猪俣美江子のレビュー一覧

  • 薔薇の輪

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    イギリスの作家クリスチアナ・ブランド、1977年発表の小説。邦訳は2015年。
    ウェールズの田園地帯を舞台にしたミステリー。読み終えて、何だかとても物悲しくなる作品ですが、良いです。

    ロンドンの人気女優エステラには心身に障害を持つ娘がおり、ウェールズの片田舎で人目を避けて育てられていました。そして、この障害者の娘のものとして新聞に連載されている日記が大衆的人気を博しており、女優エステラの人気の源泉となっていました。しかし、実はその日記はほとんどがエステラの秘書バニーの創作、現実との間には大きなギャップがあったのです。
    そんな所へ、シカゴのギャングで15年獄中にあったエステラの夫が、心臓病が悪

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    2015年12月31日
  • ケンブリッジ大学の途切れた原稿の謎

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    ケンブリッジ大学の保健師・イモージェンを主人公にしたシリーズ2作目。
    大学の数学教授(故人)が有名な数学の賞の候補になった事から、教授の妻が教授の伝記の執筆を伝記学者に依頼する。学者は、それを教え子に書かせる。イモージェンの家の下宿人のフランが伝記執筆をする事になるのだが、既に3人もの人が伝記執筆途中で姿を消している。なぜなのか、フランは大丈夫なのか?

    ケンブリッジでも、女性が学位を取れなかった時代があったことや、女性達の精密な作業から生まれるパッチワークキルトが謎解きの重要なピースになっていて、おもしろい。

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    2025年10月06日
  • 貧乏カレッジの困った遺産

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    シリーズ第三弾。

    ケンブリッジ大学の貧乏学寮・セント・アガサ・カレッジで学寮付き保健師(カレツジ・ナース)として働くイモージェン。
    彼女はカレッジが開いたディナーの席で、同カレッジのOBで大規模な金融グループ〈ファラン・グループ〉の会長であるサー・ジュリアスから自身が誰かに命を狙われている旨を打ち明けられます。
    その数ヶ月後、サー・ジュリアスが崖から転落死したというニュースを聞いたイモージェンは、その死に疑問を抱いて調査に乗り出しますが・・。

    今回はカレッジ内の事件ではないので、前二作のような大学ならではの情景描写は控えめで、大企業〈ファラン・グループ〉のゴタゴタというかドロドロした内幕が

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    2025年03月23日
  • ウィンダム図書館の奇妙な事件

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    ネタバレ

    面白い英国ミステリが読みたくて衝動買いしたが、まあ普通だった。あとがき(三橋暁)に―ー自動文学を寓話の領域から現実の世界に招き寄せた書き手として、フィリバ・ピアス、K.M.ペイトン、ロバート・コーミアと並び称されていきた。—ーという一文を発見してうれしくなる。

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    2024年12月18日
  • ケンブリッジ大学の途切れた原稿の謎

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    シリーズ第二弾。

    ケンブリッジ大学のカレッジ・ナース(学寮付き保健師)・イモージェンの家に下宿する学生・フランが、担当教授のゴーストライターとして、今は亡き数学者・ギデオンの伝記を執筆することに。
    ところがその伝記は、前任の執筆者たちが死亡や行方不明などで次々と頓挫していた曰くモノで・・・。

    今回はいきなり死体が発見された前作と異なり、序盤は穏やかなのですが、件の数学者の経歴の不可解な部分を追求していくうちに、色々不穏になってきて結果事件と繋がっていくという展開です。

    冒頭でイモージェンが友人達とパッチワークの制作している場面があり、その後もパッチワークキルトのテキスタイルについてのパー

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    2024年02月06日
  • ウィンダム図書館の奇妙な事件

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    古典ミステリー、いや1992年は古典なんだよ……そうだよな…30年前じゃん…
    とあとがき読んでひきつった。
    元はYA系作家ということで1990年代のコバルトミステリーを読んで育った読者の私はすごく入り込みやすい。
    コバルトミステリーの主人公ってざっくりいうと「正しい」人間。
    理不尽なおとなのやりかたとかいじめがけったくそ悪いと思える人間であることが多い。弱虫だったりこずるかったりするけど読者にストレス与えないように設計されている。
    この主人公イモージェン・クワイもそう。
    ケンヴリッジの住人(生徒・講師・スタッフ・教授)にある特権意識を批判的に見ているし、被害者であるフィリップを思いやるちゃんと

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    2023年10月07日
  • ウィンダム図書館の奇妙な事件

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    特別に凄いミステリーではないが、主人公が学寮の保健師って言う点が目新しい。被害者、容疑者共に寮生であり、日々の仕事をこなしつつ丹念に会話を続けていけるのも彼女の日頃のフェアな態度が信用されているとわかる。死者に対しても汚名挽回に奔走する点も好感がもてる。

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    2023年09月30日
  • ウィンダム図書館の奇妙な事件

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    ネタバレ

    ちょっとしたイタズラ,軽いいじめの連鎖と親切心から何が引き起こされたか.事故かもしれないが死んだ者にとっては殺されたようなもの.イモージェンの粘りで名誉が回復されて本当に良かった.

