作品一覧

  • サンソン回想録 フランス革命を生きた死刑執行人の物語

    サンソン回想録 フランス革命を生きた死刑執行人の物語

    小説・文芸

    3.3
    1巻2,534円 (税込)
    パリの死刑執行人〈ムッシュー・ド・パリ〉を代々務めるサンソン家の4代目当主として、ルイ16世、マリー・アントワネット、ロベスピエール、サン‐ジュストら、3000人余を手にかけた男、シャルル‐アンリ・サンソン―― サンソン家に代々伝わる資料と直接取材を基に、フランスを代表する文豪バルザックが描く、革命期を生きた処刑人の物語を、待望の本邦初訳!

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  • ゴリオ爺さん

    ゴリオ爺さん

    小説・文芸

    4.3
    1巻1,386円 (税込)
    出世の野心を抱いてパリで法学を学ぶ貧乏貴族の子弟ラスティニャックは、場末の下宿屋に身を寄せながら、親戚の伝を辿り、なんとか社交界に潜り込む。そこで目にした令夫人は、実は同じ下宿に住むみすぼらしいゴリオ爺さんの娘だというのだが……。バルザックが描く壮大な小説絵巻《人間喜劇》の代表作を、鮮烈な新訳で。(解説・宮下志朗)
  • 谷間の百合

    谷間の百合

    小説・文芸

    4.2
    1巻935円 (税込)
    充たされない結婚生活を送るモルソフ伯爵夫人の心に忍びこむ純真な青年フェリックスの存在。彼女は凄じい内心の葛藤に悩むが……。
  • 風流滑稽譚(一)

    風流滑稽譚

    小説・文芸

    -
    1~3巻440円 (税込)
    「人間喜劇」の作者バルザックとしての名声があまりにも偉大なため、彼の戯作は余技のように見られがちだが、これはバルザックの百以上にものぼる作品のうち、いわゆる好色文学のレッテルを付されながら、天衣無縫の芸術作品と真に称しうるものの一つである。1832~1837年刊。「美姫インペリア」「仮初の咎」「王の愛妾」「悪魔の後嗣」「路易十一世瓢逸記」「大元帥夫人」「箱入娘」「金鉄の友」「衣手の風流」「当意即妙」の10篇収録。
  • ゴリオ爺さん

    ゴリオ爺さん

    小説・文芸

    4.2
    1巻935円 (税込)
    華やかなパリ社交界に暮す二人の娘に全財産を注ぎこみ屋根裏部屋で窮死するゴリオ爺さん。娘ゆえの自己犠牲に破滅する父親の悲劇。
  • グランド・ブルテーシュ奇譚

    グランド・ブルテーシュ奇譚

    小説・文芸

    3.5
    1巻748円 (税込)
    善人も、偽善者も、悪人もバルザックの描く人間がおもしろい! 妻の不貞に気づいた貴族の起こす猟奇的な事件を描いた表題作、黄金に取り憑かれた男の生涯を追う「ファチーノ・カーネ」、旅先で意気投合した男の遺品を恋人に届ける「ことづて」など、90篇あまりもの作品からなる《人間喜劇》と呼ばれる作品群から人間の心理を鋭く描いた4篇を収録。ひとつひとつの物語が光源となって人間社会を照らし出す短編集。
  • 役人の生理学

    役人の生理学

    ビジネス・実用

    4.0
    1巻924円 (税込)
    革命後、ジャーナリズムが勃興したフランスで一気にブレイクした「生理学」シリーズ。現代の「スーパー・エッセイ」のたぐいですが、バルザックの観察眼にはなかなか唸らせられます。冒頭の定義があります。「役人とは生きるために俸給を必要とし、自分の職場を離れる自由を持たず、書類作り以外なんの能力もない人間」現在と同じではありませんか! 付録に、一九世紀の役人文学3篇を追加。(講談社学術文庫)
  • 幻滅(上)

