【感想・ネタバレ】ヨーロッパ思想入門のレビュー

あらすじ

デカルト,カント,ニーチェ,ロールズらが説く哲学は多彩である.ところが彼らの思想はすべて2つの土台に上に立つ.それはギリシアの思想とヘブライの信仰である.本書は,2つの源泉の本質は何かを,文学や美術,「聖書」から探り,さらに近現代の哲学の深部にどう入りこんでいるかを分析.ヨーロッパ思想がクリアーに見えてくる.

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ギリシアの自然哲学とヘブライの信仰が絡み合い、現代の思想に発展する。ソクラテスは自己の外側ではなく内側へと目を向け、ユダヤ教やキリスト教は正義や愛や生き方を説き、デカルトやカントやハイデガーは自己が世界をどう捉えるかを考え、ニーチェは個人の生き方を、レヴィナスは他者との関わり方を、ロールズは他者との関係ひいては社会のあり方を追求した。
自分の外側にある自然から、自分の内面、自分は世界をどう認識しているか、自分や世界とはどういう存在者か、自分と他者や社会や世界とはどう関わり合うべきかまで、一連の流れとして面白く追うことができた。

0
2025年04月04日

Posted by ブクログ

名著!
本質を抜き出し、力強い文章でまとめる能力が凄まじい。
特に「第2部ヘブライの信仰」に、脳味噌ブッ飛ばされる。

はじめに

ヨーロッパ思想の本質とは、
ギリシアの思想
ヘブライの信仰
の深化発展、反逆、化合変容である。

ギリシア思想の本質とは、
人間の自由と平等の自覚→デモクラシー
理性主義→法と理念が支配する秩序の世界

ヘブライの信仰の本質とは、
唯一神・万物の創造主→アニミズムの否定・自然科学
神の似姿として人間を創造→かけがえのなさ・愛をうけうる者
神の優しさ→復讐でなく、赦し


第一部 ギリシアの思想

エジプトやメソポタミアに比べて、後進の民族。
地中海世界をギリシア語文化圏にする。
自由と平等による民主制がプライド。

「コスモス」という語。
秩序。宇宙を支配しているのは、混沌とした偶然ではなく、法則であるという見方。

ギリシア神殿。
あらゆる贅物を削ぎ落とした単純な論理性のあらわす秩序の美。

ギリシア彫刻。
普遍的・理想的な美を追求。すべて同じ表情。
不完全な個々の人間を表現しない。存在の資格において劣っているという感覚。
ギリシア哲学においても、個体は、本当の意味では問題になっていない。
個体は普遍概念の網にかからない。そういう意味で、理性の力を超えている。

この言葉をむしろ、ポジティブに感じる。個体の野獣性。

ギリシア人の神。
そうありたいと願ってやまない、人間の理想化。
永遠化された人間。人間の本質への賛歌。

英雄社会をそのままオリンポスの山頂に投影したのが神々の社会。神々のあいだにも権力闘争・恋愛・不倫・だましあいがある。

ホメロスの叙事詩。
英雄たちの背後には、つねに神がいて、操りの糸を引いている。ギリシア人にとっては神々は実在した。←日本人もキツネに化かされていた。

作家は本質を抜き出し、理念を明晰に表現する。
ディオニソス宗教への嫌悪。
しかし、暗い信仰は根深く、広く行われ続けた。

アポロン的(秩序)とディオニソス的(混乱)の拮抗から、ドラマ(悲劇)が生まれる、と後にニーチェが指摘。

ギリシア悲劇。アテナイで上演。
「オイディプス王」etc.
人間は存在の有限性という壁にはねかえされて輝きを発し、燃え上がる。

ソクラテス以前の哲学。

パルメニデス。
「あるはある。ないはない」

強く思索のインスピレーションを受ける。
現代でも有用な議題。

ソクラテス→プラトン→アリストテレスの師弟系譜。

プラトン「国家」
労働階級・防衛者階級・そして善のイデアを認識する哲人王たる、支配階級。
めっちゃ能力主義。

アリストテレスの政治観。
共同体の構成員=市民=参政権。
「中間の国制」つまり、分厚い中間層が大事。
本当にこの通りなら、政治観には共感しかない。

アリストテレスの倫理観。
魂(プシュケー)=人間の生の全体的な活動。
最上位に理性活動、以下、感覚機能、運動機能、栄養生殖機能の階層構造。
理性こそが、人間たらしめている。

