【感想・ネタバレ】海が走るエンドロール 4のレビュー

夫と死別したうみ子。
ぽっかり空いた心を持て余す日々を過ごしていましたが、ある日訪れた映画館で映像専攻の美大生・海(カイ)と運命的な出会いをします。
海から「映画を作りたい側の人間ではないのか」と言われ、ハっとするうみ子。
更に、興味本位で訪れた美大のオープンキャンパスで海の映像作品を見たことで、制作意欲が沸き上がります。
戸惑いながらも新しい一歩を踏み出したうみ子の先に待ち受けているものとは…。

誰しも新しい環境に踏み出すには勇気がいります。
若気の至りで踏み出せることもあるかもしれませんが、年齢を重ねれば重ねるほど多角的に物事を考えリスクを回避したくなり、踏み出すことを躊躇してしまう人も多くなるのではないでしょうか。
それなのに65歳を過ぎ美大生になったうみ子の行動力は、読む人に勇気を与えてくれます。

作中のセリフで
「作る人と作らない人の境界線てなんだろう
船を出すかどうか…だと思う
その船が最初からクルーザーの人もイカダの人もいて
誰でも船は出せる」
というのがあります。

作中、タイミングが訪れた表現として、うみ子の足元に波が押し寄せる描写があるのですが、“船を出す”というセリフに結び付く重要なキーとなっています。
瞬間的意欲というのは誰しも感じることがありますが、そこから先に進むかどうかはとても難しい。
セリフの通り船を出せる状況でも、天候が悪いから、海図が読めないから、船の性能に不安があるから…など、色々な理由をつくりがち。
それでも漕ぎ出しさえすれば海に出ることができるのだと、うみ子さんが体現してくれています。
どのタイミングで波が現れるのか、是非注目してください。

また、晴れて大学生となったうみ子ですが、若者からの悪意ない高齢者扱いに気が引けてしまい自信を持つことができません。
うみ子は、映画を撮ろうとする姿勢を学生から「老後の趣味の自由時間」と言われてしまい、モヤりつつもついつい自分のことを茶化してしまいます。
ですがその後、海との会話で何気ない一言が取り返せない後悔になることを思い出すのです。
真剣に取り組むのが何故か気恥ずかしくなり、自分を茶化してしまうことは年齢を問わずあるのではないでしょうか。
そういった少しずつ摩耗していく日常にうみ子はどう立ち向かっていくのか、うみ子がどういった映画を撮るのか…続きが楽しみです!

うみ子を見ていると、自分もまだ何かできるような気になります。
新しい環境に踏み出す勇気をくれる作品です。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年03月07日

悪気のない言葉、そこまでではないけれどちょっと不愉快なもやもやちりちりすること。
旦那さんと暮らした日々だって楽しい事だけではない。でも、亡くなってしまったら良い思い出にばかりなっていく。
自由に『させてもらった』方だけれど、旦那さんが生きていたらうみ子さんは映画を撮ろうとはしていなかった。
奥さん...続きを読むという立ち位置があったし、そこに収まるのが楽でもあった。
枠の中から出るのは、やはり荒波に船を出すことだ。しかし出さねば景色は変わらない。

法事をしていると聞いてわざわざ高尾まで来てくれて、お墓参りもする海くんは本当に律儀。
お互いがちゃんと映画に対して真剣で、相乗効果があるのが良い。
うみ子さんが書き直した脚本を無遠慮に読むけれど、笑顔で手伝いたいという言葉が出てくるような
裏表の無さがソラの魅力なのだろう。

海くんの気持ちは痛いほど分かるが、大人数が揃えば
プロならまだしも学生たちで同じ方向を同じ真剣さで
向くことは難しい。
怖い監督の下で最高のパフォーマンスが出せないからコスパが悪くなる、という意見は納得。
さらなる大海原へ。背中を押す風。本当に素敵な表現。

求められる以上のことを返すのが当たり前と思っている人しかいない。
それがプロ。
「物語」を人は応援したくなる、という言葉も印象的。

海くんにとって監禁されるかも、と思って何より大事なのが映画の撮影データで、それを託したいと思うのがうみ子なのがすごく真っ直ぐで透明な重みを感じる。
言いたい事があるなら言えと言いながら全く話を聞こうとしない父親。案の定だ。
母親は黙ったままなのかと思ったので少し意外だった。
もし認められたら。応援してもらえたら。
期待して何が悪い、と思う。
泣く海くんを変に慰めるのではなく、
「私たちは映画を撮っている限り強い」
の言葉は仲間であり海くんを肯定しているうみ子さんだからこそ言える言葉だろう。
情けないあなたは魅力的だしとっても映画的。
夜の海を散歩しながらのこの台詞も映画的で強くて美しい。

時間をかければ良いものができるわけじゃない。
けど時間もすべて映画にかけたい。

ソラが映画を見た感想を「イライラする」と表現するのが
とてもらしいなと思う。
面白い物を見た後イライラしたり走り出したい気持ちになったり編集作業したり
それは自分が受け取るだけの側の人間ではないからだろう。
うみ子さん、やはり無理がたたってしまったか。
でも、無理をするなというのも何か違う気がする。

番外編で映画を撮るようになって人に見せるために何かを作る時
自分が何故それを作るのか、つまり自分が何が好きなのかを考えないといけないと思ったというのが好きだ。
更に突き詰めると、自分はなんなのかに辿り着く。
みんな本気で映画が好きなのが羨ましいし、こういう環境にいたらそれはうみ子さんも、頑張りたいと思ってしまうだろうなと思った。

