小説 - 文春文庫作品一覧

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  • 響灘 そして十二の短編
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    休みでもとってみるか。家族サービスでなし、ゴルフでもなし、休暇の理由はとくに会社には言わずに……。一見ごくありふれたサラリーマンが思いついた、わずか二日間の旅の行き先は暖流と寒流がぶつかりあって、波が立ち、音をたてるという響灘だった。六年前に別れた愛人から電話をもらった男は、二日だけ休暇をとって、そこを訪ねることにした。──不思議な海が二人だけの景色となって騒いでいる──。再会した男と女の一夜を美しく描いた表題作と、家族をテーマにした連作短篇十二篇。
  • 金星 相撲小説集
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    事故で急逝した相撲の親方と、残された金星(きんぼし=美人)のおかみさんのそれぞれに意外な秘密が……。表題作「金星」をはじめとして、定年退職したのに相撲部屋に通う元記者のせつない思いを描く「擦り足」、盛りを過ぎた関取が部屋にたったの一人、もうやめたいのだが後継者もなく……「十両十三枚目」、巨大な肉体のゆえの悲惨な晩年に耐え続けた出羽ケ嶽……「相撲の骨」など、相撲の世界に材をとって、人生の哀歓を浮き彫りにした出色の七篇。
  • スチュワーデス物語
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    アテンション・プリーズ! TVシリーズ化されて高視聴率をとった、あのドラマの原作です。空の上の仕事に憧れて入社してきた極東航空スチュワーデス577期生は、超個性的なメンバー揃い。鬼の村沢教官の特訓を何とかしのいだ“ドジでノロマのカメ”たちは、ついに見習い乗務に移り、羽田の訓練所から世界へ羽ばたいたのだが、慣れない機内で次から次へと珍騒動を巻き起こす。松本千秋以下、同期の新人スチュワーデスたちがくりひろげる、さわやかな涙と笑いの空の青春物語。
  • アリバイの彼方に
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    ホステス殺人事件の容疑者として浮かんだのは、捜査を担当する刑事の元同級生。男らしい堂々とした人生を歩む彼に対し嫉妬を抱く刑事は、アリバイを崩すために執念を燃やす……表題作「アリバイの彼方に」、自分を捨てた男と偶然再会した女が甘い言葉で殺人事件のアリバイ作りの協力を求められる「滑走路灯」、子宮外妊娠で死んだ亡き親友の姪が実は殺されたのではないかと疑った男の推理「彼女の死を待つ」など、事件と関わってしまった人々の揺れ動く心を描いたミステリー短篇集。
  • 狙撃者たちの夏 サミット・コンフィデンシャル
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    チタニウム合金製の特殊アーミーライフルを前にしたふたりの男。交渉の報酬は一万ドル。仕事の内容は、銃の改造である。折りしもゲリラテロの頻発する不穏な世界情勢下、東京では先進国首脳会議(サミット)開催に向けて、アリ一匹這い入るすきもない厳重な警戒網が張りめぐらされた。だが、圧力をかける警察と取材陣とのもみあいが続く中、その網の目をくぐって、アメリカからの侵入をこころみる男の鞄には、件の銃が仕込まれていた……。鮮烈な刺激に満ちたサスペンス長篇。
  • 銀行 男たちの挑戦
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    三洋銀行名古屋支店に銃弾が撃ち込まれたのに続いて、横浜支店長が撃たれた! 動揺が走る行内。対応に苦慮する総合企画部長は、頭取から、銀行生き残りを賭け他行との合併を極秘に計画するよう命ぜられた。だが頭取はもともと合併反対論者で、合併推進派を排斥して、いまの椅子に座ったのではなかったのか。そんななか虎視眈々と巻き返しをねらう元の首脳陣たち……。金融ビッグバン、不良債権と、激震下にある銀行に生きる同期三人の男たちの姿をビビッドに描く、シリーズ第2弾。
  • 少女と武者人形
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    「武者人形の剣に血が噴きだしてきたとき、人が死ぬ……」母親と弟の事故死。少女のなかで武者人形と葬式がひとつに重なった。そして別荘での父と叔母の情事──思春期の少女の、揺れ動く複雑な心理と夢魔の世界を描く「少女と武者人形」。ネコをかわいがっている家に赤ん坊が生まれると、ネコと赤ん坊で“運”をとりあい、ネコが死ぬ。でもネコの“運”が赤ん坊の“運”に勝ったとしたら──「ネコのいる風景」など、「奇妙な味の小説」十二篇を収めた直木賞候補の連作短篇集。