    幻滅

    小説・文芸

    -
    1~3巻770円 (税込)
    「自分の力をもてあましている青年たちは、これをジャーナリズムや党派争いや文学芸術にうちこんだが、そればかりでなく、もっとも奇怪な放蕩にも乱費していた。若きフランスには、それほどありあまる精力過剰があったのだ。これらの青年はみんな活動的で、権力と快楽をもとめた。芸術家肌の者は富を欲し、無為の者は情欲をもっぱら刺激しようとした。なんとかして地位にありつこうとけんめいだった。が、政治は、どこでもそれをあたえなかった。多くの者がりっぱな才能をもっていたが、ある者は刺激の多い生活でその天賦の才を失い、ある者たちはなんとか生活にたえていた」……。
  • 浮かれ女盛衰記(上)

    浮かれ女盛衰記

    小説・文芸

    4.0
    1~2巻990円 (税込)
    この小説を支えているのは登場人物ヴォートランで、すごい悪党。しかし。ヴォートランはどうなるのかという興味で先を読まずにはおれません。私のようなヴォートラン狂は、歌舞伎役者の「見得」を待つのと同じで、同じ場面を心待ちにするんです。やはり傑作だと思います(山田登世子)。
  • 谷間のゆり(上)

    谷間のゆり

    小説・文芸

    -
    1~2巻770円 (税込)
    青年貴族フェリックスはモルソーフ夫人と知りあい、激しい恋のとりことなる。だが、年も倍の男に慈悲心から嫁ぎ、結婚後は性格破綻者の夫と病気がちの子供たちを育てあげることに精一杯の夫人は、プラトニックな愛しかフェリックスに許そうとしなかった…バルザックの「人間喜劇」の田園生活情景に属する代表作。
  • 従妹ベット(上)

    従妹ベット

    小説・文芸

    -
    1~2巻770円 (税込)
    好色漢ユロ男爵、貞淑のかがみのその夫人アドリーヌ、強欲な商人あがりのクルヴェル、淫蕩多情で強欲なマルネフ夫人、そして醜女であるために誰からも愛されず、男爵夫人におさまった美人のアドリーヌを妬み、いつか没落させてやろうと密かに執念を燃やす従妹ベット。これら主要人物に多くの登場人物をからませて、パリを舞台に描きあげられた人間くさい物語。バルザックの「人間喜劇」の代表作のひとつ。
  • ウジェニー・グランデ

    ウジェニー・グランデ

    小説・文芸

    -
    1巻770円 (税込)
    抜け目のないやり口で財産家、事業家、地主としての地歩を固めたグランデ老人は、家庭においてもワンマンで、砂糖ひとかけら、ろうそく一本にいたるまで倹約し、金を貯めることに生き甲斐を見いだしていた。そんななか、おとなしい母に育てられて二十三になった一人娘ウジェーヌは、その持参金目当ての有力な二つの家族の争いに巻き込まれそうになる。そこにパリ育ちのかっこいい従兄弟シャルルがあらわれる。ウジェーヌは初めて恋心をおぼえる。……骨太なリアリスト、バルザックの代表作で「純愛」の訳名もある。
  • ゴリオ爺さん

    ゴリオ爺さん

    小説・文芸

    -
    1巻880円 (税込)
    パリのうらぶれた一画にある、うらぶれた下宿屋ヴォーケル館にうごめく人たち。自分はしみったれた暮らしを送りながら、嫁いだ二人の娘の言うままになって全財産をつぎこむゴリオ、いつの日か、社交界に打って出るか、学位をとって出世しようと、野望をたくましくする田舎出の青年ラスティニャック、反社会的な言辞をろうする得体の知れない四十がらみの大男ヴォートラン……徹底したエゴと妄執を描くバルザックの「人間喜劇」の代表作のひとつ。

ユーザーレビュー

  • ゴリオ爺さん

    Posted by ブクログ

    ルイ16世の処刑、恐怖政治、食糧危機、第一帝政、復古王政と不安定な社会情勢で、ブルジョワジーと貴族が織りなす、金と虚栄心にまみれた泥沼の社交界が舞台。

    金に執着せず、2人の娘を一心に愛する父性愛の塊であるゴリオ。

    田舎の若者らしい良心をもち、パリの社交界の泥沼のなかで出世欲からくる悪と善良さの間で葛藤していくラスティニャック。

    この2人を中心に、社交界の泥沼な人間模様が巧みに描き出されている。

    っていうか、ゴリオの父性愛ってもう自己中心的すぎ!
    娘に依存しすぎ!これを養育といってよいわけがない。
    そして、社交界の汚さ。ラスティニャックの良心も、もう捨て去られる寸前…。