生殖機能が軽んじられてるの、アホらしい。
このあたりを、後にフロイトがひっくり返すことになるのだろう。

ギリシア思想全体の印象。
ウザいほど、理性主義!
成長・能力・競争主義!
それが、人類の知的活動の基盤になったことは、認めつつも、むしろ、秩序によって否定されながらも底流しているはずの、個体の中にある野獣性・混沌・カオスのほうに共鳴する。

第二部 ヘブライの信仰

聖書の本質は、書かれている内容でなく、その解釈なのだと思った。
歴史的事実や、民話や、誰かの作り話を集めて、それらを統合し、解釈しながら、信仰が形作られていく。

創世記
紀元前6〜5世紀に編集された。
イスラエル人が、自分たちを呑み込もうとする他文化に対して、自分たちを確認し解放するため、独自の神と人間を思想的に彫琢した。民族信仰。

「他者と共にあることを本質とする神」
他者を求め、ロボットでなく、神を拒否しうる者=罪を犯しうる者、自由を持つ者を創造した。

それはいいとして、だとしたら、この神は、かなり嫌なヤツだと思う。モラハラDV親父。
一人ぼっちで、寂しがりやなオッサンが、子供を作ったけど、意味不明な命令や、暴力で支配しているみたいな感じ。

なぜ、このような性格の神が創作されたか?が、気になる。これは、モラハラDV親父が人間社会を牛耳ってきたことのあらわれなのだろうか。

「他者を求め、呼びかける」ことが、愛だとされているが、愛の起源は、間違いなく繁殖行為であり、セックスだろ!と言いたくなるのは、進化論を知った現代人の後知恵なのか。

ちなみに、この神は、人間の呼びかけに応えない事で有名だ。

その後、預言者たちによる、神概念の読み替えによって、民族信仰から少し射程の広い信仰になる。
つまり、解釈変更が信仰を変えていく。

そして、ついにイエスが登場し、超アバンギャルドな解釈変更で、信仰をまったく変えてしまう。
これに、本当に衝撃を受けた。

自分を捨てること、他者に向かうこと、がイエスの教えの本質。

貧乏人・病人・障害者など、汚れているとされ、律法で触れてはならないとされていた人々に寄り添う。律法無視。
取り引きでなく、ただひたすらに与える。見返りを求めない。
能力主義や成果主義を否定し、公平・公正の概念を刷新する。

「法の奴隷・言葉の自動機械・損得マシーン」という、宮台真司の言う現代人が陥っている病を、イエスはことごとく否定している。
というより、宮台真司の思考の元が、イエスなのだろう。

つまりイエスは、法より大切なものに、損得なしで向き合え。言葉より、心に従え。と言っている。
(茨木のり子「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」を思い出す)

そして、自分を捨てろと言っている。
金も、地位も、名誉も、才能も、何もかも捨てて、惨めな姿をさらけ出し、助けを求める者として、弱さそのものとして、無防備に他者の前に立った時に、はじめて、人は人に触れることができる。可能性がそこにある。

あらゆる力を捨てなければならない。扉をこじ開けるのではなく、おのずから扉が開くのを待ち続けなければならない。

英雄という概念について考える。英雄的行動とは、じぶんの命よりも、他者の命を優先する行動のことだ。

そして、他者とは、家族や恋人や友人ではなく、見ず知らずの通りすがりの人だ。

自分が好きな人を助けるのは、自己愛である。
偶然に出会った、関わり合いになったら厄介を背負い込むような、苦しんでいる人に寄り添い、一緒に苦しみを背負うのが、愛である。

イエスの教えが、心に刺さる。

圧倒的である。比肩するものがない。キリスト教が世界中に広がり、影響を与えた理由がわかる。


「人間たちの罪を、キリストが十字架に磔にされ死ぬことで贖ってくれた」という超重要なイメージが、どこからくるのか?まったくわからなかったが、その理屈を理解して、衝撃を受けた。

