【感想・ネタバレ】スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選のレビュー

あらすじ

外食チェーンで深夜のワンオペバイトを続けるノーフューチャーな青年。ある晩彼は強盗に襲われる……だが、それは想像を絶する事態の幕開けにすぎなかった!(リスポーン)捕まえた若者をあえて逃がす決意をした賞金稼ぎ。その理由は、若者が作ったゲームに隠されていた(時計仕掛けの兵隊)――ケン・リュウ、桜坂洋、アンディ・ウィアーら現代SFを牽引する豪華執筆陣が集結し、ゲームと小説の新たな可能性に挑む。本邦初登場11編を含む、傑作オリジナルSFアンソロジー。【収録】序文=アーネスト・クライン/「リスポーン」桜坂 洋/「救助よろ」デヴィッド・バー・カートリー/「1アップ」ホリー・ブラック/「NPC」チャールズ・ユウ/「猫の王権」チャーリー・ジェーン・アンダース/「神モード」ダニエル・H・ウィルソン/「リコイル!」ミッキー・ニールソン/「サバイバルホラー」ショーナン・マグワイア/「キャラクター選択」ヒュー・ハウイー/「ツウォリア」アンディ・ウィアー/「アンダのゲーム」コリイ・ドクトロウ/「時計仕掛けの兵隊」ケン・リュウ/解説=米光一成

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Posted by ブクログ

ネタバレ

もともとビデオゲームを題材にした26篇が収録されていた米国のアンソロジーから、12篇を邦訳した日本版再編集アンソロジー。全体的に読みやすい文体で短めの短編作品が多い。ゲームSF縛りだけど全く飽きず。

「リスポーン」★★★☆☆
- 本アンソロジー唯一の日本人作家、桜坂洋。ラノベ出身なだけあってサラッと読みやすい。死ぬと近くにいる誰かに乗り移って、死ねない男。

「救助よろ」★★☆☆☆
- ゲームにのめり込んだ元カレ、デボンと連絡を取るためにメグはそのゲームに参加してみると「助けてくれ」という連絡。彼女は元カレのためにゲームを勝ち進み、彼氏を救出するが、それは毎回記憶(記録)をリセットして繰り返した〇千回目だった。彼氏は本来一度しか入手できない最強のアイテムをいくつも手に入れるために元カノを利用していた。
- さらさらと読みやすいけど。今までに読んだことありそうな、絶望系のオチ。

「1アップ」★★★★★
- SFではなかったけど、ハラハラドキドキ系で面白かった。
- ゲームの中でしか会ったことがなかった仲間のソリーが死亡、生前から絶対葬儀に来てくれと言われていた。初めて会う他の仲間3人と参加。ソリーの寝室に行くと自作のテキストアドベンチャーゲームがあった。ゲームを進めると継母がソリーを部屋に閉じ込め、殺そうとしていたことがわかる。ソリーは仮死状態になる毒物を自ら購入し、死んだふりをして部屋から出る作戦を決行。酸素が残っている5時間以内に墓を掘り起こし、棺を開けてもらうよう友達に命を託していた。

「NPC」★★☆☆☆
- ゲーム内の脇役キャラが昇格して浮かれたり、沈んだりするライトな短編。

「猫の王権」★★★☆☆
- 認知症患者であるシェアリーのリハビリのためにあるゲーム(猫の王権)を勧められる。同性パートナーのジュディの不安かつ寂しそうな様子が緻密に描かれている。
- 物語として何かが起きそうなところで終わってしまうので、やや物足りなかったけど、なかなか読める。

「神モード」★★★★☆
- 大学生のサラと僕。サラがある時電車で転倒し、頭を打ち付ける。その日を境に世界が少しずつ消滅していく。ふと目が覚めると自分たちは老夫婦でベッドに横たわっていた。
- すべてがハッキリ説明されてないので正しく理解できているかわからないけど、その夢オチのようなエンディングでも嫌な気持ちにならない満足感のある内容。ストーリーだけでなく文体もよい。

「リコイル!」★★★★☆
- ゲームのテスターの仕事をしているジミーが夜遅くにオフィスにいると、何者かがビルに侵入する。犯人から逃げながら、武器を使って応戦し、まるでFPSゲームの中のミッションみたいにスリリングな展開だと思ったら、本当にFPSゲームでした、という若干夢オチ的な終わり方ではあるけど、直接神経インターフェースを使った体験型ゲームという設定も面白いし、最終的に現実世界がまたゲーム世界のような「今どっち??」と混乱させる終わり方も楽しい。

