猪俣美江子のレビュー一覧
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シリーズ第二弾。
ケンブリッジ大学のカレッジ・ナース(学寮付き保健師)・イモージェンの家に下宿する学生・フランが、担当教授のゴーストライターとして、今は亡き数学者・ギデオンの伝記を執筆することに。
ところがその伝記は、前任の執筆者たちが死亡や行方不明などで次々と頓挫していた曰くモノで・・・。
今回はいきなり死体が発見された前作と異なり、序盤は穏やかなのですが、件の数学者の経歴の不可解な部分を追求していくうちに、色々不穏になってきて結果事件と繋がっていくという展開です。
冒頭でイモージェンが友人達とパッチワークの制作している場面があり、その後もパッチワークキルトのテキスタイルについてのパートがあったりと、“何だかパッチワークに結構ページ割いているな・・”とパッチワークといえばキャシー中島さん(?)位しか思い浮かばない私は、その部分を斜め読みしそうになったのですが、後半でこのパッチワークの図案が謎解きのカギになったので、実はちゃんと繋がっておりました。
というわけで、イモージェンがフランの為に謎を解明すべく奔走するのですが、その間学生の不正疑惑のとばっちりを受けたり、調査の為に訪れた農場で大怪我を負わされたりと、結構受難でお気の毒でした。
そんな災難を受けながらも、様々な布石をちゃんと真相につなげていくイモージェンは流石です。
終盤はちょっとハラハラしましたが、友人の巡査部長・マイケルの協力もあり、事なきを得て良かったですね。
あと、最後にちょっとしか登場しませんでしたが、今回のキーマン(ウーマン)だったと言える、ヴィお婆ちゃんが素敵で、お婆ちゃんの輝かしいラストも清々しくて良かったです。
カレッジの伝統的な雰囲気を楽しめるのも魅力なこのシリーズ。
解説を読むと、原書の方ではさらなる続巻が出ているようなので、翻訳を心待ちにしております~。 -
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古典ミステリー、いや1992年は古典なんだよ……そうだよな…30年前じゃん…
とあとがき読んでひきつった。
元はYA系作家ということで1990年代のコバルトミステリーを読んで育った読者の私はすごく入り込みやすい。
コバルトミステリーの主人公ってざっくりいうと「正しい」人間。
理不尽なおとなのやりかたとかいじめがけったくそ悪いと思える人間であることが多い。弱虫だったりこずるかったりするけど読者にストレス与えないように設計されている。
この主人公イモージェン・クワイもそう。
ケンヴリッジの住人(生徒・講師・スタッフ・教授)にある特権意識を批判的に見ているし、被害者であるフィリップを思いやるちゃんとした大人だ。
事件は4/5くらいのところで真相が明らかになるが、殺人とは別の謎『被害者はなぜそこにいたのか』の真実をイモージェンは追及する。被害者を愛するひとたちや希望をもってこの大学に来た故人のために動く。
何の得にもならないが何故そうしたかというと、彼女はこの学校の住人の健康やこころを護る仕事に誇りをもっているからだと思う。すべてを知った彼女が断固として罪をゆるさない様子は読んでいて爽快だ。
30年前のイギリスの階級主義はまだまだ強固だが今だって似たようなもんだろうなと思う。ただ、こういったいじめは今発覚したら確実に退学らしいけど。
このシリーズはあと3作あるそうだけど同じように「学術的ミステリー+世俗ミステリー」の混合なのかな、楽しみだ。 -
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なかなか続きが出なくって
前作までの訳者さんが
亡くなってしまわれたのは少し残念。
一応、新婚旅行で滞在する屋敷で
前の持ち主が死んでいるのが見つかる
という事件は起こりますが
作者が「推理もある恋愛小説」と言ってるように
メインはお貴族様と結婚した
