【感想・ネタバレ】キャッツアイころがったのレビュー

あらすじ

滋賀県北部の余呉湖で身元不明の死体が発見された。顔が潰された上、指が切り取られ指紋もない。唯一の手がかりは、胃の中にあった一粒の宝石――キャッツアイ。続いて京都の美大生、大阪の日雇労働者が連続して殺害され、ともに口にキャッツアイを含んでいた。三府県での合同捜査は混迷を極める。事件の鍵は殺された美大生が旅行していたインドにあると、その同級生の啓子と弘美は一路彼の地へと飛び立つ……。果たしてキャッツアイの意味と、連続殺人事件の真相を探りだせるのか。第4回サントリーミステリー大賞を受賞した著者初期の傑作。

※本作品は東京創元社、文藝春秋で同一タイトルの作品が販売されております。本編内容は同じとなりますので予めご了承下さい。既に同作品をご購入されているお客様におかれましてはご注意下さい。

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Posted by ブクログ

冒頭───

滋賀県警捜査一課班長、根尾研一郎警部が余呉湖西岸の現場に着いたのは午前八時、警備の警官に目礼し、やじ馬の包囲網を抜けた。死体は引き揚げられ、湖岸の砂地に横たえられていた。白衣の検視官と数人の鑑識課員がそのまわりを囲んでいる。検視の最中らしい。
 根尾は咥えていたパイプをポケットに収め、
「死因は」
先に来ていた部下の川村を呼び寄せて訊いた。根尾は男の他殺死体が揚がったとしか報告を受けていない。電話で叩き起こされ、食事もとらずに家を飛び出して来た。


1980年代の初め、ぼくはまだ学生だった。
当時、学生の間ではインド旅行がちょっとしたブームになっていた。
インドへ行けば、人生観が根底から引っくり返されるのだと。
鉄道を下りて駅から外に出ると、道端に大勢の人間がやる気もなく朝から晩まで寝ころんでいる。
何の職業も持たない路上生活者、今の日本で言えばホームレスだ。
インドのどこに行っても、それらの人間の多さに圧倒されたと。
人間の尊厳とは何か? 生きるとはどういうことか?
それをあらためて考えさせられる。
バブル萌芽の時期、インドに行った旅行者たちはみなそう思ったと言う。
時は経ち、あれから30年。
今やインドはBRICSの一国として、今後の世界経済の一端を担う先進国になりつつある。
30年の時の流れは全てを変える。

この作品は、1980年代に大賞賞金が1000万円ということで注目を浴びたサントリーミステリー大賞の第四回受賞作だ。
最初の被害者の腹部から発見された2カラットもの高価な宝石キャッツアイ。
続いて起こった殺人事件でも、被害者の口からキャッツアイが転がり落ちる。
被害者の一人である学生のサークル仲間である女子学生が、事件のカギは、学生が訪れ、キャッツアイの生産地でもあるインドにあると見て、インド旅行を企てる。
そこであらたな事実が発覚する。

スリリングな展開と洒脱な関西弁、女子学生の魅力的なキャラ。
文章も達者でテンポも良く、とても新人の作品とは思えない。
それもそのはず、著者の黒川博行氏は、第一回、第二回と連続で佳作に入選している。
よほど才能があったに違いない
そして、ようやく四回目での大賞受賞。
感慨深かったに違いない。
その黒川氏が、つい先月、満を持しての直木賞受賞。
遅きに失したというべきか。
受賞作「破門」がなかなか面白かったので、他の作品に取り掛かったのだが、この、ほぼデビュー作ともいえる作品もかなりの秀作だった。
三十年前から、優れたエンタメ作品を書いていた黒川氏の足跡を知ることができる貴重な作品だ。
今読んでも、特に古臭い部分などなく、お薦めのミステリーです。

0
2014年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった!
普通に刑事が事件解決するんかな、と思って読んでたけど女子大生の掌の上って感じで爽快だった。
なんとも肝の据わった女子大生で、いいキャラクターだった。