まず大前提として、古来から、生け贄を捧げるという信仰様式がスタンダードとしてある。神の怒りへの贖いである。

旧約聖書において、神はアブラハムに、大事な息子イサクを生け贄に捧げよと命令し、直前に中止命令を出した。あまりにも残酷で意味不明な命令だが、アブラハムを試そうとしたのだろう。神も我が子がかわいいことはわかっている。

その神が、大事な息子イエスを見殺しにしてまで、罪深い人間たちと和解した。

つまり、「神は、かわいい息子を殺してまで、人間たちと仲直りしてくれた」
そして、「イエスは、人間たちのために、自分の命を生け贄として、神に捧げた」

自己愛でなく、他者愛。
神とイエスは、大事な息子の命や、自分の命よりも、他者としての人間全体との和解を選んだ。

この構造を信じて、感謝することが「信仰によって救われる」ことなのだ。
これには、仰天した。

この驚きの構造も、パウロによる旧約の読み替え、新解釈から成っている。

信仰としてのキリスト教には、まるで興味ないが、社会運動家としてのイエスの思想には、激しく胸を打たれる。
一方で、その弱さの肯定を、ルサンチマンとして批判したニーチェ的な思想も気になる。

0
2025年03月27日

Posted by ブクログ

2024.11.14-2024.12.01

ギリシアの思想からヘブライの信仰を通り、それらを礎に開花していった西洋諸国の哲学を、総体的に見つめ直すことができる内容だった。
そもそもアジア人である私たちがふんわりと触れることになる「哲学」というものの出発地点がどこにあるのか、長い人類史の中で生まれてくる「ディアスポラ」とはどこからやってくるのか、「信仰」とは何か。そういった内容がやさしい言葉で書かれている。
(しかし、高校生までの私がこれを読んで内容を理解できたかというと難しいと思う。)
大学生や大人、文化的分野の研究(物語や創作も含め)を行う人には、強くおすすめしたいと思う。
普段の生活に入り込んでいる何気ない文化の根底に、こうしたヨーロッパの思想は数多くあり、私たちはそこを理解しないまま、享受していることが多いのだと自覚をできる本でもある。

「自由な者である他者を、自分の同類としてくくりうる根拠はどこにもない。」
「寛容とは、自分と異質なものを承認することだ。自分と同質なものならば、だれでも受け入れられるだろう。だが、異質なものを、自分に同化しようとせずに、異質なままで受け入れることが寛容であり、それが異なる人々のあいだの平和共存を可能にする。」

こうした内容は特に私には刺さった。なぜなら、私は他人へ自分との同化を無意識に強要しているタイプの人間だからである。私は、寛容ではなく、矯正を強いていたのかもしれないと思い、自身の振る舞いを反省した。

だが同時に、こうした西洋の宗教観から築かれた文化や思想の上に成立している「理性」や「倫理観」は、私たちアジア人(とりわけ日本人)が無意識に持つ「善」や「中庸」と異なるのではないか、とも考える。
西欧から生まれる多様性を寛容しようとする文化は、あくまでもそうした宗教観を起点にしており、誤解を恐れずに言えば、必ずしも私たちアジア人文化圏の人間と噛み合うとは限らない、とも感じた。

0
2024年12月04日

Posted by ブクログ

哲学書思想の大きな流れを簡潔に書かれて分かり易いです。今まで毒されたキリスト教しか知らなかったのですが、そこまで恵みを与えることができるの非常に興味深いです。幸福のモデルが示されています。今だ悟り開けてない自己を反省します。

0
2024年09月02日

Posted by ブクログ

「岩波ジュニア新書にはたまに、子供向けというのが嘘みたいな名著がある」とよく言われる。その筆頭に挙げるべき、まごうことなき名著。

ギリシア哲学、キリスト教思想に重点を置きつつ、ヨーロッパ哲学を駆け足で新書一冊にまとめたもの。
特に第3部の中世以降の哲学の章は難解。これで高校生向けは無茶だろう。今後何度も読み返してやっと著者の意図した伝え方に辿り着けるような気がする。
1,2部はそれに比べれば分かりやすくはあるが、特にギリシア哲学についてはその後の哲学との発展との繋がりが強く意識されており、ソクラテス以前の哲学の代表にヘラクレイトス等でなくクセノパネスとパルメニデスが選ばれている。

