遠藤彩見のレビュー一覧
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シリーズ3作目の中でこの「卒業」が一番好きな物語となった。
佐々目も言っているけれど、「栄養は食べる人の中に残る。栄養は、体になって。気持ちは、思い出になって」。
毎日、親がご飯を作ってくれるのは当たり前だと思ってきた。
朝早くに起きてお弁当を作ってくれても、それも当たり前だと思ってきた。
だけど、その中にはきっと「健康でいてほしい」という願いが込められていたのだと気づいた。
いま、自分が作る側になってあらためて思う。
食べる人のことを考えて作る料理は楽しいと。
いつか、自分の家族がまた給食のお世話になることもあるだろう。
そんなとき、身勝手な振る舞いをするような子供にはなってほしくない。
料理には、作った人の優しさとあたたかさが詰まっているのだから。
最後の佐々目にも毛利にも、胸が熱くなってしまった。
優しさは何よりも強い。
読んで良かったと思わせてくれたシリーズだった。 -
Posted by ブクログ
佐々目のように勤務先の学校で給食を作るものを自校方式というらしい。
ずっとセンター方式の給食だったので、佐々目たちが給食を作る場面は珍しくて新鮮だった。
自分たちが食べる給食を少しだけでも見ることが出来るなんて、とてもワクワクするだろうな・・・と思う。
小学校を舞台にしているので、食生活自体が子供たちの生活に直接影響してくる。
大人と違って自分自身でどうにかなるものではないし。
給食委員会への嫌がらせにもちゃんと理由がある。
食事のときの「いただきます」や「ごちそうさま」にまで文句を言う保護者にも、きちんと対応しなくてはならない。
考えることが多すぎて、佐々目をはじめとして学校側も大変だなと思う。
実際にもこんなことがあるんだろうか。
そう思う反面、ここまで酷くはなかったけれど、「嫌いなものは無理矢理食べさせないでくれ」と言っていた保護者がいたと親に聞いたことがあったような気がする。
好き嫌いがないほうがいいに決まっている。
だけど、体質によって食べられないものがある子供だっている。
ちゃんと先生が説明してくれないと、子供たちはひとりだけ好き嫌いが許されていると思ってしまう。
「給食」っていろんな問題をはらんでいるんだな、とあらためて思う。
夢を諦めきれずにいる佐々目だけれど、子供たちのために結局はいろんなことを考え、しっかりと給食のおにいさんをしているように感じた。
でも、給食のときの食事のマナーだけじゃなくて、いろんな生活していくうえでのマナー。
それを教えるのって、家庭の役目であって、学校にそれを求めるのって違うように思う。
親にもいろんなタイプがいて、親だからってひとくくりには出来ないのはわかっているけれど、何となく釈然としない。
ラストでの佐々目の決断と、毛利の素直じゃない応援がちょっと嬉しかった。 -
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とうとう「給食のおにいさん」が卒業する。
佐々目はホテルでのアルバイトを始め、昼は小学校、夜はホテルと一日中、夢のために必死で働く。
しかし世の中は生易しいものではない。
卒業にいたるまでにはまだまだ困難が続く。
これが佐々目の、「給食のおにいさん」としての最後の仕事となってしまうのか?!
いきなり大問題発生!
調理場には佐々目一人。
ええ?インフルエンザ?どうすんのこれ?
このピンチを切り抜けるには小学校のみんなの協力が不可欠だ。
そして続く問題はキレる子供、藍。
これは体の中でバランスが取れていないからだ、と由比先生は言う。
しかし藍に関しては、食べ物のバランスが取れていないから、心のバランスもさらに失われているようだ。
そしてその理由は彼女の母親にある。
給食費未納。
今回はこれが主な話題となる。
彼女の兄、志温も苦しんでいる。
親のエゴで子どもが苦しむなんて!
彼女たちの親はひどい親だ、こんな親はダメだ、さっさと法的な手続きに入ってしっかり払わせろ!
そう叩いて、実力行使に出れば確かに給食費は払われるだろう。
でも、彼女たちの母親は「小一の壁」とこぼした。
だからと言って未納が許されるわけではないし、子供達が結果的にツケを払わされている現状は改善されない。
ただ、なぜ未納を続けるのか、背景に何があるのか、それを知り、根本的な解決の糸口を探さなければ、真の解決には至らない。
それができるのが理想だが、実際は人も予算も時間も足りない、それはそうだとしても。
辛さや、こだわりや、夢だって、言わなければわからない。
自分は黙っていて、必要なときに手を差し伸べてくれ、なんて「人生も料理と同じです」(257頁)。
「大切なことは伝えなければならない。心の中でくすぶらせているだけではダメなのだ」(270頁)。
バランスは崩れやすいからこそ、整える努力が、人生は回り道ばかりだから、道を見失わない決意が、それぞれ必要なのだ。 -
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元一流シェフの「給食のおにいさん」、佐々目。
子供たちや教職員と関わることで 給食はただの昼飯ではないと感じるようになる。
給食を通して人とかかわり、誰かのためになっている、と、やりがいを見い出すようになったのだ!
