【感想・ネタバレ】幸福な監視国家・中国のレビュー

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Posted by ブクログ

終わりの部分はまさにその通りだと。気づかないから気づかれない、慣れてきたから慣れてしまった。「監視」という言葉自体の敏感度や解釈もどんどん変わっていく中で、かけがえのないもの、最後まで守り続けるレッドラインは一体どこでしょう。

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2022年02月05日

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本書は昨年(2019年)の8月に刊行されてから、大変話題になり、かつ其の後起きたコロナ禍への中国の対応/管理手法の一つとして個人情報を国が使って監視したことから、さらに注目された本だ。

これについては否定的な視点はありつつも、実は昨今(特にコロナ禍以降)の日本においても、このような手法を肯定的に捉える風潮が強まり始めていることは、政治を司るもののみならず、国民の側にもメリットがあるわけであって、その点を、中国ではどのように捉えられているのか?ということを理解しなければ、この『幸福な監視社会・中国』というテーマを理解したことにはならない。むしろ、この点こそが『幸福な』と付く理由であり、中国に限った話ではないことを物語っており、これこそが、本書の優れて今日的な評価を高めている理由だと、私は理解している。

さて、本書の主題である"国家による個人情報の監視システム"については、正確に(中国で)何が為されているのか?を把握している人は少ない、と著者は説く。

それは、我々読者側が持っている「先入観」による視界の歪み、正確な情報の欠乏、及び、システムの実装のスピードがあまりに早くて専門家でさえ状況を追い切れていない、などがあると言う。

最初に挙げた「先入観」は、『中国の社会体制が普遍的人権や議会制民主主義、法の支配と立憲主義といったいわゆる「普遍的価値」にもとづくものとは根本的に異なるため、変化の激しいテクノロジー、特に「監視社会」に関係するそれが、一体どう使われるかわからないという「不確実性」に対する漠然とした恐れ(p.18)』が、我々に先入観を持たせてしまっており、かつ、昨今議論されている『中国のような権威主義的な国家こそ、これからのAI+ビックデータの時代で覇権を握るだろう、という言説がそれなりの説得力を持って展開それ始めていること(p.18)』もそれらを補強し、さらにコロナ禍で中国政府が見せた"鮮やかな情報管理"が、それらを確信に近いものとして多くの人に印象付けたと言えるだろう。

第6章:幸福な監視国家のゆくえ”にて「功利主義(こうりしゅぎ : utilitarianism)」というキーワードを取り上げている点に、私は非常に妙着した。

この「功利主義」、『行為や制度の社会的な望ましさは、その結果として生じる効用(功利、有用性、英: utility)によって決定されるとする考え方 (Wikipediaより引用)』とあるが、これを別の言い方をすると「最大多数の最大幸福」というベンサムの命題があるが、この考え方は、特にビジネスパーソンにとっては親和性が高く、また、本書の主題である「監視社会」とも親和性が高いということは、次の一節の引用で十二分にご理解頂けると思う。

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つまり、個人の属性や行動パターンによって反社会的行動を取りそうな人たちに対しては、あらかじめ行動の自由を奪っておくことが、違法行為を犯して刑務所に入れられる可能性を減らすので、むしろその人たちのためになる、というわけです。(p.172)
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そして”第7章:道具的合理性が暴走するとき”において、この仕組を最大限生かしている事例として、現在も中国政府が世界各国から非難を浴びている、新疆ウイグル自治区における再教育キャンプの実態について取り上げている。

これは、ウイグル族住民の個人情報のみならず、生体情報(DNAや虹彩のデータ、話し声や歩き方)まで収集して監視網を強化し、かつ、再教育キャンプにて思想矯正を行うという、「現代の民族浄化」とでもいうべき実態について挙げた上で、これら監視システムの道具としての合理性を突き詰めていくと、こういう”暴走”ともいうべき人権無視の状態が生じることに警鐘を鳴らす。