また、キリスト教思想から哲学という視点は新鮮だった。巻末にレヴィナスを持ってきているのも、ユダヤ人としての思想的特徴が活かされていて綺麗。

総じて、哲学にはこんな語り方もあるのか、という気づきが多く得られた。もちろん内容は的確だし、文章も格調高く飽きが来ない。
特に後半について、簡単な本ではないが、それでも読んで良かったと思えることは請け負いだし、この本でなくては得られない気づきのある、替えの効かない本だと思う。哲学に興味のある高校生・大学生や、ある程度哲学の本を読んできた大人、あらゆる人に勧めたい骨太な新書。

0
2025年01月10日

Posted by ブクログ

「ジュニア」対象ではないほど、難しい。
記述がギリシア・ヘブライに厚く寄っているが、全体として簡潔にヨーロッパ系の哲学を概観できる。

0
2021年10月25日

Posted by ブクログ

岩波ジュニア新書ではあるが、無知な私にとっては十分読み応えがあり学ばせてもらった。著者も冒頭に書いているが、ヨーロッパ思想の本質を語るという目的であり、概説しつつも重要なポイントは確実におさえている印象だった。巻末で紹介される読書案内をもとに、更に知りたいという欲求が湧いてくる一冊だった。

0
2021年02月13日

Posted by ブクログ

名著。分かりやすい。
ああ、この人の言ってることって、ギリシアの思想が源流だな、的な見方ができるようになる。

- ヨーロッパの思想の礎石
- ギリシアの思想
- 人間の自由と平等
- 理性主義
- 哲学:不変の究極的実体の探究
- 科学:自然の因果関係で現象を説明
- 数学:純粋な理論を追求

- ヘブライの信仰
- ユダヤ教・キリスト教
- 唯一の超越的な神が天地万物の創造主
- 神が、己に似せて、人間を想像した
- 神は愛であり、愛には他者が必要である。それゆえ人間を作った。
- 「隣人を愛せ」

0
2021年09月08日

Posted by ブクログ

昨年『論語』を読み終わったあと、次は西洋の思想の本を読もうと漠然と思ったものの、いざ最初の一冊を決めようとすると、なかなか何を読んでいいのかが、わからなくて。
とりあえず、母に何かおすすめあるかな? と聞いたところ、教えてくれたのがこちらの一冊です。
昨夏、途中まで読みかけて、現実の慌ただしさにすっかり手が止まっていたのですが、今年に入ってようやく読むのを再開。
案の定、一度読んだ内容をすっかり忘れていたため(泣)、改めて、1ページ目から読み直しました。

本書は、古代ギリシア哲学を専門とする学者である著者による、ヨーロッパ思想の入門書です。
ヨーロッパの思想は、「ギリシアの思想」と「ヘブライの信仰」の二つを源とする、発展・反逆・変容であるとして、第1部では神話や悲劇などの引用を交えながらギリシアの思想の骨子が語られ、第2部では旧約聖書と新約聖書の解説がなされ、第3部では中世以降、アウグスティヌスからレヴィナスまでのヨーロッパ哲学のエッセンスが紹介されています。

よくよく考えてみると、「思想」に焦点をあててヨーロッパの歴史を辿ったのは、私はこれがはじめての経験で、それがとても新鮮でした。
「アリストテレス」とか、「カント」とか、名前はなんとなく覚えていていも、むかし高校生の時に読んだ世界史の教科書の認識のまま、てんでバラバラに頭の中にそれらが存在していたんですよね。
でも、ロックの社会思想も、ある日突然ロックの頭に生まれたわけではなくて、全部ソクラテスの時代から繋がっていて、様々な思想が歴史を動かして、その歴史から、また前の時代への反省や深化が生まれて、今にいたっているんだな、と。
その意味で、「思想」って、「思想史」でもあって、歴史と背中合わせだということがよくわかりました。
たとえて言うなら、長く続くアイドルグループが、先輩の曲を覚えつつ、新たに自分たちの曲を歌っている感じでしょうか。
私もまた、「人類」というグループのメンバーの一人で、やがては卒業(死)を迎えるけれど、メンバーだった時に歌った曲は、後世のメンバーが歌い継いでくれるのかしら。。。
引き継いでもらえるような、曲を歌っていたいなと思います。

