とても読後感の良い、優しい気持ちになれるお話でした。
主人公の美少年サーシャは人狼と人間の女性との間に生まれた、半分は狼の属性を持ちます。
ある日、父は狼狩りで無残に殺され、残された母も後を追うように亡くなりました。
人狼であることを知られていけないと森を出なかったものの、食料が尽きて町に出ること
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悪い男にだまされて売春宿に連れてゆかれましたが、そんな急難から助け出してくれたのが国王アルベルトでした。
最初は二人ともお互いが何者であるか知らずに出会い、ひとめで強く惹かれ合った二人。
サーシャは「国王の癒やし」として城で暮らすことになりますが、やがて、悲しい真実を知ります。
それは愛する人の弟が遠い昔、狼に屠られたこと、更に弟を奪われたアルベルトが王として狼殲滅を命じたというものでした。
アルベルトにとって自分は目の敵であり、また彼も自分にとっては父を殺した憎むべき敵であるー、残酷な現実がサーシャの前に立ち塞がります。
晴れて両想いだと知り、結ばれた直後に知らされたあまりにも過酷な事実に、サーシャはもう自分は彼の側にはいられないとまで思い詰めるのですがー。
読んでいて優しい気持ちになれるのは、アルベルトとサーシャの両人ともが常に自分より相手のことを考えているからでしょう。
また、互いを想い合うカップルというのは割とどのお話でも見かけるのですが、この二人は自分たちだけでなく他の周囲の人たちのことも常に考えて行動しています。
そういうところがとても好感度が高かったのだと思います。
嫌みのないお話ではあるのですが、やはり、その分、ストーリー的には少し盛り上がりに欠けるかなという
若干の物足りなさは感じたというのが正直な感想です。
ラストは互いの恩讐も超えて晴れて心身共に結ばれた二人、良かったです。
アズベルトのサーシャに向けた真摯な告白、求愛の言葉が心に残りました。
「俺がおまえに触れたいように、おまえにも俺を欲しがってもらえたらそれだけで嬉しい。愛し方はひとつじゃない。上手下手もなければ、正しいやり方なんてものもないんだ。俺はただ、身も心もさらけ出してひとつになりたい。サーシャ、おまえと、、、、」
「どうか傍にいてくれ。どこにも行かないでくれ。俺の人生にはおまえが必要なんだ、サーシャ」
最後の二人の結婚式のシーン。
「今日まで、本当にいろいろなことがあった。けれど、今なら言える。愛を取るためにする努力ほど尊いものはなく、愛のために捨てるものほど惜しくはないものはないと。」
サーシャが亡き両親に心の中で語りかけるつぶやきも心に残りました。