このように否定的な視点はありつつも、実は昨今(特にコロナ禍以降)の日本においても、このような「功利主義」と「監視社会」を肯定的に捉える風潮が強まり始めていることこそが、本書の書名に『幸福な』と付く理由である、と、私は解釈している。

本書には、結論は無く、以下のまとめの言葉がある。

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これらを踏まえた上で、私達はどのようにすればよいのでしょうか。月並みかもしれませんが、やはり重要なのは、テクノロジーの導入による社会の変化の方向性が望ましいことなのかどうかを、絶えず問い続ける姿勢をいかに維持するかということに尽きると思います。(p.239)
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本書を読んで語りたいことは多々あるが、この中国の監視システムを「気持ちが悪い」と言いながらも、その基盤があって生ずる便益を羨望(せんぼう)する私達自身が、果たしてどのような社会を望むのか?という問いを投げかけられているのだ、と私は理解する。

そして、このようなテクノロジーの発展というものについては、『確かにテクノロジーを敵視して、その導入を拒むのは「ラッダイト運動」(産業革命期のイギリスで起こった機械の破壊運動)の頃から繰り返されてきたことであり、同じことは監視技術の導入についても言えるでしょう。(p.239)』と喝破している。

そうなのだ、我々は、いずれこれらを、喜んで受け入れていくのだ。今持っているこれら社会システムへの嫌悪感を忘却した上で。

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2020年07月01日

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中国の監視社会について、外部のイメージと実態との解離を分かり訳す解説している良書。監視社会は日本を含む民主主義国家と異質なものではなく、その延長上にあるものもしれない…ということがよく理解できた。

作中でも言及された「1984」と「すばらしい新世界」に加え、PAYCHO-PASSを観ると更に楽しめると思う。

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2020年02月18日

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 伊藤計劃『ハーモニー』を読みながら思い出したので、改めて手に取る。中国におけるテクノロジーを用いた「監視社会化」の進展は、『1984』的な権威主義的全体性というよりは、ハックスリーの『すばらしき新世界』のイメージで捉える方が適切であり、主にデータを譲渡することと利便性の向上とのバーターが意識されているという意味で、データ資本主義とAI/ITを用いた統治をめぐる世界史的な同時性の文脈で理解すべき、という議論が展開されている。中国の事例を理解する上では、市民的公共性という問題意識の稀薄さという論点だけでなく、統治者に「徳」を求める儒教的な価値観の回帰という契機が重要だという記述も。

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2023年09月13日

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中国のインターネットによる監視の状態と生活を描いたものである。最後のウイグルについての記載はインターネットによる監視の説明が弱いような感じを受けた。
 ただ、中国のネット監視の現状を考えるにはいいのかもしれない。

