林壮一のレビュー一覧
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社会学関連の学術書だと思い込んでたら、熱血教師の体験記ふうで、ちょっと期待はずれ。この手のノンフィクションなら、アメリカの著者がすでに多く書いているので。教育現場の崩壊とか、政策の不備とか、もっと深いところに突っ込んでくれているとよかった。
とはいえ、日本人でこのような経験をされる方はそういないし、それを日本人向けに日本語で伝えてくれる書物も皆無なので、そういう意味では非常に興味深い。自身や生徒たちをかなり美化しているのでは?と思われる部分もないことはないが、私自分もホームレスの人たちと接するボランティアをやっていたので、まったく異質の自分に彼らが心を開いてくれる瞬間のあの感激、というのは、共感できる。
普通、日本人には二つのタイプがある。1つは上流クラスに根付いた移民の子孫や企業から派遣された人、留学生など。彼らは「優秀な国民」という日本人のイメージにうまく乗っかり、仕事や学業に精出し、アメリカの抱える社会問題には無頓着である場合が多い。もう1つのタイプはわざわざ自分を「マイノリティーJap」と位置づけて、被差別者グループとアイデンティティを分かち合おうとする。著者は後者の傾向が強いかな。
ただ、どちらにしても、日本人というのは特殊な位置にいて、完全にグループに混ざることはできない。上流階級の日本人も、白人に混じるとコンプレックスを感じるし、マイノリティと混ざろうとする日本人も、ぎりぎりのところで相手がまったく違う世界に住んでいることを思い知らされ、壁の存在を認識する。
著者が、生徒たちを少しでも変えてやりたい、と思うのはすばらしいことだし、思うような結果が得られず逆恨みするのも理解できる。ただ、やはりどこかで線を引いて、相手のテリトリーを尊重しないと、お互いに傷つくことになるのでは?という疑問も残った。 -
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2008年11月4日、アメリカでは歴史的な1歩を踏み出した記念すべき日。それははじめて黒人がアメリカの顔(第44代大統領)に決まった瞬間でした。今もどこかで人種差別が絶えないアメリカで、大いなる変化を皆が期待した結果とも言えます。そして今、国民は彼に何を期待するのでしょうか。テレビなどで放映されるような裕福な家庭の人々ではなく、アルコール依存症などで悩む人や路上生活者といった、どちらかといえば底辺に近い“弱者”に位置する人々の生の声などを聞きながら、アメリカで生きる人たちの上辺だけではない本当の声を私たちに伝えてくれるレポート集的な1冊です。
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ネタバレ11/09 ベオグラードにて
米国の「底辺校」で働くことになる筆者。
米国生活ノンフィクションならではの独特の匂い、雰囲気が感じられて自分もその場にいるような臨場感がある。(そこは内容とは関係ないけど)
筆者の担当するレインシャドウ・コミュニティ・スクールに通う生徒のほぼ全員が片親家庭。
ここまで(親がドラッグ依存症で亡くなったり刑務所にいたり)ではないにせよ、自分の育った公営住宅の環境と重なるところを感じて、なんとも言えない気持ちになった。
やかましく騒ぐ近所の不良を見て不快に思うことが多々あったが、彼らは「被害者」だということ、そして「加害者」は果たして何なのか?と考えさせられた。
そして少し登場する富裕層の通う学校との対比が強烈だった。何不自由なく育った子は幼い頃からの読書経験などを通して頭脳も明晰で、習い事や課外活動を通して幅広い経験を積むので、純粋に優秀な人間に育つ。しかし、レインシャドウの子供は日々を生きることで精一杯であり、やさぐれて知的好奇心を削がれている。その結果、自分の価値を高めることもできず、仕事を掴めずに貧困のスパイラルを突き進む…。
理想的な人生逆転ハッピーエンドなんてなく、冷徹な現実を突きつけたまま終わる。
米国の光と闇を感じると共に、日本でもこれから格差がますます広がっていくだろうから対岸の火事として軽視できないなと思う。
教育格差には外から改善しようにも困難な事柄が多くあり、根本的に解決することは非常に難しい問題なのだと改めて感じさせられた。 -
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タイトルと内容が少し違って、国内外の優秀な重荷小・中学生のサッカー指導者へのインタビュー。
日本の一般的な部活では、指導技術や哲学を持たない親のボランティアが指導(お守り?)を担当しており、どうしても躾重視、楽しさ軽視になってしまっている。また勝利至上主義が補欠でずっとボールに触れない子を生み出して、結果として層の薄さにつながっている
一方海外ではサッカー文化が浸透しており、どのレベルでも楽しくサッカーボールをけることができる。ACミランやインテルのジュニアは2000人に一人くらいしかそのままプロには上がっていないが、その途中で脱落した子や漏れた子も別のルートでサッカーを続けることができ、また這い上がることが可能。 -
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アメリカ在住のノンフィクションライターであった著者が期せずしてチャーター・スクールの教壇に立つことになった。前任者が1ヵ月で匙を投げるほどの市内一学力が低く“荒れた”子供たちを相手にした教育現場の生の姿を綴ったルポルタージュ。
授業が始まったにも関わらず、音楽を聞く、ゲームではしゃぐ、眠りから覚めない等、学ぶ姿勢を取らないあまりのレベルの低さに、教師生活初日から洗礼を受けます。苦悩しながらも少しづつ生徒たちと向き合い、奮闘する著者。同時に生徒を知れば知るほど、その背景には家庭崩壊や貧困など、彼らだけの力ではどうすることもできない現実が浮き彫りになってきます。劣悪な環境から脱するためには、学ぶこと、夢を持つこと、強く生きることを著者は自身の経験から、そして教師として、彼らに強く、繰り返し訴えていきます。
