名にインパクトがないことかな。この題名だと、あとから物語を思い出せなさそう。 -
Posted by ブクログ
黒川博行さんの警察小説。でも、今まで読んだものと少し毛色が違っていました。
私が今まで読んだのは、「2度のお別れ」「雨に殺せば」「八号古墳に消えて」「絵が殺した」などなど。殺人トリックも素晴らしいのだろうけれど、私が黒川さんの小説で面白いと思っていたのは、登場する刑事たちの関西弁による軽快で味のある会話とキャラクタでした。
その系列の警察小説だと思って読んだら、この小説は違う。今まではあまり記述されなかった犯人側の視点や、時系列をさかのぼった出来事と、現在の犯人や被害者視点での出来事と、刑事たちの捜査の物語が交互にすすんでいく。いままでとは違って、刑事たちは、むしろ脇役。
今まで私が読んだの黒川博行さんの作品とはずいぶん違う作風だけれど、どんどん物語に引き込まれていく面白い作品でした。犯人は最後のほうまで明かされず「彼」と記述されるのですが、途中から誰もが犯人の正体に気がつく。それを確かめたい、そしてどうしてこの物語につながっていくのか確かめたい、と、あっという間に読み終えました。
解説を読んでみると、この作品から少しずつハードボイルドな犯罪小説に移行した作品を発表しているとか。そちらの系統も読んでみようと思わせた作品。