梶谷懐のレビュー一覧

  • 幸福な監視国家・中国

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    この本に手を伸ばしたきっかけであり、読書前に抱いていた疑問でもある「中国国民は一体どのような価値観でもって、この監視社会化を受け入れているのか」という問いに対する答えが納得のいく形で得られた。

    ・儒教的価値観(一部の教養があり、徳を積んだ者のみが天理に従って統治する資格をもつ)

    ・市民公共性が土台や受皿が無いこと(公権力や大企業によるデータの収集や活用方法に対して開示を求めたり、監視する力が働きにくい)

    以上が印象に残ったのと、キーワードなのかなと思った。

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    2020年12月18日
  • 幸福な監視国家・中国

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    梶谷懐(1970年~/現代中国経済論を専門とする経済学者/神戸大学大学院経済学研究科教授)と、高口康太(1976年~/中国の社会、ネット事情などに精通するライター、翻訳者、リサーチャー)による共著。
    私は仕事柄、何人かの中国人の友人を持っているが、彼らとの連絡にはLINEは使えず、Wechatを使用しているし、中国に出張した際に(専用のアプリがなければ)GoogleもFacebookも使えないことは経験しており、中国の情報・通信統制には以前より関心を持っていたが、今般の新型コロナウイルス感染が中国・武漢で確認された当初、街頭でTVのインタビューを受けた若い中国人女性が「中国では、人びとの行動を

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    2020年03月29日
  • 幸福な監視国家・中国

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    ある時期を境に中国、特に上海や深圳といった経済都市の犯罪は減少し中国人のマナーが劇的によくなった(たぶん今や日本人のマナーのほうが悪い)。テクノロジー&経済大国となった中国を「独裁国家」で紋切りしてしまうことに前々から違和感を感じていた。その理由が監視社会の「光」に焦点を当てた本書でクリアになった。

    強力な一党体制と圧倒的な内需型経済を有す超巨大実験場の中華人民共和国は、アリババやテンセントが先導したIT革命によって一気に超先進国に躍り出た。リバタリアン・パターナリズムに基づくアルゴリズム的公共性は計画経済の進化系といえよう。そして功利主義のもと、『1984』的ディストピアではない、国民が幸

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    2020年02月18日
  • 幸福な監視国家・中国

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    以前、中国に行ったとき、空港からホテルに向かったタクシーの中に財布を忘れてしまったことがあった。ホテルの人に伝えたところ、すぐにビデオをチェックすると言って確認をしてもらった。結局夜なのでナンバーが見えなかったということだったのだけれども。その後、警察に行ったとき、当たり前のようにテレビのモニタで空港の様子を見て探そうとしていた。結局、見つからなかったが、ビデオで見られているということが全く当然のことと認知されていることに少し驚いた。

    この本で書かれているように、現実世界では監視カメラやWeChat payやAlipayなどのスーパーアプリを通して行動を把握され、もちろんインターネットでもそ

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    2019年12月22日
  • 幸福な監視国家・中国

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    中国の現状(もう、少し遅れているかもしれないが)を知るだけでなく、社会の中で、「監視」、「テクノロジー」をどう使うのか、それが、市民社会の中にどう位置づけるべきか。考えさせられる本。功利主義のための監視社会。日本には、スゴイ馴染んでしまいそうで、怖いなぁ。

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    2019年12月08日
  • 幸福な監視国家・中国

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    「監視社会」をめぐる対立
    ・「現時点における気持ちの悪さ」⇔「将来における気持ち悪さの消滅(=慣れ)」
    ・後者にしても、一定の時間や手続きといったものが必要だという事実と矛盾はしない
    ・「幸福な監視国家(社会)」の本質は、「最大多数の最大幸福」の実現のため、その手段として人々の監視を行う国家(社会)、ということになる。
    ・伝統中国:「公論としての法」、「徳」による社会秩序の形成

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    2019年11月20日
  • 幸福な監視国家・中国

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    引用で興味を惹かれた本:
    「1984」オーウェル・ジョージ
    「すばらしい新世界」ハクスリー・オルダス
    「ホモデウス」 ユヴァル・ノア・ハラリ
    「セレモニー」王力雄