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2023年01月05日

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ネタバレ

今中国では、アリババ、テンセント、ファーウェイといったIT企業が目覚ましい発展を遂げる一方で、中国政府は監視カメラの設置やIT企業に対する統制によって監視国家を形成しているようにみえる。デジタル社会の到来は、非常に大きな利便性をもたらす一方で監視社会を作り出している。そして中国の人々は、それを忌避するのではなく、むしろ歓迎しているのではないか?それは決して民主化が遅れているといった中国固有の問題ではなく、人類共通の課題なのではないか。筆者の問題提起はここにある。
香港への弾圧や台湾への強行姿勢、ウィグル族の強制収用などから、中国は権威主義的で民主化されていない国、というイメージが強い。そのため中国で行われている監視カメラによる監視やインターネットの統制について聞くと、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』の世界をダブらせてしまうことも多いようだ。しかし、むしろ“オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』が描く世界のほうによっぽど近い”と筆者は指摘する。
『すばらしい新世界』で描かれた世界では、“人々は煩わしい家族関係や、子育て、介護などから解放され、やりがいのある仕事を持ち、不特定のパートナーとの性的関係を含む享楽的な生活を謳歌して”おり、“人々が己の欲望のままに振る舞ったとしても、決してそのことで社会秩序が崩壊すること”はない。「安全」で「便利」な社会なのだ。
中国では、モバイル決済を運営するアリババやテンセントが提供する「信用スコア」が普及している。ネットショッピング、モバイル決済、ネットの人間関係、保有資産、学歴などのデータをもとにAIがスコアを算出する。このスコア基に融資の審査からその人の社会的信用までもが評価されている。一見不気味なようにも見えるが、このスコアを上げれば、学歴もなく大きな企業に勤めていない人でもお金を借りることができる。(日本では企業や役所などの組織に勤めていないフリーターはクレジット審査通過が難しくお金を借りることもできない。)行政の電子化も急速に進んでおり、かつては日本以上に数多の申請書が必要であったが、今では顔認証技術に基づいたスマホ・アプリだけで完結するようになり始めている。利便性は格段に向上している。監視カメラ網についても、犯罪の抑止、摘発に効果を示している。「安全」、「便利」さと「プライバシー」を天秤にかけ、「中国の消費者はプライバシーが保護されるという前提において、企業に個人データの利用を許し、それと引き換えに便利なサービスを得ることに積極的だ」と、検索サイト最大手百度の創業者であるロビン・リーは言う。“近年の中国社会、特に大都市は「お行儀がよくて予測可能な社会」になりつつある”。
新しいデジタル・テクノロジーが発展していくに従って「監視社会化」が進行することは不可避のように思える。それは日本も例外ではない。それではこの監視社会にどう対峙していけばよいのだろうか。 “テクノロジーの導入による社会の変化の方向性が望ましいことなのかどうかを、絶えず問い続ける姿勢をいかに維持するかということに尽きる”。これが筆者の結論である。
民族や宗教による紛争、気候温暖化などの環境問題、ますます加速するテクノロジーの進歩。多様な価値が鬩ぎ合い、答えが見つからない世の中で、むしろ人は誰かに決めてもらいたいと思っていることが多いのではないだろうか。議論によって正しい答えを導き出すよりも誰かにうまくコントロールしてほしいと願っているのではないだろうか。専門家ではないふつうの人々が、高度化するテクノロジーの中身と効果を確認し、その運用を決定していくには、相応の努力が必要であろう。

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2022年03月14日

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冒頭の中国の監視システムの実情(出版から2年くらい経ってるので現在は進んでるだろうが)にズッコケるものの読み進めるとそれは逆に社会実装の速さの証左であり、中国の市民社会のルールの成り立ち方に裏付けされた現象であることだと分かる。

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2021年05月09日

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この本に手を伸ばしたきっかけであり、読書前に抱いていた疑問でもある「中国国民は一体どのような価値観でもって、この監視社会化を受け入れているのか」という問いに対する答えが納得のいく形で得られた。

・儒教的価値観(一部の教養があり、徳を積んだ者のみが天理に従って統治する資格をもつ)

・市民公共性が土台や受皿が無いこと(公権力や大企業によるデータの収集や活用方法に対して開示を求めたり、監視する力が働きにくい)

