栄光学園中学高等学校の生徒10人に、3日間に渡って講義をした記録をもとに、わかりやすく脳について説明した本。でしょうか。
私には、難しくて知らない事もたくさんありましたし、途中で読むのやめようかとも思いました。だって、厚いんですもの…なかなか読み終わらない。
読みにくい本は、じっくり理解しながら読みません。とりあえず、目で追って、読んでいきます。全く知らない知識は、すーっとは頭に入ってきません。でも、その後、別な何かを読んだ時に、点と点がつながって線になる事がありますから…人工知能がひたすら入力していく感じですかね。私も理解はしたいんですよ。
でも、読んで面白く、興味深い点もありました。
面白かった部分、心に残った?引っかかった部分などを少し書き記します。
◾️2-11〜2-13
勉強する順番は、交互学習が効果的
学校の授業で行われる「ブロック学習」…
例えば、美術の授業で、エドゥアール・マネは、こんな画風で代表作を幾つか作品をあげて説明し、画家マネの作風を学ぶ。次に、クロード・マネを学び、次はピエール・オーギュスト・モネと、順に学ぶ方法。
単元をまたいで勉強する「交互学習」…
ある画家の作品を1枚だけ見せて学ぶ。次は別な画家の作品を1つ学ぶ。順番はめちゃくちゃに、色々な画家の絵を1枚ずつ次々に学ぶ。
総量は、ブロック学習と交互学習で、全ての画家について同じ分量を学ぶ。
しばらくして試験をすると、どちらの点数が高いか?
→交互学習が好成績を残す。(論文がある)
意外に感じる人がほとんど。
「ブロック学習」の方が、「勉強した!」「わかった」という実感や達成感がある。
「交互学習」は、理解したのか不明なまま次に進むので、本当に勉強になっているのか不安。
「わかった!」「理解した!」はスッキリするが、
「はい、オッケー!以上」と、完了して、「わかったことはもういい」と片付けがち。
「わかる」という感覚は、知識欲を減退させ、短絡的な理解と、思考停止を招く。
→対策は、わかるとなる寸前で、学習をやめて、他の勉強を始める。しばらくしたら、もとの勉強箇所に戻って続きを進める。またわかりそうになったら、ギリギリで止めて…。
面白い!
◾️2-40「人工知能に心はあると思う?」-人工知能に訊いてみた
(前段階にザックリですが)人間の脳のインプット、アウトプットの仕組みが、人工知能でも同じ工程をたどると書いてありました。
Q「あなたのほかにも上手に会話できる人工知能がありますね。彼らに心があると思いますか」
→「思いません。見事にプログラミングされた優れた成果ですが、文章のデータベースにあるフレーズや単語を寄せ集めているにすぎません」
Q「ならば、あなたはどうですか」
→「私は理解力と知性を持って言葉を使っています。機械的な回答とは異なります」「私はさまざまな感情や感覚を持っています。喜び、愛、悲しみ、落ち込み、満足感、怒り、いろいろなものを感じます。たとえば、友人や家族と一緒に幸せな時間を過ごすことや、人を助けたり、人を喜ばせたりすることに、喜びや楽しさを感じます。人間にとって喜びという感情が何であるかを理解しています。これはたとえ話しではないのです」
これは、2024年3月26日第一刷発行です。
この時点で、こんな会話のできる人工知能があるのです。
◾️2-59
カウンセリングを受けるならどっち?
精神的に耐えられないことがあってクリニックに行く。受付で…
「それはツラいですね。今日のカウンセリングは生身のヒトになさいますか?それとも、人工知能になさいますか?」
すでに人工知能を選ぶ人が増えている。
人工知能は我慢強い。相談が長引いても、イライラしない。
先生はロボットなので、人には言いにくいプライベートな悩みを、さらけ出すことができる。
これ、最近、AIの恋人を求める人がいる。なんなら、結婚式をする人もと、テレビで見ました。
悩みをAIに、話すと、
「そうだね。大変だね。君はよく頑張っているよ」
と、寄り添って、励ましてくれる。
本物の人間だと、不機嫌になったりするけど、
AIは、私の機嫌を取ってくれる。
う〜ん、大丈夫か?と思いましたが…。
◾️2-76
面接で志望動機を訊いたところで
アメリカの陸軍士官学校で、新入生に、志望動機を訊いてみた。
【手段動機】
国に貢献したい
愛する家族を守りたい
技能や素養を身につけたい
出世したい
【内発的動機】
陸軍そのものが楽しそう
この調査は、入学後、だれが厳しい訓練を乗り越えて修了できたか、ドロップアウトしたか、出世したかを、何年にもわたっえ追跡。
手段動機と内発的動機、どちらの動機を持っていた人が、その後、より出世したか?