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    2023年07月08日
  • ウィンダム図書館の奇妙な事件

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    英国っぽさ満載(寄付金ネタをはじめ)。結果的にヒトを殺しても全く痛みを感じない(ダメージゼロ)の階級にうんざり。

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    2023年04月06日
  • ウィンダム図書館の奇妙な事件

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    長い話でもないのに、今ひとつ波に乗れなかったか。こんなんで殺すの等。初の作家だったので、YA物を試してみるか。

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    2023年01月18日
  • 大忙しの蜜月旅行

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    なかなか続きが出なくって
    前作までの訳者さんが
    亡くなってしまわれたのは少し残念。

    一応、新婚旅行で滞在する屋敷で
    前の持ち主が死んでいるのが見つかる
    という事件は起こりますが
    作者が「推理もある恋愛小説」と言ってるように
    メインはお貴族様と結婚した
    女流作家の気苦労やら、なんやら(笑)

    まぁ、シリーズを通して読んできた読者への
    ファンサービスな一冊ですね。
    御前様は相変わらずだし。
    新婦のハリエット嬢と執事のバンターが
    うまくやっていけそうで良かった(*^0^*)
    「田舎者」のご近所さんに振り回されて
    ついにキレるバンターに驚いたわ…。

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    2020年11月12日
  • 大忙しの蜜月旅行

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    サブタイトルが「推理によって中断する恋愛小説」とありますが、まさにコレです。読後感はロマンス小説を読んだ感覚。
    イギリスの田舎の風俗描写と、新婚旅行で周囲そっちのけでキャッキャウフフするピーターとハリエットが凄い。この二人のファンなのでとっても楽しめたのですが、これは絶対にシリーズの最後に読むべき本で(ストーリーやキャラクターが繋がってる事もあり)、絶対最初に手に取っちゃいけない奴ですねw

    この作品、元が舞台脚本だっただけあって、今までの作品と一味違ってうっすら舞台の痕跡みたいなのが感じられて面白い。(例えば、居間にカメラが固定されてそこに次々キャラが出入りするような演出になってて、とても舞

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    2020年03月25日
  • 領主館の花嫁たち

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    なんと見事なゴシックホラー。いや、話はぜんぜん怖くないよ? 一族代々の花嫁が不幸に死すという呪いに、領主館の双子姉妹は抗おうとするが…というだけの筋書き。でもそれだけの話をここまで読ませるのは、田舎の忠実な召使いから不細工だがセンスがいいばばマダムまで人間味あふれるキャラ造形、少しずつ謎を明かしていくストーリーテリングの妙、そして自然・服飾・内装らを自在に豊かに描いて本編の主役たる「アバダール館」を体験させてくれる描写の腕ですなー。なんかそのへんがイマイチだと、映画『クリムゾン・ピーク』みたいにトンチンカンになるのよね。
    そして私がゴシックに求める肝心な一点が、しっかりと核にある。霊や運命の

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    2019年03月26日
  • 薔薇の輪

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    ★3.5
    ブランドの長編は、人間関係の過剰なドタバタ劇を面白く受け止められるかどうかで評価が分かれる。ほぼ全ての登場人物達が荒唐無稽な言動をし、こちらはそれに振り回されて本筋を見失いかねず、悲劇なのか喜劇なのかも分からなくなってくる。ただし今まで読んだ作品は訳も古く、そのせいで余計滑稽さを感じていた面があり、その点では翻訳自体が新しい本作品は滑稽さがだいぶ抑えられ、コミカル程度で読みやすかった。

    事件の顛末は想像内ではあったが、屈折した人間関係と身勝手極まりない醜い人間像は、ブランドらしい皮肉のスパイスが効いた巧い書き味に仕上がっている。

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    2016年10月09日
  • 薔薇の輪

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     コメディである。喜劇というべきか。
     非常になんも考えずに楽しく読める作品だが、論理的というより推測に推測を重ねるタイプの推理なので、「え? その予想には根拠ないよね?」ってなる。まじものごとき憑くものも同じタイプだけれども、確認しないまま推測に推測を重ねるのってどうなんだろうってなる。テンポの良さを重視するがゆえなのかもしれないし、読み物としては楽しい。
     ただ、ミステリかって言われると悩ましい。

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    2015年12月31日
  • 薔薇の輪

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    障害を持つ娘のことを綴ったエッセイで人気を保っている女優エステラ。彼女の服役していた夫が病気のため特赦で出所、娘に会いたいと訪ねて来る。仕方なく娘の住むウェールズの田舎に案内するが、そこで事件は起こった…
    登場人物が少ないしかなり昔の作品なので、ミステリとして驚愕の結末、というわけにはいかないが、エステラやその関係者の心理描写、真相を究明しようとするチャッキー警部と何やら隠し事をしている彼らのやりとりなど緊迫感があって楽しめた。

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    2015年10月17日
  • 薔薇の輪

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    虚偽にはりめぐらされた世界に、現実に起きた事件のあれこれを思い出させられたり。ひどい話だが、母親として「愛がない…わけではない…」というところが余計に曲者。

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    2015年09月30日
  • 薔薇の輪

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    有名女優の周りに多くの人々が侍り、依存して生きていくというような状況ができあがったのはいつ頃の時代からなのだろうか。本書は1977年の作品ということなので、スターとその取り巻きが当たり前に描かれていても年代的にはおかしくない。厳密には主人公の女優に依存しているというのとも少し違うのだれど、このような関係が悲劇を生む、というのは古今東西どこでもありそうな話のようだ。

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    2015年07月19日
  • 薔薇の輪

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    ネタバレ

    某角川映画原作作品のように、最初は倒叙作品の演出(エステラ視点で固定)にして徐々に視点を切り替えていく形にした方がすっきりとまとまった気がする。クリスチアナ・ブランドは多くの登場人物がそれぞれ大騒ぎしている中に伏線とミスリードを上手く盛り込んでくるのが得意だと個人的に思っており、登場人物の少ない「薔薇の輪」は本領発揮があまり出来ていない。なおマスコミと芸能人に対する皮肉な視線はいつもの筆使い。スヴェンガーリについては「悪魔スヴェンガリ」という映画を例に挙げた方が分かり易かったような…本筋に全く関係ない所では、矢鱈に"まんいち"という言葉を使用していたのが気になる。

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    2015年07月10日