橋本武のレビュー一覧
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灘高の伝説の国語教師・橋本武氏の本である。
本書の発刊が2012年であるが、2013年に橋本氏が亡くなっているので、最後の書と言っても良いのだろう。
橋本氏の国語授業の概要は知っていた。学習意欲を引き出す授業は、教え子たちの生き方に影響を与えた。
遊ぶように学ぶ、遊びながら学ぶ、授業法は画期的であり、氏の研究と努力の結晶である。
そもそも授業は教師の人間性と不可分である。
ゆえに、『銀の匙』のスローリーディング授業は、橋本氏だから出来たわけだが、氏のコンセプトを咀嚼するならば、また新たな形の授業を生むことも出来るだろう。
橋本氏の授業は、遊ぶような感覚から導入するが、そこから派生する知識の伝授 -
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灘中学で三年間かけて中勘助の『銀の匙』を読むという授業をつづけてきた著者が、みずからの教育実践を振り返りつつ、国語の学び方について語った本です。
著者の授業は、みずから学ぼうとする意欲をもった生徒たちと、彼らの若々しい意欲を自由に飛翔させる度量をもった教師が深い信頼関係で結ばれることによって可能になったのだろうと考えます。その意味では本書から教育についての一定の方法論を性急に引き出そうとするのは控えるべきなのかもしれません。むしろ両者の交流、とくに著者の生徒たちに向ける温かいまなざしに触れることができるというのが、本書の一位番の魅力なのではないかと思います。 -
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灘高校で長年国語教師を務めた御年百歳を超える著者。「学問のすすめ」というタイトルだが、「元教師」としての経験を著した本であると同時に人生の楽しみ方を説いた本でもある。様々なことに興味を持ちやってみること、前向きに生きること、本書を読んでいると、「いかに自分に正直に生きるか」、これこそが長寿の鍵を握るポイントなのではないかと感じる。
国語力の基本は書くこと、というのは同感。書くという行為によって、「判断力」「構成力」「集中力」が培われる、と著者は言う。頭の中でしっかり考えているつもりでも、いざそれを実際に文章にして論理的に書き記そうとするとこれが意外と難しいものなのだ。でもその難しさに耐えながら -
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以前に読んだ、伊藤氏貴さんの『奇跡の教室』では、ちょいとガッカリさせられてしまったので、ドキドキしながら本書を読み進めていくこととなりました。同じテーマを扱っている本ではあるけれど、『奇跡の教室』が外から見た評価であるのに対し、本書は内からの自己評価。当然、『奇跡の教室』にあったような問題点は、本書には見当たらないことになりますね。
ところで、周囲が賞賛する中で、当人がどう思っているのかという点は、別に橋本先生の授業という話題でなくとも、気になるものではありますな。そういった意味で、本書には賞賛される者の「本音」が描かれており、ニヤニヤしながら読み進めることができました(笑)。
結局の -
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国語を学ぶことは豊かな人生を送るための感受性を涵養するために必要な基礎学習であり、一生かけて行っていくものだという基本姿勢に共感。そのために先生が用意したレッスンは、作中の言葉で例文を作ったり、作品の各章に自分でタイトルを付けたり、読後感を書いたりと、アウトプット重視のトレーニング。これは灘校の秘術ではない。誰でもできるがほとんどの人はやらない、愚直な正攻法。
よく「国語には正解はない」という言葉が勉強しないことの言い訳に使われるが、この言葉が意味するところはむしろ逆で、国語学習においては本人がかいた汗以外には価値はないということなんだと思う。