    バルザックといえば、人物再登場なる技法を初めて使った人でもある、近代文学の祖ともいわれる人。

    実はこのラスティニャックは、バルザックの別作品「あら皮」で青年として登場している人物だとか。
    それを、ゴリオ爺さんで若者として再登場させているわけですね。

    気になる! ラスティニャック、お前の良心は一体どうなったんだ。
    たぶん、当時の読者も気になったに違いない。
    こうやってバルザックは巧みに、読者を自分の別の作品に誘導したのではないかと思うのです。

    わたしも読みたい。人間喜劇を全巻読みたい。
    ただ、この手のものはやっぱり邦訳によって読みやすさも違ってくるし、そしてもうこの人間喜劇、全巻手に入れることのほうが難しいのですね。
    ざんねん。

    0
    2026年09月26日
  • ゴリオ爺さん

    Posted by ブクログ

    最近自分の中で、読んだことない海外名作に挑戦してみようフェア。ついに気になってたゴリオ爺さんに手をつけた!

    翻訳者さんもあとがきで書いているほど、冒頭50ページの読みにくさが鬼門だと言われる本作だが、この訳なら最初から読みやすく、面白かった!
    こんな大勢の登場人物覚えられるか?とは思ったけど、割とすぐ区別がつくようにもなった。

    ほぼ全員金に振り回される利己的で人間臭い登場人物たちがヴォケール館や豪華絢爛な社交界を右往左往する有様は、なんとなくレミゼミュージカルでテナルディエ夫妻がマスターオブザハウスを歌い上げる一幕を連想させて楽しい。 
    ラストは悲惨としか言いようがないものの(娘を持つ父はこれを冷静に読めるのか…)、なんかずっと色々な人がバタバタしてるので、滑稽感もあって読後感は悪くない。
    すごい俗だけど、「結局金は大事」「遠くの親戚より近くの他人」なんて言葉が頭をよぎる。

    解説でラスティニャックやボーセアン夫人らが別の作品に再登場するともあり、それも面白いと思った。しかもラスティニャックは別の作品では「悪徳の媒介者」!
    意外にも登場回数トップ2はニュッシンゲンとビアンションらしい。

    0
    2026年04月03日
  • ゴリオ爺さん

    Posted by ブクログ

    ゴリオ爺さんて、どんなおじいさんかな?日本には花咲か爺さんのお話があるけど......(こんなことを考えるのは、私ぐらいだと思います 笑)

    ゴリオ爺さんの悲劇と、社交界デビューを目指すラスティニャックの物語が合わさった小説です。お金と出世、幸せ〜って何だあっけ、何だあっけ?そんな気持ちになりました。登場人物、それぞれに個性的でおもしろいです。

    19世紀のパリが舞台。ラスティニャックは格安下宿で、ゴリオ爺さんと出会います。ゴリオ爺さん、妻に先立たれ、娘2人の夢を叶えるべくお金をつぎ込むつぎ込む......。超親バカです。

    ラスティニャックは、ゴリオ爺さんの娘のうちの1人に恋をしますが、田舎から仕送りされたお金を使い込み......。

    サブ主人公として強烈な個性を発揮するのが、ヴォートラン。上から目線で、ラスティニャックに説教をたれます。悪魔のささやき。ヴォートランの語りにインパクトありです。

    【印象に残ったヴォートラン語録】

    ・女というのは、自分に力があるときにこそ、自分はなんて幸せで美しいんだろうと感じる。

    ・口で言うぶんはいいが、それ以上に自分の考えに固執しないことだ。....原理なんてない。あるのは事態だけだ。法則なんてない。あるのは状況だけなんだ。優れた人間ってのは事態と状況に適応する。