以上が印象に残ったのと、キーワードなのかなと思った。

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2020年12月18日

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梶谷懐(1970年~/現代中国経済論を専門とする経済学者/神戸大学大学院経済学研究科教授)と、高口康太(1976年~/中国の社会、ネット事情などに精通するライター、翻訳者、リサーチャー)による共著。
私は仕事柄、何人かの中国人の友人を持っているが、彼らとの連絡にはLINEは使えず、Wechatを使用しているし、中国に出張した際に(専用のアプリがなければ)GoogleもFacebookも使えないことは経験しており、中国の情報・通信統制には以前より関心を持っていたが、今般の新型コロナウイルス感染が中国・武漢で確認された当初、街頭でTVのインタビューを受けた若い中国人女性が「中国では、人びとの行動を監視してくれているから安心だ」とコメントしていたことに改めて衝撃を受け、本書を手に取った。
本書では、冒頭で、中国においては、現実世界でもインターネット上でもすべてが政府に筒抜けであるにもかかわらず、ほとんどの中国人がそれに不満を抱いていないどころか、現状を肯定的に見ていると書かれているのだが、実は、それは必ずしも、共産党独裁によって洗脳されているという理由だけではないとして、実際に中国で起こっている監視社会の実態が明らかにされ、更に、その監視社会は、今後日本を含む民主主義の国々でも直面する問題であると警鐘を鳴らしている。
主旨は概ね以下である。
◆中国の人びとは、企業や政府に個人情報を提供し、それと引き換えに便利なサービスを得てきた。
◆統治のための様々なテクノロジー(監視カメラなど)や、社会的に望ましい行いに対する動機付けを提供する「信用スコア」システムなどの浸透により、近年の中国社会は「お行儀がよくて予測可能な社会」なりつつある。
◆現在中国では、政府や企業がビッグデータに基づいて、「このように振る舞えば幸福になりますよ」というナッジやアーキテクチャ(人間の行為を制約したりある方向へ誘導したりするようなウェブなどの構造)を提供し、その言論統制は不可視化され、多くの人びとはそれに気付かなくなり、また、一般市民が自発的に反政府的な発言を控えるような形のものに進化しつつある。
◆監視社会を受容する背景が、利便性・安全性と個人のプライバシーとのトレードオフにおいて、前者を後者より優先させるという姿勢にあるとすれば、それは「功利主義」にほかならず、中国と西欧諸国の間に明確に線を引くことはできない。
◆今後、功利主義に基づいて道徳的判断の根拠が人間によるものからAIによるものに置き換わっていくとすると、アルゴリズムによる統治(人間の支配)が進む可能性があり極めて危険である。人間による「市民社会」が、それらを監視・チェックしなくてはならない。
◆現代の監視社会について考えることは、進化を止めることなないAIなどの新しいテクノロジーを、私たちの社会においてどう使いこなすかを考えることにほかならない。テクノロジーに意味を与えるのは人間であり、社会なのである。
中国の監視社会の現状分析を通して、進化するテクノロジーに対して我々はどう向き合うべきなのかを示唆する力作と思う。
(2020年3月了)

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2020年03月29日

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ある時期を境に中国、特に上海や深圳といった経済都市の犯罪は減少し中国人のマナーが劇的によくなった(たぶん今や日本人のマナーのほうが悪い)。テクノロジー&経済大国となった中国を「独裁国家」で紋切りしてしまうことに前々から違和感を感じていた。その理由が監視社会の「光」に焦点を当てた本書でクリアになった。

強力な一党体制と圧倒的な内需型経済を有す超巨大実験場の中華人民共和国は、アリババやテンセントが先導したIT革命によって一気に超先進国に躍り出た。リバタリアン・パターナリズムに基づくアルゴリズム的公共性は計画経済の進化系といえよう。そして功利主義のもと、『1984』的ディストピアではない、国民が幸福な社会が実現されるのであれば、民主主義の限界を叫ぶ我々がどうして批判出来よう。

他方で新疆ウイグル自治区に対する中国政府のパターナリズムという従来懸念された動きも見せる。右傾化する世界経済のなかこうした動きは緩慢な迫害をもたらす危険な動きといえる。何を「功利」とするか、誰が基準で、どう判断するか。道徳の画一性が本当に幸せの答えなのか。中国は共産主義の新たなる形ではあるが、民主主義の新たなる形になるにはまだまだ課題が多そうだ。

「イノベーションのジレンマ」の後発優位を生かし、いまやAI技術大国となった中国の光と影を描いた良書である。

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2020年02月18日

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以前、中国に行ったとき、空港からホテルに向かったタクシーの中に財布を忘れてしまったことがあった。ホテルの人に伝えたところ、すぐにビデオをチェックすると言って確認をしてもらった。結局夜なのでナンバーが見えなかったということだったのだけれども。その後、警察に行ったとき、当たり前のようにテレビのモニタで空港の様子を見て探そうとしていた。結局、見つからなかったが、ビデオで見られているということが全く当然のことと認知されていることに少し驚いた。