冒頭の「この本で、筆者が意図したことは、ヨーロッパ思想の本質を語ることである。」という一文に象徴されるように、全体的に文章が非常に毅然としているのもこの本の大きな魅力です。
ヨーロッパ思想を学ぶ上で、羅針盤になってくれる本だと思います。

0
2020年02月02日

Posted by ブクログ

ヘレニズム(ギリシア)思想とヘブライズム(ユダヤ・キリスト教)思想という二つの流れがあるという観点から西洋哲学史の流れを追う著作。
哲学史を学ぶうえで大いに役に立つと考えられる。
ただ、「立憲君主制はなお残存してはいるが次第に形骸化しており、やがて完全なデモクラシーにとって代わられるべきものであることは、現代の常識である」(p196)という記述など、定義が曖昧で何を根拠にしているのか不明瞭な著者の主張には首を傾げてしまう。

0
2025年10月28日

Posted by ブクログ

ヨーロッパ哲学の二つ源泉であるヘレニズムとヘブライズムからはじまり、中世の哲学から実存の哲学まで主要な哲学者を取りあげて、その思想を紹介している。
ヨーロッパ思想の流れを押さえるための良書だと思う。
ただ、著者がキリスト教に対して強い想いをもっており、さらに実存主義の影響が強いため、特に新約聖書の章では独自解釈が目立つと思った。善きサマリア人の話や放蕩息子の話など有名な聖書の中のたとえ話の解釈は、一般的な聖書解釈の枠を越えていて、聖書をあまり知らない初学者にとっては却って混乱するのではないかとも思った。
それ以外については、よくまとまっているし、なにより一人の著者が一貫した考えでヨーロッパ思想の流れをまとめているので、大きな流れを理解するために良いと思う。

0
2024年12月25日

Posted by ブクログ

知識人からも絶賛されている不朽の入門書。
ジュニア新書らしい内容であっさり読めるんですけど、発行当初はじめて読んだときはあまりピンと来なかったというのが正直なところ…その後、多読乱読して15年後に再読するまでは、その凄さとか面白さがわからなかったですね。
というわけで、面白さを求めるタイプの本としては、初学者には微妙な本だと思います。

0
2024年10月30日

Posted by ブクログ

『ヨーロッパ思想入門』を読みました
頭の整理や学び直しに最適な岩波ジュニア新書の中でも人気がある書籍とのこと
ヨーロッパをはじめとした西洋の思想の歴史を古代ギリシャ、キリスト教、そして近代の哲学・政治学者へと続いていく流れを網羅した書籍です

ギリシャのあたりなどは語っている内容にばらつきがあるように感じましたが、1つ1つの施行に触れつつも細かくなりすぎないようになっており、流れを知るには最適な1冊ではないでしょうか

今のヨーロッパ、アメリカの映画などの文化を知る上でも重要な知識が学び直せる書籍でした

0
2024年08月15日

Posted by ブクログ

ギリシア人。エジプト・メソポタミアから多くを学び、受け継いだ後進の民族。▼ギリシア人の発想法。無駄なものをそぎ落として、普遍・法則・理念を追求。偶然の多様性に埋没していた人類が、本質の恒常性に目覚めた瞬間。明澄な単純さと端正さをもつギリシア神殿。一方、無数の彫刻でおおわれたゴシック様式の聖堂。▼イオニア、ミレトスの自然哲学。現象を神々の介入なしに説明しようとした。哲学の誕生。

ロールズ。無知のヴェール。人種・性・能力・社会的地位は自己本来のものではない。能力や階級にこだわる人は、自分の存在が理由なき偶然であることを忘れている。

0
2024年05月04日

Posted by ブクログ

▼ 印象に残った箇所
・「葡萄園の労働者」(『マタイ』20:1-16)を受けて:

