あらすじ
【電子限定!雑誌掲載時のカラー原画&40話のネーム特別収録!】
「あたしはただ、あたしでいたい」
楢えみり、高2。
好きになるのは同性で、相思相愛の彼女がいる。彼女とのことは、親友の朝には言えていない。
いま、朝にとって恋話とは異性とのことでしかなく、だからこそ「朝とは恋話はしない」とシャットアウトしてきた。
しかし、えみりは自分が自分である大事なことを親友に分かってもらっていないことに悩んでいたーー。
自分が自分でいるために。キャッチボールの第8巻!
第24回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出!
人間はいつから「大人」になるのだろう?
両親の死によって、独身の叔母・槙生に引き取られた中学生・朝。
家にこもりきりの小説家である槙生は、独特な感性の女性。
一方で、朝は両親が死んだことに対して現実感を持てない、大人びた少女。
似ているようで正反対の二人が、日々の暮らしの中でやがて心の距離を近づけていく作品。
槙生が仕事に熱中するのを、さりげなくサポートするしっかり者の朝。その姿はお互いの年齢を鑑みると、ちぐはぐな風景でちょっとおもしろい。
けれど、家の外側や、人間関係のこととなると、槙生は迷いながらも、母性というよりは理性によって、的確な言葉で朝を導く。
15歳の朝にとって、それらの言葉はすぐに理解できないこともある。けれど、現実と照らし合わせながらじわじわと納得していく健気な姿がとても印象的。
では30歳を手前にした自分は槙生と朝、どちらに近い地点にいるのだろう?と考える。
「自分はまだまだ子供」だと思う。けれど、朝が戸惑っている幼い姿を見ると「こうしたらいいよ」と言ってあげたくなることが多々あった。
どんなに大人びていても15歳の朝が大人ではないように、アラサーの私も着実に大人になっているのか、と気づかされる。
槙生を「違国」と感じながらも、朝も確実に「大人」へ近づいている様子を、そっと見守っていきたい。
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Posted by ブクログ
性別とか性志向とかそれよりも先になりたい自分になりたい。それだけ。それだけなのに、戦う日々。自分が望む感情が返ってこなくたって、それは自分の価値を否定されたわけじゃない。この笠町氏のセリフはとても大切なことだ。望むものが今返ってこなくても、将来的にも返ってこなくても、自分がぐらぐらしなくなるのかな。ぐらぐらするのは何か湧き出る予感かもしれないけど。
Posted by ブクログ
今回は朝メインの感じ。朝の境遇と年齢を考えるとこういう心情になるのは分かる気がする。というか、分かる気がするように読めるこの作品がすごいんだが。
匿名
自分
二年生になった朝は軽音部に後輩を迎えて部活にいそしんでいた。
下級生たちが話している話題に自分の生い立ちのことがありモヤモヤする朝。
しかしそれを言語化するのはむずかしい。
その中で今まで意識することがなかった父親という存在に向き合うことになる。
一方朝の友人であるえみりは自分のセクシャリティのことを朝に告げたが朝の反応に今まで抑圧されていた感情がふきだしてしまう。
そして朝は自分が言ったなにげないひとことが彼女を苦しめていたことにようやく気付いたのだった。
Posted by ブクログ
小説書けるなんて尊い。
当の本人たちは働きたくないって笑い合っていて。
歌詞 エコーという単語から槙生さんが出す言葉がとても綺麗。
それを参考にして朝ちゃんが考えていく中で
気がついて広がっていく言葉もとても美しい。
笠町さんが朝ちゃんにちゃんと敬語だし、
丁寧に言葉を選んで話していて、
「おれはたぶん父から愛されていない」
「でもべつにあの人に愛されなくてもおれが価値のない人間ではない」
と本心を真摯に吐露するシーンも素敵だった。
原稿が終わったから怖いものなしという理由で
狼の遠吠えをする槙生さん。
犬が呼応して遠吠えするのを三人で笑い合う。
家族というか、群れとでも言えばいいのか。
良い関係だと思う。