この体験記を通して、読み手にはアメリカ下層教育の現状がストレートに伝わってきます。現実は明るいものばかりではありませんが、もがき続ける生徒たちにとって自身と真摯に向き合ってくれた大人の存在は、今後の人生の糧と成りうるように思います。 -
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ぇー、なんかめっちゃ読みやすかった。
新書って、難しくて読むのに時間がかかるイメージがあったんですが(笑)、これはさくっと読めたなー。
ていうか、すごい生の体験記だったので面白かった。
exciting storyっていう感じ。
アメリカの差別感、そして何より不平等の現れ方がこれまでとは。と思わされる本。日本は、なんて平和なんだ。どんなに学校が荒れようと、ここまでいかないっしょ。どっちかって言うと、日本の荒れ方は、ただの甘え。そんな感じすらする。(もちろん、個々で見ればいろいろなケースがあるのは理解していますが、全体として見て、の話です。)
正直、こんなアメリカの学校で教壇に立てる気がしないような。怖いような。自分なんかの人生経験では、良い先生になれないんだろうな。筆者だからこそできたのであろう。そんなことを思ってしまった。 -
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アメリカ在住の日本人ノンフィクションライターである著者は、恩師に頼み込まれ、ハイスクールで教鞭をとることになった。担当科目は「日本文化」。ところが、学級は始める前から「崩壊」していた……。
黒人ボクサーの光と影を描き、同時にアメリカ社会におけるマイノリティの生き様を浮き彫りにした秀逸なノンフィクション『マイノリティーの拳』。その著者・林壮一がネヴァダ州・リノの底辺校で教鞭をとった4か月(+その後)を描いたのが、本書。
荒廃する公立校への対策として、1クラス20人程度の少人数にして、より深い絆をつくろうとはじまった「チャータースクール」。しかし、〈10年以上が経過した今、チャータースクールは一般の公立校より水準が低く、劣等生の集団に過ぎないのが現状だ〉。日本のアニメやゲームがアメリカの若者に絶大な人気を誇るようになった今日、生徒が関心のある科目で学習意欲を高めようということで、免状もない著者におはちが回ってきたというわけだ。
初日の授業から、授業中にUNOをやる女子、ハッキー・サック(小さな布の玉を地面に落とさないようにけり合う遊び)に夢中の男子5名、MP3プレイヤーを取り出すやら、クラスメイトの髪をとかすやら、黙って教室を出て行くやら……というカオスに愕然とする著者。プロボクサーライセンスを取得した過去がある著者、まさに体当たりで、なんとかひとりひとりを授業にひきつけていく悪戦苦闘ぶりが描かれる。
生徒たちがもちろん好きでこんな底辺校に流れ着いているわけではない。移民で英語が不自由だったり、親が片方しかいないうえに放任だったり……つまりは格差社会の行き着く先として、この学校があるのだ。これがアメリカの現実であり、そしてこの先、日本が直面する現実であるかもしれない。
目の前にあるのは厳しい現実だが、ある種の希望を持ってこの本は描かれている。アメリカにも能力と熱意のある教師はいるし、ボランティアとして若者を助ける大人たちもいる。アメリカの懐の深さを感じるところでもある。
『マイノリティーの拳』はもちろんだが、『プリズン・ボーイズ―奇跡の作文教室』(マーク・サルツマン/築地書館)と合わせて読むと、なおさら味わいが深くなるかも。 -
Posted by ブクログ
2008年に民主党候補から大統領に当選したオバマ。日本でも話題になり、大統領選挙中継から、翌年の就任演説まで同時通訳で見た。
彼の主張で特筆すべきなのが二点。
・国民皆保険制度の創設。
・全てのアメリカンに大学教育を。
つい先日、米最高裁にて国民皆保険制度、通称オバマケアが5:4の僅差にて合憲判決が出た。アメリカでは常に共和党が自由を、民主党が平等をという、民主主義における最も重要な価値観のどちらを優先させるべきか?というバランスの命題の中で政権交代が行われてきた。
前共和党出身大統領の子ブッシュはネオコンサバティブを推進し、その象徴であり帰結がリーマン・ショックと言われている。
その揺り戻しで、初の黒人大統領が誕生した時には遠くアメリカの事なのに、日本でも何かが起こるのではないか、世界が変わるような感動があった。
大学の卒論では「アメリカ合衆国憲法の分析における禁酒法の意義について」というタイトルで書いた。自由の制限に対して、世界の近代民主主義の旗手を標榜してるアメリカが憲法に自由を制限する条文を盛り込んだ事に大変興味があったからだ。 執筆過程で、アメリカ史の勉強もした。まさかそのアメリカが、大学卒業後4年程度で黒人大統領を自分たちのリーダーに選ぶとは思ってなかった。
そうして就任したオバマが、就任時と比べれば2%弱低いものの、現在アメリカでは8.2%もの高い失業率から抜けだせずに居る。各種経済指標では、どうも煮え切られない経済回復の中、ダウ平均はリーマン・ショック移行の高値を超えた。
どうも株を持っているような富裕層と、オバマが平等へと是正しようとした貧困層との乖離がまだまだ埋められずに居るらしい。 その貧困層にスポットを当てたルポ本がこの本だ。アメリカで記者をやっていた著者がスラム街やデンジャラススポットを訪問し、アメリカの現状を様々な人種や年齢の人にインタビューしたものだ。
オバマへの期待、オバマへの不安、ブッシュよりはまだマシ。様々な意見を、滞米生活の過去と交えて評論しつつ、アメリカ社会の現状がよく書けていて大変面白かった。是非興味のある方はオススメです。