 "ヨーロッパの正義論の大原則を立てたのは、アリストテレスの配分的正義という思想であるが、それによれば、各人にその人の価値に応じて与えることが正義であって、すべての人にその人の価値にかかわりなく無差別に同じものを与えるのはむしろ不正である。[...]
 [...] この世の秩序は、優れた者が多くの報いを受け、劣ったものがわずかの報いで満足するという原理で成り立っている。[...] この原理は、アリストテレスが「善とはアレテー(卓越性)の活動である」と規定した思想の現実的形態であり、人類に普遍的な思想であると言ってよいだろう。
 さて、イエスは、この配分的正義を否定したのである。世界の秩序の根底を支えている「価値に応じて」という正義の観念を否定したのである。なぜなら、彼は能力主義を否定するからである。天の国では、能力のある者も、能力のない者も、功績のある者も、功績のない者も、一人一人が「神の似姿」であるというのは、そういう意味である。"(130-131頁)

0
2022年08月29日

Posted by ブクログ

はじめにの冒頭に「ヨーロッパ思想は二つの礎石の上に立っている。ギリシアの思想とヘブライの信仰である。」とあります。全体像を初級者にもわかりやすく概観させてくれる貴重なガイドブックになっていると思います。岩波ジュニア新書恐るべし。

0
2022年01月25日

Posted by ブクログ

ヨーロッパの思想の礎石である「ギリシアの思想」及び「ヘブライの信仰」と、そこから発展した諸思想・哲学の歴史について解説した一冊。
それぞれの思想や哲学の〝本質〟について筆者は嚙み砕いて説明していて、個人的には中学・高校時の教科書よりもわかりやすかった。特に第1部2章「ホメロス」と3章「ギリシア悲劇」がおもしろく、実際に該当の作品を読んでみたくなった。
無論、この一冊が唯一無二の正解ではないだろうが、入門書としてはかなりレベルが高いのではないだろうか?

0
2023年01月29日

Posted by ブクログ

岩波ジュニア新書 学生時代に勉強せず、中高年から読書に目覚めた 私としては体系が学べる有り難い本

岩田靖夫 「 ヨーロッパ思想入門 」 ヨーロッパ思想全体を一望できる。ギリシア思想、ヘブライ信仰に始まり、西洋哲学につながる思想体系が うまく まとまっている

個々の思想の特性を体系の中で 繋げながら読むと 理解度が深まる。西洋哲学の存在論に何の意義があるのか疑問だったが、だいぶ 誤解がなくなった

エピクロスやストア派も含めた ギリシア思想体系や ロールズの正義論は もう少し 詳しい本を 読んでみたい


ヨーロッパ思想の基礎=ギリシア思想+ヘブライ信仰
*ギリシア思想=人間の自由と平等の自覚、理性主義〜法則や秩序を見透そうとする姿勢
*ヘブライ信仰=神が天地万物の創造主、自己の似姿として人間を創造、神のかぎりない優しさ

ギリシアの理性主義=コスモス=宇宙=配列、秩序
*宇宙を支配しているのは混沌とした偶然でなく 法則である
*文学=本質の追求
*造形=理想的な美を追求→個人の個体的特徴に注目しない
*神=人間の理想化

ソクラテス
*人間の生=善く生きる、正しく生きる→復讐禁止

プラトン「哲学者が支配するか、支配者が哲学するか、いずれかでなければ、国に災いが止むことはない」

旧約聖書
*アブラハム〜安らぎの故郷を捨てよという神の命令
*イサクの奉献〜一切、神から与えられたもの、私のものはない
*モーセがシナイ山で十戒を授かる→イスラエル民族の成立

新約聖書
*能力は偶然に与えられたもの〜私のものでなく社会の共有財産
*自分を捨てる=助けを求める、弱さそのものとして生きる〜そのとき 人は人に触れる
*愛する=他者に仕えるため自分を捨てる→無力さの極限に 十字架がある→イエスが示した神の意味

ロールズの正義論
*人間の自由と平等の自覚は 歴史を動かす原動力
*異なる民族、宗教、文化の共存を可能にする原理は 寛容。寛容とは 自分と異質のものを承認すること
*正義論の原理=自由の原理と配分の原理
*平等=人が自由であることにおいて等しいということ