この本で書かれているように、現実世界では監視カメラやWeChat payやAlipayなどのスーパーアプリを通して行動を把握され、もちろんインターネットでもその行動が監視されている中国社会において、中国人はそのことに不満を抱いていないということなのである。国際的なアンケートによると、自国の進んでいる方向が正しい方向に向かっているかという質問に対して中国は94%がYESと答え、平均の58%を大きく上回り、またテクノロジーを信用するかどうかという質問に対して91%が信頼する(日本は66%)と答えている。「幸福な監視社国家」においては、人による監視社会よりもAIなどのテクノロジーによる管理社会の方が公平で望ましいと考えているのかもしれない。典型的な例を挙げると、芝麻信用の個人信用スコアが広く使われるようになることで、結果的に自発的に行儀のよい行動をするようになっているという。そして、それは情報を取られてはいるが、悪いことではないと考えつつあるのだ。

ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー『ホモ・デウス』において、「人間至上主義」の世界が終わり、「データ至上主義」の世界が始まるのかもしれないと告げた。今の中国が進む道は奇妙にそのイメージに沿っている。ユヴァル・ノア・ハラリも、「データ至上主義」を語るときに、米国よりも中国をこそ想定していたとしても、それほどおかしい話ではない。これまでは情報を管理する上で分散機構が優位に働き、共産主義圏に対して自由主義圏が経済上圧倒的な勝利を収めることになったのだが、IT技術の進展によって情報の集中管理が分散管理に対して優位に立つことになり、独裁的集権国家(独裁者は人ではなく、AIによる判断であってもよい)に分がよくなりつつあるのかもしれない。

「「監視社会」をめぐる対立は、じつは「現時点における気持ちの悪さ」を強調する立場と、将来における気持ちの悪さの消滅(=慣れ)」の蓋然性の高さを強調する立場との対立として理解できるのかもしれません」
と著者は言う。そして、日本では後者が勝利をしてきた、とも。果たしてそうだろうか。日本という国において、人は流されやすいが、変化することにも及び腰であるように思う。

中国と日本の違いとして、特に上海や北京などの都市部では、いまやどこでも現金は必要なく、WeChatなどのスーパーアプリだけですべて用が足りるようになっている。食事もアプリで頼んで配達してもらうことがとても当たり前になっている。それはとても便利な体験なのだ。そして、そのときわたしのデータはすべて取られているのだ。そして、さらに次の体験は向上する。

中国が将来を先取りする超先進国家なのか、自由に逆行する国家なのか、その答えはそんなに遠くない将来に出るのかもしれない。

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2019年12月22日

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中国の現状(もう、少し遅れているかもしれないが)を知るだけでなく、社会の中で、「監視」、「テクノロジー」をどう使うのか、それが、市民社会の中にどう位置づけるべきか。考えさせられる本。功利主義のための監視社会。日本には、スゴイ馴染んでしまいそうで、怖いなぁ。

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2019年12月08日

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「監視社会」をめぐる対立
・「現時点における気持ちの悪さ」⇔「将来における気持ち悪さの消滅(=慣れ)」
・後者にしても、一定の時間や手続きといったものが必要だという事実と矛盾はしない
・「幸福な監視国家(社会)」の本質は、「最大多数の最大幸福」の実現のため、その手段として人々の監視を行う国家(社会)、ということになる。
・伝統中国:「公論としての法」、「徳」による社会秩序の形成

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2019年11月20日

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引用で興味を惹かれた本:
「1984」オーウェル・ジョージ
「すばらしい新世界」ハクスリー・オルダス
「ホモデウス」 ユヴァル・ノア・ハラリ
「セレモニー」王力雄

