施光恒のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
新自由主義のようなリベラルな考え方が、実は同じような価値観を押し付ける帝国主義的な考え方ではないか?と言う視点は面白いと思いました。
とは言え、世界で盛り上がりを見せているナショナリズムが単純に正解と言うわけはなさそうですし、それぞれの国の文化や習慣と言った内的なものと、地政学など外的なものを、その国にとってベストな政策を選んでいく必要があると理解しました。
個人レベルの話としては、グローバル化により株価は上がっても、実際に多くの国民は苦しんでおり、一人一人は弱い国民が団結して中間団体を形成し、資本家や国に立ち向かうと言う形が必要なのかもしれませんが、それも今やなかなか難しそうです。
地域や業界など、人々の連帯と言うのはこれからの時代の一つの鍵になると考えていきたいと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ日本の公用語を英語やフランス語に変えるべきという意見は、明治期以降これまで幾度となく議論されたが、世論を得られず実現しなかった。しかし、新自由主義の考え方が一般的になった昨今は事情が異なる。新自由主義が一因となって進行する「グローバル化」は、「時代の流れ」という認識(歴史法則主義)のもと、各国の経済政策は、自国の状況に合わせた政策を打つ自由度を失い「拘束」される。結局、外国資本の比率が高くなった経済界の論理が絶対視されるのである。下(現場)からの反発があっても、意思決定のスピードが優先され、多様な意見に耳を傾ける民主的意思決定のプロセスが切り捨てられてしまう。
このような中で進められる英語の公用語化は、自由民主主義を破壊し、国民の知的成長の機会を奪い、結果的に国力が退化させるというのが、本書の批判の肝である。その主な理由は、次のとおりである。
・民主主義の前提条件となる国民の連帯意識を奪う。
・連帯意識がなくなると福祉政策が成り立たない。
・日常の言葉(母語)で政治を論じることが大切。
・言語の分断(英語能力の有無)が格差を生み出す。
・職業選択の自由を奪う。
・自分たちの潜在能力を発揮できるに至らない。
・英語を身につけるための莫大な時間と労力。
土着語で学ぶことが社会全体の活性化を促した重要な前例として、宗教改革がある。贖宥状の販売に代表されるようなカトリックへの批判を強め、1517年にマルティン・ルターが、ヴィッテンベルク市の教会・城内に「95ヵ条の論題」を張り付けたことが始まりとされる。しかし、宗教改革では、聖書をラテン語から土着語に翻訳したことも重要だ。ルターはドイツ語に、ティンダルは英語に、オリヴェタン(カルヴァンの従兄弟)はフランス語に翻訳した。こうして、当時の「ラテン語という『国際語』『文化語』『学術語』『書物の言語』に対してひたすらコンプレックスを持ち続けていた人々」が、自分たちも、日頃使って暮らしているごく身近な言語を通して、最高度の道徳や知識に触れ、活動することができるという自信を獲得した。これが近代化への原動力になったのだ(pp.46-66)。
英語偏重の教育改革提案は、児童・生徒の将来の幸福や日本の長期的な安定や発展、日本の学術文化の興隆といった観点からではない。「新自由主義的」な経済の論理から発しているのである。しかし、英語偏重の教育改革は結局、世界の「英語支配の序列構造」の中で、日本が非常に不利な立場(搾取される植民地のような立場)に置かれるのは必至であるというのが、著者の主張である(p.218)。 -
Posted by ブクログ
ネタバレぜひ読んでください!としかいえない気がします。
『このままではインド版アントニ・ガウディは永遠に生まれない。専門教育が英語でしか提供されない環境では、他人のコピーしか作り出せない』
『他方、英語を公用語の一つに加え、日本よりも英語が堪能な人々が数多くいるフィリピンなどのアジア諸国、あるいはケニアなどのアフリカ諸国は、さほどの経済力を備えていない』
『英語化が日本人の愚民化を招くと半ばわかっていながら、エリートたちは、日本の社会の英語化に躍起になっている。本書の批判は、英語が得意な人々へのものではなく、国民の知的成長の機会を奪い、国力を低下させようとする人々に向けたものである。』
そして、もっと日本語に接してやさしくなりたいとも思いました。
『海外の日本語研究者や日本語教師、あるいは日本語学習者の間では以前から、「日本語を学ぶと、性格が穏和になる」「人との接し方が柔らかくなる」ということが指摘されていたそうだ。』 -
Posted by ブクログ
英会話や英語学習を否定するものではなく、官庁や大学の受験や業務・授業の英語化、さらにそれに備えた低学年からの英語化学習ラッシュ(英語学習ではない)に警鐘を鳴らす。それは日本人の知性・感性の発達に膨大な負担を与え、長い目で見れば、国際競争力の向上どころか平均的に劣化をもたらすというもの。企業経営者・為政者・教育者には必読の書だと思う。森政稔氏「迷走する民主主義」を読んで、なぜ今のエリートはこんな簡単なことに気づかないんだろうと思わされること多々。その理由はここにもw 巻末「おわりに」だけでも読んでみて!