  • 美食倶楽部
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    モデルクラブの女社長・祥子の人生最大の楽しみは食べること。齢下の恋人はいるものの、膨大な金と時間を食べ歩きに費やしている。ある日、中年の建築家・丸岡と知り合い、食べ物に無頓着な丸岡の態度に心魅かれるのだが──食の華やぎを随所にちりばめた表題作。地方出身であることにコンプレックスを覚える女性が、結婚を機に都会の象徴としてあこがれた町に引っ越すことになる。そこは一軒家で、地元意識の強い老齢の女性と同居するのが条件だった──傑作中篇「東京の女性」。
  • みちのく殺意の旅
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    はじまりは、大学時代の仲間との久しぶりの親睦、それだけだったのに……同人誌仲間・阿部からの誘いに応じ、矢代と妻の由紀、原田とそのフィアンセは、五年ぶりに水戸を訪れた。阿部は、やはり同人だった木下みどりと結婚していた。東北の温泉めぐりを兼ねた六人の旅が飯坂、天童とすすむにつれ、妻が、そして仲間たちが次々に殺されてゆく。犯人は知っている人間のはずだ。しかし、誰が? なぜ殺人は止まらないのか? 十津川警部は、もつれた過去の因縁の糸を丹念に解きほぐす。
  • 夢の封印
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    会社の上司ともう7年越しの愛人関係を続けている紘子。その関係は安定していたが、ブラジルからやって来た取引先の男と仕事で何気ない会話を交わすうち、微妙に気持ちが動いて……感情と恋の一瞬の移ろいをあざやかに描いた表題作。そのほか、きまじめな女性介護ヘルパーが“生”と“性”が切り離せないことを悟る「月待ち」など、生きることの根源である官能と性をくっきりと描いた、忘れがたい読後感をのこす7篇の短篇集。
  • 最後の変身
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    入社数年後、ふっつり会社をやめて、実家の私室に引き籠もりはじめた男の手記──男はカフカの『変身』を読んで思う。これは俺だ。いまの俺は巨大な虫だ。老いた両親は怯えて俺を観察している。『変身』の主人公、すなわちある朝起きたら虫になっていた男、グレーゴル・ザムザの感じたことが俺にはよく分かる。それはこんな気持ちに違いない……ネット上に漂う、現代のグレーゴル・ザムザ。引き籠る人間の内面を完璧に描き出した、精緻な文学の結晶。
  • 漂流裁判
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    1巻468円 (税込)
    「強姦致傷および強姦罪──被告人を懲役三年六月に処する。」喫茶店ウェイトレスの知子からレイプで訴えられ、一審で有罪判決をうけた紺野喜一。真っ向から対立する二人の主張を、紺野の担当弁護士・深水耕介が丹念に確かめていくと、知子には他に男が、紺野には婦女暴行の前科が。転々とくつがえる知子の証言、事件の背後にチラつく喫茶店のマスター、店の常連客、厳格な知子の母親……男女の密室の“真実”に迫りきれるか!? 手に汗にぎる傑作法廷小説!
  • 天使たちの肖像
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    1巻440円 (税込)
    妻子も安定した仕事も捨てて“蒸発”し、運輸会社の運転手となった曾木。社長の愛人のフィリピン女性・セべリアから、社長のもう一人の愛人・川西槙子の幼い娘を身代金目的で誘拐する計画を打ち明けられ、その話にのる。金のためではない。無一文で炭鉱で働いていた遠い日の自分と、社長から約束のお金をもらえないと家族が待つ国に帰れない、というセべリアの境遇に、共鳴するものを感じたからだ──男の生きざまを鮮烈に描く長篇ハードロマン!
  • 真空管
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    よごれた愛、でもこれは純愛…緑川有里は、女性誌におしゃれな自動車試乗記を書くモータージャーナリスト。ある日、有里はモデル事務所を経営する横溝と知り合う。いきなりパリからの電話で「あのさ、エルメスで欲しいものある?」と聞くような男。金を持て余し、人生に飽いた横溝に、有里は深いあわれみを感じ、心を縛られていく。「他の男とセックスして、おれに報告してくれよ」。横溝の屈折した要求に、有里はあらがえない。迷走するこの愛の行方は?

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