岩田靖夫のレビュー一覧
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▼ 印象に残った箇所
・「葡萄園の労働者」(『マタイ』20:1-16)を受けて:
"ヨーロッパの正義論の大原則を立てたのは、アリストテレスの配分的正義という思想であるが、それによれば、各人にその人の価値に応じて与えることが正義であって、すべての人にその人の価値にかかわりなく無差別に同じものを与えるのはむしろ不正である。[...]
[...] この世の秩序は、優れた者が多くの報いを受け、劣ったものがわずかの報いで満足するという原理で成り立っている。[...] この原理は、アリストテレスが「善とはアレテー(卓越性)の活動である」と規定した思想の現実的形態であり、人類に普遍的な思想であると言ってよいだろう。
さて、イエスは、この配分的正義を否定したのである。世界の秩序の根底を支えている「価値に応じて」という正義の観念を否定したのである。なぜなら、彼は能力主義を否定するからである。天の国では、能力のある者も、能力のない者も、功績のある者も、功績のない者も、一人一人が「神の似姿」であるというのは、そういう意味である。"(130-131頁) -
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岩波ジュニア新書 学生時代に勉強せず、中高年から読書に目覚めた 私としては体系が学べる有り難い本
岩田靖夫 「 ヨーロッパ思想入門 」 ヨーロッパ思想全体を一望できる。ギリシア思想、ヘブライ信仰に始まり、西洋哲学につながる思想体系が うまく まとまっている
個々の思想の特性を体系の中で 繋げながら読むと 理解度が深まる。西洋哲学の存在論に何の意義があるのか疑問だったが、だいぶ 誤解がなくなった
エピクロスやストア派も含めた ギリシア思想体系や ロールズの正義論は もう少し 詳しい本を 読んでみたい
ヨーロッパ思想の基礎=ギリシア思想+ヘブライ信仰
*ギリシア思想=人間の自由と平等の自覚、理性主義〜法則や秩序を見透そうとする姿勢
*ヘブライ信仰=神が天地万物の創造主、自己の似姿として人間を創造、神のかぎりない優しさ
ギリシアの理性主義=コスモス=宇宙=配列、秩序
*宇宙を支配しているのは混沌とした偶然でなく 法則である
*文学=本質の追求
*造形=理想的な美を追求→個人の個体的特徴に注目しない
*神=人間の理想化
ソクラテス
*人間の生=善く生きる、正しく生きる→復讐禁止
プラトン「哲学者が支配するか、支配者が哲学するか、いずれかでなければ、国に災いが止むことはない」
旧約聖書
*アブラハム〜安らぎの故郷を捨てよという神の命令
*イサクの奉献〜一切、神から与えられたもの、私のものはない
*モーセがシナイ山で十戒を授かる→イスラエル民族の成立
新約聖書
*能力は偶然に与えられたもの〜私のものでなく社会の共有財産
*自分を捨てる=助けを求める、弱さそのものとして生きる〜そのとき 人は人に触れる
*愛する=他者に仕えるため自分を捨てる→無力さの極限に 十字架がある→イエスが示した神の意味
ロールズの正義論
*人間の自由と平等の自覚は 歴史を動かす原動力
*異なる民族、宗教、文化の共存を可能にする原理は 寛容。寛容とは 自分と異質のものを承認すること
*正義論の原理=自由の原理と配分の原理
*平等=人が自由であることにおいて等しいということ -
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いや、この、「岩波ジュニア新書」には、ジュニア向けだからと侮れない良書があることは以前から指摘していますが、この本はその1つでした。
「ヨーロッパ思想は、本質的に、ギリシアの思想とヘブライの信仰という二つの基調音をめぐって展開される変奏曲である。」と喝破し、その両者を1部と2部で概観し、第3部では、「2000年に及ぶヨーロッパ哲学の絢爛たるシンフォニーから取り出された、この基調音の変奏のささやかな数節である」と言いながら、アウグスティヌス・中世のキリスト教哲学から始まり、デカルト、カントらいわゆる理性主義、ロックらの社会哲学、キルケゴール、ニーチェ、ハイデガーらの実存の哲学といった系譜とその思想を概観する。
ジュニア向けとはいえ、手抜きなし、レベルを落としていないところがすごい。(逆に言うと、これを読んで理解できるジュニアはすごい)
ヨーロッパ思想史の歴史的骨格を概観するのに…おそらく…非常な良書。(但し、予備知識ゼロで本書の内容を理解するのは難しいかな?) -
Posted by ブクログ
第1部 ギリシアの思想
第2部 ヘブライの信仰
第3部 ヨーロッパ哲学のあゆみ
という構成で、ギリシア思想とユダヤ教・キリスト教をベースとしてヨーロッパ哲学がどのように発展してきたかを概観した本。
「入門」とはいうものの、聖書や哲学に関して多少の知識があったほうが読みやすいと思う。
特に哲学については、専門用語が説明無しにいきなり出てくることもあるので、私は調べながら読み進めた。
ギリシア神話や聖書における超常的な出来事(イエスの復活など)に対して、現代的・現実的な解釈をしている点が面白い。
