常盤新平のレビュー一覧

  • 彼らは廃馬を撃つ

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     1935年に書かれ、1970年と1988年に出版されてはいずれも廃版となっては、三度の光を浴びて復刊したのが本書である。しかしこれもまた再版とはならず現在は廃版の状態である。「廃版」とタイトルにある「廃馬」に重なるイメージがあるのだが、本も馬も人もいつかは廃棄される運命にあり、撃たれる運命にあるのかもしれない。

     先日読んだばかりの『屍衣にポケットはない』で独特な感性とタフでぶれない軸を持った作家ホレス・マッコイの名を知り、二つの世界大戦の合間に展開するアメリカという社会の、大戦間ならではの独特な歪みをさらに検証することができるのが本書であると言っていいだろう。

     『屍衣にポケットはない

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    2024年03月17日
  • [新版]O・ヘンリー ラブ・ストーリーズ 恋人たちのいる風景

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    一つひとつの物語が15ページほどの短編集
    どれも心地の良い会話でロマンティック
    読み終わった後は心がポカポカします
    文章も読み易いが退屈する内容ではなく、非常にオススメ

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    2023年11月12日
  • 銀座旅日記

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    作家、翻訳家の常盤新平さんの、70代に入ってからのエッセイ集。
    「銀座」のタイトルと、表紙絵に惹かれて手に取った。
    銀座は、歴史と懐かしさを感じさせる大人の街で、私にとっては雲の上のようなイメージ。
    今はどうなっているか知らないけれど。

    一日おきにパンとお粥の朝食、入浴洗髪髭剃、猫に餌をやるところから始まるのだが、多彩な読書と交友の記録に、なんだか全然飽きない。
    銀座三越の地下二階「ジョアン」で甘食を買い、浦安のおばあちゃんが握る寿司屋に行く。
    『ニューヨーカー』を毎週愛読(洋書は高いなあ…)
    読むことと食べることの他に楽しみがない、とやや年寄りの繰り言めいた記述も多いが、「コレステロールが

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    2018年03月06日
  • 銀座旅日記

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    新年早々、オッペンハイマーの作品で失敗したので次は絶対に
    はずしたくなかった。なので、本書である。常盤新平氏は私の
    好きな作家であり、翻訳者である。

    既に休刊となった雑誌「ダ・カーポ」に3年半に渡って連載された
    日記風エッセイである。うん、当たりである。

    70代前半の常盤氏の日常は非常に活動的だ。タイトルにある銀座
    ばかりではなく、神保町や新宿、平井や浦安へまで足を運んでいる。

    それがほとんど電車なのだ。理由:電車の中で本が読めるから。

    そうなのだ。電車の中ってちょっとした書斎なんだよな。家にいる
    より読書がはかどるんだもの。

    行きつけの煙草屋で煙草を買って、行きつけの喫茶店(カフェ

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    2017年08月19日
  • 新装版 諸君! この人生、大変なんだ

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    「山口瞳は,大人の男としての教科書だ」
    そういう風に思う.
    どうも,こういった人を好むのは,「おじんくさい」とか「年をごまかしているのでは」なんて言われるきっかけになってしまいそうだけれども,良いものは良い.
    丁度,山口瞳が亡くなった1995年は,日本がとても大変な年だった.年明け早々,神戸で大きな地震があり,そして東京では3月に地下鉄サリン事件が起こった.そんな中,山口瞳は亡くなった.
    大好きなアンクルトリスと江分利満氏が重なって,そしてなおかつそこに山口瞳がかぶって,何か一つ時代が終わってしまったような気がした.20歳そこそこの若造でさえ何か感じる物があった.
    それから,山口瞳の著作を一通

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    2016年02月18日
  • 新装版 諸君! この人生、大変なんだ

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    著者がサントリーが寿屋といった頃の宣伝部員として、新聞広告として綴ったエッセイ集。会社に入って間もない時期に読んで、随分と励まされました。若者に対する大先輩からの助言として貴重な一冊。
    “新入社員諸君! この人生、大変なんだ。そうして、本当の味がわかるのは、苦しみつつ、なお働いた人たちだけなんだ。”

