清水俊二のレビュー一覧
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ハードボイルドの巨匠、レイモンド・チャンドラーの遺作。
この世の中は大体気に入らないことばかりだけど、自分の生き方にはつくづく嫌気が差すけど、それでもなんとか生きていくんだっていう、不条理で、でも不思議と前向きなんじゃないかと思う本。
最後の場面、主人公が絞り出す、
「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きている資格がない」
"If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive."
って台詞は、ヤセ我慢としてのダンディズムの極致だと。
ヘミングウェイの何かの作品で「全ての優秀な人間は楽天的だ」って台詞があるんだけど、それと同じ意味と読んだ。 -
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面白かった。フィリップ・マーロウシリーズの最後の作品、というかチャンドラーさんの遺作らしい。
依頼主もわからぬままに、ある女性の尾行をすることになったマーロウが…みたいな話。
チャンドラーさんの本って、殺人事件が起こって、それをマーロウが解決していくっていう形なんだけど、極端な話、犯人なんかどうでもよくて、マーロウがどういうふうに様々な局面に向き合うのかが一番面白いと思う。
一番の謎はマーロウは一体何を考えているのか、ってことな気がするし。
この本で一番びっくりしたのは、紳士な警官が出てきたこと!
他のマーロウシリーズでは、警棒で事件を解決とか、タフぶり過ぎているとか、悲しいくらい頼りにならなかったりみたいな警官ばかりが出てきてたので驚いてしまった。
訳者あとがきによると、チャンドラーさんが実際に取材した警官がとても紳士だったので、そういうタイプの警官も書かねば、と思ったらしい。へえ。
あとは、ホテルの老紳士も印象に残っている。
訳者のひとも言っているように、なんでこんな人物が登場する必要があったのかは全然わからないけど、雰囲気を持った、心に残る人物だった。
わき役ではホテルの受付のジャックとルシルも好きだった。
ストーリーにはあんまり関係ないけど、やたらラブラブなホテルのフロント係。いい味出してたと思う。
あ、あとリンダ・ローリングが登場したのにもびっくりした。 -
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面白かった。
これも再読だけど、いいのか悪いのか結構筋を忘れていたのでドキドキしながら読めた。
前科者の大鹿マロイが昔の恋人を探すなかで殺人事件を起こしてしまう。それ追っていくマーロウだったが…みたいな感じ。
主人公のマーロウが逆境に立たされた時にでるセリフが面白かった。
大鹿のマロイと一緒にいる時とか、刑事といっしょにいる時とか、要するに自分より腕力とか権力とかが上の相手といる時ほどユーモアが輝いている気がする。感想を書こうと振り返ってみて、好きな場面が冒頭でのマロイの酒場襲撃に出くわす場面と、ランドールやヘミングウェイと話してる場面なことに気がついてそう思った。 -
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レイモンド・チャンドラー『プレイバック』 (創元推理文庫)清水俊二訳から2024年、表紙も新たにアメリカの画家エドワード・ホッパー作品、田口俊樹訳で出版されている。残念ながら読んだのは1977年発行本になる。因みに『ロング・グッドバイ』は 2010年の村上春樹訳で読んでいるのだが...印象が薄く覚えが悪い。1976年には『長いお別れ』で清水俊二訳、更に2022年にホッパー表紙の 田口俊樹訳で発行、機会があれば読み比べをしてみたい。
『プレイバック』の私立探偵フィリップ・マーロウは相変わらず格好いい。薄汚れたコロンボ刑事やフケまみれの金田一耕助とは違い、いちいち立ち振る舞いが格好いいのだ。決め台詞は「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」人生で言ってみたい言葉NO.1~だがしかし、チャンドラー最後の作品『プレイバック』はなんやかんやで評価が分かれる作品らしい。 -
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ネタバレ金持ちの依頼人を訪れるところから始まる前半部の展開は、まさしくハードボイルドの典型だな。だけど、マールではなくてマードック夫人が夫を窓から突き落としていたという、なかなか悲惨なラストが用意されているにも関わらず、一度は解決したかに見えた事件の真相をマーロウが暴くことになる「大いなる眠り」や、煩雑に見えた展開が最後に見事に収束する「さらば愛しき女よ」ほどの完成度には達していない。よく書けた詩をなくしたうんぬんのところはちょっとよかったし、駄作というわけじゃないけどね。そういえばいい女も今回は出てこなかったな。
コインを盗んだ理由が偽造のためというのは思いつかなかったけど、それにしてもパレルモとかルイス・モーニーとかエディー・プルーとか強面の奴らが妙にものわかりがよくて、事件をややこしくしているだけというのはちょっとつまらん。それにマーロウの名探偵ぶりにも拍車がかかって、運の良さだけで証拠を集め、最後にいきなり事件の真相を推理してしまうのもなんかなあ。まあここで推理をしてマールをマードック夫人の屋敷から連れ出すだけで、警察にそれを知らせないというところがハードボイルドなのかもしれないけど。しかしマーロウって警察をないがしろにするよな。
今回の犠牲者は、マードック夫人の夫を別にして、フィリップ・アンスン、イライサ・モーニングスター、バニヤーの3人。いつもより少なめかな。
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裏で糸を引く意味だと考えても、「湖中の女」が確かに中心人物だと言えると思った。
また、マーロウの「私」視点で書かれてはいるが、地の文からマーロウが考えていることがわかるわけではなく、マーロウが見たものやしたことしかわからないし、そのほかに書かれていることもマーロウとその相手の会話文であるため、読者にわかることはマーロウの隣でマーロウの言動を眺めている場合と同じである。マーロウが気づかないことには読者も気づけないし、マーロウにしかわからないことは読者が知ることはできない。
主観というのは、自分にだけ都合が良いものだということがよくわかる物語である。客観とは、それこそマーロウの顧客がマーロウから得られるものでしかないこともよくわかるいきさつだった。
だが、読者がマーロウについて想像できることはあった。たとえば、「私」は、部屋が長い時間ずっと静かなことを「時が足音を忍ばせ」と表現し、実際にその後の場面で、自分と他人の足音に敏感なことがわかるため、探偵という職業に必要な繊細さを確かに持っていそうだと思える。また、時が足音を忍ばせた直後には、時間の経過を「三十分とタバコが三、四本たってから」と表していることから、「待つ」ことが日常のよくあるできごとであり、たとえ「待たされる」という望まない状況だったとしても、時計を見るのはだいたい30分間隔くらいという、気持ちに余裕がありそうな性格なのかもしれないとも思える。やはり探偵に向いている主人公だと思った。