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    2019年10月05日
  • 幸福な監視国家・中国

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    キャッシュレスが進んでいるとか、監視カメラがすごいとか、アネクドータルにはいろいろ聞く中国で進行する「監視国家」化の実像(もともとギグエコノミー的な働き方の人が多かったとか、意外とソフトな形をとる検閲とか)をわかりやすく伝える。それだけではなく、その動きをマクロな歴史や社会観の中に位置づけようとするなかなか野心的な新書。功利主義だなんて言葉、高校生の頃に倫理の授業で勉強して以来かも。中国で起きていることが他の国々とも無縁ではないことを語る一方で、中国の独自性も整理してくれる。

    あとウイグルのケースは正真正銘のディストピアで、その危険性は無視できない。

    ふとした思いつき。。。。
    見ようによっ

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    2019年09月12日
  • 幸福な監視国家・中国

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    ネタバレ

    「こういう本は今の日本では売れないだろうなぁ・・」と「こういう本が出版される間はまだ大丈夫かなぁ・・・」というのが、本書を読み進める時に感じた最初の感想だった。
    世の中に数多ある中国すげー本でもなければ、中国はもうすぐ破滅する的な本とも違う、中国で現在進行形の事象と、その現象を進めることが可能になる(ルールや主体ではない)原理を読み解こうという本書は決して多くのターゲットに刺さるものではないだろう。著者の一人である高口さんが担当されている部分では中国の最新事例を楽しむ読む人間はそれなりにいるだろうが、そういった人たちが梶谷先生の部分を噛み締めて読むというのは、あまり想像が出来ない。
    難しいし、

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    2019年08月20日
  • 幸福な監視国家・中国

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    世界で最もデジタルテクノロジーのトライ&エラーを高速で繰り返し、それを経済成長の根底に据えることに成功している中国。昨今の”中国イノベーション論”に代表されるように、日本を始めとする先進国は中国に学ぶべき、という一面的な論説も多々見かけるようになってきた。

    一方で視線を大都市からウイグルに向ければ、そこには中国共産党による政治弾圧が行われ、デジタルテクノロジーが弾圧を容易にしているという暗部があるのも事実である。そしてその暗部は徐々に香港へと向けられようとしている。

    こうした二面性のある中国をどのように理解すればよいのか。本書では中国を長年研究してきた経済学者と、中国で今起こっているデジタ

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    2019年08月17日
  • 中国経済講義 統計の信頼性から成長のゆくえまで

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    ネタバレ

    中国経済について興味を持っている人であれば断片的には聞いたことがあるであろう情報を一冊にまとめたという感じで、大学の授業でいうと理論的に整理された学問を学ぶというよりは、教養段階として様々なトピックを学ぶと行った趣の一冊。

    「中国すごい論」を語る人も、「中国ダメ論」を嘯く人も、どちらも本書を読むことはないだろうけど、そういった人たちこそ本書を読むべきであるし、本書を正しく理解できた人はそういった両極端な意見を冷静にやり過ごすことができるようになるだろう。

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    2019年07月18日
  • 中国経済講義 統計の信頼性から成長のゆくえまで

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    20190109〜0124 中国経済の現状と今後の見通しについて、オーソドックスに分析し平易に解説している良書だと思う。中国については、感情的な見方によって大分左右されるから、こう言う冷静な見方は貴重。欲を言えば政治情勢や国内における思想、民族宗教的統制の現状も踏まえて欲しかったが、それは本書の守備範囲を超えるものなのだろう。

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    2019年01月25日
  • 中国経済講義 統計の信頼性から成長のゆくえまで

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    知りたかった情報
    根拠なく
    中国万歳
    中国崩壊
    って声が大きい人が騒ぎすぎて見えにくくなっていたところに本物登場
    そうだよね計画経済から急に市場経済になったのだから市場経済のものさしの経済指標で正確に捉えられるわけもなく
    その観点を得ただけでも儲けもの

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    2018年12月23日
  • 中国経済講義 統計の信頼性から成長のゆくえまで

