黒井千次のレビュー一覧
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ネタバレ主人公は大学生で、家庭教師先の人妻に心惹かれる(というかほとんど欲情という感じ)。それは、高校時代におそらく大恋愛の結果別れてしまった恋人への喪失感ゆえの反動と言えなくもない。また、時勢は日本の再軍備に反対する学生運動が活発な頃で、主人公は学生運動に身を置かねば「ならない」と思っているのだが、どうしても思い切った行動が取れず、「安全な」後方支援的な活動にとどまっている。父親が検事であり国家権力側の人間であることから、父親への反発心もある一方で、万一逮捕された時の父親が失職するかもしれないという可能性への恐れもある。また、それ以外の要素として主人公は小説を書こうと同人誌活動も行なっているものの、
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ネタバレ私は、来年は60代では一番年寄りになりますが、70になれば70代では一番わかくなります。そんな風に考えると面白いかもしれません(^-^) サミュエル・ウルマンの「青春とは」の詩はとてもいい詩だと思いますが、老いを感じると実際はなかなか難しいものがありますw。著者は「階段の一歩一歩が、体力や健康を確かめるバロメーターになる」と仰ってますが、階段の上り下り、健康維持のためであり、また転倒という危険物でもあるので、気をつけたいですね!黒井千次 著「老いの味わい」、2014.10発行です。
①会話の途中で「その時、こちらはもう生きてはいないだろうけどね」という言葉が不自然でなくなりましたw。②近況 -
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厳密に言えば過去に出版された、角川文庫版を読んだため、収録作が異なっているかもしれない。
「二つの夜」「聖産業週間」「穴と空」「時間」「騎士グーダス」「空砲に弾を」(収録順)計6作。
二つの夜は、会社員の主人公が上司に”ブツ”を探すように命じられるが、そのままブツを探せと言われているため、実態が分からないまま奔走するという話。穴と空は職場の同僚が出社しないことから様子を見に出かけた人もまた翌日には行方が不明になり、その二人を探しに出かけた人もまたどこかへと連鎖が続いていく。上記二作はSF仕様の文学作品と呼ぶのかもしれない。安部公房の様な本格なものでは無く、SFの題材を文学として描いたものと言っ -
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ネタバレ[ 内容 ]
昭和一桁生まれの作家が、自らの日常を通して“現代の老いの姿”を探る。
同級生の葬儀を同窓会になぞらえ、男女の老い方の違いに思いを馳せ、「オジイチャン」と呼ばれて動揺、平均余命の数字が気にかかり―。
冷静な観察眼と深い内省から紡がれる、珠玉のエッセイ五六篇を収録。
[ 目次 ]
1 病気待ちの列(父という時計;自然に老いていくには? ほか)
2 友を送る―これも同窓会(時間ないのは僕なのに;追い抜き、追い抜かれ ほか)
3 老い遅れに気をつけて(歳を取れなくなった時代;一つ拾い、一つこぼす ほか)
4 「普通高齢者」がイチバン(平均余命で数字遊び;生命の灯が点るのも病院 ほか)
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黒井千次(1932年~)氏は、東大経済学部卒、富士重工業に入社し、会社員生活のかたわら執筆活動を行い、1968年に芥川賞候補、1970年に芸術選奨新人賞受賞。その後、富士重工業を辞めて作家活動に専念するようになり、谷崎潤一郎賞、野間文芸賞等を受賞。日本文芸家協会理事長、日本芸術院長も務めた。文化功労者。旭日中綬章。
本書は、NHKラジオ第二放送で2006年4~6月に放送された「老いるということ」の13回分をベースに、一冊の本にまとめたものである。著者は現在90歳であるが、本書の後も、中公新書、河出書房新社から、『老いのかたち』、『老いのつぶやき』、『老いの味わい』、『老いへの歩み』、『老いのゆ -
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ネタバレ老いることの意味、肉体的に、精神的にあると思いますが、86歳で没した幸田文さんが70歳の時のエッセイに次のようなくだりがあります。「自らの限界を認め、今迄より一歩も二歩もさがったところでものを考えようとしなければならない」と。彼女は「きりりと絞りあげた意志」と表現してますが、心に響いた一節でした。黒井千次 著「老いるということ」、2006.11発行。
寿命が延びるとは、老後が長期化すること。平均寿命が70歳を超えたのは、男性1971年、女性1960年。自分は年を取ったと自覚して、初めて老いの視野も展望も開けてくる。 黒井千次「老いるということ」、2006.11発行。私は65歳では、体に老 -
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自選短編集ということで、初期作から現在に至るまでの優れた或いは作者的に上手く書けたのだろう作品が、名を連ねている。いずれもある程度同じ枚数の作品を、意識的に年代別に選んだとあとがきにあり、作品の背景についてあまり多くは語られていなかったが、とにかく、初期は社会人時代と重なっていたこともあり、会社と個人や仕事と社会の距離感や内面がテーマに描かれ、作者が退社してからの中期からは家族や近所や場所という人間関係や繋がりを意識した作風に転化している。そのため物語の幅は広いが、共通した所は”内向の世代”の作家と呼ばれるだけあって、人間の内面もしくは行動が多く記されており、突き詰めた故の人間の心理の怖さが大
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初出は読売新聞夕刊の月一回の連載「時のかくれん坊」.第一弾は「老いのかたち」こちらは未読.本書は第二弾.
私自身も私の両親もどんどん年を取っていく.あたり前だが,そのあたり前のことがもたらす変化というのが,悲しい思いをともなう物が多いので,これから先,老いるというのはどういうことかを予習しようと,この本を読む.
黒井千次はこの本の中では78歳から82歳.日々の生活から,「老い」をすくい上げ,その老いといかに付き合うかを淡々と綴っている.老いの描写は,なかなかリアル.物忘れのレベルを段階ごとに分析していくところなどは言葉が適切で,私ももう少しするとこうなっていくんだなぁ,ということが感じられ