    ・人間ってのは百かゼロだ。....唯一の本物の感情とは、男と男の友情だ。

    小説終盤、ゴリオ爺さんの悲しい叫びは自業自得のようであり、“こんな親子関係あんまりだ〜”と思いました。

    本書の注によると、人間喜劇の時系列で『ゴリオ爺さん』の後日譚にあたる作品、『幻滅』『浮かれ女盛衰期』があるそうです。電子書籍で確認したら、登場人物が多すぎて、まとまった時間のとれるときに読まないと、私の理解力では無理なことが分かりました。当分、積ん読です。

    以下、余談です。

    『ゴリオ爺さん』(バルザック)のラスティニャック、『感情教育』(フローベール)のフレデリック。どちらも19世紀のフランス、パリの青年。両者ともに複雑な人間関係を経験しています。そして、女性関係においては打算が含まれていました。小説のラストにおける2人を比較すると、

    ラスティニャックは、ゴリオ爺さんの死後、まだまだ野心むき出しの意欲が感じられました。一方フレデリックは、様々に恋愛を重ね過ぎたためか、何となくお疲れ気味で〜すという感じでした。

    19世紀のフランスにおいて、愛人をもつことが、貴族階級の男性とって必要不可欠なことが分かりました。

    0
    2026年01月26日
  • ゴリオ爺さん

    Posted by ブクログ

    初めてフランス文学を読んだ。
    時代背景もわからずに読んだので、最初は苦戦したが、ページが進むにつれて、どんどん面白くなった。
    ラスティニャックが、真っ直ぐで不器用で、好きだ。

    0
    2025年12月26日
  • ゴリオ爺さん

    Posted by ブクログ

    読書会に参加しました。みなさまありがとうございました(^o^)!

    ゴリオ爺さんは高校の時に課題で無理矢理読んで全く理解できずに目で追っただけでした(-_-;)
    その後私も読書も積み重ね、年齢も積み重ねたからか、光文社の新訳のおかげか、読み返したらとてもわかりやすく面白く楽しく読めました。


    時代はナポレオン1世がワーテルローで敗北し(1815年)王政復古したころ。そこで、王政の元の貴族、元々のブルジョワ、産業革命に乗っかった資産家(ゴリオ爺さんとか)たちが時代を読みながら上昇したり破産したりしている。

    冒頭で1819年のパリ下町の安っぽい下宿屋ヴォケール館と、その住人が紹介される。
    ここまできちんと状況を説明してくれると非常にわかりやすい。この部屋や台所のこびりついたような薄汚さ、安っぽいものを積み重ねた感じがよくわかります。彼らはそれなりに仲良く付き合っていて、誰か(だいたいゴリオ爺さん)をからかったり、言葉遊びをしたり、それぞれが自分の近況を話すので、場末感はあるけれどもお互いをよく知っている。

    人物メモ:下宿屋ヴォケール館住人
    ・ヴォケール夫人:夫が遺したこの館で下宿屋を営んでいる。
    ・クチュール夫人:軍人の未亡人
    ・ヴィクトリーヌ・タイユフェール嬢:父は母を放り出して娘も認知しなかったのでかなり不安定な立場。クチュール夫人が母親代わりで面倒を見ている。夫人の影響で熱心なクリスチャン。
    ・ポアレ老人
    ・ミショノー老嬢:年配の未婚女性
    ・ゴリオ爺さん:元小麦粉業者。元金持ちだがいまでは寂しい生活。
    ・ヴォートラン:自称元仲買人。40歳くらい。
    ・ウジェーヌ・ド・ラスティニャック:田舎小貴族で今はパリの貧乏学生。社交界で華々しく立ち回りたい。
    ・ビアンション:ヴォケール館に食事にだけ通ってくる医学生。ラスティニャックの友人。(いいヤツ)


    上流階級に憧れるラスティニャックは、従姉妹で社交界の花形ボーセアン子爵夫人をツテに社交界に乗り込もうとする。最初は社交界のお約束をことごとく読み間違えるラスティニャックに、ボーセアン子爵夫人は教えを与える。
    これがもう、見栄を張りお互いの足を引っ張り合い、そんな相手とうまく立ち回らなければ生き残れないわよ!というサバイバル術(^_^;)

