清水俊二のレビュー一覧
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ネタバレ2021.4.6 ノートから転記
とにかく主人公のフィリップ・マーロウがちゃんと格好いい。この本は浅利がとくに大好きな本だが、正義への気持ち、許すこと許さないことにおいて、浅利が受け取ったであろうものが見えた気がした。感想が難しいのでここからさ思いついたことを脈絡なく書く。テリー・レノックスと昔恋仲だったアイリーン・ウェイドが久しぶりに会った彼を、変わってしまったくだらない男と言い、主人公もラストで会った整形した彼をもう別人だ、と言う。同じ人物に対しての認識の重なりが印象的だった。
ハードボイルド的というのか。警察を通じた、正義と社会の仕組みが必ずしも一致しないことへのもどかしい感情や、出 -
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『大いなる眠り』、『さらば愛しき女よ』と続いたフィリップ・マーロウ3作目の本書は一転して地味で素っ気無い題名。題名というのは読書意欲を喚起させるファクターとして私は非常に大事だと思っているのだが、文豪チャンドラーの作品とは思えないほど、飾り気のない題名はちょっと残念。
マーロウは盗まれた時価1万ドルと云われる初期アメリカの古銭を探してほしいという依頼を受ける。それはマードック夫人の亡き夫の遺品であり、夫人は息子の嫁で歌手のリンダが盗んだと疑っていた。
事務所に戻ると夫人の息子レズリーがいた。レズリーは妻のリンダのかつての勤め先のナイトクラブのオーナーに借金があり、金に困っていたと話す。マーロ -
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フィリップマーロウという探偵が主人公のシリーズですが、普通の探偵小説とは趣が違っているこのシリーズ中でも、特に不思議な雰囲気漂う内容でした。小説内に出てくる話題も、脱線が激しく(それはそれで魅力的なのですが)、まるで話の主題はどうでも良いことのように、それ以外のいわば外野が、魅力たっぷりに勝手に主張している、そんな感覚で読ませていただきました。
全体的に暗い雰囲気が漂っています。主人公が謎を解決していくのですが、それが気力を削いでいくような気にさせられます。なんというか、嫌な予感というものが当たっていく、それも次々に、そういう感覚でした。しばらく余韻が残りますし、しばらく読み返す気がしませんが -
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こんな有名な小説を、勘違いしていました。私。
ハードボイルドと言えばチャンドラー。
なのに。
フィリップ・マーロウ。
「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」という台詞で有名です。
確かにある意味タフですし、優しいとも言えますが、想像とは全然違うキャラクターでした。
一人称で書かれている地の文の人称名詞が「私」なんですよ。
ハードボイルドなのに!
そして会話の中では自分のことを「ぼく」と言っています。
ハードボイルドなのに!
木枯らし紋次郎のようなクールガイだとばっかり思っていたハードボイルドな探偵は、至極真っ当な私立探偵。
目の前で起きた殺人事件。一応警 -
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1943年発表だが、いささかも古臭さを感じさせない。
本作は、ファンが泣いて喜ぶ名台詞も、マーロウ自身のロマンスも、魅力溢れる脇役やシビれるシーンも、チャンドラーマニアからの人気もあまりなく、いうならば地味な作品に位置する。
けれども、警察権力に傷め付けられながらもストイックに謎を追うマーロウの姿は、ストレートな私立探偵小説の基礎となるスタイルを幾つも提示しており、読まずにおくのは勿体無い。
マーロウの冷徹な視点を通した登場人物たちの造形と、湖畔などの自然や様々な情景での描写力はハードボイルドならずとも、秀れた小説技巧の手本となるべきものだ。すでに完成されていたスタイルはさらに磨き上げら