0
2021年09月24日

Posted by ブクログ

ヨーロッパ思想はギリシャの思想とヘブライ信仰の2つの礎石の上に立っているという筆者の認識をもとにギリシャ思想とヘブライ信仰(旧・新約聖書)を主要な説明に充て、その後、数々の哲学者の考え方を説明するという構成となっている。近現代の哲学者が2つ考え方に影響を受けているのが、よくわかった。ただ、筆者の主観的な見解が全面に出ているので、各時代の説学者の思想を体系的に説明することを想定していたので、戸惑いはあった。

0
2020年08月22日

Posted by ブクログ

いや、この、「岩波ジュニア新書」には、ジュニア向けだからと侮れない良書があることは以前から指摘していますが、この本はその1つでした。
「ヨーロッパ思想は、本質的に、ギリシアの思想とヘブライの信仰という二つの基調音をめぐって展開される変奏曲である。」と喝破し、その両者を1部と2部で概観し、第3部では、「2000年に及ぶヨーロッパ哲学の絢爛たるシンフォニーから取り出された、この基調音の変奏のささやかな数節である」と言いながら、アウグスティヌス・中世のキリスト教哲学から始まり、デカルト、カントらいわゆる理性主義、ロックらの社会哲学、キルケゴール、ニーチェ、ハイデガーらの実存の哲学といった系譜とその思想を概観する。
ジュニア向けとはいえ、手抜きなし、レベルを落としていないところがすごい。(逆に言うと、これを読んで理解できるジュニアはすごい)
ヨーロッパ思想史の歴史的骨格を概観するのに…おそらく…非常な良書。(但し、予備知識ゼロで本書の内容を理解するのは難しいかな?)

0
2019年06月16日

Posted by ブクログ

初学者向け!ちゃんとギリシャ神話〜ユダヤ教、キリスト教を経て、スコラ学についても触れられている。
ただ流れを書くのではなく、内容の説明もされているのが素晴らしい。しかもちゃんと理解が可能なように…トマスアクィナスやオッカムといった、ちょっと名前だけ知ってる人についてその思想もわかると、なぜその人たちが歴史上重要な人物として名が残ったのかがわかる。
その後の哲学についての話も面白かった。

0
2019年04月24日

Posted by ブクログ

第1部 ギリシアの思想
第2部 ヘブライの信仰
第3部 ヨーロッパ哲学のあゆみ
という構成で、ギリシア思想とユダヤ教・キリスト教をベースとしてヨーロッパ哲学がどのように発展してきたかを概観した本。

「入門」とはいうものの、聖書や哲学に関して多少の知識があったほうが読みやすいと思う。
特に哲学については、専門用語が説明無しにいきなり出てくることもあるので、私は調べながら読み進めた。

ギリシア神話や聖書における超常的な出来事(イエスの復活など)に対して、現代的・現実的な解釈をしている点が面白い。

全体的に断定調で書かれているためか、どこまでがその箇所で言及している人物の主張で、どこからが著者の解釈または見解なのかがわかりにくいところがあった。

全てを疑ったと言われるデカルトでさえ、「神の誠実」を拠り所にしていたことを知った。
ヨーロッパ哲学がキリスト教(とユダヤ教)の影響から逃れられないのだとしたら、それらの宗教的背景を持たない多くの日本人にとって、ヨーロッパ哲学を真に理解することは難しいのではないか…と思った。

0
2024年09月12日

Posted by ブクログ

●ヨーロッパ思想は、ギリシア思想とヘブライの信仰が礎となって成り立っていると主張する。本書では、ギリシア思想とヘブライの信仰を見て、ヨーロッパの思想のあゆみを概観していく。

0
2025年07月06日

Posted by ブクログ

ヨーロッパ哲学を根本から解説してくれる良書。

もちろん倫理や哲学の本なんかを読んできましたが、その根本(ギリシヤの思想とヘブライの信仰)から解説してくれる本はなかなかないですね。

なんとなくは理解していても、しっかりとした繋がりとして見ていなかったので、興味深かったです。

個人的には、ロック、ロールズの考え方が好きですね。

0
2024年11月30日

Posted by ブクログ

哲学・倫理の自主学習のため、読んでみた。中高生向けのヨーロッパ思想入門書として高い評価を得ている同書だが、それでもカントとかハイデガーとか、何を言っているのかさっぱり理解できない箇所が少なくなかった。これより易しい入門書はあるのだろうか…。

