あらすじ
大宝石商・玉村家周辺に次々と届く殺人予告。第一の犠牲者は玉村善太郎の弟。そして令嬢・妙子と長男・一郎も狙われるが間一髪で助かった。しかし、次男・二郎の恋人は公衆の面前で猟奇的に惨殺されてしまう。一方、湖畔のホテルで休暇を楽しんでいた明智は、波越警部に呼ばれ戻った東京駅で誘拐されたが、文代の機転により、なんとか脱出。玉村家への復讐に燃える殺人鬼を追う――。屈指の傑作長編。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
「魔術師」単独が収録されている。
江戸川乱歩作品には珍しく明智小五郎の恋情が絡んでいるが本筋には大して関係なく、「書き慣れぬなら無理せねば良いのに」と少々脳裏をよぎったが、事実そこまで描写があるわけでもなく、気にかかるほどのものではない。
さて内容であるが、特に前半の描写などは「あれ、これホラーだっけ?」と思うほど生々しく恐ろしい。終盤に至るまで読者をゾッとさせるような事件が立て続けに起きる。
とはいえ、地下室に人を生き埋めにするシーンはエドガー・ア・ランポーの「黒猫」を参考にしたのかと思うほどのものである。
最終的に真犯人が捕まった後もページが残っていることに驚き、更にどんでん返しが待っているのかとも思ったが、最後は真犯人が捕まっても明らかになっていなかった過去の謎を明確にする最後の尻尾であり、なるほどと膝を打つことになった。
江戸川乱歩作品は謎解きの要素もある広義のミステリー小説だと認識しているが、本作はその中でも一層、怪奇小説に描写を近づけたミステリーであるように思う。