それにしても、金融危機の国にイチイチ救済条件に英語化を強要するなんて、IMFは胡散臭すぎ… -
Posted by ブクログ
文科省がSGU(スーパーグローバル大学)を支援する制度を始めたらしい。ネットで検索すると一流と言われる大学や、そうでなくても国際化に力を入れている大学などが今後10年にわたり数十億円規模の補助金を受けて、グローバルな人材を輩出するためのカリキュラムを組む。
へえ〜、いい制度なんじゃないの? 学生の皆さん頑張ってね〜、と思っていたけど、どうも問題があるようだ。
そもそもが内需の拡大が期待できない日本の閉塞状況を打開するために、その活路を海外に求めるところから始まっているので、グローバルビジネスに必要な人材を育成するというのが主眼になっている。しかし、そんな政策はいろんな国で取っているから、世界と競争になる。そんな競争に勝つための人材を財界は欲している。即戦力と言うやつだ。そう考えたときに日本人にとってネックとなるのは英語力。だから英語力をつけて世界と互角に戦いましょう!というのが狙いのようだ。
そのためには英語に慣れることが第一。英語での交渉力をつけるには大学の講義もすべて英語でしてしまいましょう。そうすれば手っ取り早く語学力も交渉力もつくよね、と政府は言いたいらしい。しかも英語での講義が増えれば増えるほど良い大学との評価になるので、大学の全講義の50%くらいは国際化のために英語化(オールイングリッシュ)しましょうと言っている。
そんな狙いに著者は、待ったをかける。そんなことをしたら日本語を母国語としている日本人の良さが消されてしまうよ、だって言葉って文化の根幹じゃないか!と主張する。
なぜ成熟した母国語を持ちながら、これからその高度な活用によって様々な学問を吸収しなければいけない学生時代に、わざわざ英語の習得に限った勉強をしなければいけないのだ!と怒っている。
しかもどんなに頑張っても英語を母国語とする英米豪なんかにかなうわけないじゃん!なんで相手の土俵で相撲とるのさ!と戦略のまずさを指摘している。(自分なりの噛み砕いた表現なので、著者がこんな言葉を使っているわけではありません)
なんか大人げない、と思う人もいるかもしれないが、本書を読めば納得しきり。例えば…と書きだすと途方もない分量になりそうなので書かないけど、確かに英語だけ出来る英語バカが増えるかもしれないと思う。(とか言う自分は英語すらできないただのバカ)
ちゃんと断っておくと、著者は語学の習得に関して否を唱えているわけではない。母国語をないがしろにしてまでやろうとしているこのSGU支援制度を見直せと言っているに過ぎない。
とりあえず講義のずべてを英語化(オールイングリッシュ)にするとかはやめといたほうがいいと思う。 -
Posted by ブクログ
7人の著者によるTPPのデメリット、危険性を説く警告書。舌足らずな部分は見受けられるが、論旨自体はそれぞれ納得がいく。TPPは国家間の交渉ではなく、グローバル企業の利益誘導という漠然とした印象は間違っていなかった。
・アメリカの「年次改革要望書」(勧告書)は国家の主権の領域に及んでいた。
・非関税障壁=規制や制度
・国民皆保険制度の空洞化(公的医療保険の給付範囲の縮小)
・長谷川三千子:翻訳作業とは翻訳される言語と翻訳先の言語との間で綿密な概念の検討が行われ、双方ともに厳しい知的吟味にさらされる過程である。外来の語彙や概念が触媒となり、土着の文化が活性化され、発展し、多様化していく。
・日本人の秩序感覚。
・日本人の創造性の高さ。良質な中産階級の存在。日本語文化の肥沃さ。
・日本は貿易依存度が低い内需大国。
・グローバル化と国家主権は両立しがたい。※国家の経済制御権の確保は安全網として重要? -
Posted by ブクログ
中野剛志氏らによる座談会は、日本経済の長期停滞の根源を、小泉政権以降「改革」の名の下で推進された新自由主義にあると分析する。この思想は、民主主義の基盤である中間組織や共同体を「既得権益」として切り捨て、個人と国家を直結させた。その結果、社会の連帯が失われ、格差が拡大する一方で、トップダウンの決定に従うだけの受動的な国民が増殖したと指摘する。
議論では、行き過ぎたリベラリズムが文化や伝統を排除し、必然的に強権国家を招く危険性が示唆された。真の民主主義には、国民の多様性を尊重するナショナリズムと、社会を支える中間組織の再評価が不可欠である。また、財政出動を恐れる緊縮財政からの脱却と、危機時にボトムアップで修正可能な強靭な社会基盤の整備が求められている。