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2019年10月05日

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キャッシュレスが進んでいるとか、監視カメラがすごいとか、アネクドータルにはいろいろ聞く中国で進行する「監視国家」化の実像(もともとギグエコノミー的な働き方の人が多かったとか、意外とソフトな形をとる検閲とか)をわかりやすく伝える。それだけではなく、その動きをマクロな歴史や社会観の中に位置づけようとするなかなか野心的な新書。功利主義だなんて言葉、高校生の頃に倫理の授業で勉強して以来かも。中国で起きていることが他の国々とも無縁ではないことを語る一方で、中国の独自性も整理してくれる。

あとウイグルのケースは正真正銘のディストピアで、その危険性は無視できない。

ふとした思いつき。。。。
見ようによっては、現代の都市における非常に匿名性の高い生活のほうが逆に歴史的には例外の時期であって、「監視国家」は規模こそ違えムラ社会のころの生活の先祖返り的な側面もあるのでは?

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2019年09月12日

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ネタバレ

「こういう本は今の日本では売れないだろうなぁ・・」と「こういう本が出版される間はまだ大丈夫かなぁ・・・」というのが、本書を読み進める時に感じた最初の感想だった。
世の中に数多ある中国すげー本でもなければ、中国はもうすぐ破滅する的な本とも違う、中国で現在進行形の事象と、その現象を進めることが可能になる(ルールや主体ではない)原理を読み解こうという本書は決して多くのターゲットに刺さるものではないだろう。著者の一人である高口さんが担当されている部分では中国の最新事例を楽しむ読む人間はそれなりにいるだろうが、そういった人たちが梶谷先生の部分を噛み締めて読むというのは、あまり想像が出来ない。
難しいし、目の前のビジネスにはあまり関係がないからだ。


しかしながら、中国の為政者・・・というか、法的な対応を検討したり、政策を立案したりする国家と党のエリート層は、必ずこういった思想的な議論を行なっているであろうと、僕は確信している。権力という意味においてエリートである彼らは、同時に知的なエリートであり、どのようにして中国という国家を舵取りすべきかということに対して、常に高度な論理性と世界中の過去から学んだエッセンスを適用しているはずなのだ。こんな難しいこと考えているわけないよ・・・ともし感じるのであれば、あるいは日本の政治を見てそう思うのであれば、それは自らの劣った基準で物事を理解しようとしているからに他ならない。

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2019年08月20日

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世界で最もデジタルテクノロジーのトライ&エラーを高速で繰り返し、それを経済成長の根底に据えることに成功している中国。昨今の”中国イノベーション論”に代表されるように、日本を始めとする先進国は中国に学ぶべき、という一面的な論説も多々見かけるようになってきた。

一方で視線を大都市からウイグルに向ければ、そこには中国共産党による政治弾圧が行われ、デジタルテクノロジーが弾圧を容易にしているという暗部があるのも事実である。そしてその暗部は徐々に香港へと向けられようとしている。

こうした二面性のある中国をどのように理解すればよいのか。本書では中国を長年研究してきた経済学者と、中国で今起こっているデジタルテクノロジーの動向に精通したジャーナリストの共著という形で、極めてバランス感に溢れた中国の実態を描き出すことに成功している。

本書では、中国における民主主義の意味合いとして、西欧社会で主に用いられる”政治的権利の平等”よりも、”経済的平等”の二種類が存在することが提示される。その上で、後者においては儒教的価値観から、強く正しい権力者に対してパターナリスティックな庇護を民衆が要請することが常であり、現在の中国の監視カメラやパーソナルデータの流通は、そうした観点から民衆にとって合理的なものとして映っているとされる。タイトルの「幸福な監視社会」とは、まさにそうした姿を明示している。

政治・経済の歴史を踏まえて、現代の中国のデジタルテクノロジーの実態を理解できる一冊として、非常に面白く有益。

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2019年08月17日

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2019年刊だが、そこからの変化が大きいと思われるのでより新しい本を探したい。何が起こっているのか、はざっと知識を得られるが、その背景や深い考察は十分には書かれていない。読み口の軽さになんだか不安を覚えるので次は研究書を読みたい。