0
2024年03月01日

Posted by ブクログ

本書はヨーロッパ思想について基礎的な知識を得られる入門書です。この1冊で西洋哲学を概観することができます。

西洋哲学は「ギリシアの思想」と「ヘブライの信仰」、この2つの源流から成り立っており、この2つを理解せずして西洋哲学を学ぶことはできないと著者は述べています。

なるほど、ニーチェ、ヘーゲル、カント、デカルト、ハイデガー、有名な哲学者はたくさんおり、彼らの偉大な思想、理論の土台には、ギリシアの思想とヘブライの信仰があったとは、とても有益な学びでしたし、西洋哲学を学ぶ際、まずおさえておかなければならない部分だと思いました。

本書は、あくまで西洋哲学の流れを概観できるにとどまり、西洋哲学を詳細に学ぶための本ではありません。なので取り上げられている哲学者も少ないです。しかし入門書なので、全然問題ないと思います。まずは、西洋哲学の勘所をおさえ、全体の流れを理解することの方が大切ですから。また岩波ジュニア新書から出ている本ですが、内容がけっこう難しいです。巷に溢れているすぐわかり本でもないです。だからこそ、何度も読み返して理解していきたい本だと思います。

0
2023年05月13日

Posted by ブクログ

「ヨーロッパ思想を学ぼう!」と思い立った偏差値60位の高校に通ってる学生が居たとして、彼らが初めの1冊としてこの本を選んだとする。おそらく21p目位で本を閉じるだろうね。

本書はある程度の知識がないと断片的にしか理解出来ない。
岩波ジュニアは本当の初学者向けなイメージだったんだけどなあ。東大院卒の哲学家様は私みたいなバカはお呼びじゃないんだろうね、、、

何はともあれ、今まで断片的に学んできた西洋思想が頭の中で纏まった気がする。
哲学思想を解説する時も本文から引用して、該当する箇所を分かりやすく現代語訳してくれている。今後その古典作品を実際に読む場面があれば、より深く理解出来ると思う。

私が存在する事は確実である。的な事を発見したのはデカルトだと思っていたが、実はもっと前にこの事を発見していた人がいたのは印象に残った。「我思う故に我ありなんて、頭いい人ならもっと前から考えてる人居そうだけどなあ」って思ってたから、ちょっと嬉しい。

0
2024年06月25日

Posted by ブクログ

ヨーロッパ思想は本質を追い求める理想主義的な古代ギリシア思想とユダヤ教並びにキリスト教の教えをベースに形作られている。

0
2022年07月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

Q、ヨーロッパ思想とは何か?
→A、ギリシア思想とヘブライ信仰の、2つが土台となった哲学。


※ギリシア思想
→人間の自由平等の自覚
→理性主義(世界を法則と理念の支配する秩序の世界として把握する)


※ヘブライ信仰
→宇宙のいかなるものも神ではない
→人間のかけがえのなさ=愛を受ける者としての、神の似姿
→神(=愛)のかぎりない優しさ

0
2019年09月23日

Posted by ブクログ

1.この本を一言で表すと?
ヨーロッパ哲学の大まかな流れや進化に焦点をあてて全体を把握できる本。

2.よかった点を3~5つ
・ヨーロッパ思想は二つの礎石の上に立っている。ギリシアの思想とヘブライの信仰である(はじめに)
→はじめにを読めば本書のおおよその内容がわかるとても親切な内容。
・キリスト教の解説
→十字架、愛と赦し、律法主義の否定、はわかりやすい説明だった


2.参考にならなかった所(つっこみ所)
・第3部はヨーロッパの哲学者を何人か紹介するというもので、あまり興味を持てなかった。
・入門と言う割には前提として必要な知識が多すぎるような気がする。
・キリスト教はよくわかったが、ユダヤ教がどういうものかよく分からなかった。

5.全体の感想・その他
・ヨーロッパ思想が、「ギリシアの思想」と「ヘブライの信仰」という2つの土台から成り立っていることを冒頭に述べているので、本の導入としてはわかりやすかった。

0
2019年05月10日

「学術・語学」ランキング