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Posted by ブクログ 2023年09月17日

映画を撮っている限り強い
苦しいこと、やりきれないこと、怒り、悲しみ、喜び、全部俯瞰してやりましょう

この漫画を読んだ時は落ち込んでいる時だったけど、ここのセリフを見て落ち込んでも大丈夫だと言われてるみたいで嬉しかった
どんな気持ちも全部自分の糧にしていつか作品作りの糧にする、そういう人生の向き合...続きを読むい方って素敵

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匿名 2023年08月19日

soraくんキツイけど、いい子。
キツイこともちゃんと言ってくれる人って貴重だなと。

誰かと居ることで自分の立ち位置が決まること、あるよね。。

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tk
2023年07月10日

ええええ最後そこで終わるの!?どうなるの!?
早く続きが読みたい〜

Soraくんだんだん好きになってきたな
グチ達とうみこさんの関係素敵
番外編のゆるい日常もっと読みたいなー

#アツい #エモい #カッコいい

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匿名 2023年06月01日

うみ子さんに背中を押され、54歳のわたしも英会話スクールに通い始めました。定年後の語学留学・海外ボランティアを目指します…! たくさんのひとがこの作品の波に誘われ、船を出せたらいいなと思います。

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2023年04月24日

海が走るエンドロール4巻では、相変わらず何歩も先を行くsoraに刺激を受けたり、自分を見つめ直して撮りたいものに気づいたり、うみ子の止まらない成長が描かれています。年齢を言い訳にせず頑張るうみ子を応援したくなりますが、やはり年齢による体力の違いはありますよね。健康で過ごし作品を撮ってほしいです。

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熱い

2023年04月17日

自分の中の何かを絞り出して作るんだなぁ。
sora君が意外と誠実な良い奴で良かった。

親との葛藤、苦しいよね。

人の内面を客観視するって作業は、
受け手の主観に委ねなくてはならない関係上難しいこともあるよね。

#アツい #深い

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続きが気になる

2023年03月30日

海さんの良い所が全開です。青春しすぎでちょっと心配。

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Posted by ブクログ 2023年03月24日

うみ子さんはいろんなことをすごい深く掘り下げて考える人だなぁと思っていて、娘さんの「思考オタク」って言葉がすごくしっくりきました。
soraくんがただ掻き回すだけの人じゃなくて良かった!

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匿名 2023年02月22日

回を追うごとに、うみ子や海の解像度が上がるような、でも掴みどころがないような。まるで答えのなかなか掴めない自分の中身と対峙している気分になる作品。
作るとは何か、自分らしく生きるとは何か、うみ子たちが映画を撮ることを通して、年齢、性別、家族などの様々な悩みをあらゆる画角から捉えることで、新たな視点...続きを読むを知っていくのが良い。
でもキャラそれぞれとうみ子が、年齢性別を超えて仲良くなっていくのが単純に嬉しい。これは青春の続きの漫画だなぁと思います。

#アツい #エモい #カッコいい

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大切な物語

2023年02月19日

登場人物一人一人の言葉や思いをとりこぼさないように大切に読みたい物語です。
波の描写も効果的で心に深くしみわたります。
素敵な作品をありがとうございます。

#感動する #深い

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Posted by ブクログ 2023年02月16日

創作する創造するひとたちの物語はいつも心を震わせてくるなぁ!と思う。
主人公が65歳女性なのも良くて、ある意味すべて経験したひとが1から自分の世界を構築していくみたいなのもめっちゃ良い。
恋愛ものにならない安心感もある。
もちろん漫画の世界だから、ご都合いいなとか思っちゃったりするところもあるけど、...続きを読むそれはこういうのを読みたいから気にならないし、うみ子さんにも闇はありそうだし。
続き早く読みたい!!ってなる。
そういう気持ちです。

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こういう形か

2024年03月22日

海の両親、というか父親へ向き合う話はいつか来るとは
思っていたが、こういう直接の形になるとは。
自分の俯瞰ってクリエイターでなくても大事かも。
そしてイヤなヒキ。

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うみちゃん呼び、イイネ!

2023年03月12日

もしやもしやと心配していたら、やっぱりうみちゃんが倒れてしまった(⁠ ⁠≧⁠Д⁠≦⁠)
心配もしたけど倒れるほどに没頭出来る事があるうみちゃんが羨ましい、とも思ってしまう。

モノローグが多いめだけどうみちゃんのモノローグは、言葉に出来なかった気持ちを心の中のシコリをほどいてくれるように表現してくれ...続きを読むるので、何度も読み返してしまいます。

soraくん、いい味出してる♪

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Posted by ブクログ 2023年02月25日

映画人の心理や思いが次から次へと染み入ってくるなあ。
ラストは「いつかは来るかもしれんなあ」とずっと心配していた展開。さて、どうする。

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Posted by ブクログ 2023年02月20日

毎巻考えさせられる
自分の生き方と比べて辛くなる瞬間もあるけど、
それでも読む手を止められない面白さがある。

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つきつめる

2023年02月16日

映画を撮るとは、自分とは、そういう問いがぐるぐるしてるような感覚。いろんな問いを突き詰めようと進む感じがする。話を読みながらうみこさんやカイくんの問いや変化を見られるのが面白い

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Posted by ブクログ 2023年05月11日

最後のシーンに全部持ってかれて、内容がぶっ飛んだ。
それはないよね。カムバックするとは思うけど、そういうのこのストーリーに必要なのかな。とまで思ってしまった。
海とうみこさんのことは応援してるんだけどね。

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Posted by ブクログ 2023年02月18日

映画祭に作品を出品することにしたうみ子さんと海の二人…。大学の課題ではない初めての映画制作に奮闘する、うみ子さんの撮る映画、どんな作品なんだろう?

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