日本は独自の長期ビジョンを欠き、陳腐化したグローバリズムに追従し続けている。国家としての自律性を取り戻し、効率化の名の下に破壊された社会の余力を再構築することが、今後の危機の時代を生き抜く道であると論じている。
-
Posted by ブクログ
斬新な視点で面白かった。
聖書がラテン語のままだったら、知識人だけのものになってしまっかもしれないこと。
岡倉天心の「茶の本」など、あの時代に英語で書かれた本が多いのはなぜかということ。
GDPが高いドイツやフランスなども自国の言葉を大切にしている国であること。
高等教育を英語で行う韓国にノーベル賞受者が少ないことなど。
母語で学ぶことの重要性の根拠がたくさん挙げられています。
だからといって、英語を学ぶことが悪いわけではないとも説明しておられるので、バランスが取れた考えだと思いました。
巻末で言及されていたクリストファー・ラッシュが警告していた奇妙なエリート層の出現についての予告もほんとその通りだなと。
勉強になった一冊でした。 -
Posted by ブクログ
母語で思考して,しかも世界に関する概念も母語で理解できるというのが日本語の利点です。大阪公立大学で何年後かに英語公用化するという報道がありましたが,トンダ愚策ですね。維新は歴史を知らない(というか,維新幹部はグローバルなのだろうか?)。
*****
英語化の行き着く先に、この国「誰も望まない未来」が待っている。英語化は、日本を壊すのである。(p.6)
ヨーロッパ諸国は,ラテン語という「普遍」だと思われていた言語を,それぞれの母語に「翻訳」した。そして,知的な観念を「土着化」することを通じて,各国の言葉で運営される公共空間を作り出し,そこに多くの人々の力が結集され,近代化を成し遂げた。
明治日本の場合も,「普遍」的で「文明」的だと思われた英語など欧米の言葉を,日本語に徹底的に翻訳し,その概念を適切に位置付けていくことによって日本語自体を豊かにし,一般庶民であっても少し努力すれば,世界の先端の知識に触れられるような公共空間を形成した。これによって,多くの人が自己の能力を磨き,発揮し,参加することのできる近代的な国づくりが可能となり,非欧米社会ではじめて近代的国家を建設できたのだ。(pp.91-92) -
Posted by ブクログ
東洋経済にて、新しい封建制がやってくると合わせて紹介されていたので入手。いわゆる「西側」諸国(ぶっちゃけ欧米)を今までリードしてきている新自由主義が何をもたらしているか、を解説する。基本思想が強者総取りのところに更にテクノロジーによる支配を加速させて、少数のテック貴族によって多数の下流層(中流層は下流層にに叩き落される)が支配され、民主主義が蔑ろにされていく現状が語られている。そのような状況だからこそ、トランプのようなデマゴーグがそういった層のニーズをすくい取って伸びていく、と解説される。筆者は多元民主主義(地方の有力者に率いられた集団が多数ひしめき合う状況)の復活を提示しているが、テックオリガリヒによる支配って、サイバーパンクのメガコーポによる支配と同じだなぁ、と思ってみたりする。
-
Posted by ブクログ
この本で面白かったのは「世界対戦とニューディール」の章で、戦争が労働条件向上に役に立つという事実。アメリカは第二次世界大戦で国内の労働者の協力を得るために、勝ったあかつきには労働環境含め社会保障を充実させることを約束した。それだけ勝つためにはなりふり構っていられなかったのだろうと思う。戦後はその約束のもと労働者階級の発言権を認め、格差の少ない社会を実現した。その状況も長くはつづかなかったわけだが、日本の戦後社会も似ていたように思う。今や労働者の経営者に対する交渉力などゼロに等しい。戦争が正しいなどと言う気はさらさらないが、アメリカの歴史上労働者が最も恩恵を受けたのは戦争中だった事実には複雑な思いがする。
-
Posted by ブクログ
英語を学ぶことは大切です。相手と対等に議論ができるのならばどんどん学ぶべきであると思います。
ただし、今この国において日本語ですら議論を戦えない輩が溢れかえっています。論破は議論ではありませんただのいじめです。
いかに母国語が大切かというのは世界が証明してる訳であり何故今さら日本は母国語を捨てるような教育をするのか理解に苦しみます。
クール・ジャパンなどちゃんちゃらおかしいという事がなぜ理解できないのだろう。日本を世界に発信したいのなら日本語で正々堂々とやるべきであり、この名のもとに公用語を英語とする英語特区が組み込まれているとなると何とも寂しい。
やらなければならない時はいずれ来る、だけど今ではないそう子供たちに教育ができる社会になってもらいたい。