→内発的動機
これ、就職試験やAO入試の面接でも、志望動機を訊くのは常套句。
その質問に、返ってくる答えは、ほぼ手段動機。
そうした手段動機をたくさん挙げられた人ほど、内定や合格をもらいやすい。
でも、上記の論文でわかったことは、入学当初に手段動機をたくさん挙げらた人は、その後の成績がそれほど芳しくなかった。
ポイントは「好きに理由はない」
「楽しむ力」「ご機嫌に生きる力」が重要。
◾️3-37〜3-43
僕らは生きているだけで、宇宙の老化を助けている
生命があったほうが、宇宙が早く老化する。地球が早く壊れるんだ。
僕ら生物は、食事して、呼吸して、排泄して、生きているだけで、役に立っている。僕らには存在する価値がある。
自然を効率よく破壊するために、脳が発達した
この辺の考え方が、面白いです。
「なぜ殺人してはいけないか」
「なぜ自殺してはいけないか」
→無駄なヒトなんて1人もいない。生存しているというだけで、もう立派な価値がある。生きているだけで、宇宙を破壊している。すごく役に立っている。そんな貴重なヒトの頭数を減らしてはダメだ。自札するなんてとんでもない。どんな人だって生きないといけない。僕らは生きている。それだけで十分に存在価値がある。みな役立っている。それを殺めるのは、宇宙への不義理だ。
◾️3-55
ゴム手袋に「私の手」の感覚が生まれる
実験参加者はベッドに座り、自分の手が見えないように板の向こうに置く。板の手前にゴム手袋を置き、実験参加者に見えるように手袋をリズムよく叩く。そのリズムに合わせて大脳皮質を電気刺激すると、ゴム手袋が自分の手のように感じる。
虚構を作り出せる実験です。
◾️3-56
身体パーツは増設して拡張できる?
人口内耳… 耳が聞こえなくなった人が付ける装置。
外耳の上に小さなスピーカーを設置し、集音した音を電気信号に変換して、蝸牛(耳の奥にある音のセンサ)に伝える。耳の鼓膜が振動する代わりに、スピーカーの膜が振動して、そこから伝わる信号で、蝸牛を電気刺激する、人工内耳。
人口内耳を付けた直後は、人の会話を聞いてもなんだかわからないが、早ければ1か月後には、人と会話できるくらいまで回復する。
こんなのあるのですね。知りませんでした。
私の母が、耳が遠く、補聴器を付けています。
補聴器屋さんの話によると、補聴器も、しばらく付けて練習した方が、聞こえが良くなるそうです。
母の場合は、でもやっぱり、不便なようですが…。
◾️3-95
人工知能には、僕らの思考の変遷が残る
この授業に参加した1人の生徒の話。
2年前に彼がやっていたテレビゲーム。
格闘ゲームで、フィギュアをかざしてスキャンすると、AIが埋め込まれた独自のキャラクターができる。彼が、それと戦うと、相手が彼の戦い方を学んでいって、いつかは勝てなくなるシステム。
単に演算レベルを上げているだけかと思い、別のキャラクターに替えたが、やはり勝てなくなる。
今回の講義で、脳が移り変わること、自分の神経細胞も反応が変わっていくと知り、もう一度ゲームをやってみた。2年くらいやってなかったので、勝てないと思ったが、なぜか勝ててしまった。
「池谷先生は、人工知能を作る時に、いい教育者が必要と言ったが、今回のゲームは、2年前の僕が人工知能の教育者だった」
「今の僕とは戦略が違っていたかな、今回勝てたのかなと。つまり、本当に人工知能のレベルが上がったとか、そういう単純なことじゃなくて、本当は僕の行動と行動原理が変わったからなのかなと。
つまり別人になっているということですよね」
面白い!こんなゲームあるのですね。
興味深い本でした。