あらすじ
死者の乗る船が渡来する港町・ラポネルでの騒動を後にして、コルとミューリは再びラウズボーンへの帰路につく。
教会の不正を糺し、王国との争いを収める決意を新たにするコル。賢狼の娘ミューリはというと、理想の騎士冒険譚を執筆するのに大忙しな様子で。
そして、ラウズボーンへと戻った二人を待っていたのは、ハイランドと教皇庁の書庫管理を務めるカナンだった。カナンは“薄明の枢機卿”コルによる聖典俗語翻訳をさらに世に広めるため、教会が禁じた印刷術の復活を持ち掛ける。
さっそく職人を探すこととなったコルとミューリ。だが、教会から追われる身の職人は協力する代わりに、『心を震わせる物語』を要求してきて――!?
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Posted by ブクログ
いやあ、なんというか、物語がすごく広がってきたなあという印象。
もとより、教会と王国の対立、聖典の俗語翻訳、新大陸と、中世ヨーロッパで実際に起こった出来事が散りばめられてきたわけだけど、今回は活版印刷が重要なモチーフ。
しかも、禁断の技術として。
こういう、さもありなんという設定がいつもながらすごいなあと思う。
現代人の感覚では見落としがちなことも当時ではほんとにすごいことだったんだよね。
それにしても今回はミューリの出番はほとんどなくて、コルが自分でなんとかしていく展開で、いやあ、彼もホントに成長したんだと感心した。
それでも、ラスト、彼がミューリのことを自分にとってどんな存在だと思っているか、ハッキリ分かるくだりは胸熱だよね。
いつか、コルたちに相応しい戦場が訪れるかもしれない。
その時、きっと彼と彼女は共に真っ直ぐその戦場を駆けていくのだろう。
それが教会との宗教的な戦いなのか、新大陸なのかは分からないけれど。
ふたりの冒険をこれからも追っていきたい。
途中、ミューリが夢物語の自分たちの騎士物語を書いているけれど、一度読んで見たいものだ。
そして、彼らの旅はすでに十分、伝記作家が後世に伝える冒険譚だと思うな。