黒井千次のレビュー一覧

  • P+D BOOKS 黄金の樹
    中盤で明史と木賊がザインとゾルレンについて話し合い、「とにかく、切実なものだけが切実なんだよな。」「同義反復には、常に多少の真実が含まれているからな。」というやり取りが印象的だった。
    全体としては棗がやや虫が良すぎるのではと感じたが、それは終始主人公の明史にも言えるし、その我儘さや苦悩こそが青春の色...続きを読む
  • P+D BOOKS 春の道標
    思春期の恋のどうしようもなさを克明に描いた作品。
    特に今まで自分が送った手紙がすべて返送されるシーンは苦しかった。
  • 老いのゆくえ
    これはまだ中年のうちに出会えて良かった本である。とにかく「老いる」とはどのようなことか、老いる人自身の主観的な目で懇切丁寧に描いて教えてくれる本はなかなか無いように思う。転ぶこと、体が動かなくなること、ものを忘れること、客観的には理解しているつもりのこれらの老化現象が、その人自身にはどう捉えられてい...続きを読む
  • 老いのゆくえ
    中年のネタに共感するのとは違って、85歳の高齢の方の本は驚きと発見の連続でした。
    終活本的ハウツーと違って、リアルに「老い」を考えさせられました。

    坂道を降りるときは前につんのめって、しゃがむと立ち上がれなくなって、ひっくり返ると起き上がれない、、、、。

    読みながら、家の中や近所の段差や坂を思い...続きを読む
  • 漫画 働くということ(1)
    労働の本質は自己表現への欲求だという。
    働くことを通して自分を現す、働けることの何と素晴らしいことか。

    「実社会に出る者は、その時になって初めて働く親の姿に出会う」
    まったくその通り。

    鬱々している社員へのプレゼント本。
    彼の読後に語り合いたい。
  • 生きるということ
     働く職場(日本全国、時に欧米など)から退場し、地域社会に登場、年齢と共に生きる場所、行動範囲、使う言語・言葉を大きく変えて生きていますw。本を持ち歩く癖は学生時代から変わっていません。これまでの人生の節目は、大学の選択、結婚、定年です。黒井千次さん(1932年生まれで、五木寛之さんと同年生まれ)の...続きを読む
  • 老いのかたち
    昭和7年生まれ、黒井千次さんの「老いのかたち」、2010.4発行です。読売新聞夕刊に連載の「時のかくれん坊」を書籍化した作品です。「時のかくれん坊」、今も続いてますよね!?①いつの間にか、「老化」の代わりに「加齢」という言葉が。確かにw。「敗戦」を「終戦」というがごとしでしょうか・・・。②活力が乏し...続きを読む
  • 老いのかたち
    老いのかたちは白骨死体、手厚く箪笥の中や床下に入れられたり庭に埋められたり、離れたくないと身近に置いて、死んだことにはしたくないと死亡通知を出さず代わりに老齢年金いただかれちゃったりして・・・。

    彼奴らにとってはした金でも私たちには大事な虎の子を、社会保険庁(現・日本年金機構)のウジ虫どもが寄って...続きを読む
  • 老いのかたち
    人間って、年老いると、こんなに「老い」のことばかり思い続けるものなのか?

    私は、私に関することはとてもよく考えます。
    でも、「中年女性」だったり、「オバサン」だったりする自分の属性について考えることはまず、ありません。

    だから、この本、エッセイ56本すべて「老い」をテーマに貫いていることに、驚き...続きを読む
  • 老いのゆくえ
    人はみな老いてゆく。その中で、周りからよく耳にする自らの変化は、同年代からもたらされることが多い。そのため、この先、どんなことになってゆくのか?に関しては、座して待ちながら体験し、同世代とまたも共有してゆくことになる。この本では、多くの読者から見れば大先輩にあたる人物が語る生身に起こる様々なことを、...続きを読む
  • 「内向の世代」初期作品アンソロジー
    後藤明生。今だと完全にクズ扱いされる男性像だけど、この当時はまるで問題視されない「モテ自慢」の域だったのかと驚愕。そんなに昔ではないのに。
    黒井千次。多人数視点の現代的な構成だが、いかにも小説的な登場人物の行動の突飛さにやや違和感を覚えるのはやはり時間の為せる技か。
    阿部昭。私小説風だけど障害者の兄...続きを読む
  • 一日 夢の柵

    独立した12の短編集。
    表題『夢の柵』は、老境に差し掛かる人間の滑稽と恐怖が生々しく、出色の一作。
    他作も少し怖い物が多く、氏の当時の心理が分かる。
  • たまらん坂 武蔵野短篇集

    各篇、抒情と武蔵野の空気感で楽しめた。
    中年男性の下心や期待が多くを占めるが、当時の作者の内面を間違いなく反映しているようで、興味深い。
  • 群棲

    通路を挟んだ4軒1画の日常を12個に切り分けた連作形式だが、来客側の話など効果的に外からの視点が入り面白い。
    “ドラマなきドラマ”と作者もあとがきで述べている通り特に構築的な展開はないが、当時の区画整理された住宅街の、干渉し合うねっとりした空気がよく描かれていて楽しめた。
  • 時間

    元サラリーマン、ロジカルで透徹したお堅い文体だがそれがとても良く、労働の観念を主題とした作品群も何気に新鮮。内向の世代に挙げられつつも、彼の表現するイメージは伝わりやすいなと感じた。前のめりに継読。
  • 群棲
    一軒くらい平穏な家族があったっていいじゃないかと思う。
    連作集であるがひとつひとつの短編として読んだときには家族の中に潜む不穏というところで終われる。しかしこれが連作集であることで各家族のその後が否おうにも見えてしまい、都市居住者というのはこんなに家庭が崩壊しているのにもかかわらずそこで暮らさなくて...続きを読む
  • 老いのゆくえ
    黒井千次さん「老いのゆくえ」、2019.6発行、85歳の頃の作品(エッセイ)です。60、65、75、そして85歳、新たな区切り、「ホントカヨ」といった心境だそうです。私は今年71、まだそれほどには老いを感じていませんが、これから先、ある日突然どどっとやってくるのか・・・、それともじわじわ忍び寄ってく...続きを読む
  • 流砂
    戦前は思想検事だった90代の父親が書いた「思想犯の保護を巡って」というタイトルの報告書を読んだ70代の息子は父親の過去に向き合うことになる。
  • 流砂
    日常の何気無いことにも、丁寧に写しとってく感性と技量は、全く衰えが無い。年老いた主役を息子と表現し続けることに、この小説のテーマを感じる。あと時々でる漢字で読めないのがあった。
  • P+D BOOKS 黄金の樹
    主人公は大学生で、家庭教師先の人妻に心惹かれる(というかほとんど欲情という感じ)。それは、高校時代におそらく大恋愛の結果別れてしまった恋人への喪失感ゆえの反動と言えなくもない。また、時勢は日本の再軍備に反対する学生運動が活発な頃で、主人公は学生運動に身を置かねば「ならない」と思っているのだが、どうし...続きを読む