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2023年06月01日

Posted by ブクログ

功利主義の章などちょっと難しいところもあったけど、監視国家化する世界について知ることができた。テクノロジーが一度進み始めると容易には止まらないので、せめてゆるくブレーキをかけて大きな事故にならないように気をつけることが必要なのかなと思ったり。

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2021年06月07日

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中国の状況が一掴みできるとともに、日本では同じようにできないなあと思わせる。情報を得るならば消費者に還元すべきであるという考えはもっとも。
中国が嫌いな国は多いけども、中国がいないと成り立たない国も多いため考えを理解することは大事なことであると再実感した。

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2020年09月23日

Posted by ブクログ

中国で監視の仕組みがそれほど抵抗なく受け入れられているという説明があったがそれは利便性が高まるためであり(功利主義の追求)、罰則規定もそれほど厳しいものではないからのようだ。

一方で新疆ウイグル自治区では監視が宗教、文化に対する弾圧手段として使われている。この二面性は無視できない問題。

日本もいずれ中国のような監視社会に移行する可能性は十分あるし、治安維持、個人情報の管理という意味では現在の内閣は強力な権限をすでに持っている。

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2020年03月20日

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そろそろSFが現実になりつつある中、中国が取り組んでいる先進的すぎる取り組みを紹介する本です。
思ったのは、技術が出てきてから実戦投入されるまでの間がとにかく短いということ。これは日本は負けかねない、と危機感を抱きましたが、もはや日本は日本で勝てるフィールドに特化した方が良いのでしょうか…。
しかし、そろそろSFをもっとマジメに読まなきゃかも…と思いました。「1984年」も「すばらしい新世界」も、こういう様々な本で触れるのでざっくりしたイメージが頭の中で生まれつつあるのですが、逆に危険ですね。正直、今のところどちらも大差ないと思っていて、それゆえ本著の「いや、ビッグブラザーじゃないんだよ!」というのはあまりピンと来ていないのですが。

具体的なところで、芝麻信用の「よくわからないシステム」によって行動が評価されて(中略)人々はいわゆる「自発的な服従」と言われる行動をとるように…というくだり、PayPayの青バッジと同じですね。なんでバッジが取れるのかわからないからYahooのなんちゃら会員になってみる、とか。
こういうパノプティコン的な「黒い」マーケティングが、民主主義国家においても今後増えていくのでしょうか。

新書なので読みやすいかと思ったのですが、第5章と第6章の読みづらさが凄い。共著者のジャーナリストが書いたカジュアルな感じの第4章からの変化度合いといったら…同じ経済学者の著者でも第1章や第7章ではそんな印象は抱かなかったので、論文が出典なんでしょうか(そんな訳はないと思うけど)。

情報の鮮度を考えると、早く読んだ方がいい1冊なのかも。

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2020年01月27日

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中国出張を前に、存在を知り購入。
前半の様々なサービスに関する話が、個人的にかなり興味をそそられた。中国の方も、プライバシーは保護されて欲しいと思っている、その上で利便性を享受したいという考えを持っているという点は、とかくプライバシーが無いといった言われ方をする中国に関して新たな視点を得られたと思う
後半は少々難しく感じたのが正直なところ。

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2019年09月28日

Posted by ブクログ

中国における技術の発展とプライバシーについては、「独裁」「社会主義」がもたらしたものだという見方で語られることが多い。

本書ではそういった視点からは距離を置き、今日の発展は決して独裁による強制的なものではないことを示す。
一方で独裁政権による歪についても語られ、あくまでフラットに物事を捉えようというポリシーを感じる。

ジョージ・オーウェルやハクスリーの著作を引用した比喩はイメージをつかむのに一役買ってくれた。

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2019年08月14日

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