Posted by ブクログ
2016年09月27日
あの世界が返ってきたよ!
うん、面白かったあ。
本作は『狼と香辛料』のいわば正当な続編。
青年になったコルと、ホロとロレンスの娘ミューリの物語。
なんていうか、こういうの好きなんだよね。
一度終わった物語の、その後。
物語は終わっても、彼らはその後も生きているわけで。
もちろん物語によっては蛇足...続きを読むになってしまうこともあるのだけど、この物語は全然そうじゃない。
それは主人公が次の世代であることもあるのだろう。
(いやまあホロとロレンスの物語でも全然いいのだけど。)
こんなその後の物語が読めるなんて、とても幸せ。
実に嬉しい。
物語的には、イギリス国教会やプロテスタントの事績をモデルに宗教と国家の争いというなかなか壮大なテーマ。
行商人ロレンスを主人公にある意味経済物語でもあった前シリーズとは違って、これはまさしく神学徒コルが主人公の話ならではと言える。
コルは予想通りちょっと真面目すぎる青年に育っていたわけだけど、ホロの娘ミューリの方も、いやもう、予想通りすぎて愉しくなってくる。
明るくてお転婆で、それでいてちょっと寂しがり屋で、そのくせ大人よりも聡く度胸もある。
コルもたじたじだ。
それでも、ホロとロレンスの互いに丁々発止としたやり取りに比べ、コルとミューリのやり取りには兄と妹の家族の絆や思いやりが強く感じられてなんとも優しい気持ちになる。
それにミューリは大人顔負けの聡さだけど、恋する少女の部分のなんという可愛いさ!
自分の恋心を告げる場面とか、そのあとの照れた様とか。
その言葉を聞く前に「たとえ困ったとしても解決してみせます」と誓ったコルは、やっぱり責任を取って結婚するべきでは?(笑)
挙げ句の果てにコルに勘違いさせてキスさせようとするミューリの、いや、もういたずら好きと言うかしたたかというか。
さすがホロの娘だな。
まだ若いミューリにはホロのような影の部分(喪失への怖れ)がないだけに、二人の旅はもっと明るいものになりそうだ。
新たな旅が楽しみ。