「サバイバルホラー」★★★☆☆
- あるゲームをインストールしたせいで命がけのパズルゲームにチャレンジさせられる、という話だけど、そもそもこのプレイヤーがいる世界自体がファンタジーで魔法的なものが使える設定。半分ジョークSF的なもの。(長編のスピンオフ作品らしい)

「キャラクター選択」★★★★☆
- 子育ての合間にFPSゲームをプレイするわたし。夫曰く、そのゲームは国防総省開発で、優秀なプレイヤーは国防総省にスカウトされるらしい。わたしはそのゲームの本来の目的はそっちのけで、八百屋の裏に畑を作ったり、ラクガキを消したりしていたら、電話番号らしきものが現れ、かけてみると国防総省に繋がり、スカウトされた…。
- SF色はほぼないけど、日常と非日常の混ざり方が面白い。

「ツウォリア」★★★☆☆
- エンジニアである自分が30年以上前に走らせたまま止め忘れていたプログラムが勝手に増幅し、とてつもないAIに成長して自分の元に帰ってきた、というジョーク系SFショートショート。「火星の人」の著者アンディ・ウィアーによる作品。

「アンダのゲーム」★★★☆☆
- 勧誘者ライザから、ゲームの中でミッションをクリアするとリアルマネーが振り込まれるという仕事に誘われ、金を稼ぎ始めたアンダ。
- 長い割に物語自体はどこにも着地しない感じがちょっと物足りなかった。肥満の女子がリアルの世界でダイエットを頑張るあたりはなんかよかった。
- アンダ:ゲーマー。リアルでは肥満体型な女子。
- ライザ:勧誘者。ファーレンハイト・クランのリーダー。
- ルーシー:軍曹

「時計仕掛けの兵隊」★★★★☆
- 新しい設定。アレックスは捕まえた賞金首のライダーを逃すところから始まり、その後、回想シーンへ。アレックスはライダーの父親(政治家)の依頼でライダーを捕まえ、宇宙船で輸送していた。その間、ライダーはPCでテキストアドベンチャーゲームを制作しており、アレックスはそのゲームをプレイすることで、ライダーの過去を知る。※ライダーは幼くして亡くなったが、選挙期間中の父親は息子を見舞う暇がなかったため、死んだことを隠すために自動人形を作っていた。
- ケン・リュウらしい、後味が悪いけど美しい文章。
- アレックス:女性のバウンティハンター
- シェヘラザード:ライダー(賞金首)

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2022年04月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゲーム小説だけどSF集じゃないかも。
最後の短編のケン・リュウは読んだことがなかったけど、ありきたりなテーマなのに見せ方が良くて、単純に小説が上手いなぁと思う。
一番面白かったのはお葬式にいくゲームキッズの話で、プロットの秀逸さを土台に、勧善懲悪と友情要素のバランスがいい小説だった。
「アンダのゲーム」も、有名小説のパロディに収まらない、やや苦い後味と女の子の可愛さがいいコントラスト。

テレビゲームで何かを表現する、またはゲームを表現する短編集だけど、小説の多くがテレビゲームを世界と結びつけているのが興味深い。私はあまりテレビゲームをしたことがないけど、一方的に鑑賞する小説や映画とは違い、コントローラーによってアバターを操作てきるゲームはより空間的に感じられるのかな。そこから発展して、立体感のある人工的な箱庭としてのゲーム空間の魅力、また現実との差や侵食をテーマとしたゲーム小説があったら読んでみたいと思った。この短編集では、女の子がエルフの王妃になっちゃう短編が一番近い?

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2021年04月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

桜坂洋「リスポーン」★★★
デヴィッド・バー・カートリー「救助よろ」★★★
ホリー・ブラック「1アップ」★★★
チャールズ・ユウ「NPC」★★
チャーリー・ジェーン・アンダース「猫の王権」★★★
ダニエル・H・ウィルソン「神モード」
ミッキー・ニールソン「リコイル!」★★
ショーナン・マグワイア「サバイバルホラー」★★
ヒュー・ハウイー「キャラクター選択」
アンディ・ウィアー「ツウォリア」★★
コリイ・ドクトロウ「アンダのゲーム」
ケン・リュウ「時計仕掛けの兵隊」★★★

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2022年01月25日

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