0
2025年01月21日

Posted by ブクログ

推理ものの感想は、下手するとネタバレの方向に走ってしまう…先走る気持ちに待ったをかけながら本書をプレイバックしたい笑

選んだ理由はズバリ!インドにまで舞台が及んでいて、何だか壮大そうだったから!笑
推理小説は今まで数えるくらいしか読んでこなかったが被害者の発見からインド行きに至るまでがキュッと引き締まっており、真相に近づく前に息切れ…なんてことがなかった。
緊迫した捜査会議からインド女子旅へと切り替わる瞬間が個人的に震えた。

「お啓」が本当に頼もしい!(プラス敵に回しちゃいけないタイプだと段々明らかになっていく…)
一般的な推理小説好きのはずなのに、推理や行動力がずば抜けていた。小説を読む際話の流れを追うだけではここまで鋭くならないだろうな。人助けじゃなくてただの好奇心からインド行きを決行するのだって普通なら出来てもしない。そこが彼女ならではだし、探偵と一線を分つところだろう。『ダ・ヴィンチコード』みたく、捜査のプロ達より何歩も先を進んでいるところも…おっと、誰か来たようだ。
考えてみれば、たとえリアリティがあってもフィクションの世界は大それたことが平気で出来るから凄いよね。(以上ノンフィクション派より)
芝居めいた関西弁は多少引っかかりはしたが笑、弘美との夫婦漫才なみに息ピッタリな会話も楽しい。凄惨な事件簿における、一服の清涼剤以上の役割も果たしてくれている。

作中の刑事達同様、宝石通の気分になった笑 タイトルのキャッツアイをはじめ、流通経路に産出国の事情までを彼らと一緒にサクッと学習。(80年代の話だから多少変わっているだろうけど) 宝石商から漂うあの独特な陰が何なのか、今なら何となく分かる気がする。

序盤であれだけ鮮烈な印象を残した村山だから、終盤でももーちょい会話が欲しかったこと以外は満足!
たまたま知ってからいきなり良質なミステリーに出会えた。そのまま開拓に乗り出したいところだが、お啓みたいな度胸が自分にはない…推理ものを気軽に読めるタイプじゃないから、今回みたいにたまたま良い感じのが転がっていてくれないかなーと密かに願っている笑

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2022年01月15日

Posted by ブクログ

初期の小説です。
今とは随分作風が違って黒川博行の若さを感じます。
今の作風が好きな人には少しもの足りなかもです。

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2017年04月29日

Posted by ブクログ

さすが直木賞作家だけに、リーダビリティはかなり高かったです。会話文主体でテンポ良く繋いでるだけ、って穿った見方も出来てしまうかも知らんけど(苦笑)物語そのものは、まあ中編ってこともあってか、ちょっと喰い足りなさが残る感じ。最終的に警察は何してたんや?って思うし、どうせ学生を名探偵にするなら、いっそそっちをもっと掘り下げれば、同じ長さの物語でも、更に味わい深さが増した気もするが、いかがなもんか。その点でいうと、もう一捻りした結末が欲しかったです。だんだん解き明かされていくのは良いとして、最終的にそれがそのまま真実という、ちょっと肩透かしを食らったかんじでした。長編だともっと凄いのかな?

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2017年04月07日

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第4回サントリーミステリー大賞受賞作。素人探偵と警察の対決といった構図で展開されるミステリーが面白い。実はタイトルを見て、しばらく敬遠していた作品なのだが、読んで良かったと思った作品だった。

滋賀県北部で見付かった身元不明の殺害死体の胃袋から発見されたキャッツアイ。京都の美大生、大阪の日雇労働者が殺害され、その死体からも相次いでキャッツアイが発見される。殺害された美大生の同級生の啓子と弘美が事件の真相に迫る。