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    2009年12月27日
  • 新装版 諸君! この人生、大変なんだ

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    新入社員、新成人に向けたエッセイ。サントリーの名広告とその他エッセイをまとめた一冊。
    山口瞳の作品に深い洞察力と実生活から生まれた金言がある。ある種酔っぱらった中年男のクダ話ではあるが、こんな話をわざわざしてくれる、大先輩も今や少ないだろう。
    時々読み返したい一冊。自分が若い時に読みまた中年になって読み返すとさらに味わい深い。

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    2025年11月28日
  • 大統領の陰謀〔新版〕

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    ネタバレ

    ニクソン大統領を最終的に辞任に追い込んだウォーターゲート事件を報道したジャーナリスト、ホブ・ウッドワードとバーンスタインが自らその顛末を語ったのが本書だ。ロバート・レッドフォードによって映画化もされている。

    ジャーナリズムとしては記念碑的な事件を扱った本作は、ウォーターゲート事件というものの顛末を分かりやすく読もうとすると大きく期待を裏切られる。本作はむしろ彼らがウォーターゲート事件をきっかけとして、ニクソン大統領の陰謀を明らかにするまでの苦闘を描いているのであり、とにかく登場人物も多く出てくるし、描写もかなり行ったり来たりする。

    正直に言って当時のアメリカに住んでいれば理解できたかもしれ

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    2025年07月13日
  • 彼らは廃馬を撃つ

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    映画『ひとりぼっちの青春』の原作。1935年にアメリカの作家ホレス・マッコイによって書かれた、マラソン・ダンス大会を題材にした小説。

    マラソン・ダンス大会とは、最後まで踊っていた男女ペアが優勝する、ダンスの耐久コンテストのこと。1時間50分踊っては10分間の休憩の繰り返しで、その10分間に睡眠や食事、風呂に入ったりと必要なことを済ませるという、なんともクレイジーなコンテスト。小説はフィクションでも、こんな狂騒的な催しが実際に行われていたのは驚きでした。

    あらすじ:
    ときは、大恐慌後の不況下のアメリカ。映画監督を目指すロバートが、エキストラで生計を立てる女優志望のグロリアと街で偶然出会います

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    2025年04月09日
  • [新版]O・ヘンリー ラブ・ストーリーズ 恋人たちのいる風景

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    7編の短編集。ラストは殆どの人が知っていると思われる『賢者の贈り物』。
    O・ヘンリーの作品は心がほのぼのと温まり心地よい。

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    2023年04月27日
  • 大統領の陰謀〔新版〕

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    ネタバレ

    マスコミ、特にテレビについての不信感が個人的に強いです。バラエティは面白く見れるのですが、報道という観点からすると、ポジションテークを明示しない報道姿勢が私にはとても狡猾に感じるのです。とりわけ政治問題に対する報道はそうです。どういう立場での報道なのか、旗幟鮮明にせよ、さもなくば立場が分からない、問いたくなります。

    さらに時代は一応総つぶやき社会へ。誤字脱字にあふれたネットニュース(人の事言えないけど)、個人の伝聞(ポスト)が即確からしく語られる昨今、何が信じられるニュースソースなのかよくわからくなってきました。むしろ気概のある個人の発信情報の方が時として信頼できる可能性も増してきました。口

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    2022年12月19日
  • 片隅の人たち

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    「片隅の人々」常盤新平。

    ●1950年代、東京。アメリカ語の翻訳家、それもミステリー、ハードボイルドの翻訳家を志す、狭い狭い、出版業界の「片隅の人々」の人間模様。連作短編。

    ●貫く主人公は「私」で、高度成長とともに少しづつステップアップ。

    ●文章がうまい。すごくうまい。地味にうまい。

    ●描写の向こうに気負わない自分史。それが小津安二郎風味の青春物語に、昭和30年代〜の戦後史にもなっています。

    ●不安、恍惚、コンプレックス、恋人との暮らし、生活と夢。。。
    これはある年齢以上の男性読者のためのものなんだろうなあ。その割り切りが素晴らしい。

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    2021年08月22日
  • 新装版 諸君! この人生、大変なんだ

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    新成人に告ぐ!新入社員に告ぐ!
    サントリーの広告に書かれていたエッセイ集。
    オトナ社会で生きるための心構えを教授してくれる。
    ある立派なオトナの、体験に基づいた言葉というのは貴重なものだ。
    この世知辛い世の中、それでも楽しく前向きに生きて行こうじゃないか!!

