【感想・ネタバレ】世間体国家・日本~その構造と呪縛~のレビュー

あらすじ

「世間体が気になる」「世間体が悪い」といった言葉に象徴されるように、私たちは「他人の目」を気にしながら生きている。人は人間関係の中で生きざるを得ない以上、世間体からも逃れることはできない。だが、世間体が「負」の働きをすれば、個人の疎外や孤立、組織の硬直化や国としての活力の減退につながる。家庭で、学校で、社会で、人の心の中で世間体はどう作用しているのか。その構造を歴史社会学者が多角的に考察。

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Posted by ブクログ

日本人は良くも悪くも「世間体」を気にします。
良い面は「人並み」であろうと努力する点です。
悪い面は「同調圧力」です。

「ムラ社会」が生み出した産物だろうと想像は
つきますが、この本ではあらゆる面から「世間
体」というものを考察します。

残念なのは、学者ならではのクドクドとなって
おり、自身が調べたり考えた内容を全て書かな
いと気が済まない内容になっている点です。

もうちょっとあっさりした内容で良かったので
は?と思ってしまった一冊です。

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2022年07月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他国では社会の規範として宗教が強力な基盤となっている。翻って日本では人びとの宗教観は弱い。にも関わらず高い公共性や規律を保っているのはなぜか、そこにあるのが世間体である。
人は「いかに生きるか」を常に求めざるを得ない、そのため宗教的なものから完全には逃れられない。しかし日本の世間体教とも言うべきものは、市場経済との関係で言えば「ふつう」の消費を強いられ、「ステイタス」を得ることに価値を置くことにつながる。自身の社会における位置付けを目に見える形で示すことで、自身の家計の財政状況や自分の能力を見栄として表しているのである。

キリスト教をはじめとする宗教では、愛がなければ空虚で個としての確立も危うくなると考える。東洋の宗教思想は人と人との関係性を問うことに注力し、日本社会においては「和」という言葉が強調される。そして歴史的に礼節や身のこなしについては儒教の影響が強くなったため、社会や家庭においても宗教的な内面よりも儀礼や体面を重視するようになったと考えられる。しかし、内的な規範や価値観の面で空虚であると、世間体の影響が増し、個人を支配するようになる。もし「あるべき」と信じる自己像と世間体の間にギャップが生まれると、自己の価値さえも見失いかねない。

こうした和を重んじる社会の中で「奇異に見られずにすみ、かつ他者よりも優位に立ちたい」と考える現代的世俗主義は、一歩そこから落ちこぼれると「落伍者」としての烙印を押されるのではという不安と表裏一体であり、ひたすら外面を取り繕うだけで内面は心許ないものとなる。

上記のような「空虚な人」を生み出す素地が日本社会では強まっている傾向にあり、それが家庭や学校、企業内での諸問題を引き起こすことになる。自身の価値を低く見る自己蔑視を内包する人は他人を見下すことが常となり、他人を尊重する能力が低い。自分の心を自分で満たせないために、周囲の立場の弱い人を攻撃するという行動につながる。
子を持つ親であれば、「勉強ができるから良い子、他の子と比べて自転車に乗るのが下手だ」といったことで一喜一憂するのも、その根幹は同じ。子どもが家庭外の社会との比較において優れているか劣っているかを価値基準として、子どもと接すること、つまり子どもが社会における規律構造やステイタスといった世間一般的に照らしてみて、立派か否かで子を判断すると、その子の行動規範が世間体重視となり、失敗への耐性が弱くなったり、自分の価値を見失いやすい人格形成につながったりする。
学校教育においても、個々の子どもの能力を伸ばすというよりは、社会において一定水準の能力を身に付け、社会秩序を体現し、出すぎず、慎ましく、そつなく生きていけるよう、「日本人としての規律」を形成する場となっている。

人は自分自身を受け入れている範囲でしか、他者を受け入れることができない。だからこそ、自己実現に向けて努力し、自己探求を続けていくこと、他者から見られたときにどうかではなく、「どう行きたいか」「本当に価値あることは何なのか」を考え続けることが必要である。

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2023年04月15日

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