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     全体感として、正論としての経済学から見た足下の中国経済の解釈である。各章のテーマがほどよい分量でまとめられていて読みやすい。
     中国経済に関心を持って見ている人にとって、特別に新しい発見はないかもしれない。それでも整理はなるところが評価できる。
     参考文献も非常にわかりやすくまとめられており、それぞれのテーマに対してもう一歩も二歩も理解を深めていく窓口としての役割も果たしている。
     ここから先に進むとすれば、本書の内容について、中国に住む中国人の研究者であればどのように書くのか、そんなものがあれば比較研究を通して、本書が議論するところへの正解に近づけるかもしれない。中国の書店でそんな一冊を探

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    2018年11月04日
  • 日本と中国経済 ──相互交流と衝突の100年

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    中国と日本の関係を経済面から歴史的にみている。
    戦前の日本企業の中国進出は学者の中では肯定的に捉えるものが多数。
    戦後日本の中国との接し方などいくつかの見方が提示されていて学びになる。
    中国と日本のものづくりは分野が異なり住み分けができている。
    日本のブランドでも中国で作られており、日本製品の非売運動は中国にもマイナス。

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    2017年01月30日
  • ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界

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    ネタバレ

    中国経済を悲観的でも楽観的でもない一歩引いた視点で書かれているのだなと感じました。

    各章の終わりの小括は、読者にわかりやすく書かれているのだろうと感じましたが、それでも私には難しかったです。

    不動産の合理的バブルが限界を迎えて中国経済は先行き真っ暗なのかと思っていましたが、まだ改善の余地があるのだとわかりました。

    「あなたがどれだけ中国のことが「嫌い」だったとしても、中国経済の行く末に無関心でいることはできない」と書かれていましたが、まさに私はそういう心境だと思いました。

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    2025年09月05日
  • ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界

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    不動産市場の低迷に喘ぐ中国経済の危機とEVをはじめとする中国の新興産業の快進撃と生産能力過剰という二面性のなか、いま中国に何が起こっているのか解説している。

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    2025年08月01日
  • 不平等・所得格差の経済学――ケネー、アダム・スミスからピケティまで

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    すげー面白そうなタイトル。
    目次を見ても、
    取り上げられる経済学者はケネー、アダム・スミス、リカード、マルクス、パレート、クズネッツ。
    一応経済学部卒の私は知ってなきゃいけない古典経済学の学者たち、
    そしてフリードマンやピケティの名前も出てくる。

    自分の問題意識からして、この400ページの分厚い本、何とか食い下がれるかと思ったが、、、
    手も足も出なかった。

    せいぜいわかったのは、
    古典経済学者の人たちは、階級による格差はあまり気にしてない、ってことか。
    階級は前提。経済学者はみな恵まれた立場にいるのだ。

    でもそれだけじゃねえ、、、

    まあ私の持論は、、、
    所得格差は実力だけじゃなく運によ

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    2025年05月12日
  • 所有とは何か ヒト・社会・資本主義の根源

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    戦時・戦後沖縄の極限状態で所有という規範が解体されたとき、タンザニアの不安定な社会で物のやりとりは恩を売る、つまり人同士のつながりをつくる行為である、といった内容から、コンベンションとしての所有権、ゲーム理論や社会システム論からみた所有まで、所有権について様々な議論を集成。

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    2025年04月12日
  • 幸福な監視国家・中国

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    筆者が描く、主に民間による個人信用データを活用した社会秩序維持・拡大による「幸福」の向上は、中国の経済成長が順調だった時代には当てはまるのだろう。

    筆者は「天理」だか「徳」だかという現代中国に生き残っているかどうかもわからない概念に依存し、ある意味性善説に則り功利主義が全体最適に帰結するかのように説くが、コロナ禍の上海での人権弾圧や筆者も指摘するウイグル族に対する民族浄化、昨今の不動産バブル崩壊に端を発する経済停滞、政府による「国進民退」という民業圧迫、突発的無差別殺人などの社会不安に直面し、観光客が本邦で無作法に我が物顔で振る舞う彼の国に対して、筆者たちは何を書くのだろうか。

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    2024年11月25日