山田彩人のレビュー一覧
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例によって表紙買い。この作者の小説は初めて読みましたが面白かったです! こんな風に、理屈で進めていくものは読んでいて爽快感があり、こういうの好きだなあと再確認。もう一人探偵役がいて、主人公がおもに動き回る安楽椅子探偵ものですが、主人公が記憶を失っていることが引っ掛かりを生んでいます。当時のきみはそんなことしなかったのに、なぜ今、突き止めようとするのか? 問いを投げかけられるたび、真相究明はいったん停止しますが、おかげで読者も情報を整理できます。明らかになる真相に多少のモヤモヤ感はあるものの、人生ってそういうものだよね、とも思えます。その分、ラストの主人公の様子には溜飲が下がる思いでした。
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記憶障害に伴って、主人公の時間が高校時代から8年間飛んだ形になっているので、どこか北村薫の「スキップ」を彷彿させるテーマです。ただし、こちらの小説の主人公はやたらにテンションが高いです。文章が一人称で書かれているあたりから、この主人公はどこか新井素子作品ぽい雰囲気もあります。無題に前向きだし。
前例作品を挙げていますが、本作が二番煎じかというとそんなことはなくて、一見不可能とさえ思える謎の提示、そしてその解決はなかなか見事です。解決編が始まる31章にあえて【解決編」と入れているあたり、読者への挑戦の意図も伺えます。
主人公のテンションについて行くのに少し慣れが必要でしたが、いろいろと明らかにな -
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先日読んだ『御城の事件<西日本編>』がなかなか面白かったのでこちらも読んでみた。
この<東日本編>はどちらかと言えば時代物という枠を超えた感があるが、『御城の事件』という枠は守っているので良いか。
高橋由太「大奥の幽霊」
<もののけ>シリーズで有名な作家さんだが読むのは初めて。
『大奥で赤子の幽霊が泣いておる。成仏させてくれぬか』
将軍家綱の命により大奥を探ることになった主人公の忍びが行き着いた真相とは。
てっきり明るいもののけ物だと思っていたら、意外な顛末だった。
山田彩人「安土の幻」
幻の安土城を描いたという襖絵を写しとるために絵師の芳永がやって来たのは、豊臣方の軍勢に水攻めを受けて -
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読書録「今宵、喫茶店メリエスで上映会を」3
著者 山田彩人
出版 角川文庫
p116より引用
“「映画は一度観て、頭に知識として詰め込
めばいいというものではありません。主人公
たちと一緒にいい旅を経験すれば、もう一度
一緒に旅をしてみたい、またあの場所に訪れ
てみたいと思うものです。そしてもう一度旅
をすれば、違うものが見えてくるもので
す」”
目次から抜粋引用
“フレンチ・カンカン
スタンド・バイ・ミー
タバコ・ロード
ミツバチのささやき
偉大なるアンバーソン家の人々”
シャッター商店街を舞台とした、短編連作
小説。
会社を辞め、子供時代の一時期を過ごした
街に帰ってき -
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ネタバレ〇 概要
8年間の記憶を失った高校教師,藤野千絵。8年前に,親友の竹下実綺が死んでいたことを知る。学校から反対されているが,文化祭で「眼鏡屋が消えた」という劇を演じるという目標を実現させるために,記憶を失ったことを隠しながら,イケメンの探偵戸川涼介とともに竹下実綺の死の真相を探る。戸川涼介がたどり着いた驚愕の真相とは…?
〇 総合評価
ヒロインである藤野千絵が非常に魅力的なキャラクターである作品。探偵役の戸川涼介もそれなりに魅力的なキャラクターとして描かれている。ミステリとしては,丁寧な作りで好感が持てるが,サプライズを狙った書き方をしていないので,ミステリとしてのインパクトは弱め。しか -
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解決編を通じて言明されるにいたる主人公たちの思想。それは、組織され・権威付けられた正義への失望に基づく、自然化され・常識化された正論への回帰衝動。
例えば浅野いにおの作品の主人公たちが、いずれにせよ唾棄すべきものと看做している二つの価値観(実は一体の価値観)の間での運動。ディストピア的観点でものを見よとは言わないけれど、やはりどこか思慮深さに欠けた思考と蔑まずにいられない自分がいる。
物語の中盤まで繰り返し表明されている主人公の思考・行動様式における奔放さのようなものと、終盤(解決編)の事なかれ主義的な態度とのあいだのこの乖離。納得がいかない・・・。