伊藤之雄のレビュー一覧

  • 真実の原敬 維新を超えた宰相

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    ①原敬の特徴として、幅広い知見、経験を挙げることができる。
    若い時にフランス、中国、朝鮮に駐在した豊かな海外経験、新聞社(含む経営)での勤務、古河鉱業への経営としての参画。今の政治家と比べても、特筆できる多面的なキャリアを持つ。
    特に民間企業での経験が活かされていることは、政治家になってからも公利の中にあっての民活を意識していたことからも分かるし、政策に実効性が伴っていたのだと思う。
    また、新聞社での勤務経験は、大正デモクラシーの中で政治家としても武器として使えたのであろう。(大隈重信の人気も早稲田閥を中心とした新聞社の力が大きかった)

    ②日本の近代化にあって、実力社会が活きていた。
    藩閥政

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    2022年03月14日
  • 真実の原敬 維新を超えた宰相

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    日本で初めて本格的な政党内閣を組織し、「平民宰相」と呼ばれた原敬の「泥臭い利益誘導政治家」というイメージを払拭し、実証的にその実像を描こうとしている。
    著者には、既に『原敬―外交と政治の理想』という大部の評伝があるが、本書はそれを簡潔にまとめるというだけではなく、新たな視点も含めて論じられている。
    それは第一に、原が、木戸孝允・大久保利通・岩倉具視・伊藤博文・明治天皇らが協力して達成した明治維新と近代国家形成を受け継ぎ、「イギリス風の立憲国家をつくる」という、その究極の目的を実現すべく尽力したという点である。
    第二に、原が第一次世界大戦中から大戦終了後に形成される、アメリカの台頭による新しい国

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    2020年12月05日
  • 大隈重信(下) 「巨人」が築いたもの

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    本書を読むと、1900年代前半の日本は財政問題を含めて綱渡りのような実に危ない橋を渡っていたことを痛感する。その打開策として大隈重信は「イギリス流の政権交代可能な二大政党制を日本に導入すること」を目指したのだろう。
    薩長閥ではない大隈重信は、その為に相当な無理を重ねていることが本書で詳細に紹介される。人間的迫力、胆力、政治技術、精神力。皆相当なものだが、私たちは「政党政治」がこの後に死に絶えて昭和の大破綻に進んだことを知っている。結果をみると大隈重信は失敗した政治家なのだろうとも思った。
    いまだに日中関係に影を落とす「対華21ヶ条の要求」の詳細も興味深い。「加藤高明」が戦犯か。後継者と引き立て

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    2019年08月21日
  • 大隈重信(上) 「巨人」が夢見たもの

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    本書は、明治の政治史を専門家以外にも読みやすく書くという難事に成功した本だと思った。
    何が争点だったのか今ひとつ理解できなかった「明治14年の政変」についても、まるで政治ドラマを見るようにワクワクドキドキしながら読んだ。
    面白いと思いながら読み進めると自然に当時の政治状況が把握できるようになる。
    いやいや「大隈重信」とは政治が「志し」と「権力獲得」の二つを併せ持つという本質をよく理解している「大政治家」ではないか。
    下巻では、現在の日中関係にいまだに棘のように刺さっている悪名高き「対華21ヶ条の要求」が当然出て来るだろう。読むのが楽しみである。

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    2019年08月20日
  • 元老―近代日本の真の指導者たち

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    元老制度を通して、明治〜昭和初期の日本を描く。
    制度と書いたけど、元老には法律的に何の根拠もない。にもかかわらず、後継首相を推薦し、国の政策判断に寄与してきた。およそ民主的ではなかった。山県が政党内閣を支持しなかったのは、選挙のために腐敗・汚職がまかり通るからだし、国よりも選挙を優先に考えるからだ。山県が指摘する政党内閣の危険性は、現代もまったく変わらない。でも、もう元老はいないし二度と現れない。政治的には不幸な時代だ。

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    2017年11月02日
  • 元老―近代日本の真の指導者たち

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    本書は実に興味深い本である。
    明治において我が国は、西欧の科学技術のみならず政治システムを大胆に導入した。異文化の土壌に「立憲体制」を移植し機能させるために我が国の支配エリートが作り上げたものが「インフォーマルな元老」であったというのが本書の考察である。
    しかし、日本の歴史は「立憲体制」を補完する「元老政治」が明治大正には機能したものの、昭和には破綻し「軍部独裁体制」に変質してしまったことをも教えている。
    「元老政治」が最終的な目標としたものが本書で主張するように「政権交代可能な二大政党政治」であり、日本の昭和戦前期までの経過がそれが失敗した歴史であるとするならば、2012年の民主党政権の崩壊

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    2016年08月21日
  • 昭和天皇伝

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    ネタバレ

    国家の象徴に生まれるとか想像できますか?昭和天皇の生涯を綿密にまとめた一冊。同時に昭和の戦争の時代を総覧できる。


     象徴。シンボル。前に司馬遼太郎の本でシンボルの語源はギリシア語の「割符」から来ているとあった。象徴とは半分なのである。とあるものの本質の一般共通項という半分だけを表すものがシンボルなのである。
     天皇は日本の象徴。日本人の精神性の一般共通項が天皇にはあるってことかな。
     日本国民にはこれほどの奥ゆかしさはまだあるのだろうか。