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    2009年10月04日
  • 大統領の陰謀〔新版〕

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    ★3.5

    有名な本。

    一度読んでみようと思っていたのですが、3連休もあったので読んでみました。

    まず思ったのが、登場人物が多すぎ。中身としては、真相に迫っていく緊張感があって面白いのですが、いかんせん登場人物が多すぎて「あれ?この人なんだっけ?」という事が多く、中身が頭に入るのに一苦労でした。

    アメリカは、こういうちゃんとした報道機関があって羨ましいばかりです。

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    2024年02月24日
  • 片隅の人たち

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     アーウィン・ショーを訳していた人といった程度しか知らなかった常盤新平さんであるが、本書に登場してくる翻訳者の面々に関心があったことから手に取ってみた。

     本書は小説であるから、実話そのままではないだろうが、登場する翻訳家も実名は出ていないが1960年前後の早川書房周辺の人たちだし、翻訳した作品の大体の記述もあるので、多分あの人がモデルかなあと推測するのは、とても楽しい。

     翻訳家を目指してはいるが、まだまだ先の見えない若者だった作者の前に登場する師匠や先輩、同輩の人たちはほぼ変な人たちであるが、ほのぼのするものから不思議なもの、しんみりするものと、様々なエピソードが描かれる。
     また、本

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    2021年01月23日
  • 彼らは廃馬を撃つ

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    良い本面白い本というような次元でなく、独り手にてパワーを持っている本があり、そういう本かと。ハリウッドの海岸沿いに耐久マラソンダンス大会が開催される。なんて楽しそうな粗筋なんでしょう。「ひとりぼっちの青春」という映画が作られたそうで、ジェーン・フォンダ役の女子の鬱が周りを疲労させるタイプで、パートナーの、ハリウッドで監督を夢見る主人公は関係者の目に留まるように粛々と行程を全うする。主催者の空気読まない表面だけの明るさ。対照的に何やっても気に入らない鬱。主人公にじわじわ神経の磨耗がすり寄る。

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    2019年04月09日
  • はじまりはジャズ・エイジ

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    米国において、雑誌の斜陽は1970年代に語られていた。広告主はテレビにシフトしていった。これ、今やテレビが斜陽だもんね。うーむ。

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    2012年09月13日
  • 銀座旅日記

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    常磐新平『銀座旅日記』(2011)を読む。
    文庫オリジナル。飄々とした文章がいい。
    いまはなくなってしまった新橋Tony's Barのカウンターで
    ひとりグラスを傾ける常磐を見かけたことがある。

    本書の文体は常磐が敬愛する山口瞳や、
    文中に何度か出てくる池波正太郎の日記をほうふつとさせるが
    本人は百も承知で書いているのだろう。
    読書と散歩と飲食が好きな老人の繰り言は
    どこか憎めぬ味わいがある。

    人がどう老いて、どう死んでいけばいいのか。
    僕にはとうてい答えなど分からぬが、
    つい参考にしてみたくなる一冊だ。

    2003年2月から2006年8月まで
    『ダカーポ』(マガジンハウス)連載

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    2011年04月11日
  • ファーザーズ・イメージ

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    大人になる前って、みなさまおとーちゃんが嫌いよねぇ。
    な、お話し。でも、お父様がとっても愛すべきヒトなんだわ。これが。
    そして、結局兄弟の中で著者の方が一番愛されてたって言いたいの。これが。

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    2009年10月04日