    <あなたがたは、こちらが傷つくと知っていて傷つけてくる連中と付き合い続けるのです。そしてそうした相手に畏敬の念を抱くのです。それとは逆に、自分が相手をどれほど深く傷つけているかも知らずに他人を傷つける人間は、愚か者、立ち回りの下手な粗忽者と見做され、誰からも馬鹿にされるのです。(P132)>
    <社交界は腐っているし、意地悪です。(中略)不幸がこちらにやってくるとなると、必ず待ってましたと友人が現れて、伝えにやってきて、短刀の柄を見せびらかしながら、その刃でこちらの心臓をえぐろうとするのです。嘲りや愚弄はもう始まっているのです。ああ!自分を守らなくては。(P142)>

    今まで上流階級の小説をいくつか読んだけれど、この金言を事前に知っていたらそれらの本で書かれていた社交界ももっと想像しやすかったかもしれない。今後読むときには背景をこれで想像しよう。

    ラスティニャックはあるパーティーでレストー伯爵夫人に眼を引かれた。そしてなんとこの上流貴族御婦人が、自分の安宿で隣室のゴリオ爺さんの娘だということを知る。
    ゴリオ爺さんはものすごい大金持ちになったが、その全財産を二人の娘の結婚と、贅沢な散在に注ぎ込んでいるのだ。
    ゴリオ爺さんはラスティニャックに、どれほど二人の娘が素晴らしいか!どれほど二人の娘を愛しているか!どれほど二人の娘の幸せを願いそのためなら自分の命などまったく惜しくはないかを夢見るような目で語る!
    しかし二人の娘とその夫たちは、ゴリオ爺さんに「金だけよこせ。あんたはみっともないから消えろ」という態度を取り続けているのだ。

    人物メモ:上流階級
    ・ボーセアン子爵夫人:ラスティニャックの従姉妹で社交界の花形。実は愛人に捨てられる寸前。
    ・ランジェ公爵夫人:ボーセアン子爵夫人の友人。かなり辛辣で子爵夫人を傷つける言葉を投げつける。しかしそれが上流階級の友人づきあいらしい。
    ・アナスタジー・ド・レストー伯爵夫人:ゴリオ爺さんの姉娘。地位と名誉が欲しいので貴族と結婚。
    ・デルフィーヌ・ド・ニュッシンゲン男爵夫人:ゴリオ爺さんの妹娘。夫はドイツ系銀行家。金が欲しいので銀行家と結婚。

    ラスティニャックは上流階級で伸し上がろうとする。
    まずはボーセアン夫人のアドバイスに従い、ニュッシンゲン夫人に近づき、その過程で貧しい実家から彼らにしたら大金の送金を頼み装束を整えるのに使い果たす。その後も、賭博に勝ったり負けたり、破産仕掛けたり、持ち直したり、まあパリで成功しようとして堕落する青年の道筋をたどっていきます。
    そんなラスティニャックに目を付けたのが、同じヴォケール下宿に住む怪しげな男ヴォートラン。彼はラスティニャックにある駆け引きを持ちかける。「ヴォケール下宿のかわいそうなヴィクトリーヌを誘惑して結婚しろ。俺が仲間に頼んでヴィクトリーヌの兄を殺してやる。さすがにヴィクトリーヌは父親に認知されてものすごい大金を相続する。その金の家一部だけ手間賃でよこしてくれよ」

    実はヴォートランは犯罪者の親玉で刑務所から脱獄したので「トロンプ・ラ・モール(死から逃れた男)」と呼ばれていたのだ!
    その後で彼が密告され、逮捕される一連の騒動がありますが、ヴォートランはかなりふてぶてしい態度を崩さなかったのでおそらくまた脱獄するんでしょう。
    パリを裏も表も知るヴォートランは「パリの社交界は、ヨーロッパの他のお堅い貴族社会が迎え入れないような金儲けが上手いやつを歓迎する。」(P201あたり)だとか言ってます。