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    2015年09月18日
  • 昭和天皇伝

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    膨大な犠牲者を出した泥沼の戦争・・・
    そして焼け野原からの復興と繁栄・・・
    日本の歴史上、昭和の激動っぷりはハンパない・・・
    ハンパない激動期の日本を現人神として、そして象徴天皇として歩まれた昭和天皇・・・
    その昭和天皇の伝記、評伝・・・

    昭和天皇には歴代「最高の天皇」という評価がある一方で、戦争責任を逃れた「率直ならざる人物」であるという評価もある・・・
    いったい、どうなの?
    2001年にピューリッツァー賞を受賞したハーバード・ビックスら昭和天皇を批判する側の意見としては・・・
    天皇は戦前において立憲君主じゃなくて、絶大な政治権力を持った君主として戦争責任があったのに、側近と共謀してそれを

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    2015年08月05日
  • 原敬 外交と政治の理想(下)

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    【下】は桂園時代から大正政変を経て、政党内閣の誕生、暗殺までを追いかけている。民主主義を確立する過程として藩閥官僚制から政党内閣による立憲君主制をめざしたのが原敬ということになるのかな。
    今の政治がすべてうまく機能しているわけじゃない。どうすればいいのか。個人的には政党政治の限界を感じているし、実は普通選挙制度が良くないんじゃないのかと考えさせられた一冊だ。

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    2015年02月25日
  • 原敬 外交と政治の理想(上)

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    教科書の記述でしか知らない人物。
    まとめちゃうと政党内閣の平民宰相ってところだけど、それ以上に現在の政治の在り方や運営方法を築いた人なんだと分かる。
    結果として党利党略の利権誘導政治を導入することにもなる。実は普通選挙の導入に消極的だったというのには驚いた。民度がそこまで’達していないという判断からだ。100年以上経った今でも疑問だしね。当時はいかばかりか。
    理想と現実を統合するのに長けていた、優れた政治家だったわけだ。けど、彼が理想とした政党内閣制度は、今でもハードル高いなぁ。

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    2015年01月21日
  • 昭和天皇伝

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    25歳で即位し、日本史上最長の在位期間にして、史上、最も困難な時代を生きた。ボクは支那事変から太平洋戦争に至る昭和天皇陛下の戦争責任を否定しない立場なので、本書は若干甘い歴史観で昭和天皇を捉えているような気がする。それでも、陛下がおかれた激動の時代への同情を禁じえない。大正デモクラシーの影響を受けた十代から太平洋戦争終結にいたるまでの明仁殿下のナイーブさには心を撃たれる。

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    2014年07月18日
  • 昭和天皇伝

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    昭和天皇を身近に感じることが出来た。昭和天皇の周囲にあまりに人がいなかったことが、悲劇を生んだような気がする。

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    2014年07月13日
  • 真実の原敬 維新を超えた宰相

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    ・原は伊藤や大隈と違い、生年やバックボーンから「潜在的なイギリスへの脅威はそれほどなく、アメリカの台頭という変化を受け入れやすかった」という視点がとても勉強になりました
    ・賄征伐エピソードが掘り下げられてるのが面白い
    ・第一次護憲運動のとき、原は世論でなく輿論を尊重したため距離を取った、という解釈は、長年近現代史に向き合ってこられた方だからこその見地だなあと思ったり

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    2023年08月20日
  • 元老―近代日本の真の指導者たち

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    元老。天皇の最高顧問。日本の国際協調と民主化・近代化を安定して進めていくことに寄与した。1889~1940。

    黒田清隆・伊藤博文・山県有朋・松方正義・井上馨・西郷従道・大山巌
    桂太郎・西園寺公望

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    2022年09月05日
  • 伊藤博文 近代日本を創った男

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    山口県光市にある、伊藤博文記念館を訪問した事を機会に、読み始める。記念館にある伊藤の愛用品を眺めつつ、遠い、明治という時代を思う、なかなか大変な時代であったのでは、と。またこの本も結構の大著、読むのも大変です。

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    2019年08月04日
  • 昭和天皇伝

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    歴代天皇の中でも最長在位、最高齢を誇る昭和天皇。物心ついた
    頃から私にとっては「優しそうなおじいちゃま」だった昭和天皇
    なのだが、崩御後に出版された様々な昭和天皇関連書籍を読む
    うちに「この人を知らなければ自分が生まれ、育った時代を
    理解することが出来ないのではないか」と思った。

    多くの関連書籍があり、そのうちのいくつかは読んでいるのだ
    が、宮内庁が編纂した『昭和天皇実録』が今月から一般刊行
    されるのを前に「おさらい」として本書を読んだ。

    本書は可もなく不可もなく…というところだろうか。公開されて
    いる資料、既刊の出版物等、多くの資料を読み込んで書かれている
    ので巻末の参考文献を見ると既に

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    2017年08月21日
  • 原敬 外交と政治の理想(上)

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    盛りだくさんの記述で読みものとしてはおもしろかったけど、身びいきが過ぎて人物評としては微妙。とくに正妻/後妻/愛人入り乱れる女性関係をさも誠実で高潔なパートナーシップのごとく描くのはちょっと薄気味悪い。著者自身の女性観までなんか歪んでんじゃないかと邪推したくなる。

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    2015年02月28日