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2015年07月07日

Posted by ブクログ

私が完璧に読み切った本の2冊目。とてもいい推理小説。先が気になってスラスラ読めた。だいすきな本です。

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2011年05月21日

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滋賀・京都・大阪で起きた殺人事件で宝石キャッツアイが被害者の胃の中や口の中から見つかり、京都での被害者大学生と同じ教室で知り合いだった女子大生二人がインドまで旅に出て真相を探る。

3府県の警察と張り合うように女子大生が事件を調べていくのにはちょっと無理を感じるが、ミステリーとしては面白かった。

第4回サントリーミステリー大賞受賞作。

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2010年11月11日

Posted by ブクログ

黒川氏デビュー作です。殺人事件を追う刑事と女子大生コンビの話。双方の別の角度からの捜査が、同じゴールを目指して終結に向かう形が巧く活かされてます。読む前は黒川作品なのに女子大生が主役?と少し不安だったのですが、杞憂に終わりました。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

滋賀の余呉湖で、身元不明で顔や指が切断された下が見つかった。その死体の胃から、宝石キャッツアイが見つかった。その後インド帰りの美大学生が毒殺され、口の中にはまたキャッツアイが…。

黒川博行らしい、関西弁バリバリの警察と一筋縄では行かない関係者の化かし合いをネックとする推理小説。しかし、警察側からはほとんど解決の糸口が見つからないというところが、展開の醍醐味である。

美大の後輩女性2人が無謀にも犯人探しのためにインドに旅立ち、なんとなく真相を掴んでしまうのだが、なんかスラスラと進みすぎてしまって、物足りない部分が強い。

警察の捜査の過程で、宝石などの取材した知識が違和感なく紹介されて厚みを出しているあたりは、1980年代の推理小説という感じで好感が持てる。その反面、大学生の部分の情報量の少なさよ。

事件の真相は、さらりと回想で明らかにされてしまうので、謎解きという部分も少々物足りないかなあ。

以前に読んだ『二度のお別れ』と同様、ちょっと物足りないなあとはおもうがそのへんは古い、初期の作品だから仕方がないのであろう。

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2020年09月02日

Posted by ブクログ

黒川博行の初期作品。
『離れ折紙』が良かったので読み返したが、古き良き国内ミステリだと感じた。
三府県にまたがる謎を、組織だってつめていく警察と、行動力だけで切り開いていく女子大生との二面から追いかける構図が面白い。
また、軽妙な関西人の描きっぷりは、初期の頃からの魅力だと再認識した。
3+

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2016年01月03日

Posted by ブクログ

著者の初期の作品です。サントリーミステリー大賞受賞作でした。以前読んだはずなのに読み返してみると、初めてのような気がします。
琵琶湖の北にある余呉湖で死体があがる。しかも身元が分からないように、顔はほとんど原形をとどめていないようにされ、指紋も取れないように指先は切断されていた。そして解剖すると胃から2カラットのキャッツアイが出てくるというショッキングな出だしです。最後まで飽きさせずに読み通せました。でも顔を潰すほどの残忍な殺人を犯すような動機とは思えず、少し違和感を覚えました。

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2015年07月26日

Posted by ブクログ

キャッツアイという宝石があるんですね。
知りませんでした。

ライトミステリーな感じで
読みやすかったなぁ

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2014年09月22日

Posted by ブクログ

警察側の堅実な捜査と、女子大生二人の二時間ドラマのような捜査行が交差する展開が、さすがに多少古さは感じるけど、面白い。
ミッシングリンクものとして読めば、「なぜキャッツアイが転がっていたのか」に対する答えには感心した。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

タイトルのとおり、キャッツアイという宝石がキーになる、
女子大生と刑事たちの本格ミステリー。サントリーミステリー大賞受賞作。

評判のとおり、関西弁炸裂!しかもやや古い関西弁(笑)
これはネイティブじゃなくちゃキツイよね。よく大賞取れたもんだ。
宝石に関わるウンチクが楽しかったです。骨董シリーズにも興味アリ♪

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2009年10月04日

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