全体的に断定調で書かれているためか、どこまでがその箇所で言及している人物の主張で、どこからが著者の解釈または見解なのかがわかりにくいところがあった。
全てを疑ったと言われるデカルトでさえ、「神の誠実」を拠り所にしていたことを知った。
ヨーロッパ哲学がキリスト教(とユダヤ教)の影響から逃れられないのだとしたら、それらの宗教的背景を持たない多くの日本人にとって、ヨーロッパ哲学を真に理解することは難しいのではないか…と思った。 -
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本書はヨーロッパ思想について基礎的な知識を得られる入門書です。この1冊で西洋哲学を概観することができます。
西洋哲学は「ギリシアの思想」と「ヘブライの信仰」、この2つの源流から成り立っており、この2つを理解せずして西洋哲学を学ぶことはできないと著者は述べています。
なるほど、ニーチェ、ヘーゲル、カント、デカルト、ハイデガー、有名な哲学者はたくさんおり、彼らの偉大な思想、理論の土台には、ギリシアの思想とヘブライの信仰があったとは、とても有益な学びでしたし、西洋哲学を学ぶ際、まずおさえておかなければならない部分だと思いました。
本書は、あくまで西洋哲学の流れを概観できるにとどまり、西洋哲学を詳細に学ぶための本ではありません。なので取り上げられている哲学者も少ないです。しかし入門書なので、全然問題ないと思います。まずは、西洋哲学の勘所をおさえ、全体の流れを理解することの方が大切ですから。また岩波ジュニア新書から出ている本ですが、内容がけっこう難しいです。巷に溢れているすぐわかり本でもないです。だからこそ、何度も読み返して理解していきたい本だと思います。 -
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「ヨーロッパ思想を学ぼう!」と思い立った偏差値60位の高校に通ってる学生が居たとして、彼らが初めの1冊としてこの本を選んだとする。おそらく21p目位で本を閉じるだろうね。
本書はある程度の知識がないと断片的にしか理解出来ない。
岩波ジュニアは本当の初学者向けなイメージだったんだけどなあ。東大院卒の哲学家様は私みたいなバカはお呼びじゃないんだろうね、、、
何はともあれ、今まで断片的に学んできた西洋思想が頭の中で纏まった気がする。
哲学思想を解説する時も本文から引用して、該当する箇所を分かりやすく現代語訳してくれている。今後その古典作品を実際に読む場面があれば、より深く理解出来ると思う。
私が存在する事は確実である。的な事を発見したのはデカルトだと思っていたが、実はもっと前にこの事を発見していた人がいたのは印象に残った。「我思う故に我ありなんて、頭いい人ならもっと前から考えてる人居そうだけどなあ」って思ってたから、ちょっと嬉しい。 -
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岩田靖夫(1932~2015年)は、古代ギリシャ哲学を専門とする元・仙台白百合女子大学名誉教授で、文化功労者(2003年)。
本書は、1992~2005年に、仙台白百合女子大学、清泉女子大学、聖心女子大学で行われた講演や様々な学会等での発表の中から、「よく生きる」というテーマに関わりのあるものを集め、2005年に出版されたものである。
私は、10年ほど前に購入して、読み止しであったが、先日、渡辺和子さんの回想録を読んだこともあり、今般通読してみた。
著者の根本理念は、自らを「ソクラテスの弟子の端くれ」というように、『クリトン』にある「もっとも大切にしなければならないことは、生きることではなくて、善く生きることである」というもので、ソクラテス、プラトン、アリストテレスをはじめ、宮沢賢治、レヴィナス、ドストエフスキー、ニーチェ、親鸞、ロールズら、古今東西の哲学者・宗教家・作家などの思想を引用して持論を展開している。
具体的な論点としては以下の4つを挙げている。
◆人間の幸福の第一は自己実現である。「人間が自由で自律的な存在者である」ことの基本的な意味は、自分自身の力で、やりたいことをやって生きるということ。自分で自分を支えられないような人生、他人に命令されるがままの奴隷的な人生であってはならない。
◆しかし、各人が自己実現に励む社会は必然的に競争社会になり、否応なしに勝者と敗者が生まれる。よって、自己実現は人間が生きるための条件であって、生きる意味ではない。人の本当の喜びは、自己実現のうちにあるのではなくて、他者との交わりのうちにある。
◆人は自己を実現して自分の存在を確保し、他者との交わりによって愛の喜びを味わっても、挫折、病気、老化、死のような問題についての確たる態度を持てなければ、真の安らぎを得ることはできない。そこで、私たち個々の存在者は「根源」から送り出され、死を通して「根源」に帰るのであり、その「根源」は、「存在」、「神」、「絶対者」、「天」、「空」など様々に呼ばれるが、いずれにしても、善意に満ちた親であり、我々はその親元に帰るのだと信じることができれば、安らぎが生まれる。
◆人間は本性的に社会の中で生きる存在であり、その人間社会の究極理念である「自由」と「平等」を実現するために、人類は、民族という枠に囚われず、世界市民として国境のない自由で平和な世界をめざさなくてはならない。
(2019年5月了)