さて、彼の2年目は果たしてどんな一年になるのだろうか?
春は意見交換会で保護者に反発する。
「いただきます、ごちそうさまを言わせられる」
「お絵かきが好きだから余ったパンにマジックで絵を描いているだけなのにそれを叱られる」
この苦情に対して正面突破するな、正論で向かうな、なんて?!
佐々目は言う。
正論を吐く人間が一人くらいいなきゃ!
そうだ、頑張れ佐々目!
そして、ナイトキッズとその親や、イチゴを独り占めする女の子。
この子たちの食から見えてくる真の問題とは......。
初夏には、いじめ問題が見え隠れする。
大人に見つからないように、ちょっとしたスリルを味わうゲーム感覚。
これがどれほど他者を傷つけているのか、彼女たちにはわからない。
この問題は最終章の初秋まで続く。
木雨はこの問題に対して直接何かをするわけではない。
魔法の料理でいじめっ子をやっつけよう、そんなことは起こらない。
でも、悲しみ、苦しむ子に対し給食で勇気を与えることはできる。
人は食べたものでできている。
それはつまり......。
また、大荒れのクラスを抑えられない女性教師が登場する。
どうしてこのクラスは荒れたのか。
それは、彼女が保護者を恐れていたからだ。
皆平等に、皆同じように。
でも、いくら大人がお膳立てしても、それは過保護というもの。
大人がしてあげられるのは、子供たちのために平等に魚を取って分けてあげることではなく、魚の釣り方だけ。
どんなに頑張っても、ずっと一緒に履いてあげられないし、ずっと守ってはあげられない。
佐々目、由比先生、毛利はそれをわかっている。
自分も辛さを味わっているから。
だから少しだけしか手を貸さない。
子供達が自分で涙を拭いて立ち上がれるように、そのための手伝いを少しだけ。
この人たちの姿は私たちが心がけるべき、理想的な大人の姿に他ならない。 -
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給食のおにいさんとして働いて1年半。
自分の店を持つという夢に近づけない日々を送る佐々目は焦っていた。
そんな中、学校では給食の時間にいじめが起こり…
どんな店でもいいから、資金を稼ぐために働きたいと迷う佐々目だったが、自分のこだわりを捨てきれず、迷っていた。
そんな佐々目に、保健室教諭の由比先生と、給食職員の毛利が手料理をご馳走する。
2人ともそれぞれの悩みを抱えているのに…
その強さに打たれて、自分のこだわりを大事にしようと決意する。
「かっこいいところを見ていてくれる人は必ずいる。」
給食マナー教室での佐々目の言葉は、いじめられている麻耶や、人前に立つ勇気の出なかった元子役の美玲の行動を変える。
私も、どうしても行動する前に人の目を気にして、何もできなくなることが多い。
でもまずは、自分がかっこいいと思えるように、人に見られても恥ずかしくない自分でいようと心に決めた。 -
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ネタバレ4話全部が前巻まではあまり意識しなかった「若竹小を去る」というひとつの終わりに向かっていて、周りの人達との別れを意識せずにはいられませんでした。
もう毛利さんとの付かず離れずの会話を見られないんだなあとか、児玉君と働くところをもっと眺めていたかったなあとか、名残惜しさばかり感じてしまいます。8月に出る続刊でも、既存キャラがちらりとでもいいから登場してくれないだろうか…なんて考えてしまうのは我儘でしょうか。
一番心に響いたのは、なんといっても毛利さんからの手紙です。栄養事務室での会話が最後だと、随分あっけないなあと思っていたのにあれは反則でしょう。読んでいたのが電車の中じゃなかったらちょっと泣いていたかも分かりません。ずっと毛利さんやマトリョーシカ3人と楽しくやっていく日々を読みたかったけれど、何事にもいつかは終わりが来るのですね。
たった2年、されど2年。本当に色々なことがあって、今となっては子供嫌いでプライドが高い佐々目も愛しいです。
給食費の未払い問題は無事に解決されたのか、あるいは教育委員会の手に渡ってしまったのか、そこが宙ぶらりんだったのが残念でしたが、読後感の良い良書でした。また第一弾の最初から読み直したいです。