    ラスティニャックはゴリオ爺さんからは「自分と、愛する二人の娘を繋ぐ絆」として大変な好意を得ていた。ついには妹娘ニュッシンゲン男爵夫人の愛人にもなる。
    ラスティニャックはあまりにも冷たい二人の娘と、そんな娘にあまりにも献身的なゴリオ爺さんを見て、野心と、良心とに揺れる。
    <ゴリオ爺さんは神々しかった。ウジェーヌ(※ラスティニャックのこと)はこの男が、燃え盛る親の情念によって、かつてなくきらきらと輝くのを見た、感情というものに人を生き生きさせる力があるのは、注目に値する事象である。いかに愚鈍な人間であっても、激しい本物の愛情を語り始めた途端に、独特の雰囲気を放つようになる。(中略)言葉は稚拙でも精神が雄弁になるのだ、だから彼はまるで輝かしい世界で生きているように見える。このとき老人の声や身振りのうちには、とりわけ名優に見られる伝達力があった。まったくもって、我々の持つ美しい愛情というものは、医師の生み出す詩ではなかろうか(P241)>

    この時期のラスティニャックについて<不正の側に傾いている自分を良心の鏡に照らしてみるという、大人になればできることが若者にはできない、その二つの年代の間に横たわっている違いは、ひとえにそればかりだ。(P211)>とバルザック大先生は書くけれど、大人だってかなり不正するような気がします(^_^;)

    しかしラスティニャックの心は野心を持ちながらも、清廉であることを保った。ゴリオ爺さんのあまりにも無心の愛情に、ラスティニャックも彼を助けようとする。

    しかしねー、この二人の娘、ラスティニャックがボーセアン子爵夫人に忠告された金づる女そのものなのである(^。^;)
    この二人の娘の愛人は「計算高く冷徹になれば出世する。相手を殴る時は容赦なく殴れ、相手が使えなくなったらさっさと交換しなさい。出世を手助けする金持ちで上等な女性に取り入りなさい。相手に本物の愛情をもってしまったら隠しなさい。社交界では死刑執行人でなくなった途端、被害者になります。最初から相手に心を開かず、世の中を疑ってかかりなさい」という社交界の基本に則って彼女たちから有り金と名誉を全て奪っていきます。
    なんかもうねえ、読んでいてあまりにも二人の娘と、ゴリオ爺さんがカモで読んでいて辛くなってきたわ。
    二人の娘がこんなになっちゃったのも、ゴリオ爺さんが必要以上の大金で解決してきた、教育を全くしなかった、処世術を全く教えなかった(自分も知らない)、自分を奴隷のように扱わせた、お金の大切さも友達の大切さも教えなかったからだよなあ(-_-;)

    ゴリオ爺さんの二人の娘は、それぞれの愛人と、夫と、自分の贅沢に、個人の資産をなくしてしまう。ゴリオ爺さんは心労のあまり倒れるが、親身に付き添うのはラスティニャックと医学生ビアンション(彼はいいヤツ)だけで二人の娘は見舞いにも来ない。
    ギリギリで駆けつけた姉娘レストー伯爵夫人は、ついに彼女の所有する不動産も夫に取り上げられたことを告げる。

    それに対してかつては社交界の花形で、サロンに招かれることがステータスとなっていたボーセアン子爵夫人はお見事だった。
    彼女も愛人に捨てられ、社交界の笑いものになった。人々はボーセアン子爵夫人のパーティに詰めかける。捨てられた女がどんな態度を取るかを見物に行くためだ。子爵夫人は毅然と女主人として務めて、陰ながら称賛される。
    だがその翌朝の早朝、パリの全てを捨てて田舎の地所に引きこもることにした。悪友ランジェ公爵夫人も涙ながらに送る。夫のボーセアン子爵も「田舎になんか行かないで、このまま自分と一緒にパリで暮らせばいいじゃないか」という。
    この夫婦は政略結婚だけど社交界で渡っていくための同等の相手としていたんですね。
    <たしかにパリの女性はしばしば嘘つきで見栄っ張りで自己中心的で浮気で冷淡かもしれないが、本当に誰かを愛するときには、間違いなく世界中のどこの女性よりその情熱に溺れるのである、彼女らは卑小でありながら精一杯成長し、ついには驚嘆すべきものになるのである。(P442)>
    <大貴族であっても人間の心の法の外に置かれているわけではない。(P468)>

