岩田靖夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
名著!
本質を抜き出し、力強い文章でまとめる能力が凄まじい。
特に「第2部ヘブライの信仰」に、脳味噌ブッ飛ばされる。
はじめに
ヨーロッパ思想の本質とは、
ギリシアの思想
ヘブライの信仰
の深化発展、反逆、化合変容である。
ギリシア思想の本質とは、
人間の自由と平等の自覚→デモクラシー
理性主義→法と理念が支配する秩序の世界
ヘブライの信仰の本質とは、
唯一神・万物の創造主→アニミズムの否定・自然科学
神の似姿として人間を創造→かけがえのなさ・愛をうけうる者
神の優しさ→復讐でなく、赦し
第一部 ギリシアの思想
エジプトやメソポタミアに比べて、後進の民族。
地中海世界をギリシア語 -
Posted by ブクログ
2024.11.14-2024.12.01
ギリシアの思想からヘブライの信仰を通り、それらを礎に開花していった西洋諸国の哲学を、総体的に見つめ直すことができる内容だった。
そもそもアジア人である私たちがふんわりと触れることになる「哲学」というものの出発地点がどこにあるのか、長い人類史の中で生まれてくる「ディアスポラ」とはどこからやってくるのか、「信仰」とは何か。そういった内容がやさしい言葉で書かれている。
(しかし、高校生までの私がこれを読んで内容を理解できたかというと難しいと思う。)
大学生や大人、文化的分野の研究(物語や創作も含め)を行う人には、強くおすすめしたいと思う。
普段の生活に入 -
Posted by ブクログ
「岩波ジュニア新書にはたまに、子供向けというのが嘘みたいな名著がある」とよく言われる。その筆頭に挙げるべき、まごうことなき名著。
ギリシア哲学、キリスト教思想に重点を置きつつ、ヨーロッパ哲学を駆け足で新書一冊にまとめたもの。
特に第3部の中世以降の哲学の章は難解。これで高校生向けは無茶だろう。今後何度も読み返してやっと著者の意図した伝え方に辿り着けるような気がする。
1,2部はそれに比べれば分かりやすくはあるが、特にギリシア哲学についてはその後の哲学との発展との繋がりが強く意識されており、ソクラテス以前の哲学の代表にヘラクレイトス等でなくクセノパネスとパルメニデスが選ばれている。
また、キ -
Posted by ブクログ
昨年『論語』を読み終わったあと、次は西洋の思想の本を読もうと漠然と思ったものの、いざ最初の一冊を決めようとすると、なかなか何を読んでいいのかが、わからなくて。
とりあえず、母に何かおすすめあるかな? と聞いたところ、教えてくれたのがこちらの一冊です。
昨夏、途中まで読みかけて、現実の慌ただしさにすっかり手が止まっていたのですが、今年に入ってようやく読むのを再開。
案の定、一度読んだ内容をすっかり忘れていたため(泣)、改めて、1ページ目から読み直しました。
本書は、古代ギリシア哲学を専門とする学者である著者による、ヨーロッパ思想の入門書です。
ヨーロッパの思想は、「ギリシアの思想」と「ヘブライ -
Posted by ブクログ
ヨーロッパ哲学の二つ源泉であるヘレニズムとヘブライズムからはじまり、中世の哲学から実存の哲学まで主要な哲学者を取りあげて、その思想を紹介している。
ヨーロッパ思想の流れを押さえるための良書だと思う。
ただ、著者がキリスト教に対して強い想いをもっており、さらに実存主義の影響が強いため、特に新約聖書の章では独自解釈が目立つと思った。善きサマリア人の話や放蕩息子の話など有名な聖書の中のたとえ話の解釈は、一般的な聖書解釈の枠を越えていて、聖書をあまり知らない初学者にとっては却って混乱するのではないかとも思った。
それ以外については、よくまとまっているし、なにより一人の著者が一貫した考えでヨーロッパ思想 -
Posted by ブクログ
ネタバレ著書を残さなかったソクラテスの思想、信念とはいかなるものであったのか、明快な論理で考察している。
正直教科書とか概説本を読んでいる限りでは逆張りやソフィストとの違いがよく分からないソクラテスなんだけど、徳をなし、善く生きるという哲学の核、超越的な「ダイモ二オン」への敬虔な姿勢が一貫してあることが分かりやすく示されていて勉強になる本だった。決して相手の反駁だけにとどまらない指針が見えたことでソクラテスへの印象もけっこう変わったと思う。徳、善といった概念は具体的にどのようなものが想定されているのかというところまで、弟子たちの思想を例示しつつ丁寧に踏み込んで考察されていてよかった。 -
Posted by ブクログ
▼ 印象に残った箇所
・「葡萄園の労働者」(『マタイ』20:1-16)を受けて:
"ヨーロッパの正義論の大原則を立てたのは、アリストテレスの配分的正義という思想であるが、それによれば、各人にその人の価値に応じて与えることが正義であって、すべての人にその人の価値にかかわりなく無差別に同じものを与えるのはむしろ不正である。[...]
[...] この世の秩序は、優れた者が多くの報いを受け、劣ったものがわずかの報いで満足するという原理で成り立っている。[...] この原理は、アリストテレスが「善とはアレテー(卓越性)の活動である」と規定した思想の現実的形態であり、人類に普遍的な思想で