女流作家の気苦労やら、なんやら(笑)
まぁ、シリーズを通して読んできた読者への
ファンサービスな一冊ですね。
御前様は相変わらずだし。
新婦のハリエット嬢と執事のバンターが
うまくやっていけそうで良かった(*^0^*)
「田舎者」のご近所さんに振り回されて
ついにキレるバンターに驚いたわ…。 -
Posted by ブクログ
サブタイトルが「推理によって中断する恋愛小説」とありますが、まさにコレです。読後感はロマンス小説を読んだ感覚。
イギリスの田舎の風俗描写と、新婚旅行で周囲そっちのけでキャッキャウフフするピーターとハリエットが凄い。この二人のファンなのでとっても楽しめたのですが、これは絶対にシリーズの最後に読むべき本で(ストーリーやキャラクターが繋がってる事もあり)、絶対最初に手に取っちゃいけない奴ですねw
この作品、元が舞台脚本だっただけあって、今までの作品と一味違ってうっすら舞台の痕跡みたいなのが感じられて面白い。(例えば、居間にカメラが固定されてそこに次々キャラが出入りするような演出になってて、とても舞台的なんです)また、バンター単品の登場シーンも多く、よりウッドハウスのジーヴスばりの従僕っぷり描写が多くてびっくり。
ピーター卿の母上のキャラクターがとっても良い。
後日譚「トールボーイズ余話」も収録。これも幸せそうでとても良い短篇だった。 -
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なんと見事なゴシックホラー。いや、話はぜんぜん怖くないよ? 一族代々の花嫁が不幸に死すという呪いに、領主館の双子姉妹は抗おうとするが…というだけの筋書き。でもそれだけの話をここまで読ませるのは、田舎の忠実な召使いから不細工だがセンスがいいばばマダムまで人間味あふれるキャラ造形、少しずつ謎を明かしていくストーリーテリングの妙、そして自然・服飾・内装らを自在に豊かに描いて本編の主役たる「アバダール館」を体験させてくれる描写の腕ですなー。なんかそのへんがイマイチだと、映画『クリムゾン・ピーク』みたいにトンチンカンになるのよね。
そして私がゴシックに求める肝心な一点が、しっかりと核にある。霊や運命のせいにするも暴き出される人間の心の醜さなー。いつだっていちばん怖いのは人間。華麗なお屋敷を舞台にそれを描くのがゴシックホラーだよな。『ねじの回転』とか「リオノーラの肖像』とか。
いや、本物の読書家の友人に「それとあれとこれが好きならクリスチアナ・ブランドお好きですよ」と勧められて読んだわけですが、当たりだったわ、ありがとー。 -
Posted by ブクログ
★3.5
ブランドの長編は、人間関係の過剰なドタバタ劇を面白く受け止められるかどうかで評価が分かれる。ほぼ全ての登場人物達が荒唐無稽な言動をし、こちらはそれに振り回されて本筋を見失いかねず、悲劇なのか喜劇なのかも分からなくなってくる。ただし今まで読んだ作品は訳も古く、そのせいで余計滑稽さを感じていた面があり、その点では翻訳自体が新しい本作品は滑稽さがだいぶ抑えられ、コミカル程度で読みやすかった。
事件の顛末は想像内ではあったが、屈折した人間関係と身勝手極まりない醜い人間像は、ブランドらしい皮肉のスパイスが効いた巧い書き味に仕上がっている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ某角川映画原作作品のように、最初は倒叙作品の演出(エステラ視点で固定)にして徐々に視点を切り替えていく形にした方がすっきりとまとまった気がする。クリスチアナ・ブランドは多くの登場人物がそれぞれ大騒ぎしている中に伏線とミスリードを上手く盛り込んでくるのが得意だと個人的に思っており、登場人物の少ない「薔薇の輪」は本領発揮があまり出来ていない。なおマスコミと芸能人に対する皮肉な視線はいつもの筆使い。スヴェンガーリについては「悪魔スヴェンガリ」という映画を例に挙げた方が分かり易かったような…本筋に全く関係ない所では、矢鱈に"まんいち"という言葉を使用していたのが気になる。