    ゴリオ爺さんが死んでも下宿屋ヴォケール館に食事に集まる人達は「そんなことどうだっていいじゃん」と日常送る。

    ゴリオ爺さんは二人の娘の不幸を嘆き息絶え、葬儀はラスティニャック、ビアンションが行い、参列したのはヴォケール館下男のクリストフ、少しのお金で雇われた者たちだけだった。
    二人の娘と夫たちの冷たさにビアンションが「墓石には『レストー伯爵夫人とニュッシンゲン男爵夫人の父ここに眠る。葬儀費用を出したのは二人の貧乏学生』って彫ってやれ!」というのが良いコメント・笑
    とにかく処世術を全く持たないゴリオ爺さんと娘たちがバカすぎて呆れながら読んでいたのだが、ラストは良かったなあ。
    今までラスティニャックは色々なものを見た。
    田舎の下級貴族、パリの社交界、パリ下層階級、ゴリオ爺さんと娘たち、長男の自分に全てを差し出す母や妹、貧民から資産家となったヴィクトリーヌ(彼女も処世術を教わっていないので財産巻き上げられる気しかしない…(-_-;)、去ってゆくボーセアン夫人、堂々と悪を進むヴォートラン、身の丈で生きようとするビアンション。
    自分も堕落と誠意との間で揺れた。
    これからどうするのか。人間の醜さにうんざりしたのか?
    いや、彼はゴリオ爺さんを埋葬した墓地から夕暮れのパリを見下ろす。彼はこれからニュシンゲン男爵夫人のところへ晩餐に行く彼は、パリに向かって宣言する。
    「パリよ、今度は俺が相手だ!」

    おお、良いこと悪いことを見たラスティニャック、どんなラストになるかと思ったらカッコいい!「いよっバルザック!」と合いの手入れたい!
    ラスティニャックは揺れて、良心も保ち、そして社交界で伸し上がる野心を確立させた。誠実はゴリオ爺さんは亡くなった。それならまず娘婿で資産家(ゴリオ爺さんから取り上げた資産含む)の銀行家ニュッシンゲン男爵を足がかりにするのだろう。
    彼が今後人を利用しのし上がるだろうけれど、昔はゴリオ爺さんを見て人の誠実さ・人間の徳のようなものを感じたことは覚えておいてほしいなあ。

    ❐読書会
    ・自分ではできないことを自分の身代わりを立てて参加しようとしている。ゴリオ爺さん⇒娘を上流社会に。ヴォートラン⇒ラスティニャックを上流社会に。
    ・金額がわからない。
    ・愛情が過多すぎる。
    ・金持ちでも、貧乏でも不幸。誰が幸せだったのだろう。
    ・真剣になり不幸になる様子が面白い。
    ・貴族社会の何も作らない虚しさを感じる。
    ・ラスティニャックは今後悪に進むのだろう。ゴリオ爺さんの持っていた善意を忘れないのか、それともゴリオ爺さんが死んだことによって完全に悪に振り切るのか・笑
    ・ヴォートランについて。
    ⇒人の動かし方がお見事だ。逮捕されたときもヴォケール館の人々の心を掴んでいた。そこでヴォートランのような犯罪者よりも密告屋のほうが悪いという空気にしてしまった。その後ゴリオ爺さんが死んだ時には館の人たちは無関心だったのであれはもうヴォートランの人間掌握術。
    ⇒バルザックの一種の理想なのかと思った。
    ⇒ヴォートランは貧乏人からは金を取らない。彼なりの美学がある。
    ・ゴリオ爺さんについて。
    ⇒解説にあった「ゴリオ爺さんがエゴイストで娘は被害者」はその通りだと思う。娘にそんな躾をしたのはゴリオ爺さんなので、金がなくなったらゴリオ爺さんに優しくする必要はない。
    ⇒そうはいっても、さすがに娘は周りを見て気がつく分別は身に付けないと。
    ⇒終盤のゴリオ爺さんはもう認知症のようでもあるけれど、死の間際のゴリオ爺さんの譫言に見せる本音が、正気と娘に対する狂気のような妄執の揺れが見えて良かった。
    ⇒ゴリオ爺さんは趣味をやり尽くしたんだから幸せなんじゃないの。

    0
    2025年09月27日

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