Posted by ブクログ
2019年06月14日
医療をテーマにしたエンターテインメント作品は、漫画だったら自らが医師免許を持っていた手塚治虫の「ブラックジャック」を嚆矢とし(ていると思っていたけどWikipedia見るとそうじゃないらしい)、近年では「Dr.コトー診療所」や「ブラックジャックによろしく」など数多く、小説やドラマにまで範囲を広げれば...続きを読む、おなじみ「白い巨塔」や、この本棚にも登録してある「チーム・バチスタの栄光」など枚挙に暇がないほどの人気ジャンルです。自分も好物でよく読みます。
人の生死や医師という職業に賭ける使命感というドラマチックなテーマが日常的に扱われるからではないでしょうか。
この「コウノドリ」は、そのことに加え、子供の誕生という幸福で重たいテーマが扱われているのですから、面白くないわけがありません。
…なんて、つい偉そうに書いてしまいましたが、そんな他人事みたいな話ではなく、この「コウノドリ」では、扱われているテーマの多くが「自分事」です。幸い、医療モノのテーマになるような重篤な病気や大きな怪我、神の手を持つお医者様なんかとは縁の薄い人生を送ってきましたが、妊娠出産とそれにまつわるトラブルは、実際に直面したかもしれないものばかり。もう食いつくようにして読みました。「出産は奇跡なんだ」というサクラ先生の言葉(2巻だったかな?)が、本当に実感を持ってそのとおりと感じられます。
リアリティのある院内の様子や症例・事例は綿密でしっかりした取材の賜物でしょう。そして、主人公サクラ先生の言葉がいちいち心に沁みます。取材に協力した医師の考えや言葉なのでしょうか。サクラ先生やそのモデル・取材元のような先生が増えるといいなと思います。
ドラマも見ました。
親子みんなでです!
コミックスを読んでいた頃はほんとにちゃんと生まれてくるのかな、なんて心配だった子供と一緒にドラマを見られるなんて、とってもうれしく、膝に乗った子供が画面を見て「赤ちゃん可愛いねえ」なんて言うなんて、やっぱり奇跡だよなあなんて思いながら。
綾野剛のサクラ先生は、最初から綾野剛をモデルにしてサクラ先生をキャラデザしたんじゃないのってくらいはまり役。星野源の四宮先生も見ているうちになじみました。そして何よりも赤ちゃんをたっぷり画面で見ることができて満足満足。再放送、しないかなあ。
この第1巻に収録されているのは4編。
「受け入れ拒否」「切迫流産」「淋病」「オンコール」です。
巻が進むに従って登場人物が増え、それぞれのキャラクターがそれぞれの事情を抱えて努力し、悩み、成長していく姿が描かれる群像劇の色を濃くしていきますが、この巻で名前が与えられているキャラクターはまだサクラ先生と下屋先生だけ。
でも、最初のエピソードの冒頭から、サクラ先生の「未受診なのは母親のせいでお腹の赤ちゃんは何も悪くないだろ」って言葉で心を鷲掴みにされました。
ところで、サクラ先生の好物はポヨング焼きそば。
もちろんぺヤングのもじりでしょうけれど、ぺヤングのもじりで有名だった「ペヨング焼きそば」が実際に発売されてしまって使えなくなってしまったのでやむなくこの名前にしたのかなあ、って可笑しくなりました。
以下、各編に一言ずつ。
「受け入れ拒否」
未受診妊婦(野良妊婦)の話。
上に書いたとおり「未受診なのは母親のせいでお腹の赤ちゃんは何も悪くないだろ」って言うサクラ先生の言葉が心に沁みます。赤ちゃんの身の上に重ねてサクラ先生本人の出自が語られるのですが、「人の何倍……何十倍も辛いことがあるかもしれない ……でも人一倍幸せになることはできる」との言葉も。掴みは十分です。
あと、下屋先生はこのままでは一生ベイビーのライブには行けませんね。
「切迫流産」
切迫は「非常に差し迫ること」。
ですから「切迫流産」は今にも流産しそうな状態、なのですが、恥ずかしながら流産してしまった状態だと間違って覚えていました。
「今お話ししたことをふまえて 今日中…2日以内にお2人で決断してください 赤ちゃんを助けるのか 助けないのかです」。今後も度々出てくる「言わなければいけないことは客観的データに基づききちんと言う」サクラ先生の本領発揮。
小さく生まれてしまった赤ちゃんがお父さんの指を握るシーンで不覚にも涙腺崩壊。
「淋病」
打って変わってちょっとコミカルに妊娠中の注意事項を啓発する話、かな。お説教臭さを感じることなく読むことができました。
正直に告白して検査を勧めた旦那は、最低限の人としての良識だけは守ったんだけど、でも文化じゃねえだろうがよ。
あと、このあたりで反響から連載が揺るぎないものとなったからでしょうか、2巻の重たいエピソードの登場人物がチラッと出てきます。
「オンコール」
大切な商売道具に傷をつけられちゃ困る、と帝王切開に同意しないお母さんのお話。
帝王切開と母乳の話はどんどんやって欲しい。どんどん、何度でも。