伊藤之雄のレビュー一覧
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①原敬の特徴として、幅広い知見、経験を挙げることができる。
若い時にフランス、中国、朝鮮に駐在した豊かな海外経験、新聞社(含む経営)での勤務、古河鉱業への経営としての参画。今の政治家と比べても、特筆できる多面的なキャリアを持つ。
特に民間企業での経験が活かされていることは、政治家になってからも公利の中にあっての民活を意識していたことからも分かるし、政策に実効性が伴っていたのだと思う。
また、新聞社での勤務経験は、大正デモクラシーの中で政治家としても武器として使えたのであろう。(大隈重信の人気も早稲田閥を中心とした新聞社の力が大きかった)
②日本の近代化にあって、実力社会が活きていた。
藩閥政 -
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日本で初めて本格的な政党内閣を組織し、「平民宰相」と呼ばれた原敬の「泥臭い利益誘導政治家」というイメージを払拭し、実証的にその実像を描こうとしている。
著者には、既に『原敬―外交と政治の理想』という大部の評伝があるが、本書はそれを簡潔にまとめるというだけではなく、新たな視点も含めて論じられている。
それは第一に、原が、木戸孝允・大久保利通・岩倉具視・伊藤博文・明治天皇らが協力して達成した明治維新と近代国家形成を受け継ぎ、「イギリス風の立憲国家をつくる」という、その究極の目的を実現すべく尽力したという点である。
第二に、原が第一次世界大戦中から大戦終了後に形成される、アメリカの台頭による新しい国 -
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本書を読むと、1900年代前半の日本は財政問題を含めて綱渡りのような実に危ない橋を渡っていたことを痛感する。その打開策として大隈重信は「イギリス流の政権交代可能な二大政党制を日本に導入すること」を目指したのだろう。
薩長閥ではない大隈重信は、その為に相当な無理を重ねていることが本書で詳細に紹介される。人間的迫力、胆力、政治技術、精神力。皆相当なものだが、私たちは「政党政治」がこの後に死に絶えて昭和の大破綻に進んだことを知っている。結果をみると大隈重信は失敗した政治家なのだろうとも思った。
いまだに日中関係に影を落とす「対華21ヶ条の要求」の詳細も興味深い。「加藤高明」が戦犯か。後継者と引き立て -
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本書は、明治の政治史を専門家以外にも読みやすく書くという難事に成功した本だと思った。
何が争点だったのか今ひとつ理解できなかった「明治14年の政変」についても、まるで政治ドラマを見るようにワクワクドキドキしながら読んだ。
面白いと思いながら読み進めると自然に当時の政治状況が把握できるようになる。
いやいや「大隈重信」とは政治が「志し」と「権力獲得」の二つを併せ持つという本質をよく理解している「大政治家」ではないか。
下巻では、現在の日中関係にいまだに棘のように刺さっている悪名高き「対華21ヶ条の要求」が当然出て来るだろう。読むのが楽しみである。 -
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本書は実に興味深い本である。
明治において我が国は、西欧の科学技術のみならず政治システムを大胆に導入した。異文化の土壌に「立憲体制」を移植し機能させるために我が国の支配エリートが作り上げたものが「インフォーマルな元老」であったというのが本書の考察である。
しかし、日本の歴史は「立憲体制」を補完する「元老政治」が明治大正には機能したものの、昭和には破綻し「軍部独裁体制」に変質してしまったことをも教えている。
「元老政治」が最終的な目標としたものが本書で主張するように「政権交代可能な二大政党政治」であり、日本の昭和戦前期までの経過がそれが失敗した歴史であるとするならば、2012年の民主党政権の崩壊 -
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膨大な犠牲者を出した泥沼の戦争・・・
そして焼け野原からの復興と繁栄・・・
日本の歴史上、昭和の激動っぷりはハンパない・・・
ハンパない激動期の日本を現人神として、そして象徴天皇として歩まれた昭和天皇・・・
その昭和天皇の伝記、評伝・・・
昭和天皇には歴代「最高の天皇」という評価がある一方で、戦争責任を逃れた「率直ならざる人物」であるという評価もある・・・
いったい、どうなの?
2001年にピューリッツァー賞を受賞したハーバード・ビックスら昭和天皇を批判する側の意見としては・・・
天皇は戦前において立憲君主じゃなくて、絶大な政治権力を持った君主として戦争責任があったのに、側近と共謀してそれを -
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歴代天皇の中でも最長在位、最高齢を誇る昭和天皇。物心ついた
頃から私にとっては「優しそうなおじいちゃま」だった昭和天皇
なのだが、崩御後に出版された様々な昭和天皇関連書籍を読む
うちに「この人を知らなければ自分が生まれ、育った時代を
理解することが出来ないのではないか」と思った。
多くの関連書籍があり、そのうちのいくつかは読んでいるのだ
が、宮内庁が編纂した『昭和天皇実録』が今月から一般刊行
されるのを前に「おさらい」として本書を読んだ。
本書は可もなく不可もなく…というところだろうか。公開されて
いる資料、既刊の出版物等、多くの資料を読み込んで書かれている
ので巻末の参考文献を見ると既に